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生徒指導対応の支援を行うスクールソーシャルワーカー ―茨城県結城市の事例―

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Academic year: 2021

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生徒指導対応の支援を行うスクール

ソーシャルワーカー

―茨城県結城市の事例―

茨城大学

加 藤 崇 英

1  はじめに―事例の概要と調査について―

 本稿は,中学校の生徒指導に関わる支援を中心としながら,義務段階の支援 を行っているスクールソーシャルワーカー(以下,SSW)の事例として,茨 城県結城市の事例を取り上げ,その配置や運用の在り方を検討し,特質を明ら かにすることを目的とする。  SSW は,近年の「チーム学校」の議論によって注目度が高まった(加藤 2016)。一方,結城市における SSW の導入は,平成12年度に る。つまり,国 の「チーム学校」の議論よりもかなり前の段階で取り組まれてきた。同市は, 人口約 5 万人, 3 つの中学校(中学校区), 9 つの小学校を有している 。市の 相談体制としては,SSW 2 名,スクールカウンセラー(以下,SC)が 6 名配 置され,市内小中学校をカバーしている。不登校支援などを行っている教育支 援センターには,生徒指導相談員が 2 名,指導員助手が 2 名配置されるほか, 研修生やボランティア(大学生)も関わっている。  なお,調査は教育委員会及び市内 A 中学校での訪問によるインタビュー調 査として実施した(調査日2018年 3 月13日)。

2  経緯と SSW 職員の位置づけ

⑴ 制度の経緯  【平成12年】SSW 制度の開始。市内 3 中学校に SSW を配置。 2 つの中学校 に配置し,もう 1 つの中学校には交代で訪問。不登校対策といじめの早期発見 を目的とし,休み時間の支援,ひきこもり・家庭訪問の支援を行った。学校文 化になじめることを重視し,教員免許を必須条件として教委指導課に配置した。  【平成15年】ケース会議の開始。他機関との連携の必要性から,ケース会議

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課題研究報告:日本型教育経営システムの有効性に関する研究:新たな学校像における教育の専門性⑶ を月 1 回実施。福祉課(支援センター「ゆうの木」)との連携が密になってい った。  【平成17年】不登校問題の困難性が高まり,児童相談所,健康増進センター, 病院,特別支援学校など,地域との連携を開始。共通理解が進んだ。  【平成21年】学校に 1 日勤務という体制から,指導課に籍を置き,学校にそ の都度訪問するという派遣型の体制に変更。中学校の生徒指導部会(週 1 回) には必ず出席。市内の不登校児童生徒に関する情報共有の体制を構築。  【平成23年】SSW とフレンド「ゆうの木」に関する市としての設置規則を整 備。以来,毎年 4 月,校長,教頭,生徒指導主事に対してはパンフレットを通 じて SSW を紹介,周知。  【平成29年度(調査年度)】不登校指導の対応を基本とする一方で就学指導の 対応が増加。現在は,教員資格を有している嘱託を 2 名配置する体制。 ⑵ 導入の経緯と配置職員の特徴  中学校での事件を契機として,学校内で子どもに声を掛けて話を聞いたりす る相談員としての役割や,ひきこもりや不登校の対策として家庭訪問を行い, 適応指導教室や学校とのつなぎの役割を支援的に行うこと,そうした活動を役 割として担う職員を配置するという,機能としての明確なイメージが最初にあ った。そうした職員について,いかなる名称がよいのか,当時の SC の助言も あり,海外の事例などから,「スクールソーシャルワーカー」という名称を付 けることとなった。なお,現在の配置職員の身分は,市教育委員会の指導課に 所属する嘱託職員( 2 名配置)である(市規程)。  導入当初は,福祉の職員と学校の事務職員が SSW 職員として配置された (教員免許を有する)。前者は,学校心理士資格を有し,関連の専門性を有する 面もあるといえるが,後者は必ずしもそうとはいえなかった。だが,いずれに しても,名称が SSW であっても,むしろ相談員やつなぐという役割,さらに 学校に所属し,学校に近い存在として,つまり行政の専門としての職員の性格 を強めることなく,学校と行政の中間に位置することができたという。  その後,福祉の職員が SSW 職員として配置されたが,学校文化になじめな かった事例もあったという。こうした経緯から,福祉の専門性以上に学校文化 になじめることを重視し,教員経験を有する職員(元教員)を配置している。 現在配置の 2 名の SSW は,教員免許を有する退職教員であり,豊富な教員経

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験をバックグラウンドとして有しているが,社会福祉士や精神保健福祉士等の 福祉に関する専門的な資格は有していない。

