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博 士 ( 農 学 ) 松 川 典 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 松 川 典 子

学 位 論 文 題 名

オ リ ゴ 糖 に よ る 水 溶 性 フ ラ ボ ノ イ ド 配 糖 体 の 吸 収 促 進 と そ の 作 用 機 構 の 解 析

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  フラボノイドは 、ポリフェノール化合物の一種であり、植物中に存在する。近年、食品成分が持つ 疾病予防機能への 関心が高まっており、フラポノイドの生理機能が注目を集めている。天然でフラボ ノイドは配糖体と して主に存在するが、その吸収動態に関しては一定の見解が得られていない。本研 究では、フラポノ イド化合物の吸収動態を調べるために、ケルセチン配糖体、ミリセチン配糖体を用 いて、血vitro、血situ. in函めの試験により吸収動態と吸収機構を調べることを目的とした。これら のフラポノイド配 糖体は、本来溶解度は低いが、食品に応用するため水溶性を高めたものが開発され ており、本研究で は実用的な観点と、ほとんど不明の水溶性フラボノイド吸収機構を探るという基礎 的観点で、糖鎖付 加により水溶性を高めたフラポノイド配糖体を用いた。一方、難消化性糖の一種で あるDifructose anhydrideくDFA) IIIは、小腸での水溶性成分透過経路である上皮細胞間吸収を促進す ることが示されて おり、また大腸発酵により、イソフラボンの一種、ダイゼインから腸内菌によって 変換されるエクオールの吸収を促進することが報告されている。フラボノイドの吸収率は数%と非常に 低く、フラボノイ ドの生理作用を効率よく発揮させるためには、フラボノイドのバイオアベイラビリ ティーを高めるこ とが重要であると考えられる。従って、フラボノイドの吸収機構を探るとともに、

フラボノイド吸収 促進という新たなオリゴ糖の機能を解明することを目指し、本研究では、水溶性フ ラ ボノイド配糖体と ともにDFAIIIや発酵性の高いフラクトオリゴ糖(FOS)を投与したときのフラボ ノイド配糖体吸収動態を解析した。

1.aGリレチン吸収へのオリゴ糖の作用

  フラボノイド配糖体の吸収メカニズムを調べる一環として、易水溶性ケルセチン配糖体、a G‑レチ ンを用いた。門脈カテーテル留置ラット、血situ小腸結紮ループを用し´ヽてルチンにグルコースを付加 し、水溶性を高めたQ G‑レチンの単回投与試験を行った。その結果、門脈、腸間膜静脈血中でインタ クトなa G‑Jレチンが検出され、DFAIIIの添加により増加したことから、のGリレチンは細胞間経路を介 して 輸送 され るこ とが 示唆 され た。aGリレチンを長期摂取したときのオリゴ 糖(FOS、DFAIII)のa G‑ルチンの吸収動態に及ばす効果を調べるため に、ラットにaG‑Jレチンとオリゴ糖を摂食させ、aG‑

ルチンとその代謝産物の血液中濃度、尿中、糞中への排泄量を調べた。a G‑ルチンとともにオリゴ糖 を摂取することによって、血中、尿中共にケルセチン代謝物の濃度は増加し、オリゴ糖摂取によって ケルセチン配糖体の吸収が促進することが示された。一般に、吸収量が増加すると糞中排泄は減少す

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る。しかし、オリゴ糖摂取によってケルセチン代謝物の糞中排泄は増加し、アグリコンの摂取量、尿、

糞中排泄量からアグリコン分解量を算出した結果、オリゴ糖の摂取によってケルセチンの分解が抑制 されることが示唆された。盲腸内でのケルセチンアグリコンの分解抑制が、吸収量が増加した機構の ーっと考えられた。

