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博士(工学)陳 克利 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(工学)陳   克利 学位論文題名

Alkali‑Oxygen Pulping of Rice Straw

(稲わらの酸素酸化法によるパルプ化)

学位論文 内容の要旨

  近 年紙パ ルプの 生産は 急激 に増加 する一 方,生 産する 方法 として は従来 からのイオウを含むク ラフ トパ ルプ化 法及び 塩素を 含むパ ルプ の漂自 法がほ とんど を占 めてい るが,この生産プ口セス から 排出 した廃 水及び 廃棄物 質は自 然環 境に対 して大 きな負 担を かけて いる。これを抑制よるた めに ,紙 パルプ 産業は 生産プ ロセス から の廃棄 物質の 処理を 強化 する一 方,非イオウ,非塩素の 新し いパ ルプ化 及び漂 自方法 の開発 が求 められ ている 。例え ば, 我々の 開発した木材パルプのア ル カ リ 酸素 酸 化 漂 自 法は 漂 白プロ セスの 一段 として 塩素漂 白剤を 大き くカッ トする ことが でき る 。 今まで 世界中 約900所の工 場は この技 術を利 用して いる。 しか し,現 状では 完全無 イオ ウ,

無塩 素の 段階に 到達す るには 沢山の 課題 が残っ ている 。

  一方 ,紙パ ルプ原 料の9割以 上は 木材で あるが ,森林 保護の 観点 からこ の現状 の再検 討を 迫ら れて いる 。特に 東南ア ジアや 中国の ようナょ木材原料不十分の国に対しては,他の資源,例えば,

農産 廃棄 物質稲 藁やバ ガス等 の利用 は最 も重要 なこと である もの と思わ れる。以前我々の研究に より 非木 材原料 を直接 にアル カ|J酸素 酸化パ ルプ 化して,非常に良い性質のパルプが得られた。

この 予備 的結果 を基礎 にして ,本研 究で は稲藁 のアル カリ酸 素酸 化パル プ化及びその最適化の検 討を 行っ た。

  最 初に酸 素の供 給を左 右す る要因 のーつ ,パル プ濃度 によ るパル プ化へ の影響を知るために,

中濃 度(15%)法 と高濃 度(33%)法 との比 較検 討をし た。高 濃度パ ルプ化 法に比べると,中濃 度 法 の方で は,白 色度3―10ポ イン トの低 いパル プが得 られた が, かわり にその 強度い わゆ る裂 断 長 及 び破 裂 度 は そ れぞ れ1―3 kmお よ び1―2ユ ニット 高く, その引 き裂 きもほ ば同等 の結果 とな った 。

  対 稲藁ア ルカリ 量を一 定に してい るので 中濃度 方では アル カリ溶 液濃度 が低下する。この濃度 低下 は脱 リグニ ンは不 利にな るが, 同時にセル口ースの酸化分解も低下する。また中濃度法では,

酸素 に直 接接触 するそ の繊維 の表面 積は 遙かに 高濃度 法の場 合よ り小さ い。結局酸素による攻撃

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は前 者に 対して は弱く て稲藁 リグニ ンヘ の酸化 分解効 果が悪 くな るため ,そのパルプの白色度が 幾分 下が ること が予想 できる 。中濃 度法 からの パルプ の強い 強度 に関し ては同じ理由で弱い酸化 分解 を受 けた七 ル口一 スは保 護され た形 として 紙カの 向上に 大き く寄与 いた。このことは高濃度 法の パル プの方 が低い 重合度 を持っ こと から確 認でき た。ま た, 中濃度 法によるパルプの品質は 酸化 条件 の変動 にあま り影響 されな いの に対し て,高 濃度法 によ るもの は酸化条件による変動が 大き いこ とが分 かった 。中濃 度法に よる パルプ は多少 の白色 度の 低下が あったが,酸化時間を適 当に 延長 すれば ,高濃 度法に よるも のと 同じよ うな高 い白色 度が 得られ た。ゆえに稲藁のフルカ リ酸 素酸 化の中 濃度法 は実用 化に利 用す べきも のであ る。

  ア ルカリ 酸素酸 化パル プ化 におけ るアル カリ前 処理段 と酸 素酸化 段の役 割分担の意義を明らか にし た。 アルカ リ前処 理では 分解性の高いりグニンの除去と残リグニンの活性に重点がおかれる。

