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博士(工学)長野克則 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)長野克則 学′位論文題名

凍 結を伴 う土壌熱 源ヒートポンプの採熱特性に関する研究 学位論文内容の要旨

  土壌は膨大な熱容量を有し,存在の普遍性,温度レベ少の安定性を有するため,古くか らヒートポンプの熱源として有望であると考えられ,多くの研究がなされてきた.しかし ながら,土壌をヒートポンプの熱源として利用するシステムはいまだ欧米の一部を除いて 普及には至っていなぃのが現状である.普及を阻んでいる最大の原因は,土壌の熱伝導性 が悪いために地中に設置する土壌熱交換器の規模が大きくならざるを得なぃことに問題が ある.また,熱利用量に大きな影響を及ぼす土壌の熱物性値が土壌の種類や含水状態によ って大きく異ることや複数の熱交換器の設置方法などが問題を複雑にしており,解析的,

実験的な裏付けのある設計法が確立されていないことにも原因カ湛ゝる.本システムの普及 の鍵は,設置する熱交換器と土壌の伝導性を高め,通過抵抗をできるだけ低くすることに より土壌熱交換器の規模を縮小させることにあるとぃえる.このためには,土壌中の水分 の凍結潜熱の利用と凍土の高い熱伝導率を利用することが非常に有効であると考える.

  通常,土壌中には体積割合で20〜60%の水分が含まれており,0℃におぃて莫大な潜熱 量を放出しながら凍結する.一方,凍土の熱伝導率は未凍土に比べて上昇し,飽和に近け れば未凍土の2倍前後にまで達することが知られている.従来,凍結を伴う土壌の熱利用 に関していくつかの研究があるが,いずれも飽和土壌を対象にしたものであり,また短い 期間で採熱能カを評価しているものがほとんどである.しかしながら,ヒートポンプの熱 源として考えるならば.長期間にわたっての解析からその評価カ泌要があると考える.

  この様な現状に基づき,本論文では,ヒー卜ポンプの熱源としての土壌のより効果的な 利用方法として,凍結を伴う熱利用について取り上げ,その採熱特性を長期間にわたる実 験と解析から究明することを目的としている.まず,自然状態に近い不飽和土の凍結・融 解による熱物性値の変化の機構を定量的に明らかにし,次に,ヒートポンプの熱源として の採熱特性と長期的利用可能性を求め,埋設方式の異なる2つの形態,垂直方式と水平方 式についてフイールド実験を行い,それらの特性を把握した.さらに,設計に必要な基本 的な指針と知見を与え,負荷に見合う適正な土壌熱交換器の規模を示した.特に,従来こ の分野では解析例がなぃ自然状態に近い土壌を対象に数年間にわたる実験と解析から採熟 能カの評価にとどまらず,夏期の自然回復や長期間の使用可能性について明らかにした.

  本論文は8章より構成されている.第1章は,序論であり,土壌をヒートポンプの熱源 として用いることの意義と土壌の凍結を伴う熱利用についての有効性について述べた.

(2)

  第2章 は,土壌 を熱源とするヒートポンプシステムの従来の研究について概説するとと もに,土壌の凍結を伴う熱利用,および不飽和土壌における凍結現象に関する従来の研究 について解説し,本研究の目的および位置付けを明らかにした・

  第3章 では,凍 結を伴わ ないO℃以 上での熱利 用に関し て,長さ20mの垂直埋 設管を用 いた 実験と解 析から検 討を行った.2年間にわたる連続採熱実験および放熱・採熱の繰返 し実験を行しユ,顕熱移動による採熱量二カx10〜20W/mとその能カは小さしユことを示した.さ らに,Kelvinの線源理論を応用して凍結を伴わない土壌の熱利用の限界熱量について検討 し,各種条件下での限界採熱量を提示した.

  第4章 では、凍 結を伴う土壌の熱利用を研究する際の基礎となる,凍結・融解過程にお ける 熱伝導率 について5種類の土壌を対象に実験を行い,温度と含水率に対する熱伝導率 の変化を明らかにした.また,凍土中の不凍水分量の定量を行い,各種土壌の熱伝導率の 変化の相違を説明した.以上の実験の結果を踏まえ,数値計算において必要となる未凍土・

凍土を連続的に扱うことカぐできる熱伝導モデ少を新たに提案した.これは,未凍土の直並 列型の3相モデ´レを発展させ,不凍水分量および含氷率を考慮することで凍土領域まで拡 張したものである.計算値は実測値と比較的良い一致を示しモデルの汎用性を実証した。

  第5章 では,採 熱量および土壌温度の予測のために必要な,凍結・融解を伴う熱・水分 同時移動の基礎理論とその数値解法を示し,土壌採熱の研究分野で初めて自然状態に近い 不飽和土壌を対象にした,採熱量および土壌温度,土壌水分量等を計算するコンピュータ プロ グラムの 開発を行 った.熱伝導率の予測には、第4章で提案した熱伝導モデルを適用 し,精度良い予測を可能としている.また,土壌採熱に関する室内実験を行い,本計算プ ログラムが実際の現象を精度良く再現することを明らかにした.

