博士(医学)藤田光江 学位論文題名
小児慢性反復性頭痛の研究 学位論文内容の要旨
第1編 : 国 際 頭 痛 学 会 に よ る 頭 痛 分 類 の 小 児 へ の 適 用 と 小 児 期 の 頭 痛 に つ い て 対 象 は,1987年4月 から1989年3月 までの2年 間に,筑 波学園病 院を慢性 反復性頭 痛 を主訴に 受診した2歳から15歳(9.81土3.09歳)の 小児228例( 男90例,女138例)であ る. こ の228例 に つ いて, 国際頭痛 学会によ る頭痛の 分類及び 診断基準 を用いて診 断 し,各病 型の臨床 的特徴及 びこの新 しい分類 の小児へ の適用を検 討した. 検討に際し てはこの 頭痛の新 分類に基 づぃて作 成した質 問票を用 いた.脳波 検査(頭 痛間欠期)
は217例 に 施行 し , 頭蓋 内 占拠 性 病 変が 疑 われ た114例に は頭部CTを 行った. 研究結 果の有意差の検定にはズ2検定を用いた.
1.病型別症例数
228例 中, 片 頭 痛は115例(50% ) ,緊 張 型頭 痛 は43例 (19%), 両者の合 併は5例
(2%), 非血管性 頭蓋内疾 患に伴う 頭痛は5例 (2%)(高髄液圧水頭症,松果体腫,
髄芽 腫 , くも 膜 下 嚢胞 ,中胚葉 性嚢胞各1例),顔 面・頭蓋 組織に起 因する頭痛 ある いは顔面 痛は4例(2%)(冨u鼻腔炎2例 ,好酸球 性肉芽腫,屈折異常各1例),分類で きな い 頭 痛は56例(25%) であった ,片頭痛115例中,前 兆を伴わ ない片頭 痛は43例 (37% ) , 前兆 を 伴 う片 頭 病は29例(25% )( 典 型 的前兆を 伴う片頭 痛12例,脳 底型 片頭 痛17例 ) で あっ た. 緊張型頭 痛43例中, 反復発作 性緊張型 頭痛は29例(67%),
慢性 緊 張 型頭 痛13例 (30% )であっ た.慢性 反復性頭 痛228例の性 別では, 男90例,
女138例で, 女児が有 意に多く(pく0.01),病型別男女比をみると,片頭痛及ぴ分類で きない頭痛では女児が有意に多かった(pく0. 01)が,その他の病型では男女間に有意 差はなかった.
2.各病型の臨床的特徴
病 型 別頭 痛 の 片側 性を みると, 頭病が常 に片側性 であった ものは, 片頭痛115例中 57例(50%)で あり,緊 張型頭痛 の43例中の6例(14%) と分類で きな い頭 痛56例中 の14例(25%)とに比して有意に多かった(pく0.01).
病型別の 頭痛の部 位では, 片頭痛に おいては 前頭部と 側頭部が他 の部位に 比し有意 に多かったが(pく0. 01),片頭病以外の病型では有意な頭痛の部位はなかった.病型 間の頭痛 の部位を 比較する と,緊張 型頭痛で は,後頭 部,項部痛 が片頭痛 と分類でき ない頭痛とに比し有意に多かった(pく0. 01).また,側頭部痛が,片頭痛では緊張型 頭痛と分類できない頭痛とに比し有意に多かった(pく0.01).
病型別頭 痛の性質 をみると ,片頭痛 では,拍 動性頭痛 (ズキンズ キンする 頭痛)が 鈍痛(圧迫され締め付けられるような頭痛)に比し有意に多かった(pくO. 01).一方,
緊張型頭 痛では, 鈍痛が拍 動性頭痛 に比し有 意に多かった(pくO.01).病型間の頭痛 の性質を 比較する と,拍動 性頭痛に おいては ,片頭痛 は緊張型頭 痛と分類 できない頭 痛とに比し有意に多かった(pく0. 01).病型別頭痛の回数に関しては,頭痛の回数が 月に4回 以 上 のも の が, 片頭痛で は,緊張 型頭痛と 分類でき ない頭痛 とに比し有 意に 多かった(pく0. 01).頭痛がほぼ持続的なものは,緊張型頭痛では,片頭痛と分類で
きない 頭痛とに 比し有意に 多かった(pく0.01).228例中,頭痛の回数,持続時間にお い て不 明 と答 え た もの は それ ぞれ33例,107例であり ,頭痛の 新分類の 診断基準 が小 児に適 用される ためには, 回数,持続時間の点で改定が必要であることが示唆された.
