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博士(農学)宮西俊彰 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)宮西俊彰 学位論文題名

スイートコーンの香味に関する研究

学位論文内容の要旨

   乾燥 スイー トコ ーン粉 末 は 洋風ス ープの原料として使用されている。その品質は原料スイー トコー ンの品 質の影 響を 大きく 受ける 。そこで本製品の品質向上を最終目的として,スイートコー ン の 栽 培 か ら , 加 工 処 理 に 至 る ま で の ス イ ― ト コ ー ン の 香 味 に 関 す る 研 究 を 行 っ た 。   @スイ ートコ ーン の成熟 時の種 実成分 の変 化を研 究した 例はあ るが, いず れも断片的であり,

品種別 に,香 味に関 与す る成分 を詳細 に検討した報告は少ない。本論文では,まず,加工用スイー トコー ン数品 種にっ いて ,絹糸 抽出( 受粉)後の成熟時の種実の香味に関与する成分の量的変化,

最適収 穫時期 および 気象 因子と の関係 にっい て検討 を加 えた。 栽培試 験は北 海道 常呂郡訓子府町 の圃場 で1983か ら1985年 度まで3ケ 年に亘 って実 施した 。

     Golden Earlipak (sugary sweet type,極早 生種) では ,成熟 に伴い ,種実 (雌 穂中央 部10cmの部 位 ) 中 の 水分 , 遊 離 糖 含 量は 急 速 に 滅 少, で ん 粉(starch士phytoglycogen)含 量 が増 加 し た 。 官能 試 験 で 収 穫適 期は ,種実 水分含 量−70〜 74%(wet basis)の範 囲に あった 。 香 気 成 分 前 駆 体 と し て 測 定 し たS−MMS (S−methylmethionine sulfonium salt,dimethyl sulfideの 前 駆 体 ) は, 成 熟 に 伴 い種 実 中 の 含 量は 急 速 に 減 少 した が , 全 種 実中 のSーMMS総 量は, 固形成 分の直 線的 増加と は異な り,収 穫適期 近辺 で最大 値を示 した。 本品 種収穫適期付近 は種実 の成分 変化が 急速 に進ん でいる 時期に 相当し ,数 日の収 穫の遅 れが種 実の 香味に大きく影 響した 。

     Delicious Bantam―90 (カネ コ種苗 ,super sweet type;中生種 )では ,成 熟時の 種実 成分 の 量 的変化 は, Golden Earlipak と比べ ると緩 慢であ った 。従っ て,収 穫適期 (種 実水 分含量 二ニ73〜 77%)にある日数も比較的長かった。また,本品種の成熟初期の種実の成分変化は 少なく ,適熟 期種実 の成 分組成 は成熟 初期にほぼ決定されていた。ただ,過熱期に入ると遊離糖,

S―MMS含 量 が 減 少 し , で ん 粉 含 量 が 増 加 し 食 味 が 急 速 に 低 下 し た 。 種 実 中 のS―MMSは,

   Golden Earlipak と 同 様に, 収穫 適期近 辺で最 大値に 達し た。本 品種の 種実の 特徴はsu‑

crose含量 が高い ため の甘味 が強く ,かつ ,特 有のコ ク味を 有する ことで あっ た。適 熟期種 実組

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成を詳細分析し,その香味と関連づけて検討したが,本分析結果だけでは,本品種が有するコク 味は説明しきれず,今後の研究課題とした。

     Golden Earlipak , Delicious Bantam−90 の3ケ年の栽培データーより,成熟時の種 実水分含量と他成分含量,量間の相互関係を調べた。その結果,種実水分含量の減少と遊離糖,

S―MMS含量の滅少,固形 成分量の増加の間に強い相 関関係を認めた。成熟速度に差があっ ても,種実水分含量が同一の時は,種実の成分組成はほぼ同一であった。よって,圃場で適時種 実水分含量を測定するこ とにより,種実中の他成分 含量を推測することが可能であった。

