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雑誌名 福井医科大学研究雑誌

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著者 高山 一夫

雑誌名 福井医科大学研究雑誌

巻 2

号 1‑2

ページ 81‑99

発行年 2001‑12‑21

URL http://hdl.handle.net/10098/1000

(2)

合衆国保健 医療 の企業化 と医療管理

一 マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 に お け る マ ネ ジ ド ケ ア と 病 院 連 合 体 を 事 例 に

高 山 一 夫 経済学教室

The Corporatization of the U.S. Healthcare System and the Development of Medical Management:

A Case Study of Managed Care and Hospital Alliances in Massachusetts, USA

TAKAYAMA, Kazuo

Department of Economics, Fukui Medical University

Abstract

The author had an opportunity to investigate healthcare-related organizations in Massachusetts, USA, from April 29 to May 5, 2001. This report evaluates the current situation of the U.S. healthcare system from the aspect of the Corporatization Theory, characterizing the dynamic alteration in the U.S. healthcare as a shift to a corporate mode of financing and delivery and the diminution of professional power. The findings are as follows:

(1) Faced with industry-wide depression, several big healthcare organizations began to merge, acquire, or cooperate with others, so that the concentration of healthcare industries has proceeded rapidly.

(2) Widespread backlash against the insurer-controlling managed care organizations invoked Massachusetts State's managed care legislation resulting in the protection of physicians' discretion to their patients.

(3) Instead of the insurers, the newly formed hospital alliances have engaged in standardizing medical practices, and by using the information technology, they have achieved higher cost efficiency.

These findings suggest the need for further research concernig the role of hospital-controlling managed care organizations and the possible standardization in medical practices. However, these cost-efficiency-centered changes can erode fairness in the healthcare system, and this is the critical point that the Corporatization Theory is concerned with.

Key Words : managed care, hospital alliances, medical management , c

corporatization, healthcare industry, Massachusetts

linical practical guideline, e-health,

(Received 29 August 2001; accepted 1 November 2001.)

(3)

は じめ に

本 稿 の 課 題 は,ア メ リカ 合 衆 国 マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 州 で の 現 地 調 査 に基 づ き,マ ネ ジ ドケ ア に対 す る 社 会 的 規 制 の 強 化 や 情 報 技 術 革 命 の 医 療 分 野 へ の 波 及 と い っ た 新 しい 動 向 をふ ま え て,今 日の 医 療 管 理 の 実 態 に つ い て考 察 を加 え る こ とで あ る。

本 稿 は3つ の 節 か ら な る。1節 で は 問 題 の 学 説 史 的 な 位 置 づ け を行 う。H節 で は マ ネ ジ ドケ ア の 医療 管 理 に つ い て 実 例 を 交 え て 検 討 す る 。 最 後 に 皿節 で は 病 院 連 合 体 側 のIT医 療 管 理(e一 ヘ ル ス)の 取 り組 み に つ い て紹 介 す る。

1問 題 の 所 在

ア メ リカ合 衆 国 の 医 療 制 度 は,総 体 と して 「 市 場 型 」 あ る い は 「 企 業 型 」 と特 徴 づ け られ る1。医 療 提 供 と医 療 財 政 の 両 面 と もに 私 的 な運 営 を基 本 と し,イ ギ リス 式 の 国 営 医 療 は もち ろ ん,社 会 保 険 制 度 を 主柱 とす る 日本 や 欧 州 大 陸 諸 国 と比 べ て も,国 家 的 統 制 の 及 ぶ 範 囲 が ご く限 られ て い る ため で あ る。

市 場 型 の 医 療 制 度 は,無 保 険 者 や 一 部 保 険 者 の大 量 発 生 に み られ る ご と く,医 療 保 障 の 公 正 性 とい う点 で 弱 点 を抱 え る2。 しか しま た,医 療 に か か わ る経 済 主 体 間 の 力 関 係 の 変 動 にお う じて,医 療 の 制 度 ・政 策 に ダ イ ナ ミ ック な変 動 を もた らす こ と も事 実 で あ る。 そ し て 医 療 費 高 騰が 国 際 競 争 力 低 下 を招 い た との 懸 念 を背 景 に,1990年 代 に な っ て急 速 な発 展 を遂 げ た の が マ ネ

ジ ドケ ア で あ る。

マ ネ ジ ドケ ア(managedcare)と は,医 療 提 供 の 効 率 化 を 目 的 とす る技 術 お よ び 組 織 を意 味 す る 。 技 術 の 意 味 で 用 い れ ば 診 療 管 理(UtilizationReview)や 人頭 払 方 式(Capitation)と い った 各 種 の 医 療 効 率 化 手 法 を総 称 す る 用 語 と な り,組 織 の 意 味 で 用 い れ ばHMO(Health MaintenanceOrganization)あ る い はPPO(Preferred providerOrganizations)と い った 医 療 効 率 化 の た め の 組 織 を総 称 す る 用 語 と な る 。 技 術 と して の マ ネ ジ ドケ ア は 本 稿 のIIで 触 れ る こ と に して,こ こで は マ ネ ジ ドケ ア 組織 の 代 表 で あ るHMOとPPOを 概 観 した い 。

HMOと は,保 険 者 と医 療 提 供 者 を何 ら か の程 度 で 結 合 した 組 織 で あ り,加 入 者 か ら徴 収 した保 険 料 を 元 手 に,保 険 部 門 と医 療 部 門 が 人 頭 払 方 式 で 診 療 契 約 を結 ぶ こ と を基 本 的 特 徴 とす る 。 保 険 者 と医 療 者 を組 織 的

に 結 合 し,定 額 支 払 制 の 一 形 態 で あ る 人頭 払 方 式 を 用 い る こ とで,医 療 効 率 化 を達 成 し よ う とす る わ け で あ る㌔

次 にPPOと は,保 険 会社 と優 先 的 な診 療 契 約 を取 り結 ん だ 医 療提 供 組 織 で あ る。PPO自 体 は保 険者 と して の 機 能 を持 た な い が,保 険 会 社 と診 療 契 約 を 取 り結 ぶ こ と で マ ネ ジ ドケ ア組 織 を構 成 す る 。 保 険 者 は,加 入 者 に PPOの 利 用 を促 す代 わ りに,診 療 報 酬 を割 引料 金 で 支 払 え ば よい 。 た だ し出 来 高 払 方 式 に 基 づ く割 引 料 金 で あ る た め,保 険 会 社 が どのPPOを 「 選 好 」(prefer)す る か

に よ って,医 療 費 抑 制 効 果 も違 っ て くる。 なお,PPOの 用 語 は,保 険 会 社 が 保 険 商 品 名 に転 用 した た め に,慣 例 的 に医 療 保 険 商 品 の 区 別 と して も用 い られ て い る。

マ ネ ジ ドケ ア の 成 長 ぶ りは,医 療 保 険 市 場 の 動 向 に 端 的 に示 され る 。 第1表 は,医 療 保 険 類 型 別 の 加 入 者 を ま とめ た もの で あ る 。 見 られ る通 り,1992年 で は い ま だ 「 従 来 型 」 が 医 療 保 険加 入者 総 数 の58.9%と 過 半 を占 め て い た の に対 し,早 く も95年 に は 「 従 来 型 」35.0%,

「マ ネ ジ ドケ ア 型 」65.0%と 比 率 が 逆 転 して い る。 と く に民 間 医 療 保 険 市 場 で の 伸 長 ぶ りに は 目 を瞠 る も の が あ り,同 期 間 に 「 従 来 型 」 が51.6%か ら25.8%へ と半 減 す る 一 方,「 マ ネ ジ ドケ ア 型 」 は48.4%か ら74.2%へ と 1.5倍 の伸 び で あ る 。 な か で もPPO型 が 突 出 して お り, 95年 時 点 で 民 間 医 療 保 険 加 入 者 の 半 数 を 占 め る ま で に

な っ た。

医 療 保 険 市 場 にお け る マ ネ ジ ドケ ア の 急 速 な普 及 は, HMO企 業 の急 成 長 を もた らす の み な らず,既 存 業 者 で あ る 各 州 の ブ ル ー ク ロ ス ・ブ ル ー シ ー ル ドや 生 命 保 険 ・損 害 保 険 企 業 に対 して事 業 再 編 や 提 携 ・買 収 を迫