分解 性の 低いり グニン の分解 は酸素 酸化 の段階 で行わ れるべ きで ある。 強い前処理を行い脱リグ ニン 度を あげて も酸化 段での 紙力低 下が 大きく 良いパ ルプが 得ら れない 。また高収率のパルプを 得る にも 困難で ある。

  禾 本科植 物が容 易に酸 素酸 化パル プ化さ れるの に対し て, 木材の 酸素酸 化パルプ化はかなり難 しい 。こ の相違 は一般 には構 造の粗 密と 考えら れてい るが, 磨砕 木粉で も脱リグニンしにくいこ とか ら主 たる原 因は両 者のり グニン の特 性の差 による と考え た。 両者の りグニンに関してはアル カリ 酸素 酸化反 応の比 較は全 くない ので ,これ をはっ きりさ せる ために ,また稲藁リグニンのア ルカ リ酸 素酸化 パルプ 化の反 応挙動 を深 く認識 するた めに, 藁及 び木材 リグニンの酸素酸化比較 研究 を行 った。

  稲 藁リグ ニン, 広葉樹 を代 表する ブナリ グニン 及び針 葉樹 を代表 するエ ゾ松リグニンをニっの 大き く異 なる条 件下で 酸素酸 化反応 を行 った。 一っは 高濃度 (約20%)で の非攪拌反応であり,

も うー っは低 濃度( 約2%)で の攪 拌反応 である 。前者 に対し ては 基質リ グニン ヘの酸 素供 給を 相 当 抑 制 す る 反 応 と 思 わ れ , 後 者 に 対 し て は 十 分 な 酸 素 供 給 が あ る と 考 え ら れ る 。   非 攪拌酸 化反応 では, 酸素 の供給が不足している上に酸化分解した主成物の拡散が遅れるため,

い ずれ のりグ ニンの 酸化 分解も かなり 抑制さ れ1かわり に縮合 反応 が顕著 に起き ていた 。ど のり グニ ンも 共にオ リジナ ルより 分子量 の高 いもの を生成 した。 しか し木材 リグニンの高分子縮合物 は量 も多 く相当 な難溶 解性を 示すの に対 して。 稲藁リ グニン の高 分子縮 合物は量的に少なくまた アル カリ 性の溶 液に溶 解する ことを 明ら かにし た。リ グニン 生成 物の各 分画収率から見ても稲藁 リグ ニン の方は 低分子 区分に おいて 他よ り圧倒 的に多 かった 。本 来藁の りグニンの分子量は木材 リグ ニン のそれ より幾 分低い もので ある が,こ れ低分 子区分 は原 料より 遙かに分子量が低く,分

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角罕性の高 さにその原因がある と思われる。また 稲藁リグニンが縮 合してもアルカリ可 溶なのは極 性 基が 生成 し 安い 特性 を 持っ ため ア ルカ リ酸 素 酸化 パル プ 化の 成功 の 大き な要 因 となる であろ う。

  非攪 拌酸 化 と高 濃度 の 両者 が縮 合 反応 を容易にす ると考えられるが ,木材にっいて考え ると,

硬 質の 構造 が 酸素 によ る 浸透 を困 難 にし ,またアル カリ浸漬段でのり グニンの除去率を考 慮する と その 繊維 細 胞壁 に存 在 する りグ ニ ンの 濃度 は 酸化 段で は 藁の ものの約5一10倍である。 木材リ グ ニン の縮 合 しや すい 特 性に 加え , 更に これらの条 件が縮合を促進し ていることが木材が 直接酸 素酸化パル プ化し難いことの原 因である。