  第6章では、凍結を伴う垂直埋設管による土壌採熱のフイー´レド実験と解析を行った。

直膨型ヒートポンプを用いて実用規模での採熱実験を120日間にわたって行い、凍結を伴う 場合の採熱量および土壌温度の推移の特性を明らかにした.期間平均の単位長さ当たりの 採熱量は28W/mであり,この値を単位温度差当たりに換算すると約2.1 W/m/℃と,凍結を伴 わな い場合の2倍程度と なること を明らかに した.また,第5章で開発したプログラムが フイールドでも適用可能なことを検証した後,凍結による採熱量増大のメカニズムについ て検討を行った.その結果,凍結を伴う場合の採熱について潜熱変換量は積算採熱量の25

%程度であり,凍結による採熱量の増大分のかなりの割合を占めているのを明らかにした・

  第7章 では,凍 結を伴う水平型埋設管の採熱能カと土壌温度の自然回復、暖房熱源とし ての長期利用可能性を実験的に明らかにした.4種類の水平型埋設管を深さ1.0〜1.8mに水 平に 埋設し,2か年にわたり実験を行った.初年度の実験から暖房期間を通して単位溝長 さ当たり50IvU/(m.d)前後の目積算採熱量が安定して得られ,この値は埋設溝が同じであれ ば熱交換器の形状によらずほぼ同じであることを示した.採熱終了後は夏期の放置期間で 十分 に土壌温 度が回復 することを示した.第2年度は,これらの水平型埋設管にヒートポ ンプを接続して住宅の暖房負荷を模擬した条件での実験を行い,その結果,期間平均採熱 温 度 は1.6℃ で あ り , 長 期 間 安 定 し た 暖 房 運 転 が 可 能 で あ る こ と を 実 証 し た .

(3)

  第8章では,土壌の凍結を伴う水平並列型埋設管を用いた暖房シミュレーションを行 い,□径,間隔,埋設面積,埋設深さ等の設計因子について検討を行った.まず,従来は 相互の熱干渉がなぃように決められていた埋設間隔について,新たに埋設面積を重視した 考え方を示し,熱媒の循環動カを考慮した□径と間隔の関係について最適値が存在するこ とを明らかにし,これらの関係を定量的に示した.次に,暖房の熱源としての長期的な使 用可能性について採熱温度および土壌温度の経年変化から評価するとともに,負荷に対す る必要埋設面積を示した,また,地表面熱収支を含む年間のエネ´レギーフローを求め,採 熱量の90%以上が夏期の外界からの入熱により賄われていることを初めて定量的に示すと ともに,限界埋設深さを明らかにした.

  第 9章 は 総 括 で あ り , 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を 要 約 し て 述 べ た .

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

凍結を伴う土壌熱源ヒートポンプの採熱特性に関する研究

  ヒートポ ンプは適当 な低熱源 が存在す るならば 省エネル ギー機器 として優れ た性 能をもっ ている。土 壌は莫大 な熱容量 を有し, 存在の普 遍性,温 度レベルの 安定性 から低熱 源の代表的 なものと ぃえるが ,いまだ 欧米の一 部を除い て利用され ていな い.これは、土壌がI二・亠般に熱の伝導性が低く、地中に設置する熱交換器規模が大き くならざ るを得なぃ ことに加 え,設計 法が確立 されてい ないこと に起因する .工学 的課題は 土壌と埋設 管の伝熱 性能を高 め埋設す る熱交換 器の規模 を縮小する ことに ある.こ のためには ,凍土の 高い熱伝 導率と土 壌中の水 分の凍結 潜熱の利用 が非常 に有効であると考えられる.

  本論文は 土壌と埋設 管の採熱 能カを改 善するた めに土壌 に含まれ る水分の凍 結を 積極的に 利用する採 熱特性の 実験と解 析に関す る研究を まとめた ものであり ,さら に設計に必要な基本的な指針と知見を与えたものである.

  本 論 文は8章 よ り 構成 さ れて い る .第1章 は 本研 究 の 意義 と その 有 効 性, 第2章 では,本研究の目的と位置付けを述べている.