る な ど,医 療 保 険 産業 に変 動 を もた ら して い る。

マ ネ ジ ドケ ア の イ ンパ ク トは医 療 保 険 産 業 に と ど ま らな い 。 対 人 医 療 費 の 推 移 を ま とめ た 第2表 が 示 す よ う に,1990年 を通 じて 対 人 医 療 費 の 対 前 年 度 伸 び 率 は鈍 化 傾 向 に あ り,98年 で は5.2%と1980年 代 の お お よ そ半 分 の 水 準 で あ る 。 なか で も病 院 医 療 費 の 鈍 化 が 顕 著 で, 1990年 代 を通 じて 全 体 の 伸 び 率 を下 回 り続 け た 結 果, 病 院 医 療 費 が 対 入 医 療 費 に 占 め る割 合 は,1985年 の 44.7%か ら98年 に は37.5%へ と7.2ポ イ ン トも減 少 す る に 至 っ た。 マ ネ ジ ドケ ア の 医 療 費 抑 制 効 果 に 関 して は議 論 が 分 か れ る と こ ろ で あ るが4,少 な く と も国 民 医 療 費 統 計 に お い て 病 院 医 療 費 が 抑 制 さ れ た こ とは 確 認 で き

一82一

(4)

第1表 医療保険類型別加入者数の推移

民 間 お よ び 公 的 医 療 保 険(万 人%)

1992年1995年

n"12.82058.97,81035 .0

マ ネ ジ ドケ ア 型8,95041.11448065 .O

HMO3,72017.14 ,83021.7

PPO5,04023.19,10040.8 混 合1900.955025

計21,77010ao22290tl1

民 間 医 療 保 険(万 人%)

1992年1995年 i9 ,31051.64,78025.8

マ ネ ジ ドケ ア 型8,720.;.1378074 .2

HMO3,52019.54,180225 PPO5,04027.99,10049.0 混 合160・0.95002.7

計18,030100.018,560100.0

公 的 医 療 保 険(万 人%)

1992年1995年 6,35093.66,20089.8

マ ネ ジ ドケ ア型2306.470010 .2

HMO2006.16509 .5

PPO‑一 一 一

混 合300.3500.7 計..1100.06,900111

出 所)HIAA,Sorcebookofhealthinsurancedata1999‑2000,p62, Table3.3よ り 作 成 。

る 。

病 院 医 療 費 の 抑 制 は,病 院 産 業 に お い て も変 動 を 促 し た 。 営 利 ・非 営 利 を 問 わ ず 経 営 効 率 の 改 善 を 主 目 的 と す る 事 業 再 編 が 急 ピ ッ チ で 進 め ら れ る な か で,近 隣 病 院 お よ び 専 門 医 療 施 設 を 次 々 と 買 収 ・合 併 し て 入 院 ・外 来 ・リ ハ ビ リ ・在 宅 医 療 と い っ た 一 連 の 医 療 体 系 を 経 営 的 に 結 合 し,さ ら に は 診 療 圏 内 の 開 業 医 等 と

も 業 務 提 携 す る な ど,地 域 独 占 化 を 図 り つ つ 収 益 極 大 化 を 目 指 すIDN(integrateddeliverynetwork)が 各 地 で 誕 生 し て い る 。 加 え て,提 携 ・買 収 ・合 併 を 通 じ た 規 模 の 経 済 性 追 求 と 業 務 委 託(curveout)が 進 行 し て お り, 受 け 皿 と し て の 多 種 多 様 な 医 療 関 連 ビ ジ ネ ス を 産 み 出 し て い る 。 近 年 の 新 しい 業 種 と し て,保 険 会 社 の 医 療 管 理 業 務 を 請 負 う 医 療 管 理 業 や グ ル ー プ ・プ ラ ク テ ィ ス の 診 療 管 理 を 請 け 負 うPPM(PhysicianPractice

Management),医 療 管 理 の 技 術 的 基 礎 を 提 供 す る 情 報 通 信 産 業 が 注 目 さ れ る5。

マ ネ ジ ド ケ ア の 発 展 と そ れ に 伴 う 合 衆 国 医 療 産 業 の こ う し た 変 動 は,企 業 化 の 進 展 と して 把 握 す る こ と が で き る 。 企 業 化(corporatization)と は,医 療 が 全 体 と

して 有 利 な資 本 投 下 部 面 へ と変 貌 す る な か で,医 療 機 関 の 組 織 や 行 動 も利 潤 原 理 を第 一 と して 企 業 と同 形 化 す る こ とを 表 す6。 そ れ ゆ え,営 利 企 業 の 動 向 に関 心 を 払 う と は い え,そ の 寡 多 の み に 尽 き る も の で は な い 。 歴 史 的 に 営 利 企 業 参 入 が 制 限 さ れ た と して も,マ ネ ジ

ドケ ア に よ っ て コ ス ト効 率 の 改 善 が 強 制 さ れ る な か で, や は り企 業 化 が 進 行 す る か らで あ る7。 企 業 化 論 者 の J.W.サ ル モ ンか ら引用 し よ う。

「医 療 の 企 業 化 は,巨 大 な 医 療 事 業 体 の 参 入 を一 要 因 とす る 。 株 式 会 社 形 態 な い し 『 非 営 利 』 形 態 を と る 多 角 化 した 病 院 チ ェ ー ンや 病 院 連 合 体,全 国 的 に巨 大 な あ る い は地 域 支 配 力 の あ るHMO,医 療 提 供 業 務 に積 極 的 に投 資 しは じめ た 巨 大 保 険 会 社 な どが そ れ で あ る 。 こ れ ら全 て が 狂 っ た よ う に事 業 の イ ン テ グ レー シ ョ ン や 市 場 支 配 力 強 化 に 乗 り出 して い る。 …(中 略)…

企 業 化 とは,単 な る 所 有 形 態 の 変 化 で は な く,医 療 に 関 わ る 経 営 体 の 目的 と性 格 の 変 化 に他 な ら な い」8。 そ こ で 医 療 産 業 に お け る 集 中 や イ ン テ グ レー シ ョ ンの 現 状 を分 析 す る こ とが,本 稿 の課 題 の第 一 で あ る。

課 題 の 第 二 は,医 療 管 理 と関 わ る 。 再 び引 用 し よ う。

「… 巨 大 企 業 の ご と く位 階 制 を有 す る経 営 体 に お い て は,医 療 行 為 の 決 定 や 雇 用 機 会,診 療 報 酬 な どは 管 理 者 の 官 僚 制 的 監 督 の も と に お か れ る 。 個 々 の 医 師 は, 次 第 に 自律 性 と患 者 に対 す る権 限 と を失 い,専 門 職 と して の 忠 誠 心 を これ らの 組 織 に捧 げ は じめ て い る」9。

医 師 の 自律 性 の喪 失 と管 理 者 へ の 権 限 委 譲 と い う指 摘 は,医 療 社 会 学 の 領 域 で 研 究 が 積 み 重 ね られ た 医 療 専 門職 論 へ と我 々 を 誘 う。 しか し医 師 の 地 位 変 貌 の 問 題 を直 接 に取 扱 う に は,理 論 的 ま た実 証 的 に数 多 くの 論 点 を 検 討 し な くて は な らず,筆 者 の 力 の 及 ぶ と こ ろ で は な い1° 。 ま た企 業 化 論 の 研 究 蓄積 にお い て も医 療 管 理 につ い て の具 体 的 な分 析 が 乏 しい こ とか らll,本 稿 で は,医 療 管 理 の 事 例 分 析 を 通 して,医 師 に 対 す る管 理 の 性 格 と医 療 行 為 の 標 準 化 の 動 向 と を検 討 す る こ と第 二 の課 題 と した い12。

と こ ろ で,医 療 管 理 と は,技 術 と して の マ ネ ジ ドケ

ア に 他 な ら な い 。 技 術 で あ る 以 上,医 療 管 理 の 導 入 は

何 もHMOやPPOと い っ た 保 険 者 主 導 の マ ネ ジ ドケ ア 組

織 に 限 られ る もの で もな く,医 療 機 関 に も適 用 され う

る。 医 療 事 故 ・過 誤 が 叫 ば れ る 今 日,医 療 管 理 が 医 療

の 質 を も左 右 す る こ と を 考 え る な らば,む しろ 医 療 機

(5)

第2表 対 人医 療費 の 推移 金 額(億 ドル)

1985 1990 1995 1998

対 人 医療 費計 病院

医科 医 師 歯 科 医 師

ナー シングホー ム その 他 専 門ケア 在 宅 医療

薬 剤 等 め がね 等

その 他対 人 ケア

3,764 1,683 836 217 307 166 56 371

67 61

6,147 2,564 1,463 316 509 347 131 599 105 112

8,791 3,470 2,019 450 755 536 291

..

133 251

10,193 3,828 2,295 538

..

