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博士(工学)高橋 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)高橋 学位論文題名

複素非対称フィルタの設計と回路的ディジタル実現の研究

学位論文内容の要旨

  信号の 電気 的な記 録・再 生・伝 送は広 範な 弱電応 用の基 本であ る。 通信路 や記録媒体の有効利 用には 信号の 周波数 成分 や時間 的な姿 態を加 工す る装置 が必須 であり ,これ をフアルタという。

特に実 部信号 と虚部 信号 の対, 即ち複 素信号 を用 いる系 を複素 フアル タと呼 び,1940年代頃から 通信の 理論で 用いら れて きた。 電磁的 な装置 では 復素化 のコス トが大 きく実 装の途が限られてい たが, 発達し つっあ るり アルタ イムな ディジ タル フィル タでtま,信号を数値処理するので容易に 複素化 できる 。

  複素信 号の 最大の 特徴は 正周波 数と負 周波 数の成 分が異 なるこ とで あり, 不要信号を伴わずに 変調で きる。 変調と は音 声を電 波に乗 せるな ど信 号の周 波数帯 域を移 す操作 をいい,実信号の場 合は正 周波数 と負周 波数 の成分 が対称 かつ不 可分 なため に冗長 な帯域 が生じ る。信号の周波数成 分が一 部に集 中して いる 場合, 零周波 数付近 に移 して複 素処理 すれば フアル タは低速な系でもよ く,有 効性が 大きい 。

  ところ でフ アルタ 設計で は,基 準フィルタの周波数特性の写像によって帯域の異なるフアルタ,

あるい は多次 元フィ ルタ や可変 フィル タを導 く手 法があ り,周 波数変 換と呼 ばれている。この方 法は基 準とな る値を 修整 するだ けで設 計が完 了で き,理 論や設 計ツ― ルの統 合にも益があるため に,典 型的な 周波数 選択 性の実 現では 標準的 な手 法とな ってい る。従 来の複 素フアルタの設計で は,実 の特性 を周波 数シ フトす る変換 が広く 用い られて きた。 しかし この変 換では零周波数に関 して対 称な特 性を平 行移 動する だけな ので, 得ら れる特 性が中 心周波 数に関 して対称な特性に限 定され てしま う。

  本研究 では ,この 制約を 取り払 って複 素非 対称特 性のた めの周 波数 変換を 導くとともに,回路 論的な 見地か ら数値 安定 性が保 証され るある 種の ディジ タルフ アルタ にっい て,提案した変換の 構造的 かつ経 済的な 実現 法を明 らかに する。

  本 論 文 は 緒 論 を 序 章 と す る7章 よ り 構 成 さ れ て い る 。 次 に2章 以 下 の 概 要 を 述 べ る 。   第2章 では, 複素 フアル タと解 析信号 にっい て以 後の議 論で必 要とな る事 項を準 備する 。解析

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信 号と は正周 波数成 分のみ の複素 信号 である 。実信 号の正 周波 数成分 を抽出 すれば 同等の情報を も つ解 析信号 に変換 できる 。また 解析 信号の 実部を とれば 対応 する実 信号が 得られ る。このよう な 変換 により 実信号 システ ムの中 で複 素フア ルタを 自由に 活用 できる 。また 解析信 号と一般の複 素 信号 の損失 を必要 な帯域 や複素 フア ルタの 設計と の関連 で述 べ,両 者の相 互変換 にっいても考 察 する 。

  第3章 では 新たな 周波 数変換 を提案 し,実 の特性 から 中心周 波数に 関して 非対 称な複 素特性 を 導 く。 非対称 特性で は周波 数の低 い側 の遮断 の急峻 さと周 波数 の高い 側の遮 断の急 峻さが異なっ て おり ,両者 に対す る仕様 の要求 が異 なると き,中 心対称 な特 性より もフア ルタの 次数が節減で き る。 実の帯 域通過 フィル タでも 非対 称特性 が研究 されて いた が,正 周波数 の特性 と負周波数の 特 性を 対称に 配置し ,かっ 相互の 干渉 による 影響を 補償し なけ ればな らない ために ,設計が困難 で あっ た。提 案する 複素の 周波数 変換 はこの ような 問題が ない 。

