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博 士 ( 農 学 ) 田 坂 幸 平

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 田 坂 幸 平

学 位 論 文 題 名

稲麦二毛作における麦藁処理技術の開発に関する研究 学位論文内容の要旨

  

本 論文は、総頁数

122

、図69、表22、参考文献

75

を含む5章からなる和文論 文であり、別に

13

編の参考論文が添えられてい る。

  

本論文は、縦切断した麦藁が 極めて速く水中に沈下することを示してロール形藁縦切り装置 を開発し、それを自脱コンバイ ンの排藁カッタに組込み、代掻き後に浮遊する麦藁量を慣行作 業時の21%に削減できる、自脱コンバイン排藁カッタ併用型麦藁縦切断装置として完成したもの である。

1

. 稲麦二毛作の課題

  1

章は稲麦二毛作の推移・課題と対応策の研究概要および 研究目的である。稲麦二毛作(従 来は水田ニ毛作と呼んだが、転 作の普及によって稲麦以外の作物と組み合わせた二毛作が存在 するため、稲麦二毛作との新語 が慣用化された)は、春と秋の短い作付け切替え時に作業が集 中するばかりか、稲への切替期 には、田植機の普及と共に移植適期が早まって一層多忙になっ たこと、自脱コンバイン収穫で 散布された麦藁が湛水面上に浮遊集積して苗を押倒したり、田 植機の作業精度を低下させて、 欠株を増大させることが大きな課題になっている。そこで収穫 後の藁を焼却する手法が広まっ たが、煙公害や地力低下が顕在化し、麦藁を有機物資源として 鋤込む技術開発が不可欠になっ た。従来の研究では、麦藁を鋤込むための深起し法、早く沈下 させるための微細断法、地表に 藁を付着さるための籠型ローラーの利用法などが開発・試験さ れたが、全生育藁に対する浮遊 藁の比として浮遊率を定義すれぱ、いずれも3%を越えて不十 分な結果であった。

2

. 麦藁の浮遊と沈下

  2

章は麦藁の浮遊と沈下の特性を明らかにしている。代掻 き後に水面上に浮遊した麦藁は、

切断 稈長が短いか、 質量/直径が小さければ1〜3週間で沈下する。しかし、飾有り藁は3週間 経ても20%程度沈下するのみで最も障害となるばかりか、代掻き後浮遊する麦藁の約80%は節有 り藁であるため問題が大きい。 一方、これらを縦切断した麦藁は、いずれも3日問で95%以上が 沈下して沈下促進効果が高い手 法であることを示した。

3.

麦藁の浮遊と沈下の理論的解 析

‑ 312

(2)

  3章では麦 藁の吸水 ・沈下過程を実比重と見かけ比重を計測して説明した。風乾麦藁の実比 重はO. 34〜0. 37、吸水開始後2日で実比重O.8以上、水分60%以上となり、完全吸水後には実比 重1. 08〜1.09、水分74. 4〜76.8%となった。一方、縦切断した麦藁では実比重O.85以下ですべて 浮上し、実比重1.01‑ 1.1でほとんどが沈下した。また、吸水によって実比重が1.O以上になっ ても浮遊する藁は、稈内部に気泡を包み込んで見かけ比重が1.O以下となるためであり、これを 縦切断すれば直ぐに沈下した。この結果、麦藁が長期間浮遊する理由は、麦藁の吸水速度の違 いでなくて気泡によるみかけ比重が支配していること、縦切断によって沈下が促進されるのは、

稈の内部の気泡を包み込まないためであることを明らかにした。

4.麦藁縦切断装置の開発

  4章は溝状 の切断刃 を軸方 向に多数 付けた ロールを2本組み合わせ、両者の周速度を変えて 溝内の麦藁を縦に切断しようとする麦藁縦切断装置を考案した。試作の定置試験機を用いて連 続切 断試験を 行った結 果、20日経ても20%しか沈下しない節あり藁が、6日問で95%も沈下して 本装置の有効性を確認した。そこで同様の機構を市販の自脱コンバインの排藁カッタに組込ん だ試作1号機を製作して作業試験を行い、全生育藁に対する浮遊藁の比で示す浮遊率が無処理区 で3.2%あったものを処理区ではO. 590まで減らした。しかし、1号機は軸間距離に比べて両ロール の隙間が0. 5mm程度と狭いため、軸と軸受けに過度の強度を要すること、縦切断刃の形状が複雑 で加工に手間が掛かることが難点となり、実用化は無理と判断された。