・.・

293 1,219 155 32f

対前 年 度 赤 化率(%〉

1985 1990 199 1998

対 人 医療 費計 病院

医科 医 師 歯 科 医 師

ナー シングホーム その他 専 門ケア 在 宅 医療

薬 剤 等 めが ね等

その 他 対人 ケア

11.6 10.4 13.1 10.2 11.7 21.2 18.9 11.4 12.4 8.8

10.3 8.8 11:8

7.8 10.7 15.8 18.4 10.1 9.2 12.9

7.4 6.2 6.6 7.3 8.2 9.1 17.3 8.1 5.0 17.5

5.2 3.4 5.4 5.3 3.7 8.3

‑4 .0 12.3

2.7 9.8

出 所)DHHS,Hea/th,theUnitedStates2000,p.325,Table118よ り 作 成 。

関 の マ ネ ジ ドケ ア 組 織 と し て の 発 展 に こ そ 注 目 を 払 わ ね ば な ら な い13。 そ れ ゆ え,保 険 者 主 導 の マ ネ ジ ド ケ ア 組 織(以 下,慣 例 に 従 っ て 単 に マ ネ ジ ドケ ア と よ ぶ)

と併 せ て,医 療 機 関 に お け る 医 療 管 理 の 現 状 に つ い て も考 察 し た い 。 こ れ が 本 稿 の 第 三 の 課 題 で あ る 。

本 稿 で 取 り 上 げ る 具 体 的 事 例 は,マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 州 ボ ス ト ン 地 域 で の 見 聞 お よ び 入 手 資 料 に 基 づ く も の で あ る 。 そ こ で 本 節 の 最 後 に,マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 の 社 会 経 済 状 況 と医 療 制 度 に つ い て 簡 単 に 整 理 し よ う 。

1999年 の 州 人 口 は617万 人 で,全 米 第13位,高 齢 化 率 は13.9%で 全 米 平 均 並 で あ る14。 同 年 の1人 あ た り州 民 所 得 は35,733ド ル で 全 米 平 均28,518ド ル を 大 き く上 回 り, 全 米 第3位 で あ るIS。 ま た,失 業 率 は3.2%,貧 困 率8.7%

で,と も に 全 米 平 均(そ れ ぞ れ4.2%,12.7%)を 下 回 っ て お り16,全 米 屈 指 の 豊 か な 州 で あ る こ と が 伺 わ れ る 。

医 療 に 目 を 転 ず る と,州 医 療 費 は1998年 で 約300億 ド ル と 州 内 総 生 産 の12.9%を 占 め て お り,同 年 の1人 あ た

り医 療 費 は4,887ド ル と 全 米 平 均3,760ド ル を 大 き く凌 駕 し て い る17。 ま た,州 内 に は ハ ー バ ー ド大 学 医 学 部 や マ

サ チ ュ ー セ ッ ツ 総 合 病 院 な ど,世 界 的 名 声 を 有 す る 医 学 研 究 施 設 が 集 積 し て お り,例 え ば 国 立 衛 生 研 究 所 (NationalInstituteofHealth)か ら の 研 究 助 成 金 額 は19gg 年 で13億5,500万 ドル,州 民 一 人 当 た り に 換 算 す る と219

ドル で,こ れ は 全 米 平 均47ド ル の4.6倍 に も 相 当 す る18。

ア メ リ カ 医 療 の 光 と 言 わ れ る 先 端 医 療 の 面 で,マ サ チ ュ ー セ ッ ッ は 恵 ま れ た 地 域 で あ る と い え る 。

ア メ リ カ 医 療 の 陰 を 象 徴 す る 無 保 険 者 問 題 で は, 1998年 の 無 保 険 者 数 は62.7万 人 で 州 人 口 の10.3%と な っ て い る 。 こ れ は 全 米 平 均16.3%と 比 べ て か な り低 い 数 値 で あ り,カ リ フ ォ ル ニ ア(22.1%)や テ キ サ ス(245%)

と い っ た 無 保 険 者 率 の 高 い 諸 州 の 半 分 以 下 で あ る 。 無 保 険 者 が 相 対 的 に 少 な い こ と に 加 え て,メ デ ィ ケ イ ド を 柱 とす る マ ス ヘ ル ス 事 業 や,州 政 府 補 助 金 と 保 険 会 社 ・営 利 病 院 の 拠 出 金 と を 原 資 と す る 未 払 い 医 療 費 支 払 基 金(UncompensatedCarePoot,フ リ ー ケ ア ・プ ロ グ ラ ム と も 呼 ば れ る)の 設 置,あ る い はHIV(ヒ ト免 疫 不 全 ウ ィ ル ス)や 結 核 を は じ め と す る 特 定 疾 患 の 患 者 に 対 す る 公 衆 衛 生 行 政 の 充 実 な ど,医 療 困 窮 者 に 対 す る

一84一

(6)

各 種 の 保 護 的 制 度 が 整 備 さ れ て お り,医 療 保 障 の 面 で も,マ サ チ ュ ー セ ッ ッ州 は 最 も先 進 的 な 州 の ひ とつ で あ る19。

以 上 を念 頭 に,次 のH節 で は マ ネ ジ ドケ ア 産 業 の現 状 とそ こ で の 医 療 管 理 を 取 り上 げ,ま た 続 く田 節 で は 病 院 産 業 の 現 状 と医 療 管 理 を対 象 に,そ れ ぞ れ 考 察 を 加 え る こ と とす る。

llマ ネ ジ ドケ ア に お け る 医 療 管 理 (1)マ ネ ジ ドケ ア 産 業 の 現 状

マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 州 は,マ ネ ジ ド ケ ア が 最 も 普 及 し た 州 の1つ で あ る 。1998年 のHMO加 入 率 は51.6%と 過 半 数 を 占 め,全 米 平 均29.2%を 大 き く上 回 っ て い る2°。 マ ネ ジ ド ケ ア へ の 加 入 は 大 半 が 雇 用 を 通 じ た も の で あ る が,メ デ ィ ケ ア や メ デ ィ ケ イ ドを 通 じ た 加 入 率 も全 米 平 均 を 上 回 っ て お り,1999年 で メ デ ィ ケ ア 加 入 者 の 23.7%(全 米 平 均16.5%)が,ま た98年 で メ デ ィ ケ イ ド 受 給 者 の70.6%(同54.1%)が,そ れ ぞ れ マ ネ ジ ドケ ア に 加 入 し て い る21。

し か し,加 入 率 の 高 さ と い う 有 利 な 市 場 条 件 と は 裏 腹 に,マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 の マ ネ ジ ドケ ア 産 業 は 苦 境 に 立 た さ れ て い る 。HMO産 業 全 体 の 利 益 率 の 中 央 値 は 1995年 よ り一 貫 し て マ イ ナ ス を 続 け,98年 に は マ イ ナ ス5.1%を 記 録 し て い る22。100万 人 超 の 被 保 険 者 を 代 表 す る マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 医 療 購 入 者 団 体(Massachusetts HealthcarePurchaserGroup,以 下MHPG)を 筆 頭 に,地 元 産 業 界 主 導 で 団 体 医 療 保 険 料 率 の 抑 制 交 渉 が 毎 年 の

よ う に 繰 り 返 さ れ た こ と23,ま た1997年 財 政 均 衡 法 (BalancedBudgetActof1997)に よ っ て メ デ ィ ケ ア ・メ デ ィ ケ イ ドに 対 す る 連 邦 財 政 支 出 が 縮 減 さ れ,HMOに 対 す る 人 頭 払 額 も 抑 制 さ れ こ と が,産 業 全 体 と し て の 業 績 悪 化 の 主 た る 要 因 で あ る 。

例 え ば,MHPGの 場 合,設 立 翌 年 の1994年 に は 州 内 の 保 険 会 社 に 対 し て 保 険 料 引 上 げ0%を 要 求 し,さ ら に 翌95年 に は マ イ ナ ス3%を 要 求 す る な ど,企 業 の 医 療 保 険 料 負 担 を 抑 制 す る 立 場 で 強 力 に 交 渉 を す す め て い る 。 ま た,メ デ ィ ケ アHMO事 業 を み る と,1995年 に は13社 が 参 加 し て い た が,財 政 均 衡 法 等 の 影 響 で メ デ ィ ケ ア か ら の 人 頭 支 払 額 が 切 り下 げ ら れ る に 伴 い,99年 に は5 社 に ま で 減 少 し て い る24。

医 療 保 険 購 入 者 側 の 圧 力 と そ れ に 伴 う 業 績 不 振 の 結

果,マ ネ ジ ド ケ ア 産 業 で は 買 収 ・合 併 を 通 じ た 企 業 集 中 が 急 速 に 進 展 し た 。 マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 州 の マ ネ ジ ド ケ ア 会 社 を ま と め た 第3表 に 示 さ れ る よ う に,現 在 で は 3大 保 険 会 社 一 ハ ー バ ー ド ・ピ ル グ リ ム ・ヘ ル ス ケ ア (HarvardPilgrimHealthCare,以 下HPHC),HMOブ ル ー (HMOBIue)25,タ フ ス ・ア ソ シ エ イ テ ィ ド ・ヘ ル ス プ ラ ン(TuftsAssociatedHealthPlan)一 が 州 内HMO加 入 者 の78.3%を 占 め て い る 。 こ の3社 は い ず れ も 非 営 利 法 人(パ ブ リ ッ ク ・チ ャ リ テ ィ)で あ り,エ トナ 社,シ