  低濃 度で り グニ ンを ア ルカ りに 溶 解し 攪拌酸化す る場合は,リグニ ンに十分な酸素供給 され,

しかも,分 解生成物の拡散しや すい環境となるの で,三種類のりグ ニン共,ほぼ縮合反 応がなく,

著 じい 酸化 分 解が 起こ っ た。 この 反 応は 均一系で, 酸素による攻撃は 三者のりグニンに対 して均 等 とな り, こ れら の反 応 性の 差も 識 別し にくくなっ た。このような環 境では酸素からの攻 撃はり グ ニン 高分 子 ブ口 ック の 外部 から の 分解 だけではな く,その内部まで 結合を分断できるこ とが考 え ら れ る 。 ゆ え に 最 も 有 効 な り グ ニ ン の 酸 素 酸 化 反 応 は 最 も 有 効 な 酸 素 供 給 に 依 頼す る 。   三者 のり グ ニン の反 応 は大 きく 分 ける とニっあり ,一っは縮合反応 であり,もうーっは 酸化分 解 反 応 で あ る 。1°CNMR分 析 の 結 果 か ら , 縮 合 反 応 で は , ル グニ ン 構造 ユニ ッ ト間 でCs・Cn Cロ ・Cs ,C。・Cロ ,及びCロ・Cロ などの結合が生じることが明らかである。酸化分解反応では CBおよ びC。 の工 一 テル 結合 の 切断 が明 確 であ る。 そ の他 ,酸 化分解 の最も顕著な反応は ,特に 攪 拌酸 化に お いて ,酸 素 によ る攻 撃 で分 子鎖を著し く分断され,大量 なカルボニル構造特 にカル ボキシル基 が生成することが特 長である。

  稲藁 リグ ニ ン, ブナ リ グニ ン及 び ェゾ 松リグニン ではりグニンの三 種の基本構造の存在 比が大 き く異 なっ て いる 。こ れ らの 構造 ユ ニッ トも酸素酸 化反応に対して異 なる反応性を示した 。稲藁 に 多いp一ヒ ド口 キ シフ ェニ ル 構造 は酸 化 分解 しや す い。 工ゾ 松に多 いグアヤシル構造は 縮合反 応 に対 して は 高い 活性 を 示し ,酸 化 分解 反応に対し て活性であるが前 者より多少安定であ る。ブ ナ に多 いシ リ ンギ ル構 造 は縮 合反 応 では 最も縮合し やすく,分解反応 に対しては分解はさ れるも のの,最も 安定ナょ構造ユニッ トであることが分 かった。

  稲藁 の酸 素 酸化 パル プ 化及 びり グ ニン の非攪拌酸 化は異なる基質で あっても,酸化の雰 囲気が 似 てい る。 但 し, 前者 の 方が 酸化 の 効率 が後者より 逼かにうわまわっ ている。炭水化物へ の分解 は 相当 弱い も のと 思わ れ る。 攪拌 酸 化で はりグニン が強く分解される だけではなく,共存 してい る 炭水 化物 も 著し く分 解 され た。 酸 素酸 化によるパ ルプ化は徹底的な りグニン分解だけを 目的と

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す るので はなく ,炭水 化物の 分解を最小限に止める選択性の高い脱リグニンでなければならない。

十 分な酸 素供給 はこの 選択性 を下 げパル プの収 率及び 強度 の損失 に導く 。ゆえに酸素の供給を不 足 気味に 適当に 抑制す ること が望 ましい 。

学位論文審査の要旨

  パル プ・紙 の製 造にお いて, イオウ 化合物 ,塩 素化合 物を使 用しな い無 公害型の製造法がっよ く要 望され ており ,一方 森林 保護の 立場か ら非木 材原 料の積 極的利 用が望 まれている。本論文は 稲わ らのア ルカリ 一酸素 によ るパル プ化と その最 適条 件,廃 液の循 環使用 にっいて研究し,また この 反応に おける 稲わら りグ ニンと 木材リ グニン の挙 動の相 違にっ いて研 究した結果をまとめた もの であり ,その 主要な 成果 は次の とおり である 。

  (1)ま ず著者 は稲わ らの アルカ リ一酸 素パル プ化に おける最適条件ロ噸討を行いパルプ濃度は     15% 位の 中 濃 度 が 紙力 上 望まし く,高 濃度法 に比 べ白色 度は3―9ポイ ント低 下する が,酸     化時 間を 長くす ること でカバ ーし 得るこ とを示 した。 また中 濃度 法によ るパルプの品質は酸     化 条 件 の 変 動 に あ ま り 影 響 さ れ な い 利 点 を 持 っ こ と を 明 ら か に し た 。   (2)ア ルカリ ―酸素 酸化 パルプ 化にお けるア ルカリ 前処理段と酸素酸化段の役割分担の意義を     明ら かに し,前 段では シルカ と易 溶解性 リグニ ンの除 去に徹 し, 難溶解 性リグニンの分解除     去は 後段 にまか せるべ きであ る事を示した。強いアルカリ前処理は脱リグニン度をあげても,

