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博士(医学)稲葉秀一 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)稲葉秀一 学位論文題名

慢性 閉塞性肺 疾患にお ける呼吸の行動調節とそれに及ぼす      内因性オ ピオイド の影響

学位論文内容の要旨

I  研 究 目 的

  近 年、 呼吸困 難の 機序 と関 連し て呼 吸器疾患における行動調節系の重要性が認 識さ れて いるが 、本 調節 系の 評価 方法 はいまだ確立されていない。また、内因性 オピ オイ ドある いは オピ オイ ドレ セプ ターは、脳幹などに多く存在することから 呼吸 調節 系に関 与す るこ とが 推察 され ているものの、行動調節系における意義は 不明 であ る。本 研究 では 、慢 性閉 塞性 肺疾患(肺気腫及び慢性気管支炎、以下Co PDと 略す )患者 の呼 吸の 行動 調節 系を 吸気抵抗感知閾値と換気畳感知能カを指標 に解 析し た。さ らに それ に及 ぽす 内因 性オピオイドの役割にっいて、拮抗薬であ る塩 酸ナ ロキソ ンを 用い て検 討し た。

H  対 象 お よ び 方 法

  研究1) 吸気 抵抗感 知闘 値お よび 換気 量感 知能 力: 対象 は当 科に入院中の安定 期 のCOPD患 者20名 (33歳 〜76歳 ) で あ る 。 呼吸 困難 の程 度はFletcher−Hugh‑

Jonesの基準(以下H−J)を用い、対象患者を呼吸困難の弱い群くH−JI゜、亜゜)

及 び 強 い 群 くH−Jm° 、W° 、V゜)に 分 け た 。 吸 気 抵 抗 感 知 岡 値 は 、 安 静 呼 吸時に、J−バルブ吸気側に0. 30から6.gOcmH20/L/Oecく気流量0.5 L/sec)の範囲 で14段 階 に 可 変 性 の 抵 抗 を4か ら5呼 吸 に1回 負 荷 し 、 試 行 回 数 の50%以 上 感 知 可 能な 最小 負荷 抵抗 △R(cmH20/L /sec)、その時の口腔内圧P(Cm20)を閥値の指

(2)

標と し た 。△RはWeberの 法 則が 成 り立 っ と 考え て 、気 道 抵 抗と 装 置 の抵抗 の和

(Ro)に対する比△R/Ro(Weber fraction)として‐評価した。△R/RoおよびPは対 数 変 換 後 に ほ ぼ 正 規 分 布 す る の でIn△R/Roお よ びInPと し て 解 析 し た 。 換 気 量感 知 能 カは 、炭酸ガ スを吸入 気に加え ることに より生じ た換気量増 加に基づ く 息切 れ の 程度 をhandgripの握 り の距 離 を 定量化 し、Gf(%) として求 めた。被験 者は 、 高 炭酸 ガ ス換 気 応 答測 定 時にhandgripを 持 っ。 空 気呼 吸 時 では 換気量 は ほ ぽ 一 定 で 息 切 れ は 殆 ど感 じ て いずh8ndgripは 握ら れ てい な い(Gf0%) 。被 験 者 が 最 大 に 息 切 れ を 感 じ た 時 のhandgripの 握 り の 距 離 をGfl00%と し 、そ の 時 々で 感 じ た息 切 れの 程 度 に応 じ てhandgripの 握 り の距 離 を加 減 し ても らった 。 炭酸 ガ ス を負 荷 する こ と によ り 分時 換 気 量くVE)、吸 気 開 始0.1秒 後 の口腔 内圧 くPo.1) は 増加 す る 。呼 気 終 末炭 酸 ガス 分 圧(PttTC02)が50mmHgの時点で のGf お よ び 虹 、 Po.1を 求 め た 。GfとVE及 びGfとPo.1と の 関 係 は 、 ほ ぼ 直 線 性がある ことより 、Gf/VE、Gf/Po.1とし て評価した 。

  研 究2) 内因 性 オピ オ イ ド拮 抗 薬く ナ ロ キソン) の吸気抵 抗感知闘値 および換 気量 感 知 能カ に 及ぼ す 影 響: 対 象は 、 前 述のCOPD患 者よ り 無 作為 に 抽出 した16 名で あ る 。生 理食塩水 静注によ る対照試 験と本試 験くナロ キソン静注 )とを二 重 盲 検crossーover法 に よ り1週 間以 内 に2日に わ け 行な っ た。 生 理 食塩 水10mlを 注射 後 直 ちに 粘 性抵 抗 感 知閾 値 、高 炭 酸 ガス 換 気応 答 お よびGf/VE、Gf/Po.1を 求めた。30分の安静後、内因性オピオイド拮抗薬であるナロキソン(2mg、10ml)ま たはプラ シ―ボ( 生理食塩 水、10ml)を投与 し、再度 上記項目 にっいて測定した。

