博 士 ( 農 学 ) 住 尾 善 彦
学 位 論 文 題 名
褐 毛 和 種 去 勢 牛 の 産 肉 特 性 に 関 す る 飼 養 学 的 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
褐 毛 和 種tま 、 熊 本 県 を 中 心 に 飼 養 さ れ て お り 、 国 産 牛 肉 生 産 の 一 翼 を 担 っ て い る 。 当 該 品 種 は 、 肥 育 技 術 の 基 本 と な る べ き 産 肉 特 性 に 不 明 な 点 が 多 く 、 ま た 、 こ れ ま で の 改 良 の 成 果 に よ り 肉 生 産 の 量 的 な 面 で は 満 足 で き る も の の 、 肉 質 面 で は 不 適 切 な 飼 養 管 理 も 一 因 と な り 、 枝 肉 の 品 質 、 格 付 に お い て 下 位 等 級 が 多 く 、 ば ら っ き が 大 き い 等 の 問 題 が 残 さ れ て い る 。 さ ら に 、 平 成3年4月 か ら 牛 肉 輸 入 の 自 由 化 が な さ れ 、 国 産 牛 肉 の 取 引 価 格 の 低 落 及 び 肉 質 に よ る キ 各 差 の 拡 大 が み ら れ る こ と か ら 、 肉 質 の 改 善 が 緊 急 か つ 最 大 の課題となっている。
そ こ で 、 本 研 究 で は 褐 毛 和 種 去 勢 牛 の 産 肉 特 性 を 明 ら か に す る た め 、 熊 本 県 に お い て 飼 養 試 験 を 実 施 し 、 肥 育 過 程 に お け る 枝 肉 各 組 織 の 成 長 と そ れ に 伴 う 体 組 織 構 成 の 変 化 及 び 肉 質 の 変 化 等 に つ い て 、 栄 養 水 準 を 含 め て 検 討 し た 。 さ ら に 、 こ れ ら の 産 肉 特 性 に つ い て 総 合 的 な 検 討 を 行 い 、 褐 毛 和 種 去 勢 牛 の 肉 質 向 上 に 重 点 を 置 い た 飼 養 管 理 に つ い ての肥育モデルを提示した。
主な成果は、以下のとおりである。
1) 褐 毛 和 種 去 勢 牛 の 肥 育 期 間 に お け る 増 体 曲 線 を 作 成 し 、 次 式 が 得 ら れ た 。 y二ニ1041(1ー1.3066e‑o,o。 。1′よ )(y:体重(kg),t:生後日齢(日、300日齢以降))
こ の 曲 線 は 、 高 栄 養 下 に お け る 肥 育 期 間 の 体 重 の 推 移 を よ く 表 わ し 、 体 重 値 や 日 増 体 量
(DG)値の1つの基準として利用できることが明らかとなった。
2) 高 栄 養 下 で 骨 、 筋 肉 及 び 脂 肪 の 各 組 織 の 成 長 及 び そ れ に 伴 う 枝 肉 の 組 織 構 成 の 変 化 に つ い て 、 月 齢 ・ 体 重 ・ 枝 肉 重 量 に 対 す る 相 対 成 長 や 変 化 等 に よ り 検 討 し た と こ ろ 、 高 栄 養下における特徴としては、以下のことが明らかとなった。
, ヨ 骨 は 生 後22.9カ 月 齢 時か ら 成 長 速度 が 鈍 っ たが 、 体 重 及び 半 丸 枝 肉重 量 に 対 する 相 対 成 長 で は 、16;tJ月 齢 時 頃 か ら ( 体 重 約481kg及 び 半丸 枝 肉 重 量約155kg)成 長割 合 が や や高 ま っ た。
@ 筋 肉 の 成 長 な 、 生 後14 .1‑14 .3:8月 齢 か ら 鈍り 、 同23.5ー27.2カ 月齢 か ら は 極め て 鈍 化 し た 。 体 重 及 び 半 丸 枝 肉 重 量 に 対 す る 成 長 で は 、 月 齢 に お け る 最 初 の 折 曲 点 に 対 応 す る そ れ ぞ れ の 重 量 か ら 成 長 が 鈍 り 、 体 重 に 対 し て は 全 体 の 成 長 と し て 約680kgか ら さ ら に 鈍 化 した。
: ヨ 脂 肪 は 最 も 晩 熟 な 組 織 で 、 概 ね 生 後141J月 齢 時 ( 生 体 重 で 約450kg、半 丸 枝 肉 重量 で 約 130kg程 度 ) か ら 成 長 速 度 ( 割 合 ) が 高 ま り 、 そ の 後 肥 育 が 進 む ほ ど 蓄 積 が 促 進 さ れ た 。
@ 組織構成 の変化としては、骨害0合iま生後15 ‑16カ月齢時(体重約500kg、半丸枝肉重量約 150kg)の1】.5%程 度まで急 速に減 少し、その後ゆるやかに滅少した。筋肉害9合は生後19
