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博 士 ( 工 学 ) 小 名 俊 博 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 小 名 俊 博

学 位 論 文 題 名

ユ ーカ リノ ヾル プ適木の材質育種と選抜指標 抽出      に関 する 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  円高 、 原油 安に よる チップ輸入の増加等から 、製紙原料としての海外植 林が必要不可欠になっ て きた 。 バル プ適 木の 植林 で は、 単位 面積 当 たり のバ ルプ 生産 量 を上げ 、かつ良質なパ少プを 得 るこ と が重 要視 され る。 こ の方 法の ーっ と して 、材 質的 に優 れ た個体 を選抜する育種、材質 育 種が あ る。 しか しな がら 、 従来 法で は種 々 の問 題が あり 、効 率 的な選 抜方法の開発への要求 が高ま っている。

  この ような観点から本論文では 、ユーカリ属二種(Eucalyptus camaldulensis,E.globulus)につ い て立 木 を伐 倒せ ず成 長錐 コ アの よう な少 試 料を 用い 、材 特性 を 分析す ることにより間接的に バ ルプ 適 木の 材質 育種 を効 率 的に 行う こと を 目的 とし た。 本論 文 では少 試料からの材特性分析 法 等を 開 発し 、材 特性 の樹幹内変異と樹幹全体 を代表する標準値を示す位 置を詳細に検討した。

更 に材 特 性と バル プ特 性の 関 係か ら選 抜指 標 の抽 出、 およ びコ ア 採取最 適位置を決定する経緯 を述べ たもので、6章から構成され ている。

  第1章は 緒論 で あり 、ま ず海 外植 林 の重 要性 、植 林に お ける バル プ適 木 とし ての ユー カり の 特長、 および材質育種の重要性に ついて述べた。

  次に 、 従来 の材 質育 種に お いて は、 立木 を 伐倒 する 、多 量の 試 料を採 取する、また多数の試 料 を 解 析 す る 必 要 が あ る 等 、 労 カ が 大 き い 問 題 点 が あ る こ と を 指 摘 し た 。   最後 に、熱帯域および温帯域で 重要な植林樹種であるE. camaldulensisおよびE.globulusを例 に とり 、 効率 的に 材質 育種 を 行う 新し い方 法 を開 発し 、選 抜指 標 の抽出 および成長錐コア採取 最適位 置を決定する必要性を述ベ 、本研究の目的を明らかにし た。

  第2章で は、 成 長錐 コア を用 い効 率 的に 材特 性を 分析 す ろた め、 まず 少 試料 によ る木 材構 成 成 分の 定 量、 およ び構 成成分の構造解析の試料 を調製する方法(スモール ・スケール法)を開発 し た。 こ れに より わず か200 mgの試料から、抽 出物、リグニン、ホロセル ロース、 ―セルロー ス、ヘ ミセルロース成分の定量、 およびりグニンのシリンギル 核/グア丶イアシル核(S/G)比、ヘ ミ セル ロ ース を構 成す る中性糖モル%を分・析 する試料の調製も同時に可 能になった。これは、

標 準法 か らの 定量 結果 と互 換 性を 持つ 唯一 の 少試 料定 量法 であ り 、かつ 多数の試料の処理が容 易に行 えるような材質育種に適し た方法の開発に成功した。

  次に 、 高速 液体 クロ マトグラフイー(HPLC)に よるラムノースを含む、ヘ ミセルロースを;購成 す る中 性 糖の 定最 方法 を開 発 した 。こ の方 法 では 三フ ッ化 酢酸 を 用い、 実験操作の大幅な簡略 化に成 功し、最も容易で安価な実 験方法を確立した。

  第三 に 、リ グニ ンの 定畳 お よび りグ ニン のS/G比 測定 に おけ る阻 害物 質 であ る抽 出物 を、 前 抽 出に よ り除 去す る条 件を 検 討し た。 この 結 果、 前者 では ソッ ク スレー により溶媒抽出をした 試 料を 用 いる こと が望 まし い と結 論さ れ、 リ グニ ンの 定畳 にお い ては0.iN、100℃ のア ルカ リ 抽 出条 件 が妥 当で ある こと が 判明 した 。以 上 のこ とか ら、 材質 育 種にお いて非常に有用な材特

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性の化学的分析方法が確立された。

  第3章では、成長錐コアの採取部位を決定するため、材特性として容積密度数、ホロセルロー ス等の化学構成成分、ヘミセルロースを構成する中性糖モル%、およびりグニンのS/G比を取 り上げ、材特性の樹幹内変異と標準値を示す位置の解析を行った。