成績 の 解 析に っ いて は 、 二群 間 の比 較 はunpaired七testを 用 い、 ナ ロ キソン投 与前 後 の 比較 はpaired七testを 用い 、 危険 率が5% 以下の場 合には有 意とした。

m結 果

(1)吸 気抵抗感 知闘値およ び換気量 感知能力 :呼吸困難の強い群と弱い群で吸気 抵 抗感 知 闘値 の 平 均値 を 比較 す る と、 強 い 群は 有 意に高 値であっ た(△R/Ro: O. 63士0.18SD VS 0.37士O.18、Pく0.05、P:1.03土0.23crrrH20 VS0.65土0.27、P くO. 05)。また、換気量の増加によって生じる息切れの程度は、Gf/VE平均値には

(3)

両 群 間 で 有 意 差 は な か っ た が 、Gf/Po.1平 均 値 で は 、 呼 吸 困 難 の 強 い 群 は 弱 い 群 に 較 べ て有 意に 低か った (Gf/Po.1:3.5士2.55%/cnrH20 VS7.74土3.7、Pく0.05

) . (2) 吸 気 抵 抗 感 知 閾 値 お よ び換 気 量感 知能 カに およ ぼす ナロ キソ ンの 影響 :吸 気 抵 抗 感 知 閾 値 は 、 △R/Roで み て もPで み て も プ ラ シ ― ボ 投 与 後 と ナ ロ キ ソ ン 投 与 後 に お い て は 有 意 な 変 化 を 示 さ な か っ た 。 し か し 、 換 気 量 の 増 加 に よ っ て 生 じ る 息 切 れの 感知 能カ は、Gf/VEは有 意に 増加 し(0.76士0.57 VS1.38土0.62、Pく0

. 01)、Gf/Po.1も16名中11名で増え、増加傾向(4.05士3.01  VS6.56土4.92、0.05 くPくO.1)を示した。

1V考 案

  COPD患 者 の 安 定 期 に お い て 、 呼 吸 困 難 の 強 い 群 (H−Jm° 〜V゜ )は 弱い 群(H−J I゜ 〜H° ) に 較 べ て 吸 気 抵 抗 感 知 闘 値 は 高 く 、 換 気 量 感 知 能 カ が 低 い こ と が 推 定 さ れ た 。 っ ま り 、 慢 性 の 呼 吸 困 難 の あ るCOPD患 者 に お い て は 、 吸 気 時 に 粘 性 抵 抗 を 負 荷 し て も そ れ を 感 知 す る 能 カ は 鈍 く 、 ま た 換 気 量 が 増 加 す る こ と に よ り 生 じ る 呼 吸 困 難 感 は あ ま り 強 く 感 じ な い こ と を 意 味 し て い る 。 さ ら に 、 ナ ロ キ ソ ン 投 与 後 は 換 気 量 増 加 に 対 す る 感 知 能 カ が 増 加 し た こ と よ り 、 内 因 性 オ ピ オ イ ド が 呼 吸 困 難 と い う 自 覚 症 状 に 関 与 し て い る こ と も 推 定 さ れ た 。 本 研 究 は 、 吸 気 抵 抗 感 知 闘 値 に っ い て は 過 去 の 報 告 と 一 致 す る が 、 換 気 量 の 増 加 に 対 す る 感 知 能 カ を COPD患 者 で 検 討 し た 報 告 は こ れ ま で 見 当 ら な い 。 ま た 、 内 因 性 オ ピ オ イ ド の 呼 吸 の 行 動 調 節 系 に 対 す る 検 討 も 初 め て で あ る 。 換 気 量 感 知 能 カ で 肺 ・ 胸 郭 系 の performanceに 対 す る 脳 の 感 知 能 力 (Gf/VE) に は 両 群 間 に 有 意 差 を 認 め ず 、 呼 吸 中 枢 の 出 カ に 対 す る 脳 の 感 知 能 力 (Gf/Po.1) に 有 意 差 を 認 め た こと は、 呼吸 困難 を 感 じ る 機 序 と し て 、 @ 呼 吸 中 枢 が 刺 激 を う け 末 梢 受 容 器 を 刺 激 し て 換 気 畳 を 増 加 、 再 び 求 心 的 刺 激 が 呼 吸 中 枢 あ る い は 大 脳 に 達 し て 呼 吸 困 難 と し て 感 じ る 、 @ 呼 吸 中 枢 が 刺 激 を 受 け 直 接 脳 幹 ・ 大 脳 に 達 し て 呼 吸 困 難 と し て 感 じ る 、 の2っ が 推 定 さ れ る 。 吸 気 抵 抗 は 粘 性 抵 抗 負 荷 に よ り 生 じ た 圧 変 化 に よ り 感 知 さ れ る と 推 定 さ れ て い る 。 ナ ロ キ ソ ン 投 与 に よ り 吸 気 抵 抗 感 知 闘 値 に は 変 化 が な く 、Gf/VE、 Gf/Po.1い ず れ の 指 標 も 増 加 し た こ と は 、 内 因 性 オ ピ オ イ ド は 末 梢 化 学 受 容 器 、

