博 士 ( 農 学 ) 松 本 恵 学 位 論 文 題 名
水 溶 性 フ ラ ボ ノ イ ド 配 糖 体 の 生 体 内抗 酸 化 性 と 吸 収 動 態 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の要 旨
食 品 中 に は 、 生 体 の 防 御 機 能 を 向 上 さ せ て 疾 病 の 防 止 や 回 復 、 老 化 抑 制 な ど の 作 用 を も つ 成 分 が あ る こ と が 明 ら か に な っ て き た 。 ポ リ フ ェ ノ ー ル 化 合 物 は 活 性 酸 素 や フ リ ー ラ ジ カ ル に 対 す る ラ ジ カ ル ス カ ベ ン ジ ャ ー と し て の 機 能 性 に つ い て 多 数 、 報 告 さ れ て い る 。 な か で も 、 カ テ キ ン 類 や ア ン ト シ ニ ン 類 は サ プ リ メ ン ト や 特 定 保 健 用 食 品 と し て 用 い ら れ る よ う に な っ て き た 。 し か し 、 こ れ ら の フ ラ ボ ノ イ ド 化 合 物 の 生 体 内 に お け る 吸 収 動 態 に 関 しては未だ不明な点が多い。
本 研究では 、水溶性 フラボ ノイド配 糖体の 一種であ るアン トシアニ ンが多く含まれているアロニア 果実(Aroma melanocarpa Elliot,Black chokeberry)と、フラボノイド化合物の一種であるQuercetin、 そ の 配 糖体 のRutinおよ び 、Rutinにグルコ ースを一 分子付 加するこ とによ って溶解 性を改 善した 易 水 溶 性のQ G‑rutinを 用い て 、 ラッ ト の アル コ ー ル性 胃粘膜障 害に対 する酸化 障害抑制 効果を 調 べ、生体 内におけ る抗酸 化活性を 明らか にした。また、a G‑rutinを用いて、水溶性フラボノイド 配 糖体の消 化管にお ける吸 収と代謝 をin vivo、細vitrDの両面 から調べ た。mvfvoの試験 では、 ラ ツ 卜に門脈 カテーテ ルを留 置する手 術を施 し、aG−rutinを投 与した後 、経時 的にカテ ーテル から 無 麻 酔 、無 拘 束 下で 採 血 する 方 法 を用 い た 。mvf加の 試験 では、ラ ット腸 管の剥離 粘膜標本 を作 製 し、ユッ シングチ ャンバ ーを用い て、QG‐mtinの腸管 粘膜の輸 送を詳細 に観察 した。さ らに、Q G.rutinの吸収経路を詳細に調べるために、タイトジャンクションを開く作用があることが明らかにな っ て い る機 能 性 オリ ゴ 糖 のDFAmを 用 い て、 ユ ッ シン グ チャンバ ーでaG‐rutinの吸 収に及 ぼす影 響 に つ い て 調 べ た 。 い ず れ の 試 験 に お い て も 、 のG‐rutinと そ の 関 連 化 合 物 はLiquid ChromatographyMassSpectrometry(LC/MS)を 用 い て分析し 、のG‐川inが 吸収さ れた後の 経時 的な吸収量の変化を定量し、また、構造の変化について検討した。
1. ア ロ ニ ア 果 実 赤 色 色 素 と フ ラ ボ ノ イ ド 化 合 物 の ア ル コ ー ル 性 胃 粘 膜 障 害 抑 制 効 果 ア ロ ニ ア 果 実 赤 色 色 素 は 強 い 胃 粘 膜 障 害 抑 制 効 果 を 示 し た 。 そ の 活 性 物 質 は ア ン トシ ア ニ ン の 一 種 で あ るCyanidineを アグ リ コ ンと す るCyanidine配糖 体 で ある こ と が確 認 さ れた 。
