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博士(医学)須藤和昌 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)須藤和昌 学位論文題名

脊髄空洞症の臨床的研究 学位論文内容の要旨

【目的】

  か つ て 脊 髄 変 性 疾 患 と みな され てい た脊 髄空 洞症 はMRIの登 場に より 診断 の面 で急速 な進 歩が あっ たが ,実 際の 臨床の場で起きる現象の教科書的記載はなお不十分であり,臨 床神 経内 科医 とし てそ の診 断,症候,経過の捉え方に未だなお奥深さを感じることがしば しばである,そこで本症の臨床像をより明らかにすることを目的とレてこの研究を行った.

【 対象 およ び方 法】

  1988年 以 来 , 北 海 道 大 学 医 学 部 付 属 病 院 神 経 内科 外 来 お よび 入院 での臨 床診 療の 場 に おい て脊 髄空 洞症 が確 定ないし疑われる患者の脳神経系,運動系,感覚系,小脳系,自 律 神経 系な どに 関す る臨 床所見および脳・脊髄の画像診断に関するデータを可能な限り収 集 した .受 診の 途絶 えて いる患者には電話や手紙で繰り返し受診を促し受診してもらうよ う にし た‐ 受診 ので きな い状況の場合には電話・手紙により本人のみならず家族にたいし 繰 り返 し電 話・ 手紙 イン タピューを行った.さらに,診察および補助的な電話・手紙イン タ ピ ュ ー を 時 期 を お い て 繰 り 返 こ と に よ り で き る 限 り 患 者 の 追 跡 を 行 っ た .   そこ で得 られ た本 症に 関す る臨 床的 知見を 教科 書や 文献 の記 載と 照ら し合 わせ ると過 去 に記 載の ない 現象 ,過 去の記載を補うもの,過去の記載を訂正するものなどがあった,

そ こで ,更 に逐 次症 例報 告も行いながら本症の臨床像を明らかにすることを目標として.

時 には 本症 に関 する 従来 の教科書的記載の更新をも試みながら臨床研究を展開してきた,

そ の中 で特 に臨 床症 候の 左右 差, 発汗 障害と 肢肥 大を 中心 とす る自 律神 経症 候, および 臨 床経 過に 注目 して きた .

【結果および考察】

  脊髄 空洞 症で は運 動障 害, 感覚 障害 は素 性お よび髄 節性 両者 の混 合の 型を とり ,日 常 臨 床の 場で 捉え られ る自 律神 経障 害は 髄節 性の 型を示 すが ,い ずれ も基 本的 には 非対 称 性である.臨床症候のlater alityは空洞のlater aliりに一致する,過去に感覚障害において 両 側宙 吊り 型が 特徴 的と され た時 代も あっ たが それは 空洞 の位 置や その 周囲 の脊 髄障 害 が対称性の場合で,むしろ特殊なものである.

  発汗 障害 は脊 髄側 角中 問質 外側 核に ある 交感 神経節 前神 経細 胞の 機能 の変 化に よっ て 生 じる が, 同様 に肢 肥大 も節 前細 胞の 機能 亢進 によっ て生 じる ,節 前神 経細 胞の 機能 は 病 初期 の脊 髄組 織変 化の 少な いう ちは 亢進 して 発汗過 多や 肢肥 大を もた らし ,病 期の 進 行と とも に組 織変 化が 進むと 節前 細胞の機能が低下し発汗低下をもたらすと推定される.

(2)

  追跡調査により臨床症候が自然寛解し,空洞も消失する例が稀ながらあることが証明 されたが,空洞が消失した後にも症状は残るため,症状をもたらすのは空洞そのものだ けでなく空洞によって生じたグリオーシスなどの組織変化に帰すべき部分が大きいと思 われる.空洞の有無や大小が必ずしも症状の強さと平行しないことは診断の際に注意を 要する.Chiari奇形を伴う例での空洞の増大・縮小は後頭蓋窩のtightnessおよび小脳扁 桃下端の形状と位置が後頭蓋窩での髄液流に影響することによると推定したが,空洞の 自然消失もこの機序のなかで起こったものと考えられる,また空洞消失には他の機序を 想定する立場もあり単一ではない可能性がある.

  本症はなお病因の解明が必要であり,それが対症療法だけでなく,原因療法にっなが る可能性があるものと考えるが,空洞の自然経過の特徴を捉えることは治療法選択の際 に有益な情報であると考えられる.

【まとめ】

1. 脊 髄 空 洞 症 に 関 す る 11年 余 に 渡 る 臨 床 的 研 究 の 成 果 を 報 告 し た . 2.本症はその症候の非対称性に注目すべきである.