グ ナ 社 と い っ た 全 米 的 な 営 利 保 険 会 社 は 州 内 で わ ず か な シ ェ ア を 持 つ に 過 ぎ な い 。 買 収 ・合 併 に 最 も 精 力 的 だ っ た ゐ は 最 大 手 のHPHC社 で あ り,1995年 の ハ ー バ ー ド ・コ ミ ュ ニ テ ィ ・ヘ ル ス プ ラ ン 社 と ピ ル グ リ ム ・ヘ ル ス ケ ア 社 の 合 併 を 皮 切 り に,96年 は コ ミュ ニ テ ィ ・ メ デ ィ カ ル ・ア ラ イ ア ン ス,97年 は ネ イ バ ー フ ッ ド ・ ヘ ル ス プ ラ ン を 買 収 し,さ ら に ロ ー ド ア イ ラ ン ド州 な

ど 隣 接 州 の 保 険 会 社 の 買 収 も 手 が け て い る 。

そ れ ゆ え,非 営 利 保 険 会 社 が 支 配 的 な マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 に お い て も,保 険 料 収 入 の 確 保 を め ぐ る 競 争 戦 が 展 開 さ れ る な か,集 中 が 一 気 に 進 行 し た こ と が わ か る 。 た だ し,事 業 再 編 に 際 し て 何 か と 制 約 の 多 い 非 営 利 組 織 の 場 合,あ ま り に 急 激 な 買 収 ・合 併 は か え っ て 企 業 経 営 を 損 な う こ と も 多 く,HPHC社 の 場 合 も 保 険 商 品 の 複 雑 化 や 管 理 組 織 の 重 複 な ど に よ っ て2000年1月 に 1億8,000万 ドル の 負 債 が 表 面 化,財 政 援 助 と 引 き 換 え に レ イ オ フ を 含 む 抜 本 的 な 業 務 改 善 を 州 政 府 に よ っ て 命 令 さ れ た 。 イ ン タ ビ ュ ー 応 対 者 に よ れ ば,財 政 援 助 の 決 定 に 際 し て,「 地 域 に 与 え る 影 響 が 大 き い の で 破 産 さ せ る わ け に は 行 か な い 」 と の 判 断 が 州 政 府 内 で 多 数 を

占 め た と い う26。

な お マ ネ ジ ド ケ ア 産 業 の 苦 境 は 保 険 給 付 の 抑 制 を 通 じ て 病 院 産 業 の 再 編 を 惹 起 し て い る が,こ れ に つ い て はmで 改 め て 論 じ る こ と に し て,次 に マ ネ ジ ドケ ア に お け る 医 療 管 理 に つ い て 具 体 例 を 交 え て 検 討 し た い 。

(2)マ ネ ジ ドケ ア に お け る 医 療 管 理

マ ネ ジ ド ケ ア の 医 療 管 理 は,原 則 的 に は,あ る 医 療 行 為 に 対 し て 保 険 か ら 支 払 う か ど う か を 決 め る,保 険 給 付 上 の 決 定 で あ る 。 こ れ を 承 認 制 度lauthorization system)と よ ぶ 。 承 認 制 度 は 臨 床 上 の 決 定 で は な く,ゆ

え に 保 険 会 社 は 医 療 訴 訟 を 免 が れ る27。 と は い え,給 付

(7)

第3表 州 内 マ ネ ジ ドケ ア 会 社 一 覧(2000年)

(単 位:人,%)

企業名 加入者 数 市場 占有率

HarvardPilgrimHealthCare TuftsAssociatedHMO HMOBIue(BCBSofMA)

FallonCommunityHealthPlan NeighborhoodHealthPlan HealthNewEngland AetnaU.S.Healthcare CIGNAHealthcareofMA

UnitedHealthcareofNewEngland CoordinatedHealthPartners OneHealthPlanofMA

MatthewThorntonHealthPlan ConnectiCareofMA

817,140 629,661 570,126 215,653 108,555 67,374 60,290

×3,013 41,327

4,274 4,058 1,753 1,398

31.7 24.5 22.1 8.4 4.2 2.6 2.3 2.1 1.6 0.2 0.z O.1 0.1

合計 2,574,622 100.0

出 所)CommonwealthofMassachusetts,YourGuidetoMa〃agedCare inMassachusetts,2000.

の 可 否 が 実 際 上 は 治 療 計 画 策 定 に大 き な影 響 を 及 ぼ す こ とは 否 定 で きな い 。 そ の 意 味 で,マ ネ ジ ドケ ア は 患 者 に 対 す る 権 限 を医 師 か ら剥 奪 した と理 解 す る こ と も で き る 。 し か し,以 下 で 見 る よ う に,こ の 状 況 は か わ

りつ つ あ る。

さ て,第4表 は,マ ネ ジ ドケ ア にお け る 医 療 管 理 を概 括 した もの で あ る28。同表 か らわ か る とお り,医 療 管 理 の 対 象 は 広 範 囲 に亘 っ て い る 。 教 育 や 電 話 相 談 を通 じ た患 者 の 受 診 行 動 管 理 か ら,専 門 医 へ の 紹 介 や 入 院 ・ 検 査 ・リハ ビ リテ ー シ ョ ン ・救 急 室 利 用 に対 す る 管 理, さ ら に は 薬 物 依 存 症 管 理 や疾 病 管 理 な ど,医 療 を ひ ろ く網 羅 して い る。 な か で も入 院 と専 門 医 受 診 に 対 す る 管 理 が 医療 費抑 制 の観 点 か ら重視 され て い る 。

以 下 で は,マ サ チ ュ ー セ ッ ツ州 最 大 手 のHPHC社 に お け る 医 療 管 理 を具 体 的 事 例 に,① 入 院 診 療 管 理,② 専 門 医 診 療 管 理,③ 診 療 ガ イ ドラ イ ン に つ い て 検 討 を 加 え た い29。

① 医 療 管 理 ガ イ ドラ イ ン と入 院 診 療 管 理

HPHC社 で は,医 療 管 理 を 行 う に 際 し,医 療 管 理 ガ イ ドラ イ ン を 採 用 して い る 。 入 院 診 療 管 理 に は イ ン タ ー ク オ ル 社 の ガ イ ド ラ イ ン を3°,精 神 科 治 療 に は マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 行 動 医 学 組 合(MassachusettsBehavioralHealth Partnership)の ガ イ ドラ イ ン を 用 い て お り,他 に も介 護

や 入 所 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン,通 院 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン (物 理 療 法 ・作 業 療 法 ・ス ピ ー チ 療 法),さ ら に 早 期 介 入 な ど の 医 療 管 理 に 関 し て,HPHC社 独 自 に ガ イ ド ラ イ ン を 作 成 し 適 用 し て い る 。 医 療 管 理 業 務 は,医 師 (PhysicianAdvisor,以 下PA)の 監 督 ・指 導 の 下 で,正 看 護 婦 資 格 を 有 す る ケ ー ス マ ネ ジ メ ン ト看 護 婦(Nurse CaseManager,以 下NCM)が 実 施 に 当 る31。 医 療 管 理 に 関 わ る 医 師 ・看 護 婦 と と も に,イ ン タ ー ク オ ル 社 の 開 催 す る 講 習 会 を 年 一 回 受 講 す る こ と に な っ て い る 。

医 療 管 理 で 最 も 重 要 な 入 院 診 療 管 理 は,NCMやPAが 主 治 医 と 連 携 し て 行 わ れ る 。 項 目 は 第4表 に 掲 げ た も の

と ほ ぼ 同 じ で,入 院 前 審 査,入 院 中 審 査,ケ ー ス マ ネ ジ メ ン トで あ る 。 既 に 述 べ た よ う に,HPHC社 で は 入 院 診 療 管 理 に 際 し て イ ン タ ー ク オ ル 社 の ガ イ ド ラ イ ン を 用 い て い る 。 入 院 前 ・入 院 中 審 査 ・退 院 後 審 査 は InterQualISD,手 術 ・処 置 の 事 前 評 価 はInterQualISPと

よ ば れ る ガ イ ド ラ イ ン に 基 づ く。 た だ し最 長 入 院 日 数 に つ い て は,別 に 診 断 ・術 式 別 入 院 日 数 ガ イ ド ラ イ ン (LengthofStaybyDiagnosisandOperation)が 用 い ら れ る 。