  全ての周波数で減衰のない周波数関数をオール′,くス関数といい,ディジタルフアルタの一般的 ナ よ周 波数変 換は, もとの 関数の 遅延 演算を適当なオールハス関数に置換して実現される。しかし こ の操 作を周 波数関 数に対 してで なく ,シグ ナルフ ローの 遅延 器をオ ―ルパ ス関数 のフローに置 換 する 方法で 実行し ようと すると ,特 別な場 合を除 き計算 不能 になる という 問題が ある。そのた め 構造 の定め られた 参照フ ィルタ に変 換を施 す場合 ,一般 には あらた めて伝 達関数 などから構造 を 決定 しなお す必要 がある 。これ に対 しアナ ログの 無損失 回路 におい ては, 周波数 変換は無損失 素 子を 適当な 無損失 回路で 置換す る操 作とし ても実 現でき ,周 波数関 数に立 ち戻る 必要がない。

  第4章 では 前章で 提案 したも のと等 価な周 波数変 換の 複素回 路にお ける表 現を 与え, ディジ タ ル フア ルタと の構造 的な対 応が可 能で あるこ とを示 す。適 当な 構造の 実の無 損失等 長分布定数回 路 を参 照し, 電カと 関連付 けられ た入 反射波 の散乱 過程と みな して模 擬を行 えば, 回路的な構造 を 継承 した数 値安定 性の高 いディ ジタ ルフィ ルタが 導出さ れ, かっそ の周波 数特性 は参照回路と 一 致 す る 。 この フ ア ル タ は ウェ ー ブ デ ィ ジタ ル フ ア ル 夕(WDF)と 呼ばれ る。 この関 係を複 素 系 に 拡 張 す る際 の 参 照 回 路 にっ い て 論 じ ると と も に ,WDFの 概念と その複 素拡 張の特 徴を述 べ る 。

  第5章 で は , 梯 子 形 複 素WDFの 構 造 の簡 単 化 お よ び 受動 性 の 確 保 にっ い て 論 じ ,提 案 し た

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は持続的な寄生振 動が発生するなど,致命的な問題が生じ得る。しかしWDF‑では入反射波の フ口一を参照回路から継承することにより数値化された電力(疑似電力)を考えることができ,

係数語長の制限による影響が疑似電カの散逸として反映される構造を用いるならば,語長制限後 も安定性を確保できる。

  両側抵抗終端の梯子形無損失回路は,代表的な周波数選択特性の設計公式が多く知られ,この 構造を継承する実WDFは係数語長を制限しても無損失性を保つ。これは参照回路の素子値の パラメ一夕数と,ウェーブディデタルフィルタで独立に語長制限される乗算器係数の個数とが一 致し,かつ両者が線形な関係を保っているために,語長制限による特性への影響が回路における 無損失素子の偏差 と同一視できることによる。しかし複素の梯子形WDFでは,複素乗算器が 実乗算器の組み合わせで構成されているために独立に語長制限される乗算器係数が増加してしま い,回路の無損失性が継承されなくなる。そこでシグナルフローの構成に配慮し,乗算器を節減 して構成の経済性を高めるとともに,少なくとも疑似電カの散逸を含む純受動系としての実現が 可能であることを示し,安定性の保証を与える。

  第6章では複素ウェ―ブディジタルフアルタの具体的な実現例を示し,4章および5章の議論 の妥当性を確認する。

  第7章ではこれまでの章を総括し,本研究の成果を要約する。また本研究に残された課題につ いて述べる。

  本研究の目的である複素非対称特性の設計と回路的ディジタル実現にっいて,周波数変換にも とづく実用的な設計法を導き,さらにこの変換をシグナルフローに対して安定に適用できるディ ジ タ ル フ ア ル タ の 存 在 を 示 す と と も に , そ の 構 造 の 簡 単 化 を 行 う こ と が で き た 。

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学位論文審査の要旨

  電 気信号 の記録 ・再生 ・伝 送では ,通信 路や記 録媒 体を有 効に利 用する ために信号の姿態をさ まざ まに 加工す る装置 が必須 であ り,こ れをフ ィルタ という 。特 に実部 信号と 虚部信号の対を用 いる もの を複素 フィル タと呼 び, ディジ タルフ アルタ では信 号を 数値化 するた め複素化が特に容 易で ある 。複素 フアル タは可 変特 性の実 現,多 次元処 理,信 号の 帯域を 変換す る変調操作,など に適 して いる。

  フ イルタ 設計で は,基 準フ アルタ の特性 を周波 数軸 上で写 像して 所望の フアルタを導く手法が 広く 用い られ, 周波数 変換と 呼ば れる。 従来の 複素フ アルタ では 実の特 性を周 波数シフトする変 換が 広く 用いら れてき た。し かし 零周波数に関して対称な実の特性を平行移動するだけナょので,

