博 士 ( 獣 医 学 )水 野豊 香 学 位 論 文 題 名
ウ マ の 間 歇 的 陽 圧 換 気 ( IPPV ) 法 を 応 用 し た 吸 入 麻 酔 に お け る 循 環 系 の 管 理 に 関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ウマ の吸 入麻酔 にお いて は問歇 的陽 圧換 気(
IPPV)法による呼吸管 理 が 有 用 と さ れ て いる が、循 環系 は麻 酔薬 の直接 作用 の他 に、こ の 呼 吸 法 お よ び 保 定 体位 によっ ても 抑制 され ること が知 られ ている 。 循 環 系 の 抑 制 は 麻 酔後 の筋変 性に よる 起立 不全の 発症 原因 とされ 、 ウ マ の 麻 酔 事 故 の 重要 な要因 のー っに 挙げ られて いる 。し かし、 循 環 系 の 管 理 方 法 は 十分 に確立 され たと いえ なぃの が現 状で ある。 そ こ で 、 本 研 究 に お いは
IPPV法 を応 用し た側 臥なら びに 仰臥 姿勢の 吸 入 麻 酔 に お け る 循 環 系 の 抑 制 に 対 す る 改 善 方 法 を 検 討 し た 。
ま ず 、 心 拍 出 量 の測 定法で ある 熱希 釈法 のウマ にお ける 有用性 を 検 討 す る た め に 、 ハロ セン麻 酔下 にお いて 本法と 色素 希釈 法およ び パ ル ス ド プ ラ 心 エ コ 一 法を 比 較 し た 。 熱 希 釈 法 は 他の2 法 と有意 な 相 関 が 認 め ら れ 、 本研 究を遂 行す るう えで 有用な 方法 であ ること が わ か っ た 。 次 に 、
IPPV法の吸 気終 末の 気道 内圧( 最大 吸気 圧)の 循 環 系 に 及 ぼ す 影 響 を検 討する ため に、 側臥 姿勢ハ ロセ ン麻 酔下に お い て 自 発 呼 吸 群 、
IPPV法を応 用し た最 大吸 気圧20 およ び25 cmH20 の 調 節 呼 吸 群 の 心 拍 出量 などを 比較 した 。心 拍出量 の低 下の 程度は 最
.大吸気圧の増加により増強されることが明らかとナょり、ハロセン麻
酔 下で のI‑PPV 法の 応用に おい ては 心拍 出量の 低下 を改善する必要の
あることが示唆された。
そこで、吸入麻酔薬にイソフルレンを用いたIPPV 応用下での側臥 姿勢麻酔において心拍出量および尿量などの変化を観察した。心拍 出量は最低値50 .ImZ/kg/min (麻酔前値の65 %)まで経時的に低下し たが、尿量は1 .5 〜3 .5mE/kg/hr の範囲で維持された。これらのこと から、
IPPV法の応用によっても心拍出量は尿量を維持しうる範囲内 にとどまったものと推察され、イソフルレンの有用性が明らかとな った。さらに、側臥姿勢に比較して循環系の抑制が増強されるとい われる仰臥姿勢において、イソフルレン麻酔下でのドブタミンの投 与効果を検討した。平均0 . 86 土0 .30 ロg/kg/min のドブタミン投与に より、平均動脈圧は65 .4 〜
71. 7mmHg、心拍出量は麻酔前値あるいは それ以上の値、尿量は1 .
4〜4 .2ml/kg/hr に維持され、本薬剤の有用 性が明らかとなった。
以上のことから、本研究において検討された麻酔管理法、すなわ
ち、IPPV 法を応用したイソフルレン麻酔下でのドブタミンの投与は
呼吸および循環系の恒常性を維持することが可能であり、ウマにお
ける側臥ナょらびに仰臥姿勢の吸入麻酔の安全性をさらに向上させう
る方法であると考えられた。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 藤 永 徹 副 査 教 授 菅 野 富 夫 副 査 教 授 中 里 幸 和 副査 助教授 萩尾光美
学 位 論 文 題 名
ウ マ の 間 歇 的 陽 圧 換 気 (IPPV ) 法 を 応 用 し た 吸 入麻 酔 における循環系の管理に関する研究
ウ マの 吸 入麻 酔 に おい て はIPPV法によ る呼吸管 理法が有 用とされ ているが ,循 環 系 は 麻酔 薬 の直 接 作 用の 他 に, このIPPV法お よぴ保定 体位によ っても抑 制され る . 申 請者 は ウマ にIPPV法 を応 用した 吸入麻酔 における 循環系の 抑制に対 する改 善 方 法 を 検 討 し , 次 の よ う ナ ょ 安 全 な 循 環 管 理 法 を 確 立 し た ・ ま ず,心拍 出量の測 定法である 熱希釈法 のウマに おける有用性を検討するため,
ハ ロ セ ン麻 酔 下に お い て本 法 と色 素法およ びパルス ドプラ心 エコー法 を比較し,
一 部 改 良を 加 えた 熱 希 釈法 が 他の2法 と 有 意な 相 関を 有 す るこ とを確 認し,本研 究 の 遂 行 の う え で 有 用 な 循 環 系 の 観 察 法 で あ る こ と を 明 ら か に し た . っ ぎに ,IPPV法の 最 大 吸気 圧 が循環系 に及ぼす 影響を検 討するた め,側臥 姿勢 ハ ロ セン麻酔 下における 自発呼吸 群,IPPV法を 応用した 最大吸気 圧20crH20およぴ 25CIH20の調 節呼吸群 の心拍出量 等を比較 した.そ の結果, 心拍出量 の低下の 程度 は 最 大 吸気 圧 の増 加 に よっ て 増強 されるこ とを認め ,ハロセ ン麻酔下 でのIPPV法 応 用 の 際 に は 心 拍 出 畳 低 下 の 改 善 策 を 要 す る こ と を 明 ら か に し た . そ こで,吸 入麻酔薬 としてイソ フルレン を用いて 検討し,IPPV法応用下側臥姿勢 で の心拍出 量は麻酔 前値の65:l;まで経時的に低下したものの,尿畳は正常値範囲内 で 維持され ,側臥姿 勢における イソフル レンの有 効性を明らかにした.ついで,循 環 系 の 抑制 が さら に 強 い仰 臥 姿勢 において ,イソフ ルレン麻 酔下での ドブタミン の 投与効果 を検討し ,約0.86彫g/Kg/minのドブタミン投与によって,動脈圧,心拍 出 量 お よ び 尿 量 と も に 満 足 し 得 る 範 囲 内 に 維 持 で き る こ と を 明 ら か に し た.
以 上の と おり , 本 研究 で 確立 され たウマのIPPV法応用下 の吸入麻 酔におけ る循 環 管 理 法は , ウマ に お ける 側 臥詮 らぴに仰 臥姿勢の 何れにお いても安 全性をさら に 向 上 させ 得 る麻 酔 管 理法 で ある と判断さ れた.よ って,審 査員一同 は水野豊香 氏 が 博 士 ( 獣 医 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た .