ア グ リ コ ン と 配 糖 体 で は 、 ほ ぼ 同 程 度 の 抑 制 効 果が 見 ら れた 。 ま た、QuercetinとaG‑rutin に は 胃 粘 膜 障 害 に 対 す る 抑 制 効 果 が 確 認 さ れ た が、Rutinに はそ の 効 果 が見 ら れ なか っ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 胃 粘 膜 障 害 抑 制 メ カ ニ ズ ム に は ア グ リ コ ン と 配 糖 体 と いう 構 造 の違 い よ り も 、 溶 解 性 や 粘 膜 と の 相 互 作 用 が 大 き く 関 係 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。
2. 圏 駈 立乏 ニ テ ルを 貿 置 した ラ ッ 卜 にお け るa G‑rutinの 吸 収 動態
Q G‑rutin(150Limol)を投 与した後 の門脈 血中には 、イン タク卜なaG‑rutin、Quercetin、 RutinとQuercetinの 抱 合 体 が 検 出 さ れ た 。8G‑nユtinを 投 与 し た 後150分 の 小腸 内 容 物中 に はQ G‑rutinの 他 に 、aG‑rutinが 分 解 さ れ て 生 じ たRutinが 多 く 検 出 さ れ た 。 腸管 に 残 存し て い た のG‑rutinと そ の 代 謝 産 物 の 総 量 は88.6土9.58 Ltmolで あ り 、 投 与 し たQG‑rutinは 41% が 吸 収 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、Q G‑rutinは 配 糖体 の ま ま腸 管 か ら吸 収 さ れ、 速 や かに ア グ リコ ン に 分解 、 抱 合化 さ れ る こと が 示 唆さ れ た 。
3. 小 腸 粘 膜 酵 素 に よ るQ G‑rutin堕 ル チ ン ヘ の 分 鰹 盪 : 睦
a G‑rutinは 小 腸 粘 膜 ホ モ ジ ネ ー ト に よっ てRutinとQuercetinに 分 解 され た 。 盲腸 ホ モ ジ ネ ー ト で は 分 解 さ れ な か っ た 。 ま た 、 小 腸 粘 膜 粗 酵 素 で はQ G‑rutinか らRutinへの 分 解 は 見 ら れ た が 、Quercetinに は 分 解 さ れ な か っ た 。 こ の た め 、QG‑rutinを ア グ リ コ ン の Quercetin^ 分 解 す る 作 用 は 、 小 腸 粘 膜 細 胞 内 に 存 在 す る こ と が 確 認 さ れ た 。 4.垈G‑rutin堕 腿 曁 剥離 獲 堕 に おけ 埜 禽 送
ユ ッ シ ン グ チ ャ ン バ ー を 用 い て 、 胃 底 部 、 胃 体 部 、 空 腸 、 回 腸 、 盲 腸 、 結 腸の 各 部 位の a G‑rutinの 透 過 性 を 調 べ た 結 果 、 ど の 部 位 に おい て も イ ンタ ク ト なQG‑rutinの 透 過 が見 ら れ た 。n G‑rutinの 輸 送 量 を 部 位 別 に 比 較 し て、 空 腸 、 回腸 、 盲 腸の 輸 送 量が 高 く 、粘 膜 側 ヘ 添 加 し たa G‑rutinの 濃 度 に 依 存 し て 漿 膜 側 へ の 輸 送 が 直 線 的 に 増 加 し た 。 胃 底 部 で は 他 の 部 位 よ り もQ G‑rutinの 輸 送 量 が 非 常 に少 な か っ た。 ま た 、空 腸 と 回腸 に お いて a G‑rutinか ら 分解 さ れ て 生じ たRutinの透 過 が 見ら れ た 。.Quercetinへ の 分解 や、そ の他 の 代 謝 物は ど の 部位 に お いて も 検 出 され な か った 。
5. DFAIII堕垈G‑rutin堕腹箜噬盤!三丞!茎主影饗