  次いで,上記両品質の3ケ年の栽培時に採取した気象因子と種実成分の量的変化との関係を調 べた。その結果,積算平均温度と積算日照時間との相関が強いことが判り,とくに,絹糸抽出後 の毎日の平均気温から5℃を差し引いた値の積算値であるZ(平均気温‑5℃)と,種実水分含 量の変化との間に強い相関関係が存在した。すなわち,栽培年度で異なる種実水分含量の減少速 度の違いは,気象因子,E(平均気温一5℃)により説明可能であった。従って,本地方に限定 すれば,Z(平均気温‑5℃)の把握によ り,両品質ともその成熟状 態をほぼ推測できた。

  一方,収穫後のスイ―トコーン( Jubilee )貯蔵時の種実中の香気成分前駆体(S−MMS) 含量の変化を調べたとこ ろ,S―MMS含量は貯蔵間も減少を続け,常温(20〜25℃)で約10時 間の 貯蔵 で半 減 した 。収 穫後 の ブラ ンチ ング 処理 は 早け れぱ 早い ほど 好 ましかった。

  ◎収穫後のスイートコーンを加工して得られる・ 乾燥スイートコーン粉末 のへッドスペー スガス(top note)中の揮 発性香気成分を,Hewlet―Packard CC/MS Model  No.59983を用 いて検討し,31の微量揮発性香気成分を同定した。主成分はdimethyl sulfideであり,その他,

3ーmethylbutanal,  2―methylpropanal,acetaldehyde,propanethiol,hexanal等で あった。次いで,本製品ヘッドスペースガス中の揮発性香気成分パターンと官能試験での香気の 特徴にっいて検討を加えた。その結果,本製品のコーン風味は,前駆体(S―MMS)の加熱分解 生成物であるdimethyl sulfideの含量(約0〜20ppm)が高いほど明らかに良好であった。ま た,dimethyl sulfideと ,他成分のうち,3―methylbutanal,2―methylpropanalがある程 度含有されているものの方がコーン風味としては良好であった。すなわち,本製品の香気パター ンを,dimethyl sulfideと3ーmethylbutanal十2−methylpropanalの両者の含量により,

コーン風味が非常に良好のものから,焦げ臭様風味が顕著なものまで,4ーグループ程度に分類 するとが可能であった。

  以上の様な 乾燥スイートコーン粉末 の香気生成に影響する因子を,収穫後の種実加工処理 工程に沿って検討を加えた。とくに,キーとなる工程は加熱処理の伴うブランチング(swept

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surface heat exchanger)と ,乾 燥(single drum dryer)工 程 で あ った 。 そ こ で ,ま ず , ブ ラン チ ン グ 温 度条 件(85〜120℃ ,15min二 二 固 定 ) とS―MMSの分解 生成物(dimethyl sulfide) と3−methylbutanal,2−methylpropanalの 量的 変 化 に っ い て検 討 を 加 え ,次 い で , ド ラム ドライ ヤー乾 燥条件 [蒸気 圧力 :2. 0〜3.0 kg/cnf,滞留時間(回転数):11〜24 sec]とドラム 表面 で のS―MMSの 分 解―dimethyl  sulfideの 生 成,dimethyl sulfideの飛散 そし て乾燥 物へ の残留 の様子 を詳細 に調査 した 。その 結果, ブラン チン グ温度 条件は ,酵素 失活に必要な最低温 度 条 件 ,85℃ (15min)程 度 で 行 う 方 が ,そ の 後 , ド ラム 乾 燥 し て 得 られ る 製 品 のdimethyl sulfide,3―mithylbutanal,2―methylpropanalの 含 量 が 最 適と な り , 風 味 良好 な も の が 得 ら れ た 。 ブ ラ ン チ ン グ 温 度 条 件 を110℃ (15min)と高 温 に す る と ,本 工 程 で の 熱負 荷 で S―MMSは相 当 量 分 解 し, か っ ,aldehydes生 成 もあ り , ブ ラ ン チン グ 後 の ぺ ース 卜 ( ド ラ ム 乾燥前 原料) の香気 は良好 とな ったが ,ドラ ム乾燥 時に ,すで に遊離 してい るdimethyl sulfide は瞬 時 に飛 散し, 乾燥 製品の 香気は ,aldehydesの香 気( 焦げ臭 様香気 )が顕 著な ものと なり不 良で あ っ た 。 要す る に , 乾 燥時 の 加 熱 ( ドラ ム 表 面 上 ) で前 駆 体(S―MMS)の分 解を促 進し た 方が良 好な結 果が得 られた 。ド ラムド ライヤ ―乾燥 では ,蒸気 圧カを 上げ, ドラム表面での滞留 時間を 長くし て(回 転数を 遅く する) ,熱負荷を上げるほど,結果的には,乾燥製品水分含量を減 少させ るほど ,製品 中の遊 離dimethyl sulfide含 量は増 加する ことを 認めた 。乾燥前原料中の前 駆体含 量が低 水準の 場合は 困難 であっ たが, 高水準 の場 合には ,ドラ ム乾燥 条件を制御すること により ,ある 程度, 乾燥製 品の 香気を 改善す ること が可 能であ った。 ただし ,余り熱負荷を上げ 過ぎる と焦げ 臭様風 味が増 加す るため ,自ず と限界 はあ った。 なお, 最も重 要な因子は,原料中 の前 駆 体(S−MMS)含量 で あ り , スイ ー ト コ ー ン収 穫 適 期 の 管理 と , 貯 蔵 期間を 極力短 縮し て 加工処 理する ことが 極めて 重要 であっ た。