5.自脱コンバイン用麦藁縦切断装置の開発

  5章は、1号機の 難点を 回避する ため、2〜6号機の 自脱コンバインの排藁カッタ併用型麦藁 縦切断装置を開発し、次の知見を得て最適仕様を決定した。加工が容易な厚さ2mmの板状縦切断 刃を用いた場合、板を8mm間隔として枚数を多くすれば縦切断性能が高まる。高速切断刃の突起 部と低速切断刃の溝を向き合わせ、縦切断刃間の隙間を見かけ上広げたロール構造は、縦割り 性能が1号機より劣るものの、代掻き前の湛水期間を長くすることにより浮遊率を1%まで下げ得 る。これらの結果を総合すると、麦藁の直径を考慮して切断刃の溝深さを1. 5^1.8mmとし、高 速回転側ロールの縦溝と他方の低速ロールの突起部が向かい合うように配置して見かけの間隙 をO〜0. 5mmにする5号機の構造が最適仕様と決定した。同機の圃場試験の結果は全生育藁に対 する浮遊藁の比で示す浮遊率がO.5%に止まった。また、6号機は縦割り切断機能を解除してカ ッターのみが作動する機構を組込み、麦収穫に縦割り切断を使い、稲収穫に使わないなど必要 に応じて選択できる構造として完成品とした。また、麦藁縦切断装置として開発したが、生稲 藁であっても縦切断できることを確認した。なお、本装置の性能を十分に発揮させるには、代 掻き 前の湛水 期間を少 なくとも3日確保して浮遊藁をできるだけ沈下させると共に、浅水で代 掻きすることが重要である。

  試作機の所要動カは、本装置を組み込むと市販ディスクカッタの3〜6倍の所用動カを要する が、 装置の回 転数を倍 加する ことによ って所 要動カが20〜 3096減少でき ることを示した。

313

(3)

  

稲麦ニ毛作は、稲麦の合計収量が10t/haにもなる高収量な土地利用方式であるため、その振 興は日本農業を発展・維持し、21世紀の人口急増に備える有カな手法のーっである。本論文は、

コンバイン排藁カッタ併用型麦藁縦切断装置を開発して浮遊藁による障害を回避する実用技術 を確立し、稲麦二毛作の振興・コスト低減・土作り・等に役立っと共に、学術的にも高い成果を 得ている。

‑ 314

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助 教 授

高 井 寺 尾 中 世 古 端

学 位 論 文 題 名

宗 宏 日 出 男 公 男 俊 一

稲麦二毛 作にお ける麦藁 処理技術の開発に関する研究

  本論 文は 、総 頁 数122、 図69、表22、 参考 文 献75を含 む5章からなる和文論文であ り、別に13編 の参考論文が 添えられている。

  稲麦 二毛 作は、春と秋の短 い作付け切替え期間に作業が 集中するばかりか、稲への 切替期には、

田 植機 の普 及と共に移植適期 が早まってー層多忙になった ことと、コンバイン収穫で 散布された麦 藁 が湛 水面 上に浮遊集積して 田植機の作業精度を低下させ ることが大きな課題になっ ている。そこ で 藁を 焼却 する手法が広まっ たが、煙公害や地力低下が顕 在化し、麦藁を有機物資源 として鋤込む 技 術開 発が 不可欠になった。 本論文は、縦切断した麦藁が 極めて速く水中に沈下する ことを示して ロ ール 形藁 縦切り装置を開発 し、それを自脱コンバインの 排藁カッタに組込み、代掻 き後に浮遊す る 麦藁 量を 慣行 作 業時 の21%に 削減 できる、自脱コンバイ ン排藁カッタ併用型麦藁縦 切断装置とし て完成したも のである。