  E. camaldulensisでは、ホロセルロース含有率、ばーセルロース含有率、およびガラクトース モル%は樹幹の樹皮側および上部で、アルカル抽出物含有率、全抽出物含有率、およびキシロー スモ少%は髄側および下部で、抽出物含有率は下部、リグニンのS/G比は髄側上部で、グルコー スモル%は樹皮側で材特性値が高い樹幹内変異が両個体に共通して認められた。また、容積密 度数、ヘミセルロース含有率、リグニン含有率、ラムノースモル%においては、樹幹内変異は ほとんど見られなかった。これに対し、アラピノースモル%およびマンノースモル%では、大 きな個体間差が認められ、共通した傾向は見られなかった。

  E. globulusでは、ホロセルロース含有率、ばーセルロース含有率、およぴグルコースモル%

は樹幹の樹皮側で、容積密度数は樹皮側および上部で、キシロースモル%は髄側で、各材特性 値が高い樹幹内変異が両個体に共通して認められた。また、ヘミセルロース、抽出物、アルカ リ抽出物、全抽出物、およびりグニンの各含有率、ラムノース、アラピノース、およびマンノー スの各モ,レ%において、樹幹内変異はほとんど見られなかった。これに対し、リグニンのS/G 比およびガラクトースモル%では大きな個体間差が認められ、共通した傾向は見られなかった。

  しかし、E. globulusのガラクトースを除く全ての材特性において、現実的に脚立を用いて分 析試料を採取出来る地上高3.3m以下に、標準値(一個体平均値士5%)を示す位置が見い出され た。また、E. globulusのガラクトース以外の全ての材特性で個体問に共通する標準値を示す位 置があり、樹幹全体を代表する成長錐コアを採取することは十分可能であることが判明した。

更に、これは個体の樹高差や材特性の樹幹内変異の違いに左右されることがないと結論された。

  第4章では、成長錐コアから樹幹全体のバルプ特性を予測するため、樹幹内変異に基づき材 特性とバルプ特性との相関を求め、重回帰分析によルバルプ特性に対し重要な材特性を抽出し た。この結果、両樹種において比引裂度および耐折強度を除く全てのバルプ特性で、1%レペ ルで有意義な相関が得られた。また、比引裂度、および耐折強度でも、それぞれ10%、および 5%レペルで有意義な相関が得られ、パルプ特性を木材構成化学成分のみを用いた材特性から 推定することは、十分に可能であると結論された。また、それぞれの樹幹内変異に基づき、材 特性とバルプ特性との間に高い相関が得られたことから、成長錐コアを分析し樹幹全体のバル プ特性を予測出来ることが強く示唆された。

  第5章では、ユーカりにおける容積密度数とバルプ収率の関係は、高い負の相関が得られる 場合と、ほとんど相関の無い場合とに分けられる。この原因を調べるため、容積密度数と木材 構成成分の関係を検討した。この結果、E. camaldulensisにおいては樹幹内部で、容積密度数は 抽出成分と、また樹幹外部では、ホロセルロースおよび −セルロースとの間に正の相関が認 められ、着色心材の影響が大きいことが判明した。これに対しE. globulusでは、この様な部位 ごとの特徴は見られず、樹幹全体で弱いながら、 ーセルロースと正、ヘミセルロースと負の 相関が認められた。

  第6章では、結果を総括すると同時に、材特性とバルプ特性との重回帰相関を用い、3.3m以 下の各地上高における材特性平均値により、樹幹全体のバルプ特性を予測、検討した。この結 果ピcamaldulensisでは個体の樹高に関わらず、地上高2.3〜2.8mが、E.globulusでは若干バラ

゛ソキが見られたが、地上高2.8mがそれぞれ一個体平均値を用いた予測値(全樹幹平均値)士3% 以内、土5%程度であり、標準値を示す位置と判明した。更に、パルプ適木生産性では両樹種 とも地上高2.8mが全樹幹平均値土3%程度であり、標準値を示す位置であることが判明した。

J1上から、成長錐コアを採取する最適地上高は、両樹種を通じ2.8mであり、この位置から樹木 を伎倒せず一本のコアを採取し化学分析することにより、樹幹全体のバルプ特性を評価出来る ことが判明した。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   高井光男 副査   教授   渡辺寛人 副査   教授   横田和明

副査   教授   大谷   諄(農学研究科)

学 位 論 文 題 名

ユーカリパ ルプ適木の材質育種と選抜指標抽出      に関する研究

  円 高、 原油 安 によ るチ ップ 輸入 の 増加 等から、 製紙原料としての海外植林が 必要不可 欠に なっ てき た 。パ ルプ 適木 の植 林 では 、単位面 積当たりのパルプ生産量を上 げ、かつ 良質 なパ ルプ を 得る こと が重 要視 さ れる 。この方 法のーっとして、材質的に優 れた個体 を選 抜す る育 種 、材 質育 種が ある 。 しか しながら 、従来法では種々の問題があ り、効率 的な選抜方法の開発への 要求が高まっている。