2.易水溶性ケルセチン‑3‑ひロ・グルコシド(Q3GM)の吸収動態

  Q G‑ル チンと は糖鎖の 異なる 配糖体、Q3Gに グルコー スを1〜7分子結合させ水溶性を高めたケル セ チ ン 配糖 体(Q3GM)を 用い、 各種試験 を行っ た。むsむu小腸結 紮ループ の試験 より、Q3Gの吸収 メカニズムを検討した。その結果、aGリレチンとは異なり、配糖体よりむしろ抱合体濃度が腸問膜静 脈血中でDF,AIIIによって増加し、腹部大動脈血中、小腸管腔内残存物分析から、Q3G:Mは管腔内で Q3Gにま で 分 解後 上 皮細 胞間で はなく小 腸上皮 細胞内に 吸収さ れること 、DFAmはこ の過程を 促進 すること、細胞内でケルセチンに分解、抱合化され血中に移行することが示唆された。次に、オリゴ 糖 とともにQ3GM、Q3Gを長期 摂取した ときの、両フラボノイド配糖体の吸収動態を検討した。Q3G、 Q3GMは オリゴ 糖ととも に摂食 すること によって、QG‐ルチンと同様、血中、尿中のケルセチン代謝 物が増加し、糞中においてもケルセチン代謝物の排泄量、アグリコンの残存率が増加した。オリゴ糖 によって大腸におけるアグリコン分解が抑制されたため吸収が増加したことはaGリレチンと同様であ っ た。この ことを直接証明するため、オリゴ糖を摂取した盲腸内容物(腸内細菌)によるQ3G、ケル セチン、ケルセチンメチル化物の分解を見た。その結果、配糖体、アグリコンともにオリゴ糖摂取盲 腸内容物でその分解が大きく抑制された。これにより、ケルセチン配糖体の大腸内での分解抑制が、

オリゴ糖摂取によるフラボノイド吸収の促進に寄与しており、この変化には盲腸内菌叢の変化が関わ っていることが示唆された。この機構には、盲腸がフラボノイド吸収能をもっことが前提となるため、

盲腸、小腸ループを用い由8カHでケルセチン吸収を見た結果、盲腸は小腸よりも高い吸収能をもっこ と示された。ケルセチン代謝物は、胆汁中に排泄されることが知られているが、定量的解析は行われ ていない。ケルセチンの吸収動態には胆汁分泌も大きく関わっている可能性があるため、胆管カテー テルを留置したラットを用いて胆汁中のケルセチン代謝物を経時的に測定した。ケルセチン代謝物の 胆 汁排出量 は、ケルセチンの尿中排泄量(正味の吸収量)よりも2倍高く、大量のケルセチン代謝物 が腸肝循環していることが明らかになった。オリゴ糖による吸収促進への関与は今後の課題である。

3.小腸結紮ループにおけるミリセチン配糖体の吸収動態

  ケルセチンとはアグリコンが異なり、フラボノイドの中でも高い抗酸化性を発揮することが知られ ているミ リセチン配糖体用いて、Q3Gと同様に血situ小腸結紮ループにより腸間膜静脈への吸収試験 を行った 。その 結果腸間 膜静脈 中の抱合 体濃度がDFAIIIによっ て大きく増加した。しかし、Q3Gと は異なる点は配糖体が抱合化されたものが多く検出され、すなわちミリセチンは配糖体のまま細胞内 に 吸 収 さ れ 抱 合 化 さ れ 血 中 に 移 行 す る 、 と い う 特 異 な 吸 収 動 態 を 示 し た 。

  以上より、オリゴ糖はケルセチン配糖体、ミリセチン配糖体の吸収をいくっかの異なる機構で促進 することを明らかにした。すなわち、゛小腸においては上皮細胞間と細胞内吸収をともに促進、さらに 大腸では腸内菌の変動を介してアグリコン分解を抑制し、フラボノイドの吸収効率を上げていた。い

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ず れもこれまで知られていなかった新たなオリゴ糖の作用 機構である。ケルセチンやミリセチンは 様 々な生理作用を発揮することが報告されている。本研究で用いたフラボノイド配糖体はすでに飲料 や 食品の添加物として用いられており、オリゴ糖と合わせて摂取するという新たな食品設計が提案さ れ る。