病型別 頭痛の随 伴症状にお いては, 悪心,嘔 吐は,片 頭痛が, 緊張型頭 痛と分類で きない 頭痛とに 比し有意に 多かった(pくO. 01).また,頭痛後の睡眠は,片頭痛が緊 張型頭痛に比し有意に多かった(pく0.01).
頭 痛 の家 族 歴 をみ る と ,慢性 反復性頭 痛228例中, 両親,同 胞のいず れかに頭 痛が み られ る もの は , 片頭 痛 では115例 中75例 (65%) で , 緊張型頭 痛43例中の17例(40
%)(pく0.05),分類 できない頭 痛56例中の21例(37%)(pくO.01)に比し有意に多 かった .頭痛の 家族歴のあ る片頭痛75例中,母 親に片頭 痛がみら れたもの は52例(70
%)であり,父親の19例(25%),同胞の4例(5%)に比し有意に多かった(pくO.01).
脳 波 検査 ( 頭 痛間 欠 期 )を施 行した217例 中80例(37% )に,突 発性異常 波がみら れ ,内 訳 はて ん か ん波 が76例(95%) , 突 発性 徐 波が3例 (4%) ,両者の 合併が1例
(1%) であった .病型別で は,分類 できない 頭痛にお いては56例中39例(70%),に 突 発性 異 常波 が み られ , 片頭 痛12例中の36例(32%) ,緊張型 頭痛37例中 の4例(11
%)に比し有意に多く(pく0. 01),このことから分類できない頭痛の中にてんかん性 頭痛の存在が示唆された.
第 2編 : て ん か ん 性 頭 痛 の 診 断 に お け る 頭 痛 時 脳 波 の 意 義 に つ い て 第1編 で,小児 の慢性反 復性頭痛 においては 脳波検査 (頭部間欠期)上,突発性異常 波 を示すも のが多く ,分類で きない頭痛 にてんか ん性頭痛 の存在が 示唆され るとの結 果 を得た. 本編では ,頭痛時 脳波を施行 し,その 特徴及び 診断的意 義を明ら かにし,
併せててんかん性頭痛の診断基準を検討した.
対象 は , 第1編 の 研 究期 間 を6ケ月 延 長 し,1987年4月 から1989年9月ま でに慢性 反 復 性頭痛を 訴えて筑 波学園病 院を受診し た244例中, 頭痛時脳 波を施行 した61例(4歳 から15歳:9. 52土2.91歳)で ある.こ の61例におけ る頭痛時の脳波異常の有無と,
Swaimanらのてんかん´陸頭痛の10項目の特徴との関係を検討し,.てんかん´陸頭痛の診 断 基 準 を 作 成 し た . 研 究 結 果 の 有 意 差 の 検 定 に は X2検 定 を 用 い た ・ 頭痛 時に脳波 が施行さ れた61例中18例(30%)に 脳波異常がみられた. 18例の頭痛 の 病 型別 症 例数 を み ると , 片 頭痛34例 中 の8例(24% ) に比 し, 分類でき ない頭痛 で は13例 中10例(77%) と脳波異 常を示し たものが多 かった(pく0.01).頭痛時に脳波 異 常がみら れた18例中 ,てんか ん波が11例, 突発性異 常波が2例 ,両者の 合併が4例 , 基 礎 律動 の 著し い 徐 波化 が1例 であった .突発性 異常波( てんかん 波,突発 性徐波)
が みられた17例では, 焦点性棘 波7例,焦点 性棘徐波 複合3例, 広汎性不 規則棘徐 波複 合6例 , 突発 性 徐波6例 (5例 は 重複)であ った.こ の17例の頭 痛時の突 発性異常 波の 出 現 様式 は ,焦 点 性11例 (65% )(片側性6例,両側 性4例,両 者の合併1例),広 汎 性3例(18%) ,広汎性 と片側性 の合併が3例 (12%)で あり,焦 点性が広 汎性に比 し 有意に多く認められた(pく0.05).
