博 士 ( 工 学 ) 星 野 正 幸
学 位 論 文 題 名
広 帯 域 移 動 通 信 に お け る 高 度 信 号 処 理 に 関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
携帯電話における加入数の増大とサービスの多様化を受け、携帯電話に求められる無線通 信の能カも必然的に高度なものになっている。具体的には、beyond IMT−2000として要求され る方式に対しては、ITU―R勧告におけるVANダイアグラムに示されるように、低速移動(歩行 程度)時に20M‑lGbpsの最大通信レートを、高速移動時(自動車〜高速鉄道)にも10ーlOOMbps の最大通信レートを実現する必要がある。これにより現行技術に対して大幅な技術革新が必 要であると考えられる。さらには、現在と同様あるいはそれ以上の普及率を確保するために は通信コストの増大は許容されず、高速化が望まれる一方でコストダウンの必要を生じ、通 信コストのビット単価すなわちビットコストの低減が必須である。本論文では、こうした背 景に応えるため無線伝搬環境の性質と適用可能な信号処理との観点から検討を行い、広帯域 移動通信システムの実現にむけた技術提案を試みている。
広帯域移動通信システムの実現にむけ、第1章の序論で述べているように、無線伝搬環境 の性質と適用可能な信号処理との観点から検討を行い、具体的にどういった技術提案ができ るかを検証した。その技術提案のための検討課題として、モビリティ向上に向けた適応アル ゴリズムの追従性改善、回線容量増大に向けた基地局へのアダプティブァレーアンテナ適用 検 討 、 そ し て 通 信 容 量 増 大 の た め の 時 空 間 符 号 化 の 検 討 に 目 標 を 定 め た 。 モビリティの向上について、携帯端末の物理的な移動速度はほとんど変わらないが、伝送 速度の向上に伴う広帯域化の要望に応えるため、通信に用いる搬送波周波数が高くなること が想定される。それに伴って相対的に最大ドップラー周波数が大きくなるため、適応信号処 理により高品質伝送を実現しようとした場合に、従来以上に変動への追従性能が要求される ことになる。この点に着目し、適応信号処理の変動追従性向上を検討課題のひとっとする。
回線容量増大に関して、雑音耐性を改善しりンクバジェツ卜を確保すべく信号強度を高く する方法と、ユーザ聞の干渉を軽減する方法とが必要になる。これらりンクバジェットの軽 減とユーザ間干渉軽減の双方に効果のある、基地局へのアダプティブアレーアンテナ搭載を2 つ目の検討課題とする。
通信容量増大については、前述のアダプティブアレーアンテナと同様に複数のアンテナを 備えた場合の信号処理として注目の集まっている、Multiple―Input MultipleーOutputすなわ ちMIMOシステムが重要である。MIMOシステムにおける空間ダイバーシチと符号化利得に着目 し、通信容量の増大とりンクバジェットの拡大との両方で効果を追求することを、3番目の検 討課題とする。
第2章では、序論で述べた3つの検討課題に対する、これまでの検討について概要をまと めた。従来の検討状況として、はじめに移動通信の伝搬環境と適応等化技術について述べ、
続いてアダプティブァレーアンテナの技術にっいて説明した。最後にMIMOの技術についてま とめた。
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適応 等化技 術につ いて、基 礎理論 としてWienerフイ ルタを 紹介したうえでチャネル等化へ の応 用例を紹 介した 。さら に非線 形等化 器への 拡張に っいて 説明し、適応アルゴリズムの概 略を まとめた 。アダ プティ ブアレ ーアン テナの 技術に 関し、 ビームフオーミング手法を説明 した 後に各種 の到来 方向推 定手法 を紹介 した。 っづい て、適 応アルゴリズムを用いたヌルス テア リング手 法の概 略をま とめた 。MIMOの技 術にっ いて、MIMOチャネルの表現とその特徴を 紹介 し、MIMO情 報理論として、情報理論および符号化の観点から説明を加えた。最後に、MIMO の技 術に関し 適応信 号処理 の観点 で概略 をまと めた。