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学位論文審査の 要旨 主査

副査 副査

教授 教授 准教授

原 川端 石塚

学 位 論 文 題 名

博 潤 敏

オリゴ糖による水溶性フラボノイド 配糖体の 吸収促進とその作用機構の解 析

本 論 文 は 、 170頁 か ら な る 和 論 文 で あ り 、 図52と 表18を 含 み 、 参 考 論 文4編 が 添 え ら れ てい る 。

  フ ラ ボ ノ イ ド は 、 ポ リ フ ェ ノ ー ル 化 合 物 の 一 種 で あ り 、 植 物 中 に 存 在 す る 。 近 年、 食 品 成 分 が 持 つ 疾 病 予 防 機 能 へ の 関 心 が 高 ま っ て お り 、 フ ラ ポ ノ イ ド の 生 理 機 能が 注 目 を集 め て い る 。 天 然 で フ ラ ボ ノ イ ド は 配 糖 体 と し て 主 に 存 在 す る が 、 そ の 吸 収 動 態に 関 し ては 一 定 の 見 解 が 得 ら れ て いな い 。 本研 究 で は、 フ ラ ポノ イ ド 化 合物 の 吸 収動 態 を 調べ る た めに 、 ケル セ チ ン配 糖 体 、 ミリ セ チ ン配 糖 体 を用 い て 、in vitro、 沈situ、沈vivoの試験に より吸収 動 態 と 吸 収 機 構 を 調 べ る こ と を 目 的 と し た 。 こ れ ら の フ ラ ポ ノ イ ド 配 糖 体 は、 本 来 溶解 度 は 低 い が 、 食 品 に 応 用 す る た め 水 溶 性 を 高 め た も の が 開 発 さ れ て お り 、 本 研究 で は 実用 的 な 観 点 と 、 ほ と ん ど 不 明 の 水 溶 性 フ ラ ボ ノ イ ド 吸 収 機 構 を 探 る と い う 基 礎 的観 点 で 、糖 鎖 付 加 に よ り 水 溶 性 を 高 め た フ ラ ボ ノ イ ド 配 糖 体 を 用 い た 。 一 方 、 難 消 化 性 糖の 一 種 であ る Difructose anhydride (DFA) IIIは 、 小 腸 での 水 溶 性成 分 透過経路 である 上皮細胞 間吸収 を促 進 す る こ と が 示 さ れ て お り 、 ま た 大 腸 発 酵 に よ り 、 イ ソ フ ラ ボ ン の 一 種 、 ダイ ゼ イ ンか ら 腸 内 菌 に よ っ て 変 換 さ れ る エ ク オ ← ル の 吸 収 を 促 進 す る こ と が 報 告 さ れ て いる 。 フ ラポ ノ イ ド の 吸 収 率 は 数 % と 非 常 に 低 く 、 フ ラ ボ ノ イ ド の 生 理 作 用 を 効 率 よ く 発 揮さ せ る ため に は 、 フ ラ ボ ノ イ ド の バ イ オ ア ベ イ ラ ビ リ テ ィ ー を 高 め る こ と が 重 要 で あ る と考 え ら れる 。 従 っ て 、 フ ラ ボ ノ イ ド の 吸 収 機 構 を 探 る と と も に 、 フ ラ ポ ノ イ ド 吸 収 促 進 とい う 新 たな オ リ ゴ 糖 の 機 能 を 解 明 す る こ と を 目 指 し 、 本 研 究 で は 、 水 溶 性 フ ラ ボ ノ イ ド 配糖 体 と とも に DFAIIIや 発 酵 性 の 高 い フ ラ ク ト オ リ ゴ 糖(FOS)を 投 与 し た と き の フ ラ ボ ノ イ ド 配 糖 体 吸 収 動 態 を 解 析 し た 。 こ れ ら に つ い て 、 以 下 の よ う な 結 果 を 得 て い る 。

1.aG−Zヒ 乏Z吸 腿 二 ニ ニ 堕 空 竺 三 糖 堕 佐 周

  門 脈 カ テ ー テ ル 留 置 ラ ッ ト 、 沈situ小 腸 結 紮 ル ー プ を 用 い て ル チ ン に グル コ ー スを 付 加

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し、水溶性を高めた aG ・ルチンの単回投与試験を行った。その結果、門脈、腸間膜静脈血 中でインタクトなの G ―ルチンが DFAIII の添加により増加したことから、 aG‑ ルチンは細 胞間経路を経て輸送されることが示唆された。次に、ばG ―ルチンを長期摂取した時のオリ ゴ糖(FOS 、DFAIII) のの G‑ ルチンの吸収動態に及ぼす効果を調べた結果、aG ―ルチンと 共にオリゴ糖を摂取することによって、血中、尿中共にケルセチン代謝物の濃度は増加し、