医 療 管 理 ガ イ ド ラ イ ン は 次 の よ う に 運 用 さ れ る32。 ま ず,診 療 記 録 が ガ イ ドラ イ ン に 示 さ れ た 基 準 に 合 致 し て い る 場 合 は,NCMに よ っ て 入 院 が 承 認 さ れ る 。 次 に, 基 準 に 合 致 し な い 場 合,NCMは 当 該 患 者 の 主 治 医 に 追

:・

(8)

第4表 医 療 管 理(medicalmanagement)の 種 類

種類

① 需要管理

② 専門医診療管理

③ 入院診療管理 入院前審査 入院中審査 退院後審査 ケースマネジメント

④ 検査・ 救急サービス管理

⑤ 行動医学的サ0ビ ス管理 6疾 管理

主な内容

加入者への教育や情報提供を通じた医療禰要適正化 事前承認や事後審査による専門医紹介の管理

入院の承認,外 来手術・ 入院初日手術等の吟味 最長入院 日数の設定,入 院継続の判定

意見・ 要望審査,病 院審査(入院成績比較等) 高額医療費が想定される患者に対して実施 検査 ・ リハビリ・ 救命救急室利用の管理 薬物依存症や行動障害等の治療の管理 慢性疾患治療の包 的な管理

出 所)Kα 、gstvedt(̲1‑1)お よ び 田 村(1999)よ り作 成 。

加 情 報 を請 求 す る。 追 加 情 報 で基 準 に合 致 す れ ばNCM に よ っ て 入 院 は承 認 さ れ るが,合 致 しな い 場 合,審 査 権 限 はNCMか らPAの 手 に移 り,PAが 再 度 主 治 医 に追 加 情 報 を 請 求 す る 。PAに よ る 再 審 査 に お い て は,も は や イ ン タ ー ク オ ル社 の ガ イ ドラ イ ン は 用 い ら れ ず,も っ ぱ らPAの 医 師 と して の 判 断 に委 ね られ る。PAの 判 断 に お い て 入 院 が 不 適 当 で あ る と決 定 した 場 合,こ れ を

「 逆 決 定 」 とい い,主 治 医 は も ち ろ ん,HPHC社 と診 療 契 約 を結 ん で い る全 て の 医 師 に 経 緯 を ま と め た レ ター が 配 布 さ れ,当 該 決 定 に 対 す る 意 見 が 収 集 さ れ る。 ま た,逆 決 定 に 対 して 患 者 お よ び 主 治 医 は不 服 申 し立 て を行 う こ と もで き る。

こ の 逆 決 定 にお い て 非 常 に特 徴 的 な こ と は,看 護 婦 で な く医 師 が 行 う こ と,ま た そ の 際 の 判 断 が ガ イ ドラ イ ン の機 械 的 適 用 で は な くて 個 別 の 症 例 に 対 す る 臨 床 医 と して の 判 断 に基 づ くこ と,さ ら に 患 者 と主 治 医 に 不 服 申 し立 て が認 め られ る こ と,以 上 の 三 点 で あ る。

マ ネ ジ ドケ ア に対 す る告 発 の 大 半 は ,入 院や検 査 の 不 承 認 に 由 来 す る。 入 院 の 許 可 や 継 続 一 主 治 医 か らの 依 頼 も 当 然 に含 まれ る一 の 求 め に 対 して,医 療 管 理 業 務 に携 わ る 看 護 婦 が,個 々 の 症 状 を勘 案 せ ず に機 械 的 に不 承 認 との 判 断 を下 し,図 らず も悲 劇 的 な 転 帰 を向 か え た ケ ー ス もあ る3i。

そ こ でHPHC社 で は,逆 選 択 の 決 定 を医 師 の裁 量 に委 ね る こ とで,入 院 診 療 管 理 に対 す る 社 会 的 な 反 発 に 対 処 して い る と い え る 。 契 約 医 に 配 布 さ れ る マ ニ ュ ア ル に明 記 され た 次 の 文 章 もそ の こ と を窺 わ せ る。 「 ハ ー バ

一 ド ・ ピ ル グ リ ム 社 の ケ ー ス マ ネ ジ メ ン ト看 護 婦 は , 病 院 や ス タ ッ フ と 協 力 す る こ と で,医 療 管 理 を 適 切 な も の と し,ケ ア に 及 ぼ す 悪 い 影 響 を 最 小 限 度 に と ど め ま す 。」14

② 専 門医 紹 介

マ ネ ジ ドケ ア の 医 療 管 理 に お い て 入 院診 療 管 理 と並 ぶ 重 要 な管 理 が 専 門 医 診 療 管 理 で あ る 。 専 門 医 診 療 管 理 は,主 治 医 の 臨 床 上 の 決 定 で あ る 紹 介(referral)を 患 者 に 義 務 づ け る こ と と,主 治 医 の 紹 介 に 対 して 承 認 制 度 を 適 用 す る こ との2要 素 か らな る15。人院 の 場 合 も 同様 で あ る。

HPHC社 はHMOで あ る か ら,患 者 が 専 門 医 へ 受 診 す る場 合,原 則 的 に 主 治 医 の 紹 介 が 必 要 で あ る。 た だ し 法 律 上 の 規 定 に よ り救 急 お よ び 産 婦 人 科 の 場 合 は例 外 的 に直 接 受 診 も可 能 で あ り,ま た 保 険 契 約 に よ っ て は カ イ ロ プ ラ ク テ ィ ッ クや 眼 科 医,歯 科 医 の 直接 受 診 を 認 め る場 合 もあ る。

他 方,主 治 医 の 紹 介 に対 す るHPHC社 側 の 承認 制 度 は 緩 や か で,同 社 と契 約 済 み の 専 門 医 へ 紹 介 す る 場 合 に は承 認 は 不 要 で あ る。 主 治 医 は患 者 を専 門 医 の も とへ 自 由 に紹 介 す る こ とが で きる 。 た だ し契 約 を結 ん で い な い専 門 医へ 紹 介 す る場 合 に は,主 治 医 は 事前 にHPHC 社 か ら承 認 を う けね ば な らな い36。

した が っ て,HPHC社 にお い て は逆 決 定 の 場 合 と 同 じ

く,専 門 医 診 療 管 理 も 医 師 の裁 量 に 委 ね られ て い る と

い え る 。 た だ し全 く管 理 さ れ な い わ け で は な く,診 察

(9)

件 数,検 査 件 数,専 門 医 紹 介 件 数,総 医 療 費 な どの 情 報 を主 治 医 に毎 月 送 付 す る レポ ー ト制 度 が 専 門 医 診 療 管 理 に代 わ っ て整 備 さ れ て お り,主 治 医 は この レポ ー トに 目 を通 さな け れ ば な ら な い 。 つ ま りHPHC社 で は, 直 接 の 承 認 制 度 を緩 め る一 方 で,主 治 医 自 ら の 自主 的 管 理 を促 してい る とい え る。

③ 診 療 ガ イ ドラ イ ン

最 後 に 医 療 行 為 の 標 準 化 の 問 題 と 関 わ っ て,診 療 ガ イ ドラ イ ン に 着 目 し た い 。

診 療 ガ イ ドラ イ ン(clinicalpracticalguideline)と は, 疾 病 ご と に 適 切 な 治 療 計 画 を 明 示 し た も の で あ る 。 近 年 に な っ て 日 本 で も 作 成 が 試 み ら れ て い る が,合 衆 国 で の 取 り 組 み は 早 く,す で に1,000を 超 え る 診 療 ガ イ ド

ラ イ ン が 存 在 し て い る と い う 。

た だ し 同 じ 診 療 ガ イ ド ラ イ ン と い っ て も,各 ガ イ ド ラ イ ン の 「医 療 行 為 の 適 切 さ 」 が 一 体 何 を 基 準 と し て い る か,注 意 を 払 う 必 要 が あ る 。 言 い 換 え れ ば,コ ス ト効 率 性 の 以 前 に,医 学 的 な 意 味 で の 安 全 性 や 有 効 性 を き ち ん と ふ ま え た も の で あ る か 否 か が,厳 し く問 わ れ な く て は な ら な い 。

一 例 と し て,喘 息 治 療 に 関 す る 診 療 ガ イ ドラ イ ン を と り あ げ よ う37。 国 立 心 臓 ・肺 ・血 液 研 究 所(National Heart,LungandBloodInstitute,NHLBI)が1997年 に 発 表

し た 喘 息 診 断 ・管 理 ガ イ ド ラ イ ン を 見 る と,重 症 度 が PEF(最 大 呼 気 速 度)で 明 快 に 区 分 さ れ,あ る い は 薬 物 療 法 の 効 果 と 副 作 用 の 情 報 が 典 拠 を 含 め て 示 さ れ る な

