宮崎県都城方言の研究
教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース 毛 利 寿 実 子
研究の概要 1 .研究の目的
本研究は都城方言を諸県方言の代表として 取り上げ、都城方言の実態を明らかにしよう
とすることを目的とする。
人の生活とことばとは切り離して考えるこ とができないものである。毎日の生活の中で 使われていることばを観察することが、実際 に使われている日本語を具体的にとらえるこ とにつながる。そして、毎日の生活の中で使 われていることばこそが「方言Jである。ま た、ことばは話す相手や、時代の流れ、文化 の発展によっても変化していくものである。
このような常に変化をしていることば、方言 をとらえるために、本研究では現在どのよう にことばが使われているのか、実際にどのよ うな場面で用いられているのか、都城方言を できるだけ純粋な形で取り上げ、観察するこ とにより、現代日本語の実態を把握したい。
2.論文の構成
第 1章 研 究 の 目 的 と 方 法 第2章 あいさつ表現 第3章 感 動 表 現 第4章 問 い か け 表 現 第5章 勧 誘 表 現 第6章 依 頼 表 現 ム
指導教官 小 野 米 一
第7章 命 令 表 現 第8章 禁 止 表 現 第9章 否 認 表 現 第 10章 断 定 表 現 第 11章 推 量 表 現 第 12章 回 想 表 現 第 13章 ま と め
参考文献 談話資料
3.論文の概要
ことばの生活の中での「ことばづ、かいJを、 どのような場面でどのように表現し、実際に 用いているか、自然会話資料、ご教示いただ いた資料から実例、用例をあげ、
fOO
表現Jとして用途・用法を分析した。
相手に対して何か意図をもって訴えかけ、
呼びかけていくという行動が、文の表現には 存在している。これらの文の表現には意図に よって違いや差がある。これらの表現法を以 下のようにまとめた。
第 2章「あいさつ表現Jは、人と人が会話 をする上でごく自然に習慣的におこなってい る、言語生活の基本にあるものである。都城 には「オハヨー」などの共通語的なあいさつ ことばも見られるが、それら以外に「キュワ ダッ A グワシタ(今日はまだでした)Jな
‑264‑
どのあいさつことばが実に豊富にみられる。
このあいさつことばは、本来の意味そのまま に用いるものではなく、「おはようJに相当 するあいさつことばとして用いられている。
このように具体的内容を盛り込んだ言い方が 自由自在に用いられている。
第 3章「感動表現J には相手に向けて言う 表現と、自分自身に向けて言う表現、相手に も自分自身にも用いることができる表現がみ られた。形容詞、名詞がそのまま感動表現と なるかたちもみられた。
第 4章「問いかけ表現」は、文末詞が機能 する表現が中心で、文末詞それぞれに問いか け 性 の 強 い も の (iカ」・「カイ J・「ケj文末 調が最も問いかけ性を持つ)や、目上の相手 に 対 し て 用 い る も の (iカナj・「ケナ」・「ト ナJ)など多彩な表現がみられた。また、「ド シキ(どれほど)J、「ドキ(どこに)Jなど の疑問詞が機能する表現もみられた。
第5章「勧誘表現Jは相手方に利益がある とみなす表現である。「勧誘表現jには「こう した方がよい」という「勧めJの表現と「一 緒に行動しようJという「誘いJの表現があ る。都城では「勧めJの表現に「ド」・「ヨJ・
「ガj文末詞が機能するかたち、中止形式の かたちがみられ、「誘い」の表現に
F
ヤJ文 末詞が機能するかたちがみられた。また「カJ・「カイJ文末詞が機能するかたちには「勧 めJ・「誘いJの両方の表現がみられた。
第6章「依頼表現」は相手方の意思はくん でいるものの「勧誘表現」とは違い、自分に 利益があるとみなす表現である。「依頼表現J には「ヒトツ タモレ(一つ下さい)Jの「タ モレjのような本動詞のものも見られ、命令 表現と関係している。丁寧な表現のこのかた
ちは「命令表現」とはせず、「依頼表現」と 解することとする。
第 7章「命令表現」は「依頼表現J同様、自 分に利益があるとみなす表現である。そして 相手の意思は無視した表現であり、強く間こ える。その表現をいくぶん和らげるために文 末調が機能した表現がみられる。また、ここ でも敬語を用いた言い方が豊富にみられる。
第 8章「禁止表現Jは行動の中止を言うも ので、「命令表現Jが肯定の命令を表すのに対 し、「禁止表現Jは否定の命令を表す。この 表現にも文末詞が機能するかたちが多く、そ れらのかたちはいくぶんやわらかな言い方に なっている。
第 9章「否認表現J には動詞+否定辞のか たち(助動詞「ン」・「ズJの系列)、形容詞
・助調+否定辞のかたち(形容調「ネーJ
・「ナイJ)に大きく分けることができた。
中には「ネーjが動詞+否定辞のかたちと結 びつくかたちもみられた。
第 10章「断定表現Jには断定辞「ジャJ を用いた言い方が都城には基本にある表現で あり、広くみられた。若年層には九州地方の 共通語となっている「ヤ」が受け入れられ、
用いられ始めている。
第 11章「推量表現」には「ジャロ」、 i‑‑ うj、丁寧なかたちに「ジャンソJなどがみ られ、「まい」は共通語ではあまり用いられ なくなっているのだが、都城には「まいJに 相当する表現に「メjがみられた。
第 12章「回想表現j には話し手が過去にあ ったことを思い出して相手に言うときにi‑‑ タ」を用いて表現するかたちがみられた。都 城ではこのかたちを文末調が取りまとめるか たちが多く見られる。
‑265‑