1.麦藁の浮 遊と沈下

  代掻 き後 に水 面 上に 浮遊 した 麦藁 は 、切 断稈 長が 短 いか 、質量/直径が小さけれ ぱ1〜3週間で 沈 下す る。 しかし、代かき後 浮遊する麦藁の約80%は飾有 り藁であり、これは3週間経 ても2090程度 沈下するのみ で最も障害となる。ー方、 縦切断した麦藁はいずれも3日間で9590以上が沈下し、沈下 促進効果が高 いことを示した。

2.麦藁の浮遊 と沈下の理論的解析

  風乾麦藁の 実比重は0. 355、吸水開始 後2日で実比重0.8以上、水分60%以上となり、完全吸水後に は実比重1. 085、水分75. 5%となった。ー方、縦切断した麦藁は実比重O.85以下ですべて浮上し、実 比重1. 01以 上でほとんどが沈下した。 また、実比重が1.O以上になっても浮遊する藁は、稈内部に

315−

(5)

気泡 を包 み込 んで 見かけ比重が1.0以 下となるためであり、これを 縦切断すれば直ぐに沈下し た。

この 結果 、麦 藁が 長期間浮遊する理由 は、麦藁の吸水速度の違いで なくて気泡によるみかけ比 重が 支配 して いる こと 、麦藁の縦切断法に よって沈下が促進されるのは 、稈の内部の気泡を包み込 まな いためであることを明らか にした。

3.麦藁縦切断装置の開発

  周 速度 の異 なる 二本のロールに溝状 の切断刃を付けた麦藁縦切断 装置を考案し、連続縦切断 試験 を行った結果、沈下し難い 節あり藁が6日問で959.0も 沈下して本装置の有効性を確 認した。そこで 同種 の機 構を 自脱 コ ンバ イン の排 藁 カッ タに組込んだ1号機を製作 して作業試験を行い、全生 育藁 に対する浮遊藁の比で示す浮遊率が無処理区で3. 2%あったものを処理区では0.5%まで減らした。し かし 、1号機 は軸 問距離に比べて両ロー ルの隙間が0. 5mm程度と狭 く、軸と軸受けに強度を要 する こと、縦切断刃の形状が複 雑で加工に手間がかかること が難点である。

4.自脱コンバイン装着型麦 藁縦切断装置の開発

  1号 機 の難 点を 回避 する た め、2〜6号機 のコ ン バイ ン排 藁カ ッ タ併 用型 麦藁 縦切 断 装置を 開発 して多くの知見を得た。こ れらの知見を総合し、切断刃 の溝深きを1.5〜1. 8mmとし、高速側ロール の縦溝と低速ロールの突起 部を向かい合せて見かけの間 隙をO〜O. 5mmにする構造が最適仕様と結論 し、圃場試験において浮遊 率を0. 590に止めた。これに縦割り切断機能を解除してカッターのみが作 動す る機 構を 組込 み 、必 要に 応じ て 処理 が選択できる構造として6号機を完成させた。なお、 本装 置の 性能 を十 分に 発 揮さ せる には 、 代掻 き前の湛水期間を最低3日 確保して浮遊藁をできるだ け沈 下させると共に、浅水で代 掻きすることが重要である。

  稲麦二毛作は、稲麦の 合計収量が10 t/haにもなる 高収量な土地利用方式であ るため、その振興は 日 本農 業を 発 展さ せ、21世 紀の人口急増に備える有 カな手法のーつである。本 論文は、コンバイン 排藁カッ タ併用型麦藁縦切断装置を開 発して浮遊藁による障害を 回避する実用技術を確立しており、

稲 麦二 毛作 の 振興 ・コ スト 低減・土作り等に役立っ ばかりか、学術的にも高く 評価できるものであ る 。よ って 審 査員 一同 は、 別に 行 った 学力 確認 試 験の 結果 と合 わせ て 、本論 文の提出者田坂幸平 は博士( 農学)の学位を受けるのに十 分な資格があるものと認定 した。

316ー

参照

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