得ら れる 特性が 中心対 称な帯 域特 性に限 られて しまう 。本研 究で は,こ の制約 を取り払って複素 非対 称特 性のた めの周 波数変 換を 導き, 回路論 的な見 地から ,提 案した 変換の 数値安定かつ経済 的 な 一 実現 法 を 明 ら か にし て いる。 本論文 は緒論 以下 の7章 より 構成さ れてい る。次 に2章以下 の概 要を 記す。

  第2章 では, 複素 フィル タと解 析信号 にっい て以 後必要 となる 事項が 準備 されて いる。 解析記 号は 正周 波数成 分のみ の複素 信号 である 。実信 号の正 周波数 成分 を抽出 すれど 同等の情報をもつ 解析 信号 に変換 できる 。また 解析 信号の 実部を とれば 対応す る実 信号が 得られ る。このような変 換に より 実信号 システ ムの中 で複 素フア ルタを 自由に 活用で きる 。また 解析信 号と一般の負周波 数成 分を 有する 複素信 号とを 比較 し,必 要な帯 域や複 素フィ ルタ の設計 との関 連でそれぞれの得 失を 述ベ ,両者 の相互 変換に っい ても論 じてい る。

夫 彦

彦 次

精 吉

井 藤

川 内

伊 小

授 授

授 授

   

   

教 教

教 救

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  全ての 周波数 で減 衰のな い周波 数関数 をオー ルパ ス関数 といい ,ディ ジタルフィルタの周波数 変換は 一般に ,もと の関数 の遅 延演算 を適用 なオー ルパ ス関数 に置換 して実 現される。しかし変 換を周 波数関 数に対 してで なく ,シグ ナルフ ローの 遅延 器をオ ールパ ス関数 のフ口ーに置換する 方法で 行うと ,特別 な場合 を除 き計算 不能に なる。 これ に対し アナ口 グの無 損失回路では,無損 失素子 を適当 な無損 失回路 で置 換する 操作と して変 換を 実現で き,周 波数関 数に立ち戻る必要が なぃ。 適当な 構造の 実の無 損失 等長分 布定数 回路を 参照 し,電 カと関 連付け られた入反射波の散 乱過程 とみな して模 擬を行 えば ,回路 的な構 造を継 承し たディ ジタル フアル タが導出され,演算 による 誤差を 除けば その周 波数 特性は 参照回 路と一 致す る。こ のフア ルタは ウェーブディジタル フ ィ ル タ(WDF)と 呼 ば れ て い る 。第4章 で は 前章 の 変 換 と 等価 な 変 換 を 複素 分 布 定 数 回 路に おい て 表 現 し ,こ の 回 路 とWDFと の 構 造的 な 対 応 が 可能 で あ る こ とを 示 す こ と によ り , 非 対 称 特 性 の 複 素 デ ィ ジ タ ル フ ィ ル タ を 構 造 に 基 づ く 周 波 数 変 換 に よ っ て 導 出 し て い る 。   第5章 で は , 梯 子 形 複 素WDFの構 造 の 簡 単 化お よ び 受 動 性の 確 保 に っ いて 論 じ , 提 案 した 周波数 変換が シグナ ルフ口 ーの 変更と しても 数値的 に安 定に実 現でき ること を示している。ディ ジタル フィル タは実 現精度 が乗 算器係 数の語 長によ って 限られ ており ,帰還 路をもつフアルタで tま, 本来 は安定 となる 伝達関 数の極 が語 長制限 により 移動して安定性を失うなど致命的な問題が 生じ 得 る 。 し かしWDFでは 入 反 射 波 の フ口 一 を 参 照 回路 か ら 継 承 する こ と に よ り数 値 化 さ れ た電力 (疑似 電力) を考え るこ とがで き,係 数語長 の制 限によ る影響 が疑似 電カの散逸として反 映され る構造 を用い るなら ば, 語長制 限後も 安定性 を確 保でき る。さ らにシ グナルフローの構成 に 配 慮 す る こ と に よ り , 乗 算 器 を 節 減 し て 構 成 の 経 済 性 を 高 め て い る 。   第6章で は複素 ウェ ーブデ ィジタ ルフア ルタ の実現 例を示 し,提 案した 設計 法の妥 当性を 確認 してい る。

  第 7章 で は 本 研 究 の 成 果 が 要 約 さ れ , 残 さ れ た 課 題 が 述 べ ら れ て い る 。   以上の ように 本論 文では ,今日 的な信号処理の重要な基盤であるディジタルフアルタにっいて,

周波数 変換に よる複 索非対 称特 性の組織的な丶設計法を確立し,かっこれを安定に実現する実用的 な構造 を導出 してお り,デ ィジ タル信 号処理 と電子 工学 に対し て寄与 すると ころ大なるものがあ る 。 よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 に 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

参照

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