  応 用 例 と し て , 液 状 コ ー ン ス ー プの 滅 菌 方 式 ( 連続 滅 菌 ) , 条件 と 原 料 由 来のS―MMSと dimethyl sulfideの 量 的 変 化を 検討し た。製 品のdimethyl sulfide含 量測 定値は ,連続 滅菌方 式,条 件によ り異な った。

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学位論文審査の要旨

  本論文は第I編4章 ,第H編'3章からなる総ぺージ188頁の和文論文であり,表19,図43,引 用文献52を含んでいる。ほかに:参考論文8編が添えられている。

  乾燥スイートコーン粉末は洋風スープ等の原料として広く利用されているが,この品質は原料 となるスイートコーンの影響を大きく受ける。本研究は乾燥スイ―トコーン粉末の品質向上を目 吋として,原料スイートコーンの栽培から加工処理に至る過程での香味の変動に関して,詳細な 検討を行ったもので,内容の概要は次のとおりである。

  I.スイートコーンの成熟過程における種実成分の量的変化ニゴールデンアーリパックでは成 熟に伴い種実中の水分,遊離糖含量は急速に減少,でん粉含量が増加した。官能試験での収穫適 期は種実水分含量が70‑‑ 74%の範囲にあり,香気成分前駆体として測定したS一メチルメチオニ ンスルホニウム塩(S―MMS)もこの時期に最大値を 示した。っぎにデリシャスバンタム−90 では成熟時の種実成分の量的変化はゴールデンアーリーパックに比ベ緩慢であるため,適熟期に ある日数が比較的長 く,種実中のS―MMS総量も最大値に達した。本品種は遊離糖,遊離アミ ノ 酸 含 量 が 高 く , 庶 糖 に よ る 甘 味 と 特 有 の コ ク 味 を 有 す る 点 で 特 徴 が あ っ た 。 ゛   さらに両品種の3ケ年の亘る栽培データより,成熟時の種実水分含量と他成分含量,量間の相 互関係を調ベ,成熟 に伴う種実水分含量の減少と遊離糖,S―MMS含量の減少,固形成分量の 増加の間に高い相関関係のあることを明かにした。即ち,両品種の成熟速度に差があっても,種 実水分含量が同一の時は他の成分組成もほぼ同じであり,圃場での適時水分含量を測定すること により,種実中の他成分含量を推測することが可能となった。

  次いで,両品種の3ケ年の栽培時における気象因子と種実成分の量的変化との関係を調べ,積 算平均気温や積算日照時間との相関が高いことが示され,特に絹糸抽出後の毎日の平均の気温か ら5℃を差し引いた積算値と種実水分含量の変化との間に高い相関がみられることがわかった。

