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博 士 ( 工 学 ) 亀 崎 一 彦

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 亀 崎 一 彦

学 位 論 文 題 名

幅 広 鉛 直 壁 氷 海 構 造 物 に 作 用 す る 氷 荷 重 と      振 動 特 性 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

アラ スカの クック湾 や渤海 湾に設置 されたジ ャケット式構造物などの細長い柱状の構造物に 氷板 が押し 寄せると 、氷板 がある大 きさで順 次破壊し、周期的に外カが加わる結果、構造物 が振動を引き起こすことは、1960年代から広く認識されていた。

一方 、北極 海のボー フオー ト海では 、水深の 浅い沿岸部ではオイル価格の高騰と相俟って、

1980年 中 葉、 一 辺 が 約100m、 重 量 が数 十 万 トン の オ ーダ ー に達 する巨大 な土塁式 構造物 (Caisson Retained Island)や重力式構造物(Gravity Based Structure)が建造された。これらの多く は鉛直壁を有する幅広の構造物である。

これら の大質 量の構造 物では 、振動が 発生す ることは予見されていなかった。静的な荷重の み を評 価 基準 とした 設計が採 用され ていた。 この中 のーつのMolikpaqは、1986年 の春、 設 計時に は予見 されてい なかっ た、氷と の相互 作用による深刻な振動に見舞われケーソン内部 の土が 液状化 を起こす 寸前で あった報 告され ている。また、公表されていないが鉛直壁を有 す る氷 海 構造 物であ るSSDC,CIDSもMolikpaqほどの 深刻な振 動では ないが振 動が発 生した と言わ れてい る。北極 海で経 験された これら の事象から、大型の鉛直壁構造物もある条件下 では、 振動が 発生する ことが 広く認識 される ようになった。特に、大きな振動と氷荷重が発 生する 時に観 察される 、構造 物の幅方 向の離 れた複数箇所での荷重の位相が一致する同時破 壊(Simultaneous Failure)が発生する条件を明確にすることが安全評価上、必要である。鉛直壁 は円錐 状の傾 斜壁構造 物と比 較すると 形状が 単純なことから建造が容易であり、コスト面か ら優位 性があ り、今後 も氷海 域での使 用が期 待されるが振動発生に伴う評価と、その対策が 重要な課題として認識されている。

本研 究は、 幅広の鉛 直壁構 造物に作 用する氷 荷重と振動特性を合理的に推定する手法を提言 し、 実機設 計に反映 するこ とを目的 とした。

氷荷重 の因子 となる構 造物の 幅、氷厚 の他、 振動発生の主たる因子となる剛性、貫入速度、

局部的 な破壊 モデルな ど多数 のパラメ ーター を反映させる必要がある。本研究では実験的な 研究と 数学的 モデルと の組み 合わせに より、 最終的には、氷荷重推定プログラムを作成し、

実機設 計に適 用するこ とにし た。

実験的 な研究 としては 、主と して氷海 水槽と 低温試験室を活用し、鉛直壁構造物の基本的な 挙動を 観察整 理した。 氷海水 槽試験で は尿素 を添加した粒状結晶の模型氷を使用した。模型 氷の強 度特性 は、鉛直 構造物 の破壊時 に発生 する実際の海氷の複雑な圧壊現象の細部まで相 似とは 言い難 いところ がある が、実験 結果は 、振動と荷重の定性的な把握には有用である。

(2)

先ずは、実験的な研究の第一段階として、高剛性の貫 入モデルにより、構造物の幅と氷厚の 関係 、構 造物 の形 状な どの 差違 を確 認す るた めに 、5種 類の 貫入 モデ ルを 用い て64ケース の及 ぶ一 連の 試験 を実 施し た。 次の 段階 とし て、 貫 入モ デル の幅 は一 定と し、 剛性を3段 階に 変え74ケ ース の実 験を 行い 、振 動、 荷重 特性 と 貫入速度、剛性の関係を明確にした。

試験では貫入モデルの前面には分割荷重パネルを取り 付け、荷重の分布特性、パネル間の相 関などが観察できるようにした。

氷海水槽試験では、フレーキングと呼ばれる破壊モー ドが起きていることは解るが、試験体 の前に堆積する氷片に妨げられて、直接破壊現象が観察できない。観察を容易にするために、

氷板を縦に置き、破壊した氷片が落下する機構とし、 フレーキング現象を直接確認する試験 を低温試験室にて行った。実験結果から;

1)同時破壊をともなう大 きな振動は、貫入速度が遅いほど、また構造物の剛性が低いほど発   生 し や す い 。 剛 性 が 強 い 鉛 直 壁 構 造 物 は 同 時 破 壊 が 発 生 し に く い 。 2)鉛直壁と氷板の相互作 用時の氷板破壊はフレーキングをともなう圧壊モードが卓越する。

  またフレーキングの長さは、貫入速度が速くなると小さくなり、剛性が高いほど短くなる。

3)同時破壊のメカニズム は載荷フェーズのあとに生じるスプリングバックの距離によって、

  説明できる。スプリングバックの距離が大きくなる と、載荷時の損傷領域をスムースにす   る作用がある。従って、スプリングバックが大きい 場合は定常振動でも、同時破壊が発生 する。