  第3章 で は, 凍 結 を伴 わ ないO℃ 以 上 での 熱 利用 に 関 して , 長さ20mの 垂直 埋 設 管を 用 いて ,2年 間 にわ た る実 大 実 験を 行 い, 顕 熱 移動 によ る採熱量 が10〜20W/m とその能 カは小さぃ ことを明 らかにし ている. さらに,Kelvinの線源理 論を応用し て 各 種 条 件 下 で 凍 結 を 伴 わ な ぃ 場 合 の 限 界 採 熱 量 を 提 示 し て い る .   第4章 では 、 土 壌の 熱 利用 を検討 する際の 基礎とし て凍結・ 融解過程 における熱 伝導率の 変化を実験 的に明ら かにする とともに ,土壌種 類による 変化の相違 を凍土 中の不凍 水分量の違 いから説 明してい る.また ,数値計 算におい て必要とな る未凍 土・凍土 を連続的に 扱うこと ができる 熱伝導モ デルを従来の未凍土の直並列型の3相 モ デ ル を 発 展 さ せ 提 案 し , 実 測 値 か ら モ デ ル の 汎 用 性 を 実 証 し て い る 。

澄 徹

登 彦

   

   

藤 田

谷 藤

落 持

荒 工

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  第5章で は, 凍結 ・融 解を 伴う 土壌 内の 熱・ 水分 同時移 動の 基礎 理論 とそ の数値 解法 を示 し, 熱伝 導率 の予測 には 第4章で 提案 した モデル を適 用し 採熱 量お よび土 壌温 度, 土壌 水分 量等 を計算 するjン ピュ ータ プロ グラム の開 発を 行っ てい る.あ わせて,土壌採熱に関する室内実験を行い,本プログラムの有効性を確認している.

  第6章で は、 直膨 型ヒ ート ポン プを 用い た実 用規 模での 土壌 凍結 を伴 う採 熱実験 を行 い、 凍結 を伴 う場 合の採 熱量 およ び土 壌温 度の推移の特性を実験的に明らかに して いる .期 間平 均の 単位長 さ当 たり の採 熱量 は約28W/mであ り, 単位 温度 差当た り で は 凍 結 を伴 わ な ぃ 場 合 の2倍 程度 とな るこ とを 実証 してい る. さら に, 第5章 で開 発し たプ ログ ラム がフイ ール ドで も適 用可 能なことを検証した後,凍結による 採熱 量増 大の メカ ニズ ムにつ いて 検討 を行 い, 潜熱変換量が採熱量の増大分の70〜 80%を占めていることを解明している.

  第7章で は, 凍結 を伴 う水 平型 埋設 管の 採熱 能カ と土壌 温度 の自 然回 復、 暖房熱 源と して の長 期利 用可 能性を ,深 さ1.0〜1.8mに水平に埋設した4種類の水平型埋設 管を 用い た実 証実 験か ら明ら かに して いる .そ の結果,暖房期間を通して単位溝長 さ当たり50MJ/(m.d)前後の目積算採熱量が安定して得られ,この値は埋設溝が同じ であ れば 熱交 換器 の形 状によ らず ほば 同じ であ ること,採熱終了後は夏期の放置期 間で土壌温度が十分に回復することを明らかにしている.

  第8章で は, 水平 並列 型埋 設管 につ いて まず ,熱 媒の循 環動 カを 考慮 した □径と 間隔 の関 係に つい て適 正な値 が存 在す るこ とを 明らかにしている.次に,土壌熱源 ヒー トポ ンプ によ る住 宅暖房 の省 エネ ルギ ー性 と長期の土壌温度の変化を求め,併 せて 年間 のエ ネル ギー フロー から ,大 気と 土壌 の間の年間の熱収支および季節間の 蓄熱 とヒ ート ポン プ採 熱のメ カニ ズム を定 量的 に解明し,さらに札幌における熱交 換器 の適 正な 埋設 深さ は1.2〜1.8m, 必要 埋設 面積は暖房面積の1.5倍程度であるこ とを示している.

  第 9章 は 総 括 で あ り , 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を ま と め て い る ・   こ れを 要す るに ,本 研究は 土壌 を熟 源と する ヒー卜ポンプの採熱特性を解明し、

凍結 を伴 う採 熱の 有効 性と省 エネ ルギ ー性 を明 らかにするとともに,ヒー卜ポンプ の応 用に 関す る数 多く の知見 を得 てお り, 冷暖 房工学ならびに熱環境工学の発展に 寄与するところ大である・

  よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.

参照

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