すなわち,栽培年度で異なる種実水分含量の成熟速度の違いは,この積算値を用いて説明可能で あり,かっ収穫適期の判定も可能であった。さらに適熟期のジュビーリーで,収穫後貯蔵時の種 実中の香気成分前駆 体S―MMS含量の変化を調ベ,この含量は常温で約10時間経過すると半減

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す ること がわか った 。

  1I.スイ ートコ ーン 加工処 理工程 での香 気成 分の量 的変化 :収穫 後のス イー トコー ンを加 工し て 得られ る乾燥 スイ ートコ ーン粉 末の揮発性香気成分を分析し,31個の微量成分を分離同定した。

主 成 分 は ジメ チ ル ス ル フ アドで 最も 多量に 存在し た。そ の他 ,3― メチ ルブタ ナール ,2―メチ ル プロパ ナール ,ア セトア ルデヒ ド,プ 口パン チオ ール, ヘキサ ナール 等が 確認された。っぎに 様 々な乾 燥スイ ート コーン 粉末の 揮発性 香気成 分の パター ンと官 能試験 での 香気の特徴にっいて 検 討 し , 製品 の コ ー ン 風 味は 加 熱 工 程 でS―MMSが 分 解 し て 生成 す る ジ メチ ルスル フィド の含 量 が 高 い ほど , ま た3ーメ チ ルブタ ナール と2―メチ ルプ ロパナ ールが ある程 度含 有され るもの の ほうが 良好で ある ことが わかっ た。

  さ らに香 気生 成に影 響する 因子を ,加 工処理 工程に 沿って 検討を 加え た。特に重要な工程は加 工 処理を 伴うブ ラン チング と乾燥 工程で あると 考え ,ブラ ンチン グ温度 条件 ,85‑‑ 120℃,とジ メ チ ル ス ルフ ア ド ,3一メ チ ルブタ ナール ,2―メチ ルプ ロパナ ールの 量的変 化に っいて 検討を 加 えると ともに ,ド ラムド ライヤ ー乾燥 条件で のジ メチル スルフ アドの 生成 ,飛散,乾燥物への 残 留の様 子を詳 細に 調査し た。そ の結果 ブラン チン グ温度 は原料 中の前 駆体 がほとんど分解せず 酵 素が失 活する 温度 ,85℃,15分程 度の低 温で行 う方が ,そ の後ド ラム乾 燥して得られる香気成 分 含 量が 最適と なり, 風味 良好な ものが 得られ るこ とがわ かった 。この 温度を110℃と高 温にす る と両ア ルデヒ ドの 香気が 顕著と なり不 良なも のと なった 。ドラ ムドラ イヤ 一乾燥では蒸気圧カ を 上げ, 回転数 を遅 くする ほど, 乾燥製 品の水 分含 量を減 少させ ,ジメ チル スルフアド含量を増 加 させる ことが わか った。 従って 原料中 の前駆 体含 量が高 いもの はドラ ム乾 燥条件をコントロー ル するこ とによ って も,あ る程度 乾燥製 品の香 気を 改善す ること が可能 とな った。しかし,良好 な 製 品 を 得る た め の 最 も 重要 な 因 子 は 原料 中 の 前 駆 体S一MMSの 含 量 で あり ,その ために は最 適 収穫時 期に原 料ス イート コーン を収穫 すると とも に,ま た貯蔵 期間を 極力 短縮して適切な加工 処 理ほほ どこす こと も必要 である ことを 示した 。

  以 上のよ うに 本研究 はトウ モロコ シの 食品加 工上重 要な知 見を加 えた のみならず,食品産業の 基 礎・応 用面に 貢献 すると ころ大 きく, 高く評 価さ れる。

  よ って審 査員 一同は ,別に 行った 学力 認定試 験の結 果と合 わせて ,本 論文の提出者宮西俊彰は 博 士(農 学)の 学位 を受け るのに 十分な 資格が ある ものと 認定し た。

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参照

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