3.本症は索性および髄節性の型をとる運動障害,感覚障害のほか,髄節性の型を示す 自律神経障害においても基本的には非対称性であり,そのlater aliづは空洞のlaterむゅに 一致する.

4.発汗障害や肢肥大.は脊髄側角中間質外側核にある交感神経節前細胞の機能の変化に よって生じる.節前細胞の機能は病初期の脊髄組織変化の少ないうちは亢進して発汗過 多や肢肥大をもたらし,病期の進行とともに組織変化が進み節前細胞の機能が低下する と発汗低下をもたらすと推定される.

5.空洞が消失した後にも症状の残る例がしばしばあるが,これは空洞周囲のグリオー シ ス な ど の 組 織 変 化 に よ る も の で あ り 診 断 の 際 に 注 意 を 要 す る . 6. Chiari奇形を伴う例では小脳扁桃下端の形状と位置が後頭蓋窩での髄液流に影響す ることにより本症の自然経過を規定すると想定した.

7. 空洞の自然 経過例の特 徴を捉えることは治療法選択の際に有益なことと考える,

(3)

学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名 脊髄空洞症の臨床的研究

  かつて脊髄変性疾患とみなされていた脊髄空洞症はMRIの登場により診断の面で 急速な進歩があったが,実際の臨床の場で起きる現象の記載はなお不十分である。そ こで本症の臨床像をより明らかにすることを目的として,その診断,症候,経過の捉 え方を中心に臨床的研究を行った。

  1988年 か ら1999年 の11年 間 に 北 海 道 大 学 医 学 部 付 属 病 院神 経 内 科 外 来 お よび入院での臨床診療の場において脊髄空洞症と診断された症例の脳神経系,運動系,

感覚系,小脳系,自律神経系などに関する臨床所見および脳・脊髄の画像診断に関す るデータを可能な限り収集した。受診の途絶えている患者には電話や手紙で連絡し受 診してもらい,受診のできない状況の場合には電話・手紙により本人のみならず家族 に 対し 電話 ・手紙インタビューを行った。診察および補助的な電話・手紙インタ ピューを時期をおいて繰り返ことで患者の追跡を継続した。その中で特に臨床症候の 左右差,発汗障害と肢肥大を中心とする自律神経症候,および臨床経過に注目してき た。

  脊髄空洞症では運動障害,感覚障害は索性および髄節性両者の混合の型をとり,臨 床の場で捉えられる自律神経障害は髄節性の型を示すが,いずれも基本的には非対称 性である。運動障害では臍が下方へ移動するBeevor徴候を初めて発見し,また過去に 感覚障害において両側宙吊り型が特徴的とされていたが,片側性が圧倒的に多いこと を証明した。自律神経障害は脊髄側角中間質外側核にある交感神経節前神経細胞の機 能の変化によって生じるが,肢肥大も節前細胞の機能亢進によって生じると考えられ,

その3症例を報告した。発汗については,節前神経細胞の機能は病初期で脊髄組織変 化の少ないうちは亢進して発汗過多をもたらし,病期の進行とともに変化が進み発汗 低下をもたらすことを30例の追跡から明らかにした。

  追跡調査により臨床症候が自然寛解し,空洞も消失する例が稀ながら存在すること も証明し,とくにChiari奇形を伴う例での空洞の増大・縮小は後頭蓋窩の緊迫度と,

小脳扁桃下端の形状と位置が後頭蓋窩での髄液流に影響することによると推定し,空 洞の自然消失もこの機序のなかで起こりうると考察した。本症はなお病因の解明と治 療法の開発が必要な疾患であるが,空洞の自然経過の特徴を捉えることは治療法選択

雄 弘 男 邦    和 代部 坂 田 阿 宮 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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の際に有益な情報であると言える。

  公開発表にあたり,副査の阿部弘教授より,自然寛解を来す要因,神経放射線学 的に推定できる要素があるか,発汗過多から減少に至る症例の観察例があるか,また 副査の宮坂和男教授からは,空洞が何故片側性かつ後角に起こるのか,片側の肢肥大 は萎縮へと移行するのか,呈示49症例中Chiari奇形のない例も含まれているが,そ れは自然寛解例の可能性があるのか,ついで主査の田代邦雄教授より,脊髄空洞症の 発汗障害の定量的検討についての質問があったが,申請者は自己の経験ならびに文献 的考察をふまえ概ね適切な回答を行った。

  この論文は11年にわたる脊髄空洞症の症例研究を着実に英文論文として発表を重 ね,過去の論文・教科書に記載のない現象,過去の記載を補填するもの,そして過去 の記載を訂正する所見を纏めたものであり,審査員一同は,これらの成果を高く評価 し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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