ど,ガ イ ドラ イ ン 自 身 の 医 学 的 根 拠 が 非 常 に 明 瞭 で あ る38。 こ れ と 対 照 的 な の が 診 療 ガ イ ド ラ イ ン販 売 で 著 名 な コ ン サ ル テ ィ ン グ 企 業 ミ ル マ ン&ロ バ ー ト ソ ン 社 の 診 療 ガ イ ド ラ イ ン で あ る 。 同 社 の 喘 息 患 者 入 院 治 療 ガ イ ド ラ イ ン の 一 部 を 第5表 に 抜 粋 した が,見 ら れ る 通 り, 入 院 の 「適 切 」 「不 適 切 」 の 根 拠 が 医 学 的 に 示 さ れ て お ら ず,ま た ガ イ ド ラ イ ン の 目 標 も 入 院 日 数 で 表 示 さ れ て い る 。(こ の 場 合,通 院 な い し在 宅 で 治 療 す べ き だ と

さ れ る 。)

そ れ ゆ え,ど の よ う な ガ イ ド ラ イ ン を 採 用 し,そ れ を ど の よ う に 運 用 し て い る の か が 問 題 と な る 。HPHC社 に お い て は,医 療 部 門 で の 討 議 を 踏 ま え て,専 門 医 学 会 や 医 学 研 究 機 関 が 作 成 し た ガ イ ド ラ イ ン を 用 い て お り,例 え ば 喘 息 治 療 に つ い て はNHLBIの ガ イ ド ラ イ ン

を採 用 して い る 。 ま た 運 用 面 に関 して は,医 師 に 配 布 す る マ ニ ュ ア ル に次 の よ うな記 述 が あ る。

「HPHCで 用 い る臨 床 ガ イ ドラ イ ン は,臨 床 医 の 判 断 を 覆 した り,ま た 特 定 の 治 療 方 法 を導 入 す る こ と を 目 的 と して は い ませ ん 。 なぜ な ら,ガ イ ドラ イ ンが 予 期 す る 臨 床 的 状 態 に適 合 しな い 患 者 が お り ます し,ま た ガ イ ドラ イ ン に よ っ て 単 一 の 適 切 な治 療 法 が 確 立 さ れ る こ と もほ とん どな い か らで す 。 」39

専 門 医 学 会 の 診 療 ガ イ ドラ イ ンの 多 くは,コ ス ト効 率 性 よ り も医 学 的 有 効 性 に沿 っ て 作 成 され て お り,医 療 の 質 向 上 に は 寄 与 しえ て も,費 用 抑 制 に は 直 結 し な

い 。 加 え て,ガ イ ドラ イ ンの 運 用 に 関 して も,「 臨 床 医 の 判 断 を覆 」 さ な い と わ ざ わ ざ 明 記 して い る よ う に, 患 者 の 治 療 計 画 策 定 は原 則 的 に医 師 の 裁 量 に委 ね られ て い る。 そ れ ゆ えHPHC社 に お い て は,診 療 ガ イ ドラ イ ン の 導 入 に よ っ て提 供 され る 医 療 の 質 の 向 上 は あ りえ て も,費 用 対 効 果 に基 づ く医 療 行 為 の 標 準 化 は ほ と ん ど進 み え ない と考 え られ る。

(3)マ ネ ジ ドケ ア改 革 法

以 上,州 マ ネ ジ ドケ ア最 大 手 のHPHC社 を例 と して医 療 管 理 の 仕 組 み を検 討 して み る と,マ ネ ジ ドケ ア に よ る 医 師 の 裁 量 の 剥 奪 や 医 療 行 為 の 標 準 化 は,内 部 資 料 を 見 る 限 りほ と ん ど進 展 し え な い こ とが わ か っ た 。 マ ネ ジ ドケ ア に対 す る 社 会 的 反 発 の 広 が り は 日本 で も聞 こ え て い たが,医 師 の 裁 量 に対 して保 険 者 が こ こ ま で 譲 歩 して い た と は,じ つ は 意 外 な 発 見 で あ っ た 。 そ れ だ け で は な い 。HPHC社 に見 た 医 療 管 理 面 の 特 徴 は, 2000年 に成 立 した 州 の マ ネ ジ ドケ ア 改 革 法 に す べ て 盛 り込 ま れ,州 の マ ネ ジ ドケ ア 産 業 全 体 に対 す る社 会 的 規 制 へ と昇 格 して い る。

マ ネ ジ ドケ ア 改 革 法 は,そ の 正 式 名 称 が 「 保 険 産 業 で あ る マ ネ ジ ドケ ア か ら マ サ チ ュ ー セ ッ ッ州 の 消 費 者 の 健 康 と安 全 を守 る 法 律 」 で あ る こ とか ら窺 わ れ る と お り,消 費 者(被 保 険 者 お よ び患 者)の 権 利 擁 護 を法 の 理 念 と して い る4° 。 医 療 にお け る 消 費 者 の 権 利 と関 わ っ て 改 革 法 を 検 討 す る こ と は 興 味 深 い 課 題 で あ る が, 以 下 で は医 療 管 理 に関 わ る諸 点 だ け を取 り上 げ る 。

マ ネ ジ ドケ ア 改 革 法 は,「 分 別 あ る 素 人 の 基 準 」 (prudentlaypersonrule)に 基 づ き,マ ネ ジ ドケ ア加 入 者

とい え ど も,合 理 的 な 範 囲 で 救 命 医 療 や 産 婦 人 科 専 門

..

(10)

第5表 コ ン サ ル テ ィ ン グ 会 社製 の診 療 ガ イ ドラ イ ンの 一 例

喘 息(ICD・9:493.00,493.10,493.20,493.90)

○入 院 が適 当 な もの

・呼 吸 不 全(二 酸 化 炭 素 停 留)

・肺 浮 腫(「 心 臓 喘 息 」)

・4〜8時 間 の外 来 集 中治 療 に よ っ て も呼 吸 困 難 が 継 続 しPEFが 改 善 しな い

○入 院 が 不 適 当な も の

・発 作

・診 療 所 な い し救 命 救 急 室 内 にお け る重 症 の 呼 吸 困 難

・感 染 症 の 併 発

○代 替 治療 案.

・救命 救 急 室 ,緊 急処 置室,救 急 ケア,診 療所 にお け る外来治療 数 時 間 の点 滴 ・投 薬

吸 入 コル チ コ ステ ロイ ド薬

長 時 間 作 用 型 β刺 激 薬,吸 入 ・注 射 ま た は 経 口で テ オ フ ィ リン濃 度 の 管 理

・在 宅 ケ ア 医 師 の往 診

訪 問 看 護,非 経 ロ ・静 脈 注 射,PEF測 定法 の 指 導 と観 察 を含 む 検 査

呼 吸 セ ラ ピー の実 施 と訓 練

○ 目標 在 院 日数 一通 院 治 療

出 所)Millman&Roberts●nlnpatientHealthcareManagementGuidelinesよ り 作 成

医 を 自 由 に 受 診 で き る と 規 定 し て い る41。 つ ま り,救 急 救 命 室 や 産 婦 人 科 専 門 医 に 限 っ て の こ と で は あ る が, 主 治 医 の 紹 介 や マ ネ ジ ド ケ ア の 承 認 な し に 専 門 医 へ 直 接 に 受 診 す る こ と(directaccess)を 法 的 権 利 と し て 認 め た こ と を 意 味 し て お り,マ ネ ジ ドケ ア に よ る 専 門 医 受 診 の 不 承 認 を 法 的 に 制 限 し て い る 。

特 定 の 専 門 医 直 接 受 診 を 権 利 と し て 認 め る 動 き は, マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 に 限 っ た 話 で は な い 。 救 命 救 急 室 受 診 を 法 的 に 保 障 し て い る 州 は1999年 時 点 で38州 に の 一 ぼ り,産 婦 人 科 医 へ の 受 診 に つ い て も 同 年 で36州 が 法 的 に 直 接 受 診 を 認 め て い た42。産 婦 人 科 医 療 に つ い て は, 1996年 連 邦 母 子 健 康 保 護 法(Newborn'sandMothers'

HealthProtection)の 規 定 を う け て,ほ ぼ 全 て の 州 が

「ド ラ イ ブ ス ル ー 出 産 」 を 禁 止 し,正 常 分 娩 後48時 間 入 院,帝 王 切 開 後96時 間 入 院 を 義 務 づ け る な ど,社 会 的 規 制 が さ ら に 強 化 さ れ て い43。

マ サ チ ュ ー セ ッ ツ州 の マ ネ ジ ドケ ア改 革 法 で は,さ ら に医 療 管 理 や 診 療 ガ イ ドラ イ ン に対 す る 規 制 が 設 け られ て い る。 引 用 しよ う。