‑ 21カ月齢時(体重580‑ 630kg、半丸枝肉重量180‑ 200kg)の49 ‑ 51%まで急速に減少し、その 後 ゆるやか な減少 となった 。一方、 脂肪割 合は、22;8月齢時の 約35%ま で急速に 増加し、
そ の 後 横ば ぃ と なる が 、 体重 及 び 半丸 枝 肉 重量 に 対 する変 化では、 一定の 割合で増 加し 続けた。
さ ら に 、DGをO.7kg程 度 に して 検 討 した と こ ろ、DGの影 響 と して は 、 汝の こ と が 明 らかとなった。
@ 月 齢 に伴 う 骨 の成 長 は 、高 栄 養 下と ほ と んど 変 わ らない が、体重 及び枝 肉重量に 対す る 成 長 でiま 、 高栄 養 下 に比 較して 若い時期 に成長が 進み、 その後肥 育が進 むと高栄 養下 の成長割合が高まり、双方同レベルになる傾向がみられた。
f魯 月 齢に 伴 う 筋肉 の 成 長で は、高 栄養下よ りはじめ 成長速 度がわず かに小 さいが、 その 後 ほ ぼ 変 わ ら な い 成 長 を 示 し 、 月 齢 が 進 む に っ れ や や 上 回 る 成 長 を 示 し た 。
@ 脂肋の成 長が最 も大きな 影響を受 け、概 ね生後17カ 月齢時 (体重で約550kg、半丸枝肉重 量で約170kg)までの若い時期に高栄養下より成長が抑制された。
i4)DGは 各 組 織 の 成 長 へ の 関 与 を 介 し て 、 組 織 構 成 に影 響 を 及ぼ し た 。と く に 、DGを O.7kg程度にす ると脂 肪成長の 抑制に より脂肪 割合が 減少し、 その分主 に筋肉 割合が増 加 し た 。 さら に 、 肥育 が か なり 進 ん だ状 況 下 でも 、 程 度はや や小さく なるが この傾向 が持 続された。
3) 肉 質の 変 化 を、 月 齢 、生 体 重 及び 枝 肉 に占 め る 脂 肪割 合 と の関 連 で みる と 、高 栄養 下でtま16.9‑17.9カ月齢、体重534 ‑ 555kg及び脂肪割合25.4‐26.2%まで評点が急速に向上 し 、 こ のピ ー ク 以降 そ の 程度 が 非 常に ゆ る やか と な っ た。DGを0.7kg程 度 にす る と、高 栄 養 下 に比 べ 変 化パ タ ー ンが 異 り 、最 終 的 な評 点 値 は向上 しなかっ た。こ れらのこ とか ら 、肉質は 加齢や 各組織( とくに脂 肪組織 )の成長 に伴い 急速に向 上して いくが、 そのピ ー ク 以 降は そ の 程度 が 非 常に ゆ る やか に な るこ と が 明らか となった 。また 、飼養管 理面 か ら の 肉質 向 上 対策 と し ては 、 高 栄養 に よ る飼 養 体 系が適 しており 、肉質 向上のピ ーク までの飼料給与管理において改善の余地のあることが示唆された。
4) 以 上 の 産 肉 特 性 を 総 合 的に 検 討 し たと こ ろ 、飼 養 管 理の 面 か ら重 要 と 思わ れ る3つ の転換時期(Pl こ・ヨ)の存在することが明らかになった。すなわち、P1:14カ月齢時(体重 約430kg)、P‑:18カ月齢時(同約550kg)及びP3:23カ月齢時(同約680kg)で、筋肉の成長が 最 も 旺 盛なPlまで を 肥 育前 期 、 脂肪 が 筋 肉の 成 長 を 上回 り 、 肉質 が 急 速に 向 上 するPよ か らP2ま で を 肥 育 中 期 、 肉質 の 向 上 が大 き く 鈍るP2以降 を 仕 上げ 期 に 区分 で き た。 ま たP3は仕 上 げ 期に 位 置 する が 、 これ 以 降 筋肉 の 成 長 がかなり 鈍化する ことか ら出荷時 期 を左右する重要な時期であることが示唆された。
5) さ らに 、 肥 育開 始 時 から の 自 由採 食 に よる 飼 養 試 験を 実 施 した 結 果 、野 外 の肥 育成 績 等 と 比較 し て 、量 的 生 産面 に は 悪影 響 が なく 、 肉 質で改 善効果が 大きい ことが明 らか と な っ た。 と く に、 可 消 化養 分 総 量(TDN) 含 量 の 高い 濃 厚 飼料 を 全 期間 白 由 採食さ せ た区で、質・量ともに優れていた。