などが分った。氷厚に対するスプリングバックの距離 が実機と模型試験で同程度であれぱ、

同時破壊の発生する領域は、近似的には、実験結果か ら導出した無次元のコンプライアンス 係数Coにより予見できることを示した。

構造物の運動方程式、氷板の剛体運動方程式、弾性変 形方程式から、氷荷重及び振動を時刻 暦として、シミュレーションが出来る数値計算プログ ラムを作成した。幅広構造物を氷厚と ほぽ等しいセグメントに分割し、各セグメントと氷板 の間の相対変位と呼ぶ貫入量から、各 セグメントの局部荷重を近似的に計算するモデルを、実験的な研究成果を反映して作成した。

氷厚 方向 には5〜7層に 分割 する レイ ヤー モデ ルを 提案した。前述した剛性を変更して実施 した氷海水槽試験結果と本氷荷重推定プログラムによ る計算結果を比較し、両者が良く一致 することを確認した。同時破壊の発生する範囲は近似 的には、Coにより予見できるが、同時 破壊の条件は、構造物の剛性、地盤の剛性、氷板の氷 厚、剛性、強度、速度など多くの因子 が関係していることから、実機設計上からは、本氷荷 重推定プログラムにより振動、荷重の 応答を計算し、与えられた設計環境条件下で同時破壊 の発現する頻度を予見することが安全 評価上必要である。

また 実機 によ る検 証と して 、氷 荷重 推定 プロ グラ ムを1986年のMolikpaqで観察された同時 破壊の事例に適用し、ほば現象が定性的にも定量的に も本プログラムにより予見できること を示した。

更に、中規模 の重力式鉛直壁構造物を例題にして、地盤剛性、氷板の 移動速度をパラメータ ーとし一連の 計算を行い、同時破壊の発生する領域と氷板の移動速度 の関係、剛性と全体荷 重 の 関 係 な ど に つ い て 考 察 し 、 設 計 上 、 留 意 す べ き 事 項 を 取 り ま と め た 。 同 時破 壊が 発生 する と、全体荷重は非同時破壊時と 比べると約7割程度増加する 可能性があ ることを示し た。また、設計的な観点からは、同時破壊を避けるほう が好ましいが、同時破 壊を避けるた めには、基本的には地盤を含めた構造物の剛性を高くす る必要がある。同時破 壊が発生する ような氷況または地盤条件の場合、同時破壊が発現する 頻度を予見し、繰り返 し荷重による 地盤の安定性にっいて検討する必要がある。また同時破 壊時の全体荷重、局部 荷重に基づく 構造設計が必要である。

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一連の検証により、一様厚さの氷板に対しては、開発した氷荷重推定プログラムは設計上も 十分実用的なレベルに達した言える。最後に将来課題として、リッジ荷重に対する予備的な 試験結果についても言及した。現在開発が進みつっあるサハリン海域では、氷片が山状に堆 積したりッジが最大荷重を与えると言われており、本氷荷重推定プログラムをりッジ問題ヘ 拡張していく必要があると考える。

(4)

学位論文審査の要旨

主 査   教 授   佐 伯   浩 副 査   教 授   藤 田 睦 博 副 査   教 授   板 倉 忠 興 副 査   教 授   三 上   隆

学 位 論 文 題 名

幅広鉛直壁氷海構造物に作用する氷荷重と      振動特性に関する研究

北極 海の ボー フオ ート 海で は、 水 深の 浅い 沿岸 部ではオイル価格の高 騰と相俟って、1980 年中葉、一辺が約100m、重量が数十万トンの オーダーに達する巨大な土塁式構造物(Caisson Retained Island)や重力式構造物(Gravity Based Structure)が建造された。これらの多くは鉛直壁 を有する幅広の構造物である。

  これらの大質量の構造物では、振動が発生 することは予見されていなかったため、静的な 荷重 のみ を評 価基 準と した 設計 が 採用 され てい た。この中のーつのMolikpaqは、1986年の 春、設計時には予見されていなかった、氷と の相互作用による深刻な振動に見舞われケーソ ン内部の土が液状化を起こす寸前であった報 告されている。北極海で経験されたこれらの事 象から、大型の鉛直壁構造物も、ある条件下 では、振動が発生することが広く認識されるよ うになった。鉛直壁は円錐状の傾斜壁構造物 と比較すると形状が単純なことから建造が容易 であり、コスト面から優位性があり、今後も 氷海域での使用が期待されるが振動発生に伴う 評価と、その対策が重要な課題として認識さ れている。

  以上のことより本論文は、幅広の鉛直壁構造 物に作用する氷荷重と振動特性を合理的に推 定 す る 手 法 を 提 言 し 、 実 機 設 計 に 反 映 す る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。   氷荷重の因子となる構造物の幅、氷厚の他、振動発生の主たる因子となる剛性、貫入速度、