    酸化 段で の紙力 低下が 大きく なる 。それ ぞれの 分担に 焦点を 絞っ た条件 を設定すべきで,そ     のた めに 前段の アルカ リ量を 押さ え,後 段のた めに必 要なア ルカ リ量の 不足は追加により供     給 す る こ と が , 品 質 , コ ス ト の 両 面 で 有 利 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   (3)稲 わらの パルプ化において廃液中のシ.リカの処理が実用上最も大きな問題である。廃液を     循環 利用 するこ とによ り廃液 中の 可燃有 機物濃 度を高 め,濃 縮, 燃焼に よる廃液処理と薬品     回収 のた めのエ ネルギ ーを軽 減す ると同 時に, 廃液中 のシリ カの 飽和沈 澱除去と,パルプへ     の吸 着に より, 特別の 除去処 理を 行うこ となく 完全に 除去す るこ とに成 功した。各段の前に

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彦 男

治 徳

   

   

林 米

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

    アル カり を追加 するこ とで, 薬品の 原単 位をあ げるこ とも, パル プ品質を低下させることも     ナよ く, かっパ ルプ収 率を約5% 向上さ せ,し かも廃液循環により用水量も処理すべき廃液量     も1/5以下 に減少 させた 。

  (4)この方 法によ るパ ルプ化 が木材 では困 難で, か本 科植物 で成功 する理 由を 明らか にする た     め, これ らのり グニン を抽出 ,単離 しア ルカリ 水溶液 に溶解 して ,酸素加圧下,無攪拌と攪     拌の ニっ の方法 で酸化 し反応挙動を比較した。工業化の条件に近い,酸素供給不足(セルロー     スの 分解 を防ぐ ため) となる 無攪拌 条件 では; 木材, 特にシ リン ギルュニットから主として     構成 され る広葉 樹リグ ニン( ブナ) にお いて, 酸化分 解の一 方, 激しく縮合を起しアルカリ     不溶 解物 を生じ た。稲 わらり グニン は低 分子に 分解さ れ易く ,少 量の縮合も起こすがアルカ     リ不 溶に はなら ない。 このり グニン 特性 が稲わ らのパ ルプ化 を可 能にしていることを明らか   ・に した。

  (5)同 上にお ける攪 拌下の 酸化 では, いずれ も縮合が起こらず,激しく分解して,低分子化し     た。 三者 の分解 性に大 差はな かった が, 稲わら りグニ ンがや や分 解性が高く,ブナリグニン     が酸 化分 解に安 定であ った。

  (6)高分子 ブ口ッ クの うンダ ムな切 断によ る低分 子化 と,こ の低分 子化物 のさ らなる 切断お よ     び 高 分 子ブ ロ ッ クの 表面末 端のあ る構 造単位 毎の切 断によ り,非 常に 分子量 の揃っ た2〜3     種 の 物 質 が 生 成 し た 。 こ れ は り グ ニ ン 構 造 化 学 に お け る 興 味 あ る 発 見 で あ る 。   (7)反 応 生 成 物 を13C NMR分 析 に よ り 研 究 し , 縮 合 は 芳 香核 間 のCs―Cs, 核側 鎖 間 のC     ロ‑Cs で 主 と して 起こる が,側 鎖間のC。 ―Cロ ,Cロ ―CBで も起こ るこ、 と,ま た酸化     切 断 はCBとCaのエ ー テ ル 結 合で 主 と し て 起 こる こ と を 明 らか にし た。ま た撹 拌酸化 にお     いて は, 著しい 低分子 化合物 への分 解と ,カル ボニル 構造特 にカ ルボキシル基の生成がみら     れた 。

  (8) 各 種 リ グ ニ ン に 結 合 し て い る へ ミ セ ル 口 一 ス の 特 性 を 明 ら か に し た 。   これ を要す るに, 著者 は,稲 わらの 酸素酸 化パ ルプ化 の条件 を明ら かにし工業的に非常に有望 な方 法と開 発する ととも に, 稲わら りグニ ンおよ び木材 リグ ニンの この反応に対する挙動を明ら かに して, リグニ ン化学 の進 歩に寄 与する ところ 大なる もの がある 。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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