6) 以 上の 結 果 に基 づ き 、肉 質 向 上を 主 眼 とし た 肥 育 モデ ル の 策定 を 行 った 。 その 要点 は 、 .D増 体 量 を高 め る ため 、TDN含 量 の高 い(74% 程 度 )濃 厚 飼 料を 肥 育 開始 時 から自
由採食させ、採食レベルを商く維持する。 ーg 21カ月齢時までに650kg〜700kg程度まで増体 させ る。 @牛の体格の大小や脂肪蓄積の 状況を勘案しながら、21カ月齢から出荷しはじめ、
24カ月齢までに出荷を終えることで ある。
以上 のよ うに 、 本研 究で は、 褐毛 和種 去勢 牛の 肥育 過程 にお ける 枝肉各組織の成長及 び それ に伴 う体 組 織構 成の 変化 なら びに 肉質 の変 化に つい て検 討し て、産肉の基本的し く みに っな がる 産 肉特 性を 明ら かに する とと もに 、飼 養管 理技 術の 改善を図る基礎的知 見 を得 た。 また 、 これ らを もと に、 褐毛 和種 去勢 牛の 肉質 の改 善を 主体とした肥育モデ ル を提 示し た。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
朝 日田 上 山 清 水 大 久保
学 位 論 文 題 名
康 司 英 一 弘 正 彦
褐毛和種 去勢牛の 産肉特性に関する飼養学的研究
本論 文は、表30(付表9)、図50及び引用文献120を含む総ページ数182の和文諭文であり、
5竃に分けて論述されている。
褐 毛 和 種は 、 熊 本 県を 中 心 に飼 養 さ れて い る が、 肥 育 技術 の 基 本と なる べき産肉 特性 に 不明 な 点 が多 く 、 ま た、 肉 生 産の 量 的 額面 で は 満足 で き るも の の 、肉 質面では 不適切 な 飼養 管 理 も一 因 と な り、 校 肉 の品 質 、 格付 に お いて 下 位 等級 の も のが 多く、ば らっき が大きい等問題が残されている。
そ こ で 、著 者 は 、 褐毛 和 種 去勢 牛 の 産肉 特 性 を明 ら か にし 、 こ れに 基づ き飼養管 理技 術 を改 善 す るこ と に よ り効 率 的 な生 産 を 図る と と もに 、 肉 質の 改 善 を目 的として 本研究 を 実施 し た 。飼 養 試 験 は、 熊 本 県に お い て実 施 し 、肥 育 過 程に お け る枝 肉各組織 の成長 と それ に 伴 う体 組 織 構 成の 変 化 及び 肉 質 の変 化 等 につ い て 栄養 水 準 も含 めて検討 した。
さ らに 、 こ れら の 産 肉 特性 に つ いて 総 合 的な 検 討 を行 い 、 飼養 管 理 上の 要件を明 らかに するとともに、肉質向上に重点を置いた肥育モデルを提示した。
主な成果な、以下のとおりである。
1)褐毛和種去勢牛の肥育期間における増体は次式で表わされる。
y 1041(1―1.3066e―o.00 20ユ4 )(y:体重(kg),t:日齢(日、300日齢以降))
2) 肥 育 過 程 にお け る 骨、 筋 肉 及び 脂 肪 各 組織 の 成 長、 そ れ に伴 う 枝 肉の 組 織 構成 の 変 化 な ら び に 肉 質の 変 化 につ い て 検討 し た 結 果、 体 の 各組 織 の 成長 に っ いて 、3つの 転 換 時期(P1,2.3)の存在することが明らかになった。すなわち、P・l:14カ月齢時(体重430kg)、
P2:18カ月齢時(同550kg)及びP3:23カ月齢時(同680kg)で、筋肉の成長が最も旺盛なPユま で を 肥 育 前 期 、 脂 肪 が 筋 肉 の 成 長 を 上 回 り、 肉 質 が急 速 に 向上 す るP1か らP2ま で を肥 育 中 期 、 肉 質 の 向 上 が 大 き く 鈍 るP2以 降を 仕 上 げ期 に 区 分で き た 。ま たP3以 降 筋 肉の 成 長が か な り鈍 化 すること から出荷 適期の 半IJ断に重 要な時 期である ことが 示唆され た。
ま た、 飼 養 管理 面 か ら の肉 質 向 上対 策 と して は 、 高栄 養 に よる 飼 養 体系 が適して おり、
とくにP2までの飼料給与管理が肝要であることが示唆された。
3) さ らに 肥 育 開 始時 か ら の自 由 採 食に よ る飼養試 験を実 施した結 果、野 外の肥育 成績
等と比較して、量的生産面には悪影響がなく、肉質で改善効果が大きいことが明らかと なった。とくに、可消化養分総量(TDN)含量の高い濃厚飼料を全期間自由採食させた 処理区は質・量ともに優れていた。′