第3章 では、 一つ目 の検討 課題であ るモビ リティ 向上に 向けた 適応ア ルゴリ ズムの 追従性 改善 をとりあ げ、適 応等化 器に向 けた簡 易かつ 変動耐 性に優 れたアルゴリズムの開発を試み た。具体的には、伝搬路変動に追従するため、
展開近似に基づく差分量の補正項を追加した。
適 応 ア ルゴ リ ズムの 更新式 に1次の テイラ ー こ れによ り実際に 最適解 の差分 量を近似する 傾向を 確認で きた。 さらに 、平均 誤り率 の評価 から、 動的な周 波数選 択性フ ェージング環境 におけ るフロ ア誤り の低減 を確か めた。 誤り率 のフロ アは、受 信ダイ バーシ チなしの構成で は、正規化最大ドップラー周波数1. Oxl0‑3.および5. Oxl0‑4の環境で、受信ダイバーシチあり の構成では、正規化最大ドップラー周波数2. Ox10‑ およぴ1. Ox10−3の環境で、それぞれほば 半減できていることを確認した。
第4章 では、2番目の 検討課 題である 回線容 量増大 に向け た基地 局への アダプ ティブアレー アンテ ナ適用 に着目 し、マ クロセ ル環境 を想定 したビ ームフオ ーミン グ適用 による容量増大 効果を 確認し て、ア ダプテ ィブア レーア ンテナ の有効 性を検証した。具体的には、W―CDMAの マクロ セル環 境を想 定した 場合に 実現で きる指 向性制 御方法を 設計し 、その 効果をシステム レベル シミュ レーシ ョンを 用いて 定量的 に把握 した; 評価結果より、基地局にセクタあたり4 アンテ ナを備 え方向 誤差5度 の場合 に、6セ クタで ビーム フオー ミング なしのシ ステムにくら べ180%のスループットを実現できることを明らかにした。
第5章 では、3つ目の 検討課 題に対し 通信容 量増大 のため の時空 間符号 化につ いて取り組ん だ。時 空問符 号を用 いるこ とで、 通信容 量の増 大とり ンクバジ ェツ卜 の拡大 との両方に効果 的な手 法の開 発を試 みた。 具体的 には、OFDMシステ ムで送 信側に おける アンテ ナ選択手法の 応 用と し て 時 空Turbo符号の 送信を サブキ ャリア単 位で制 御し、 受信電 カの最 も良い アンテ ナにシ ステマ チック ビッ卜 を割り 当て、2番目に 良いア ンテナにパンクチャされたパリティビ ットを 割り当 て、さ らに最 も品質 の悪い アンテ ナから はデータ 送信し ない、 とする方法を提 案した 。これ により 、提案 手法は 復調に 用いる チャネ ル推定精 度が確 保でき る効果も期待で き る。 平 均 誤 り率 特性を 観測す ること により 、所要TxEb/NOを従来 手法と くらべ2.2dB低 減 可能で あるこ とが確 認でき た。さ らに、 送信電 カの累 積確率密 度分布 を観測 した結果より、
提 案 手 法 は 従 来 手 法 と く ら べ 平 均 送 信 電 カ を 約4dB低 減 で き る こ と を 明 ら か に した 。 最 後 に 第6章 で結 論 を 述 べて い る 。 ここ ま で の 第3章 から 第5章 にて 示した ように 、適応 アルゴ リズム の追従 性改善 、基地 局への アダプ ティブ アレーア ンテナ 適用検 討、そして時空 間符号 化の検 討を試 みた。 検討結 果より 、適応 アルゴ リズムの 追従性 改善に よるモビリティ 向上が 可能で あるこ と、基 地局へ のアダ プティ ブアレ ーアンテ ナ適用 による 回線容量増大効 果、そ して時 空間符 号化に よる通 信容量 増大を 実現で きること を確認 した。 これらの検討に もとづ く技術 提案に より、 広帯域 移動通 信シス テムを 実現する 目処を 立てる ことができた。