ユ ッシ ン グ チャ ン バ ーを 用 い て、 空 腸 、回 腸 、 盲腸 におけ るのG‑rutinの吸収 に及ぼす 、DFAIII の 影響 を 調 べた 結 果 、空 腸と回腸 でDFAIIIによ ってaG‑rutinの 輸送量 が増加す る傾向 が見られ 、 盲腸では有意に増加した。このことから、のG‑rutinは細胞間経路(タイトジャンクション)を介して輸 送 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。Rutinの 輸 送 量 はDFAIIIの 影 響 は 大 き く 見 ら れ な か っ た 。 以 上 の 結 果か ら 、 生体 内 抗酸化性 をもつ 、水溶性 フラボ ノイド配 糖体のQ G‑rutinは胃 を含む 消 化 管から タイトジ ャンク ションを 介して 、配糖体 のまま吸 収され ることを 初めて 明らかに した。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
水溶性フラボノイド配糖体の生体内抗酸化性と 吸収動態に関する研究
本 論 文 は 、80頁 か ら な る 和 論 文 で あ り 、 図21と 表6を 含 み 、 参 考 論 文2編 が 添 え ら れ て い る 。
ポ リ フ ェ ノ ー ル 化 合 物 は 活 性 酸 素 や フ リ ー ラ ジ カ ル に 対 す る ラ ジ カ ル ス カ ベ ン ジ ャ ー と し て の 機 能 性 に つ い て 多 数 、 報 告 さ れ て い る 。 な か で も 、 カ テ キ ン 類 や ア ン ト シ ニ ン 類 は サ プ リ メ ン ト や 特 定 保 健 用 食 品 と し て 用 い ら れ る よ う に な っ て き た 。 し か し 、 こ れ ら の フ ラ ボ ノ イ ド 化 合 物 の 生 体 内 に お け る 吸 収 動 態 に 関 し て は 未 だ不 明な 点 が多 い。 本研 究で は、
水 溶 性 フ ラ ボ ノ イ ド 配 糖 体 の 一 種 で あ る ア ン 卜 シ ア ニ ン が 多 く 含 ま れ て い る ア ロ ニ ア 果 実 (Aroma melanocarpa Elliot,Black chokeberry)と 、 フ ラ ボ ノ イ ド 化 合 物 の 一 種 で あ る Quercetin、 そ の 配 糖 体 のRutinお よ び 、Rutinに グ ル コ ー ス を 一 分 子 付 加 す る こ と に よ って 溶 解 性 を 改 善 し た 易 水 溶 性 のQ G‑rutinを 用 い て 、 ラ ッ ト の ア ル コ ー ル 性 胃 粘 膜 障 害 に 対す る 酸 化 障 害 抑 制 効 果 を 調 べ 、 生 体 内 に お け る 抗 酸 化 活 性 を 明 ら か に し た 。 ま た 、n G‑rutin を 用 い て 、 水 溶 性 フ ラ ボ ノ イ ド 配糖 体の 消 化管 にお ける 吸収 と代 謝をin vivo、in vitroの両 面 か ら 調 べ 、 以 下 の よ う な 結 果 を 得 て い る 。
1.Z旦 ニ ア 果 実 赤 色 色 素 と フ ラ ボ ノ イ ドiヒ 金 惣 の ア ノ と 三 ニZヒ 性 宜 粘 感 瞳 畫 抽 劃 効 墨 ア ロ ニ ア 果 実 赤 色 色 素 は 強 い 胃 粘 膜 障 害 抑 制 効 果 を 示 し た 。 そ の 活 性 物 質 は ア ン 卜 シ ア ニ ン の 一 種 で あ るCyanidineを ア グ リ コ ン と す るCyanidine配 糖 体 で あ るこ とが 確認 され た。
ア グ リ コ ン と 配 糖 体 で は 、 ほ ば 同 程 度 の 抑 制 効 果 が 見 ら れ た 。 ま た 、QuercetinとQG‑rutin に は 胃 粘 膜 障 害 に 対 す る 抑 制 効 果 が 確 認 さ れ た が 、Rutinに は そ の 効 果 が 見 ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 胃 粘 膜 障 害 抑 制 メ カ ニ ズ ム に は ア グ リ コ ン と 配 糖 体 と い う 構 造 の 違 い よ り も 、 溶 解 性 や 粘 膜 と の 相 互 作 用 が 大 き く 関 係 し て い る と 考 え ら れ た 。
博 潤
和
博
端
井
原 川
松