(4)

機械 受容 器に は関 与せ ず高位中枢に直接働き、呼吸困難感を軽減する機序のーつ

とし て働 いて いる こと が推 定さ れた 。

V結 語

(1) 呼吸 困難 の強 いCOPD群は弱い群に較べて吸気抵抗感知闘値は有意に高く、換 気量感知能カは有意に低かった。

(2)ナロキソン前投与により、吸気抵抗感知闘値は有意顔変化を示さなかったが、

換気量感知能カは有意に増強した。

(3) 以上 の結 果はCOPD患者において内因性オピオイドは、換気量感知能カの低下 を介して呼吸困難感を軽減していることを示している。

(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

慢 性閉塞 性肺疾患 における呼吸の行動調節とそれに及ぼす      内因 性オピオ イドの 影響

    研究 目的

  呼 吸 困 難 の 機 序 と 関 連 して 呼 吸器 疾 患 にお け る行 動 調 節系 の 重要 性 が 認識 さ れ て い る 。 ま た 、 内 因 性 オ ピオ イ ド ある い は オピ オ イド レ セ プタ ー が、 脳 幹 など に 多 く 存 在 す る こ と か ら 呼 吸調 節 系 にも 関 与 する こ とが 推 察 され て いる も の の、 行 動 調 節 系 に お け る 意 義 は 不明 で あ る。 本 研 究で は 、慢 性 閉 塞性 肺 疾患 ( 以 下COPD と 略 す ) 患 者 の 呼 吸 の 行 動調 節 系 を吸 気 抵 抗感 知 閾値 と 換 気量 感 知能 カ を 指標 に 解 析 し た 。 さ ら に そ れ に 及ば す 内 因性 オ ピ オイ ド の役 割 に つい て 、塩 酸 ナ ロキ ソ ンを 用いて検討 した。

    対象 と方法

  研 究1) 吸 気 抵 抗 感 知 閾 値 お よ び 換 気 量 感 知 能 力 : 対 象は 北 大第 一 内 科に 入 院 中 のCOPD患 者20名 (33歳 〜76歳 ) であ る 。Fletcher一Hugh―Jonesの 基準(以 下H一 J)を 用い、対象 患者を呼 吸困難の 弱い群(H―JI゜、H° )と強い 群(H―Jm°、1V゜

、V゜ ) に 大 別 し た 。 吸 気 抵 抗 感 知 閾 値 は 、 感 知 可 能 な 最 小 負 荷 抵 抗 △Rと そ の 時 の 口 腔 内 圧Pを 指 標 と し た 。 換 気 量 感 知 能 カ は 、 炭 酸 ガ スを 吸 入気 に 加 える こ と に よ り 生 じ た 換 気 量 増 加に も と ずく 息 切 れの 程 度をhandgripの 握り の 距 離を 定 量 化しGf(% ) と して 求 めた 。 呼 気終 末 炭酸 ガス 分圧が50mmHgの 時点でのGf、分時 換 気 量 マE、 吸 気 運 動 開 始0.1秒 後 の 口 腔 内 圧Po.1を 求 め 、Gf/VE、Gf/Po.1を 指 標 と し た 。Gf/ヤEは 肺 ・胸 郭 系のperf ormanceに 対す る 感 知能 カ の 割合 を 示し 、 Gf/Po.1は 呼 吸 中 枢 の 出 カ に 対 す る 感 知 能 カ の 割 合 を 示 し て い る 。   研 究2) 吸 気 抵 抗 感 知 閾 値 お よ び 換 気 量 感 知 能 カ に お よば す ナロ キ ソ ンの 影 響