・医 療 審 査 は ,明 記 され た 手 順 に 従 っ て,医 師 の 監 督 の も と に,適 切 な訓 練 を う け資 格 を 有 す る 者 に よ っ て,実 施 さ れ ね ば な らな い 。 サ ー ビス の拒 否 は す べ て,当 該 医 療 サ ー ビス に 関 して 適 切 な 専 門 的 資 格 を もつ 者 に よ っ て,な さ れ ね ば な らな い。

・す べ て の マ ネ ジ ドケ ア組 織 ・医 療 審 査 組 織 は ,緊 急 時 の 迅 速 な 対 応 も含 め て,不 服 審 査 制 度 の 整 備 を義 務 づ け ら れ る 。あ わせ て 外 部 評 価 や 上 級 裁 判 所 の 整 備 も行 う。

・医 師 は ,マ ネ ジ ドケ ア組 織 か らの 介 入な しに,診 療 行 為 を決 定 す る 権 利 を有 す る 。 マ ネ ジ ドケ ア が

設 定 す る医 療 必 要 度 や 診 療 ガ イ ドラ イン に は,確

(11)

た る基 準 が 示 さ れ ね ば な らな い。

見 ら れ る 通 り,医 療 審 査 は 医 師 の 監 督 の 下 で な され る こ と,サ ー ビス の 拒 否 す な わ ち逆 決 定 は医 師 の 判 断 に よ る こ と,逆 決 定 に 対 す る 不 服 審 査 を制 度 化 す る こ と,コ ンサ ル タ ン ト会 社 系 の 曖 昧 な 診 療 ガ イ ドラ イ ン を用 い て は な らな い こ と な どが,マ ネ ジ ドケ ア が 遵 守 す べ き法 的 義 務 と して 定 め られ て い る 。 こ れ ら はみ な 先 にHPHC社 の 医 療 管 理 で 見 出 され た もの で あ る が,改 革 法 で は さ らに進 ん で,「 医 師 は,マ ネ ジ ドケ ア組 織 か

らの 介 入 な し に,診 療 行 為 を 決 定 す る 権 利 を有 す る」

こ と,す な わ ち 患 者 に対 す る裁 量 は 医 師 の権 利 で あ る と宣 言 して い る 。

そ れ ゆ え,マ サ チ ュ ー セ ッッ 州 に お い て は,マ ネ ジ ドケ ア に よ る 医 療 管 理 が 医 師 の 裁 量 や 医 療 行 為 に 及 ぼ す 影 響 は き わ め て 限 定 的 で あ る とい え る。 現 地 で 懇 談 した 医 師 の多 くが,「 マ ネ ジ ドケ ア は マ ネ ジ ドコス トに 過 ぎ な い」 「 保 険 会 社 は 医 療 に介 入 で き な い」 と コ メ ン

トして い た こ と も,こ の 結 論 を裏 付 け る。

川 病 院 連 合 体 と医 療 管 理 (1)病 院連 合 体 の登 場

マ ネ ジ ドケ ア改 革 法 が 成 立 す る こ とで,保 険 者 主 導 の マ ネ ジ ドケ ア組 織 が 行 う医 療 管 理 に は大 き な制 限 が 加 え られ る こ と に な っ た 。 しか しコ ス ト効 率 化 を図 る 技 術 と して の マ ネ ジ ドケ ア は,よ り洗 練 され た形 で 医 療 提 供 者 た る病 院 連 合 体 に 引 き継 が れ て い る。 そ こ で 本 節 で は,病 院連 合 体 の 動 向 とそ こで の 医 療 管 理 を取

り上 げ た い。

先 に支 払 者 側 の 保 険 料 負 担 抑 制 圧 力 が マ ネ ジ ドケ ア 産 業 の 苦 境 を招 い て い る こ と を示 し た 。 保 険 料 支 払 抑 制 圧 力 とマ ネ ジ ドケ ア 産 業 の 業 績 悪 化 は,診 療 報 酬 支 払 の 抑 制 を通 じて,さ ら に 病 院 産 業 へ も波 及 す る。 マ サ チ ュ ー セ ッ ツ州 の 短 期 病 院 の 収 入 源 内 訳 を見 る と, 1998年 時 点 で メデ ィ ケ ア ・メ デ イケ イ ド51.8%,民 間 医 療 保 険39」%(う ち マ ネ ジ ドケ ア27.3%),そ の他9.1%

とあ るas。マ ネ ジ ドケ ア か らの診 療 報 酬 だ け に 限 っ て も 病 院経 営 の3割 を 占 め て お り,公 的保 険 の支 払 抑 制 と相 侯 っ て,病 院 産 業 を直 撃 した 。

そ こ で病 院 産 業 全 体 の事 業 収 益 率 の 中 央値 を見 る と, 1990年 代 後 半 を 通 じて 医 業 収 益 で 医 業 費 用 をペ イ す る

こ と が で きず,99年 に は マ イ ナ ス2.6%を 計 上 し た 。 非 事 業 収 益 を 含 む 総 収 益 率 で も1997年 を 境 に 急 激 に 悪 化 し,同 じ く99年 で は0.9%に ま で 落 ち 込 ん で い る45。 つ ま り 病 院 産 業 全 体 と し て い わ ば 不 採 算 部 門 化 し た わ け で あ る 。

そ の 結 果,1990年 代 を 通 じ て 病 床 数,病 院 数 と も に 大 き く数 を 減 ら す こ と に な っ た 。 病 床 数 は1990年 の2万 3,262床 が99年 に は1万6,779床 へ と28%減 少 し,同 じ く 短 期 病 院 数 も93病 院 か ら71病 院 へ と24%減 少 し た 。 病 院 数 の 減 少 の う ち 純 粋 な 閉 院 は19病 院 を 数 え,文 字 通

り の 病 院 倒 産 で あ っ た46。

産 業 全 体 と し て の 経 営 危 機 は,し か し病 院 産 業 の 企 業 化 を 進 展 させ る 。 業 務 提 携 や 買 収 ・合 併 に 注 目 す る と,1990年 か ら99年 に か け て,合 併 が18件,買 収 ・資 本 参 加 が16件 も 行 わ れ て い る47。 病 院 の 買 収 ・合 併 と い え ば,株 式 会 社 形 態 を と る 巨 大 営 利 病 院 が 思 い 浮 か ぶ が,マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 州 に は ほ と ん ど参 入 し て い な い48。

わ ず か に全 米 第2位 の テ ネ ッ ト社(TenetHealthcareCorp) が 聖 ビ ン セ ン ト病 院 と メ トロ ウ ェ ス ト病 院 を 所 有 し て い る に 過 ぎ ず,ほ ぼ 全 て の 病 院 が 非 営 利 で あ る49。 そ れ ゆ え,資 本 結 合 を 必 ず し も伴 わ な い ま ま に 保 険 会 社 と の 交 渉 等 で 共 同 歩 調 を と る 病 院 連 合 体(プ ロ バ イ ダ ー ・ グ ル ー プ と も 言 う)の 結 成 が 州 内 の 各 地 域 で 相 次 い で お り,そ の 数 は12に 達 して い る 。 な か で も 双 壁 と 謳 わ れ る 連 合 体 が,マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 総 合 病 院 と ブ リ ガ ム ・ ウ ィ ミ ン ズ 病 院 を 核 と す る パ ー ト ナ ー ズ 社 (PartnersHealthcare)と,ベ ス ・イ ス ラ エ ル ・デ ィ ー コ ネ ス 病 院 を 核 と す る ケ ア グ ル ー プ 社(CareGroup)で あ る 。5°

パ ー トナ ー ズ 社 や ケ ア グ ル ー プ 社 の 結 成 に は,設 立 母 体 で あ る 教 育 病 院 に 特 有 の 事 情 も 反 映 し て い る 。 教 育 病 院 は,こ れ ま で 慣 例 的 に 診 療 費 に 約30%を 上 乗 せ 請 求 し,そ れ を 慈 善 医 療 や 高 度 先 端 医 療 に 充 当 し て き

た 。 し か し,マ ネ ジ ドケ ア が そ う し た 支 払 を 拒 否 し, 加 入 者 に 対 し て 教 育 病 院 で の 治 療 ・入 院 を 制 限 し は じ め た た め,医 業 収 入 も段 々 に 落 ち 込 み,経 営 危 機 に 見 ま わ れ た 。 そ の た め の 打 開 策 が,収 益 確 保 と 交 渉 力 強 化 を 目 的 と す る 地 域 医 療 の 重 視 で あ り,近 隣 の 地 域 病 院 と の 連 合 体 形 成 で あ っ た 。 教 育 病 院 主 導 型 の 連 合 体 は,全 米 で 既 に 十 数 グ ル ー プ 結 成 さ れ て い る と い う51。

第6表 は,パ ー トナ ー ズ 社 の 概 要 を ま と め た も の で あ

一一90一

(12)