頭痛 時 に 脳波 異 常の み ら れた18例全員が ,Swaimanらのて んかん性 頭痛の10項 目の 特 徴 のう ち5項 目以 上 を 満た し ,18例 中16例(89% ) が基 礎 律動の 徐波化を 示した.
一 方,脳波 異常のみ られなか った43例は基 礎律動が 波優位 であり, てんかん 性頭痛 の 特 徴も4項 目 以下 で あ った . 以上の頭 痛時脳波 の検討か らてんか ん性頭痛 の診断基 準を作成し,その診断基準が有効であることを確認した,
学位論文審査の要旨
学位論文題名
小児慢性反復性頭痛の研究
小 児 にお け る頭 病 の 研究 は 欧 米で は 多数 の 報 告が あり, 小児にお ける片頭 痛は希な 疾 患で は な いこ と が明 ら か にさ れ てい る . 一方 , わ が国で は加藤ら が小児慢 性頭痛の 一連 の研 究 で 小児 頭 痛研 究 の 基礎 を 築い た が ,未 だ 小 児科領 域におけ る頭痛に 対する関 心は 低い.申請者は(1)で小児の慢性反復性頭痛を国際頭痛学会の頭痛分類に従って分類し,また,
(2)で頭痛時脳波の特徴と診断的意義について検討した.[対象]1987年‑‑1989年の間に筑波 学園病院を慢性反復性頭痂を主訴に受診した2歳〜 15歳の小児[(1)では228例,(2)では244 例中の頭 病時脳波 を施行し た61例]である,[方法](l)Ad Hoc委員会の頭痛の分類(1962 年)に基 づぃて作 成された 質問票を1988年の国際頭 痛学会の 新分類に 従って一 部改変し,
こ れ に 従 っ て 直 接 家 族 , 患 児か ら 病歴 を 聴 取し た . 脳波 検 査,CTスキ ャ ン, 他 科 受診 の 結 果 も 参 照 し た . (2)頭 病 時 脳 波 を 施 行 し た61例 に つ い て , 脳 波 異 常 の 有 無 と Sw airnanらのてんかん性頭痛の10項目の特徴との関係を検討した.[結果](1)分類につい て:片頭 病50%,緊 張型頭痛19%,両者 の合併2%, 非血管性 頭蓋内疾 患に伴う 頭病2%,
顔面 ・ 頭 蓋組 織 に起 因 する 頭痛ある いほ顔面 痛2%,分類 できない 頭痛25%で あった. 本 分類 の 診 断基 準 の小 児 へ の適 用 は, 頭 痛 の回 数 , 持続時 間の把握 の困難さ ,及び分 類で きない頭 痛が多い ことが問 題であっ た. (2)頭痛時 脳波の意 義につい て:61例中 頭痛時脳 波に 異 常 がみ ら れた も のは18例で,そ の内訳は てんかん波11例,突発 性徐波2例 ,両者の 合併4例, 基礎律動 の著しい 徐波化1例 であった. これらの頭痛時脳波とSw aim anらのてん かん 性 頭 痛の 特 徴と の 検 討か ら てん か ん 性頭 痛 の 診断基 準を考案 し,その 有効性を 確認 した . 口 頭発 表 に当 り 阿 部弘 教 授か ら 分 類不 能 の 意味, てんかん 性頭痛の 特徴|器 質性 の頭痛について,金田教授からpsychos ocialな頭痛の分類やそれを診断するpointについて,
近藤 教 授 から て んか ん 性 頭痂 の てん か ん とぃ う 言 葉をど う捉える か,家族 歴,予後 など 縦断 的 な 調査 の 有無 に つ いて , の質 問 が あっ た がEp請者は ほぽ的確 に答えた .副査の 阿 部弘 , 金 田両 教 授か ら 別 個に 諮 問を 受 け 合格 と 判 定され た.以上 ,本研究 では小児 の慢
彦 弘 志 邦 清 林 部 田 小
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授 授
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査 査
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性反復性頭痛の分類を試み,またてんかん性頭痛の診断基準を考案し,その有効性を確 認した.本研究の結果は即応用が可能であり,臨床的意義が高く,博士(医学)に値す ると判定いたしました.
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