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
Q G‑rutin(150 pmol)を投 与した 後の門脈 血中に は、イン タクトなQG‑rutin、Quercetin、 RutinとQuercetinの 抱 合 体 が 検 出 さ れ る こ と を 確 認 し た 。aG‑rutinを 投 与 し た 後150分 の 小 腸 内 容 物 中に はa G‑rutinの他 に 、QG‑rutinが 分解 さ れ て生 じ たRutinが 多 く 検 出さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、Q G‑rutinは 配 糖 体 のま ま 腸 管か ら 吸 収さ れ 、 速や か に アグ リ コ ンに 分 解 、抱 合 化 され る こ とを 明 ら か にし た 。
3. 坐 腿 粘 膜 酵 素 に よ るQ G‑rutin堕 ル チ ン ニ ニ ニQ金 盤 塰 壁
a G‑rutinは 小 腸 粘 膜 ホ モ ジ ネ ー ト に よ ってRutinとQuercetinに 分 解 さ れた 。 盲 腸ホ モ ジ ネ ー ト で は 分 解 さ れ な か っ た 。 ま た 、 小 腸 粘 膜 粗 酵 素 で はQ G‑rutinか らRutinへ の 分 解 は 見 ら れ た が 、Quercetinに は 分 解 さ れ な か っ た 。 こ の た め 、aG‑rutinを ア グ リ コ ン の Quercetinヘ 分 解 す る 作 用 は 、 小 腸 粘 膜 細 胞 内 に 存 在 す る こ と を 確 認 し た 。
4.垈G‑rutin cD腿 箜劃 離 粘 塵に お け 塗鎹
ユ ッ シ ング チ ャ ン バー を 用 いて 、 胃 と消 化 管 の各 部 位 のa G‑rutinの 透 過 性を 調べた 結果、
ど の 部 位 に お い て も イ ン タ ク ト なQ G‑rutinが輸 送 さ れる こ と を確 認 し た。aG‑rutinの 輸 送 量 を 部 位 別 に 比 較 し て 、 空 腸 、 回 腸 、 盲 腸 の 輸 送量 が 高 く、 粘 膜 側ヘ 添 加 したa G‑rutin の 濃 度 に 依 存 し て 漿 膜 側 へ の 輸 送 が 増 加 し た 。 ま た 、 空 腸 と 回 腸 に お い てa G‑rutinか ら 分 解 さ れ て 生 じ たRutinの 透 過 を 確 認 し た 。 分 解 さ れ て 生 じ たQuercetinや 、 そ の 他 の 代 謝 物は ど の 部位 に お い ても 検 出 され な か った 。
5. DFAIII cDgG‑rutin堕腹箜吸収に墜t墨空髪饗
ユ ッ シン グ チ ャ ンバ ー を 用い て 、 空腸 、 回 腸、 盲 腸にお けるa G‑rutinの吸収 に及ばす 、DFAIII の 影 響を 調 べ た 結果 、 空腸と回 腸でDFAIIIに よってQG‑rutinの輸送量 が増加 する傾向 が見ら れ、
盲腸では有意に増加した。このことから、Q G‑rutinは細胞間経路(タイトジャンクション)を介して輸 送 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 。Rutinの 輸 送 量 はDFAIIIの 影 響 は 大 き く 見 ら れ な か っ た 。
本論 文 は 、 以上 の 結 果か ら 、生 体内抗酸 化性を もつ、水 溶性フ ラボノイ ド配糖 体のa G‑rutinは 胃を含む消化管からタイトジゼンクションを介して、配糖体のまま吸収され、その後、消化管以外の 組織に おいてア グリコンのQuercetinに分解、抱合化されることを初めて明らかにした。これらの結 果は、水溶性フラポノイド配糖体の新しい生理作用と、そのメカニズムを明らかにかにしたものであ り、高く評価できる。
よっ て、審査 員一同は 、松本 恵が博士 (農学 )の学位 を受け るのに十 分な資格 を有す るものと認 めた 。 ―161―