  本論文は、ユーカリ属 ニ種(Eucalyptus camaldulensis, E.globulus)について立木を伐倒 せず 成長 錐コ ア のよ うな 少試 料を 用 い、 材特性を 分析することにより間接的に パルプ適 木の 材質 育種 を 効率 的に 行う こと を 目的 としたも のである。その主要な成果は 次の点に 要約される。

(1) わ ずか200 mgの 少 試料 によ る木 材構 成 成分 の定 量、 及び 構 成成分の構造 解析の試 料を 調製 出来 る 方法 (ス モー ル・ ス ケー ル法)の 開発に成功している。これは 標準法か ら の 定 量 結 果 と 互 換 性 を 持 ち 、 多 数 の 試 料 の 処 理 が 容 易 に 行 え る 方 法 で あ る 。

(2) 高 速液 体ク ロマ ト グラ フイ ーに よる ラ ムノ ース を含 む、 ヘ ミセルロース を構成す る中 性糖 の定 量 方法 を開 発し 、ま た 三フ ッ化酢酸 を用い実験操作の大幅な簡略 化を達成 している。

(3) リ グニ ンの 定量お よびりグニンのシリンギル 核/グアイアシル核比測定に おける阻 害物 質で ある 抽 出成 分を 、前 抽出 に より 除去する 条件を検討している。この結 果、前者 では ソッ クス レ ーに より 溶媒 抽出 を した 試料を用 いることが望ましいと結論さ れ、後者 に お い て はO.lN、100℃ の ア ル カリ 抽出 条件 が 妥当 であ るこ と を明 らか にし てい る 。

(4) 材 特性 (容 積密 度 数、 抽出 物、 アル カ リ抽 出物 、全 抽出 物 、リグニン、 ホロセル ロー ス、aー セル ロー ス 、ヘ ミセ ルロ ース 各 成分 の含 有率 、お よ ぴりグニンの シリンギ ル核′グアイアシル核比 、ヘミセルロースを構成する 中性糖モル%)の樹幹内変 異と標準 値を 示す 位蹤 の 解析 を行 って いる 。 この 結果、各 材特性には個体問で同様の樹 幹内変異 を示 すも の、 示 さな いも の、 およ び 樹幹 内変異が 認められないものがあること を明らか にし てい る。 ま た、 両樹 種を 通じ 、 ほぽ 全ての材 特性において現実的に脚立を 用いて分 析試 料を 採取 出 来る 地上 高3.3m以 下 に、 標準値を 示す位置を見い出している。 更にこれ は 個 体 の樹 高や 材特 性の 樹 幹内 変異 の違 いに 左 右さ れな いこ と を明 らか にし てい る 。   (5) 樹幹 内変 異に基 づき材特性とパルプ特性( パルプ収率、シート密度、比 破裂度、

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裂断長、比引裂度、耐折強度、未晒白色度およびカッパー価)との相関を求め、パルプ 特性を木材構成化学成分のみを用いた材特性から推定出来ることを明らかにしている。

  (6)ユーカりにおける容積密度数とパルプ収率の関係は、高い負の相関が得られる場 合と、ほとんど相関の無い場合とに分けられる。この原因を調べるため、容積密度数と 木材構成成分の関係を検討している。この結果、E.camaldulensisにおいては樹幹内層部で、

容積密度数は抽出成分と、また樹幹外層部では、ホロセルロースおよびa―セルロース との 問に正 の相関が 認めら れ、着色 心材の 影響が大きいことを明らかにしている。

  (7)材特性とパルプ特性との相関を用い、3.3m以下の各地上高における材特性平均値

゛により、樹幹全体のパルプ特性を予測、検討している。この結果E.camaldulensisでは個 体の樹高に関わらず、地上高2.3 ‑‑2.8mが、E.globulusでは若干バラツキが見られたが、

地上高2.8mがそれぞれ一個体平均値を用いた予測値(全樹幹平均値)土3%以内、士5%程 度であり、標準値を示す位置と判明している。更に、パルプ適木生産性では両樹種とも 地上高2.8mが全樹幹平均値土3%程度であり、標準値を示す位置であることを判明して いる。このように、成長錐コアを採取する最適地上高は、両樹種を通じ2.8mであり、こ の位置から樹木を伐倒せず一本のコアを採取し化学分析することにより、樹幹全体のパ ルプ特性を評価出来ることを明らかにしている。

  以上のように著者は、少試料からの材特性分析法等を開発し、材特性の樹幹内変異と 樹幹全体を代表するような標準値を示す位置を詳細に検討している。更に材特性とパル プ特性の関係から選抜指標の抽出、およびコア採取最適位置を決定している。この様に 基礎及び応用上多くの知見を得ており、生物資源化学の進歩に寄与するところが大であ る。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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