3  SSW の業務と活動の特徴

⑴ SSW の業務と活動の概要  業務の流れは,概ね以下の通りである(表参照)。まず,教育委員会事務局 指導課で始業・終業となる。業務確認や打ち合わせ後,市内の関わりのある学 校や施設,家庭等を廻る。特に市内 3 つの中学校における毎週の生徒指導部会 に必ず出席し,問題・課題及び情報の共有が活動の特徴として指摘できる。 表  1 日の行動パターン例 時 間 場 所 活動内容 8:30− 9:00 指導課 ゆうの木相談員との打ち合わせ 9:35−10:40 A中学校 生徒指導部会に出席。生徒指導主事との話し合い。SC と打 ち合わせ 10:40−11:30 A中学校 A男の校内での様子を観察 11:30−12:30 ゆうの木 通室生の支援 14:00−15:30 A小学校 不登校援助状況報告書の受け取り 16:00−17:00 C中学校 C中学校の教諭と面談 17:00−17:30 指導課 就学関係の電話相談 (「ある一日」インタビュー時,プレゼン資料より抜粋) ⑵ A 中学校における会議体及び生徒指導体制における SSW の位 置づけ  A 中学校では,生徒指導部会(毎週水曜日 2 校時に設定)及びいじめ防止不 登校対策委員会(月 1 回水曜日 3 校時に設定)に SSW,SC,「ゆうの木」職員 がセットで参加している。  生徒指導部会に出席する職員は,校長,教頭,教務主任,副教務主任,生徒 指導主事,各学年担当教諭,養護教諭,特別支援コーディネーター,SC, SSW,市教育支援センター職員である。毎週の生徒指導部会への参加を基本に, 情報交換や支援の相談を行う。不登校,発達障害,虐待が疑われる子,家庭環 境面に問題のある子など,そうした子どもたちの面談などをする場合もある。 いわゆるケース会議はこの会議のなかで取り扱う。  生徒指導主事からは,教員から見て支援になっていることとして,教員の手 が回らないので,いろいろな調べものをしてくれることや,小学生の段階から

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課題研究報告:日本型教育経営システムの有効性に関する研究:新たな学校像における教育の専門性⑶ 知っているので小学校とつないでくれること,さらに家庭訪問の支援をしてく れる面などが指摘された。加えて,適応指導教室「ゆうの木」への入級指導も SSW に協力してもらっているという。SSW は,これら会議に参画するととも に,学校全体の生徒指導及び教育相談の体制に位置づけられている。  また,いじめ防止不登校対策委員会に出席する職員は,校長,教頭,教務主 任,副教務主任,生徒指導主事,各学年担当教諭,養護教諭,特別支援コーデ ィネーター,SC,SSW,市教育支援センター(フレンド「ゆうの木」)職員, その他(校長の判断により,必要に応じて,人権,心理,児童福祉,社会福祉, 少年犯罪,発達障害等に関する専門的知識を有する者)である。 ⑶ A 中学校側から見た SSW の専門性と活用上の利点  導入の経緯についても知る校長は,SSW の専門性に関わる位置づけと,行 政・学校・保護者との間の位置関係について,以下のように指摘した。  導入の平成12年に「相談員が欲しい」ということになった。名称については 「どこから見つけてきたのか,スクールソーシャルワーカーということになっ た」(前述のように教育委員会インタビューによれば,当時の SC が海外の SSW を紹介したことがきっかけ)。「では,資格がどういうのが必要なんだと いうことになったとき」,「資格は何もない。教員免許はあったけれども,とに かく子どもたちの近くで話を聞ける職員ということで」。「ただ子どもたちの話 を聴く,家庭訪問をして来られるといいね,ぐらいの感じだったんですね」。 「一番良かったのは,やっぱりスクールソーシャルワーカーは学校側ではなく て,市役所と学校の中間にいて,市の行政がある程度わかってもいるけれども, そことの橋渡しをしてくれる。よそのスクールソーシャルワーカーって,市役 所とか,行政関係の人が派遣されるという感じだったと思うんです」。「学校に 近いようなスタートだったので,こっちから相談しやすい。専門的な知識を持 った人たちではないから,専門用語も使わない」,「フラット。一緒になって考 えるということができるようになったんですよね」。「それで,そのうち,SSW の 2 人がいろいろなところで研修するようになって,専門的なことも学んだり してきてというのが結城のスクールソーシャルワーカーで。スクールソーシャ ルワーカーって言ってよいのかもわかんないですけれども」。