オリゴ糖摂取によってケルセチン配糖体の吸収が促進することが示された。一般に、吸収 量が増加すると糞中排泄は減少する。しかし、オリゴ糖摂取によってケルセチン代謝物の 糞中排泄は増加し、アグリコンの摂取量、尿、糞中排泄量からアグリコン分解量を算出し た結果、オリゴ糖の摂取によってケルセチンの分解が抑制されることが示唆された。盲腸 内でのケルセチンアグリコンの分解抑制が、吸収量が増加した機構のーっと考えられた。

2 .易丞溶性2 と聖乏ン−3 ・o‑ 昌‑ZZ ヒコシピ(Q3GMI̲Q 吸躯動態

   ばG‑ ルチンとは糖鎖の異なる配糖体、 Q3G にグルコースを 1 〜7 分子結合させ水溶性を 高めたケルセチン配糖体(Q3GM) を用い、各種試験を行った。めsitu 小腸結紮ループの 試験よりQ3G は、 aG‑ ルチンとは異なり、配糖体よりむしろ抱合体濃度が腸間膜静脈血中 でDFAIII によって増加し、腹部大動脈血中、小腸管腔内残存物分析から、 Q3GM は管腔 内でQ3G にまで分解後上皮細胞間ではなく小腸上皮細胞内に吸収されること、DFAIII は この過程を促進すること、細胞内でケルセチンに分解、抱合化され血中に移行することが 示唆された。次に、オリゴ糖とともに Q3GM 、Q3G を長期摂取したときの、両フラボノイ ド配糖体の吸収動態を検討した結果、両配糖体の吸収は促進され、オリゴ糖によって大腸 におけるアグリコン分解が抑制されたため吸収が増加したことはのG ―ルチンと同様であ った。さらに、オリゴ糖を摂取盲腸内容物中で配糖体、アグリコンともにその分解が大き く抑制された。これにより、ケルセチン配糖体の大腸内での分解抑制が、オリゴ糖摂取に よるフラポノイド吸収の促進に寄与しており、この変化には盲腸内菌叢の変化が関わって いることが示唆された。盲腸、小腸ループを用いin situ でケルセチン吸収を見た結果、実 際に盲腸からケルセチンは吸収され、小腸よりも高い吸収能をもっことも示された。

3 .d ニ腸鐘紮Z ヒープに韮泣歪ミ塗窒量Z 配糖佳Q 吸盤動態

   ケルセチンとはアグリコンが異なるミリセチン配糖体用いて、Q3G と同様にin situ 小腸 結紮ループにより腸問膜静脈への吸収試験を行った。その結果腸間膜静脈中の抱合体濃度 がDFAIII によって大きく増加した。しかし、Q3G とは異なる点は配糖体が抱合化された ものが多く検出され、すたわちミリセチンは配糖体のまま細胞内に吸収され抱合化され血 中に移行する、という特異な吸収動態を示した。

   本論文は、オリゴ糖はケルセチン配糖体、ミリセチン配糖体の吸収をいくっかの異なる

機構で促進することを明らかにした。すなわち、小腸においては上皮細胞間と細胞内吸収

をともに促進、さらに大腸では腸内菌の変動を介してアグリコン分解を抑制し、フラポノ

イドの吸収効率を上げていた。いずれもこれまで知られてい栓かった新たナょオリゴ糖の作

用機構である。ケルセチンやミリセチンは様々な生理作用を発揮することが報告されてお

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り、本論文はオリゴ糖と合わせて摂取するとんヽう新たな食品設計を提案するものであり、

高く評価できる。

   よ って 、審 査員 一同は、松川典子が博士(農学)の学位を受けるのに十分ぬ資格を有す

るも のと 認め た。

参照

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