局部的な破壊モデルなど多数のパラメーターを 反映させる必要があるが、本論文では実験的 な研究と数学的モデルとの組み合わせにより、最終的には、氷荷重推定プログラムを作成し、

実機設計に適用している。実験的な研究としては、主として氷海水槽と低温試験室を活用し、

鉛直壁構造物の基本的な挙動を観察整理してい て、氷海水槽試験では最新の技術である尿素 を添加した粒状結晶の模型氷を使用した。

実験的な研究の第一 段階として、高剛性の貫入モデルにより、構造物の幅と 氷厚の関係、構 造 物の 形状 など の差 違を 確認 する ため に 、5種類 の貫 入モ デル を用 い て64ケースの及ぶ一 連 の試 験を 実施 した 。次 の段 階と して 、 貫入 モデ ルの 幅は 一定 とし 、剛 性を3段階に変え 74ケー スの 実験 を行 い、 振動 、荷 重特 性 と貫 入速 度、剛性の関係を明確にした。試験では 貫入モデルの前面に は分割荷重パネルを取り付け、荷重の分布特性、パネル 間の相関などが

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解析できるようにしている。氷海水 槽試験では、フレーキングと呼ばれる破壊モードが起き ていることは解るが、試験体の前に 堆積する氷片に妨げられて、直接破壊現象が観察できな い。観察を容易にするために:氷板 を縦に置き、破壊した氷片が落下する機構とし、フレー キン グ現 象を 直 接確 認す る試 験を 低温 試験 室に て行い、実験結果から以下 の結論を得た。

11同時破壊をともなう大きな振動は 、貫入速度が遅いほど、また構造物の剛性が低いほど発   生 し や す い 。 剛 性 が 強 い 鉛 直 壁 構 造 物 は 同 時 破 壊 が 発 生 し に く い 。 2)鉛直 壁と氷板の相互作用時の氷板破壊はフレーキングをともなう圧壊モードが卓越する。

  またフレーキングの長さは、貫入 速度が速くなると小さくなり、剛性が高いほど短くなる。

3)同時 破壊のメカニズムは載荷フェーズのあとに生じるスプリングバックの距離によって、

  説明できる。スプリングバックの 距離が大きくなると、載荷時の損傷領域をスムースにす   る作用がある。従って、スプリン グバックが大きい場合は定常振動でも、同時破壊が発生 する。

氷厚に対するスプリングバックの距 離が実機と模型試験で同程度であれば、同時破壊の発生 する 領域 は、 近 似的 には 、実 験結 果か ら導 出し た無次元のコンプライアン ス係数Coにより 予見できることを示した。

  さらに、構造物の運動方程式、氷 板の剛体運動方程式、弾性変形方程式から、氷荷重及び 振動を時刻暦として、シミュレーシ ョンが出来る数値計算プログラムを作成した。幅広構造 物を氷厚とほば等しいセグメントに 分割し、各セグメントと氷板の間の相対変位と呼ぶ貫入 量から、各セグメントの局部荷重を 近似的に計算するモデルを、実験的な研究成果を反映し て作 成し た。 氷 厚方 向に は5〜7層 に分 割す るレ イヤーモデル を提案し、前述した剛性を変 更して実施した氷海水槽試験結果と 本氷荷重推定プログラムによる計算結果を比較し、両者 が良く一致することを確認した。同 時破壊の発生する範囲は近似的には、Coにより予見でき るが、同時破壊の条件は、構造物の 剛性、地盤の剛性、氷板の氷厚、剛性、強度、速度など 多くの因子が関係していることから 、実機設計上からは、本研究より開発された、氷荷重推 定プログラムにより振動、荷重の応 答を計算し、与えられた設計環境条件下で同時破壊の発 現する頻度を予見することが安全評 価上必要であることも明らかにした。また実機による検 証と して 、氷 荷 重推 定プ ログ ラム を1986年 のMolikpaqで観察 された同時破壊の事例に適用 し 、 実 現 象 が 定 性 的 に も 定 量 的 に も 本 プ ロ グ ラ ム に よ り 予 見 で き る こ と を 示 し た 。   更に、中規模の重力式鉛直壁構造 物の詳細な研究成果を基にして、地盤剛性、氷板の移動 速度をパラメーターとし一連の計算 を行い、同時破壊の発生する領域と氷板の移動速度の関 係、剛性と全体荷重の関係などにっ いて考察し、設計上、留意すべき事項を取りまとめた。

また 、同 時破 壊が 発生 する と、全体荷重は非同時破壊時と比べ ると約7割程度増加する可能 性があること、設計的な観点からは 、同時破壊を避けるほうが好ましいが、同時破壊を避け るためには、基本的には地盤を含め た構造物の剛性を高くする必要があることを明らかにし た。一連の検証により、一様厚さの 氷板に対しては、開発した氷荷重推定プログラムは設計 上も 十分 実用 的な レベ ルに 達し た言 える 。

  これを要するに、著 者は氷海域に建設される幅広鉛直壁氷海構造物に作用す る氷荷重と振 動特性に関する多くの 知見を得たものであり、氷工学、海洋工学に貢献すると ころ大なるも のがある。よって著者は北海道大学 博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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