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⑷ SSW による学校内外及び市内外における諸機関との連携  前述のように平成17年度以降は,特に諸機関との連携に SSW が大きな役割 を果たしている。主に教育委員会事務局の指導課,中学校の生徒指導部会への 参加・情報共有,教育支援センター・フレンド「ゆうの木」との間の行き来を 活動の基本としながらも,対象の児童生徒,保護者の家庭,小学校,保育園・ 幼稚園,さらには高等学校や特別支援学校など,教育機関だけでも市全体をほ ぼ網羅した活動になっている。加えて福祉・医療機関との関わりがある。  例えば,特別支援学校との関係は,未就学の教育相談のなかで,支援学校へ の進学を相談している保護者や子どもの面談や検査などがあるため,これに関 わる連携があり,これは指導主事も一緒に行動する。また高校は進路面に関わ って不登校生徒の受け入れに尽力している高校の教員と連絡をとっている。

4  本事例の特質―まとめにかえて―

 第一に,SSW の教員経験と職員の専門性について指摘できる。当初の配置 職員は福祉の専門性を有していたが,制度運用の年数を経るに従い,教育以外 の専門性を有する職員よりも,教員経験を有するなど,学校文化への適性を重 視するようになった。よって,本事例では,教員経験が優先となり,SSW に 求められる学問的な意味での専門性や資格については優先順位を下げたものと なった(本稿では,社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉専門資格を有する場 合は「『SSW の学術専門的性格』を強く有する」とし,そうした資格を有して いない場合は「『SSW の学術専門的性格』をあまり強く有していない」と捉え る)。  すなわち,A 中学校長のインタビューでも明らかなように,むしろ SSW が 「SSW の学術専門的性格」を有していない方が学校・教員の側から見ても,話 しやすく,また学校の進めたい方針で生徒指導を展開できるという意味で,好 意的に受け止められていたことが指摘されていた。ただし,そこでの SSW の 専門性の在り方が,本来の在り方として,つまり「SSW の学術専門的性格」 から見て,それが良いか,悪いか,そうした問題に関する判断について留保さ れていることは,校長自身も十二分に認識していたことは特徴的であった。  第二に,中学校の毎週の生徒指導部会に必ず出席するという関わり方が指摘 できる。また本事例では,生徒指導部会のなかでケース会議を行う。そうした 意味でも,学校運営から見て,自然な流れのなかで SSW を活用し,生徒指導

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課題研究報告:日本型教育経営システムの有効性に関する研究:新たな学校像における教育の専門性⑶ 体制を展開することができている事例である。  第三に,SSW の役割の変化と職員活用の実態についてであり,就学指導の 相談・事務の増加についてである。本事例では,SSW としての典型的な業務 活動がある一方で,「SSW の学術専門的性格」からすべての業務内容が決まっ ているわけではない。むしろ教育委員会が,新たに生じる子ども支援の業務に 対して,職員を充てることで業務内容が決まっていく,という傾向も指摘でき る。すなわち,SSW のさらに“新しい業務”として就学指導が強調された。  インタビューでは,まず「保護者と相談したりして,小学校につないで」い くことがあり,そして「小学校に上がったら,情緒学級や知的学級でどういう 風にやっているかというようなモニタリング」が業務としてあるのではないか と指摘されていた。本来は SSW の専門性による業務とは考えにくいが,ここ に保護者の側への心的な負担やケアということ,さらには就学前から義務段階 へのシームレスなサポートが必要であり,こうした支援がもし例えば不登校問 題の解決にも大きく関わるということであれば,SSW の業務として,いわば 拡大解釈も可能かも知れない。  いずれにしても「SSW の学術専門的性格」を前提にするならば,本事例の ような「SSW の学術専門的性格」をあまり強く有していない職員に,こうし た業務がどこまで許容されるかは不透明である。本事例の特殊な在り方である という指摘も可能と思われる。だが,一方で本事例の自治体における SSW の 配置と運用に関する考え方の延長として,これまでの経緯から考えれば,自然 な流れとも思われるものでもある。    なお本稿は,日本教育経営学会大会課題研究(2018年 6 月10日)での発表の 概要の報告であり,詳細は加藤(2019)として報告した。 [参考文献] ・加藤崇英「『チーム学校』論議のねらいと射程」『学校経営研究』大塚学校経営研究 会,第41号,2016年, 1 - 9 頁。 ・加藤崇英「中学校の生徒指導対応の支援を中心としたスクールソーシャルワーカー ―茨城県結城市におけるスクールソーシャルワーカーの運用―」『茨城大学教育学部 紀要(教育科学)』第68号,2019年,675-686頁。

参照

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