: 研 究1のCOPD患 者 よ り 無 作 為 に 選 ん だ16名 を 対 象 と し た 。 生理 食 塩水 静 注 によ る 対照 試 験 とナ ロ キ ソン 静 注に よ る 本試 験 とを 、 二 重盲 検cross−over法に より行 な っ た 。 生 理 食 塩 水10mlを 注 射 後 、 直 ち に 研 究1と 同 じ指 標 を 同じ 方 法に よ り 求 め まし た 。30分 の 安静 後 、塩 酸 ナ ロキ ソ ン2mg、10mlま たは プ ラシ ー ボ であ る生理 食塩 水10mlを投与し 、再度同 じ項目に ついて測 定した。

‑ 135

和 修康 義    富 上物 山 川劔 小 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(6)

    結果

  呼 吸困 難 の 強い 群 と弱 い 群 で吸 気 抵抗 感 知 閾値 の 平 均値 を 比較 す ると、 強い群 は有意に高値であった(△R/Ro:O.63土O.18SD VS 0.37土O.18、PくO.05、P:1.03 土O.23cmH20 VSO.65土O.27、PくO.05)。また、 換気量感知 能カは、 感知能カ と perf ormanceの 比 に は有 意 差は 認 め なか っ たが 、 感 知能 カ と呼 吸 中 枢の出カ との 比 の 平 均値 で は 、呼 吸 困難 の 強 い群 は 弱い群 に較ベ有 意に低値 であった (Gf/Po.1

:3.5土2.55%/cmH20 VS7.74土3.7、PくO.05)。

  次 に、 プ ラ シ― ボ 投与 後 と ナロ キ ソン 投 与 後に お い て吸 気 抵抗 感 知闇値 は有意 な 変 化 を示 さ な かっ た 。し か し 、換 気 量感 知 能 カはGf/VEは 有 意に 増 加し(0.76 土0.57%/L/min VS1.38土O.62、PくO.Ol)、Gf/Po.1も16名 中11名で増え 、増加 傾向を示した(O,05くPく0.1)。

    考案および結語

  COPD患 者に お ぃ て、 呼 吸困 難 の 強い 群 は弱 い 群 に較 ベ 吸気 抵 抗 感知 閾値は有 意 に 高 く 、換 気 量 感知 能 カは 有 意 に低 か った 。 さ らに 、 ナロ キ ソ ン前 投与 により、

吸 気 抵 抗感 知 閾 値は 有 意な 変 化 を示 さ なか っ た が、 換 気量 感 知 能カ は有 意に増強 し た 。 以上 よ りCOPD患 者 に おぃ て 、 内因 性 オピ オ イ ドは 換 気量 感 知 能カの低 下を 介 し て 呼 吸 困 難 感 を 軽 減 し て い る こ と を 示 し て い る と 推 察 さ れ た 。   ナ ロキ ソ ン の投 与 によ り 吸 気抵 抗 感知 閾 値 には 有 意 差を 認 めな ぃ のに対 し、換 気 量 感 知能 カ が 有意 に 増加 し た 理由 と して 、 吸 気抵 抗 感知 閾 値 は安 静呼 吸時に測 定 さ れ る指 標 で 、そ の 闇値 に は 機械 受 容器 の 働 きが 主 に関 与 し てい る。 一方、換 気 量 感 知能 カ は 換気 量 が増 加 し てい る とい う ス 卜レ ス 負荷 時 に 測定 され る指標で 息 切 れ の程 度 を 比で あ らわ し てI、 るこ とより 、大脳の 感知能カ が大きく 関与して い る 。 オピ オ イ ドレ セ プタ ー の 多く は 脳幹 に 存 在し て いる こ と より 、ナ ロキソン は 直 接 高 位 中 枢 に 働 い て い る こ と が 推 定 さ れ 感 知能 カ が 増加 し たと 思 わ れる 。   COPD患 者で 換 気 量の 増 加に 対 す る感 知 能カ を 検 討し た 報告 は こ れま で見当ら な い 。 ま た、 内 因 性オ ピ オイ ド の 呼吸 の 行動 調 節 系に 対 する 研 究 も初 めて である。

よ っ て 、 本 研 究 は 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 論 文 と し て 妥 当 な も の と 判 断 さ れ る 。

参照

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