る 。 同 表 か ら も伺 わ れ る 通 り,パ ー トナ ー ズ 社 は 州 全 体 の 病 床 数 の20%,入 院 件 数 で は30%近 く を 占 め て お り,規 模 で 見 る 限 り地 域 医 療 独 占 体 で あ る 。 た だ し メ ン バ ー 医 療 機 関 の ゆ る や か な 連 合 体 組 織 で あ る た め , 各 病 院 の 理 事 会 ・管 理 組 織 ・診 療 科 は 従 来 ど お り存 続

し て お り,株 式 会 社 形 態 を と る 営 利 病 院 の よ う に,権 限 と 管 理 組 織 が 一 本 化 さ れ て い る わ け で は な い 。 例 え ば,パ ー トナ ー ズ 社 の 設 立 母 体 で あ る マ サ チ ュ ー セ ッ ッ 総 合 病 院 自 身,病 院 法 人 で あ るGHO(General

Hospita1Corporation)と 病 院 医 師 組 織 た るMGP (MassachusettsGeneralPhysiciansOrganization)が 存 続 し て お り,管 理 組 織 に 変 化 は な い 。52

同 表 で も う1つ 注 目 す べ き は,パ ー トナ ー ズ 社 が 診 療 所 ・病 院 ・リ ハ ビ リ 病 院 ・在 宅 医 療 を 一 通 り揃 え る こ と で,提 供 診 療 科 目 の 統 合(ク リ ニ カ ル ・イ ン テ グ レ ー シ ョ ン)を 志 向 し て い る こ と で あ る

。 緩 や か な 連 合 体 組 織 で あ る た め 既 存 診 療 科 の 統 廃 合 に は 踏 み 切 っ て い な い が,例 え ば マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 総 合 病 院 小 児 科 の 勤 務 医 が ニ ュ ー ト ン ・ウ ェ ル ズ リ ー の7診 療 所 で 小 児 科 診 療 を 手 が け,あ る い は ノ ー ス ・シ ョ ア ー ・メ デ ィ カ ル セ ン タ ー に 外 科 医 を 派 遣 し て 胸 部 外 科 手 術 お よ び 神 経 外 科 手 術 を 開 始 す る な ど,教 育 病 院 の 人 的 資 源 を 活 用 す る 形 で 診 療 統 合 を 模 索 し て い る 。

開 業 医 と の 提 携 で は,パ ー トナ ー ズ 社 は 別 法 人PCHI (partnersCommunityHealthcare,Inc.)を 設 立 し て,「 開 業 医 の 囲 い 込 み 」 を展 開 し て い る53。PCHI社 は 「地 域 の 病 院 と 医 師 と の ネ ッ ト ワ ー ク を 支 援 し発 展 さ せ る こ と」

を 目 的 と し て,パ ー トナ ー ズ 社 と 同 時 に 設 立 さ れ た 。 第6表 に 示 し た 通 り,PHCI社 は プ ラ イ マ リ ケ ア 医1,000 人,専 門 医3,000人 を 排 他 的 に 組 織 し て お り,州 の 医 師 数 に 占 め る 割 合 は 概 算 で そ れ ぞ れ6分 の1,4分 の1に も 達 す る 。PHCIに 加 入 し た 医 師 は 各 地 域 のRSO(regional serviceorganization)に 所 属 す る こ と と な り,マ ネ ジ ド ケ ア と の 契 約 や 患 者 ケ ア の 調 整 な ど は 全 て こ のRSOを 単 位 と し て 行 わ れ る 。 さ ら にPCHIで は,MSO

(managementserviceorganization)を 通 じ て 医 療 管 理 や 医 療 情 報 シ ス テ ム 等 の サ ー ビ ス も提 供 して い る 。

2000年12月 に,パ ー トナ ー ズ 社 と 三 大 マ ネ ジ ド ケ ア 会 社 の ひ と つ タ フ ツ 社 と の 間 に 紛 糾 が 生 じ た 。 翌 年 の 診 療 報 酬 を め ぐ っ て 合 意 が 得 ら れ ず,パ ー トナ ー ズ が タ フ ッ 社 と の 診 療 契 約 を 破 棄 し た の で あ る 。 そ の た め

タ フ ツ社 は,保 険 加 入 者 に対 しパ ー トナ ー ズ傘 下 の 医 療 機 関 を利 用 しな い よ う通 知 した の で あ る が,マ サ チ ュ ー セ ッ ツ総 合 病 院 を は じめ,ボ ス トン地 域 に病 院 だ け で 十 数 を数 え る パ ー トナ ー ズ の 利 用 禁 止 に対 して 保 険 加 入 者 か ら の抗 議 が 殺 到,保 険 契 約 を他 社 に切 り替 え る動 き も表 面 化 す る に及 ん で,タ フ ツ社 は 通 知 を撤 回,再 度 パ ー トナ ー ズ 社 と保 険 診 療 契 約 を結 ば ざ る を え な か っ た 。 力 関 係 で 病 院 連 合 体 が マ ネ ジ ドケ ア を上 回 った わ けで あ る。

そ れ ゆ え 病 院 連 合 体 は そ の初 期 の 目標 は達 成 した と い え よ うが,医 療 費 抑 制 の 基 調 に対 応 す べ く,よ り一 層 の コ ス ト効 率 化 に取 り組 ん で い る 。 そ こ で 次 に,病 院連 合 体 にお け る医 療 管 理 を取 り上 げ る こ と に したい 。

(2)病 院 連 合 体 のIT医 療 管 理

IT(informationtechnology)を 技 術 的 前 提 と す る 病 院 連 合 体 の 医 療 管 理 に 関 し て は,ケ ア グ ル ー プ 社 の 方 に 一 日 の 長 が あ る 。 ケ ア グ ル ー プ 社 は,1996年 に ベ ス ・イ ス ラ エ ル ・デ ィ ー コ ネ ス 病 院 を 中 核 に 設 立 さ れ た 連 合 体 で あ り,6病 院,3000名 の 医 師 を 擁 す る 巨 大 グ ル ー プ で あ る54。

① 医 師 の管 理 と医 療 標 準

IT医 療 管 理 は,診 療 情 報 の 電 子 化 お よ び共 有 化 を 出 発 点 とす る55。患 者 ご との プ ロ ブ レム リス ト,ア レル ギ ー歴,検 査 デ ー タ,投 薬 内 容,外 来 ・入 院 記 録,退 院 サ マ リー,そ の 他 メ モ 類 まで す べ て 電 子 化 さ れ,心 電 図 や レ ン トゲ ン写 真,CT・MRI・ エ コー 等 に至 っ て は 画 像 の ま ま デ ジ タ ル保 存 さ れ る。 これ ら電 子情 報 は , ワ イ ア ハ ウ ス に一 括 保 存 さ れ,重 複 投 薬 や ア レ ル ギ ー ・チ ェ ッ ク とい っ た 安 全 性 の 向 上 と重 複 検 査 等 の 防 止 に よ る コ ス ト削 減 の 観 点 か ら,医 師 た ち に 共 有 化 さ れ る。 ま た患 者 の プ ラ イ バ シ ー を保 護 す るべ く,患 者 の 診 療 情 報 に つ い て は 幾 重 もの セ キ ュ リ テ でが 掛 け ら れ て い る 。

た だ情 報 を 蓄 積 す る だ け で あ れ ば,従 来 的 な 紙 カ ル

テ保 存 と な ん ら変 わ る と こ ろ は な い 。IT医 療 管 理 の

優 位 性 は,計 算 機 の 高 度 化 と各 種 の 統 計 解 析 手 法 の 発

達 を 前 提 に,蓄 積 さ れ た膨 大 な情 報 が 一 瞬 に して 処 理

され 解 析 され る点 に 求 め ら れ る 。 ケ ア グ ル ー プ社 で は,

患 者 重 症 度 を考 慮 して 医 師 ご と の 支 出 記 録 を順 位 化 し

(13)

第6表 パ ー トナ ー ズ 社 の 概 要

○ 設 立 主 体

・1994年 設 立 の 非 営 利 組 織(パ ブ リ ッ ク ・チ ャ リ テ ィ)

・Brigham&Women'sHospitalとMassachusettsGeneralHospitalが 設 立

・ ミ ッ シ ョ ン は 「患 者 ケ ア と 医 学 教 育 研 究 と の 結 合 」

○ メ ン バ ー 組 織

① 医 師 組 織(病 院 内 医 師 組 織 も 含 む)

・BrighamandWbme㎡8Phy8ician80㎎aniza伽n

・MG且InstituteofHealthProfessions

・Ma88achu8ett8Ge鵬ralPhysiciansOrganization

・Partner8CommunityHealthcare(PC]臣1)

② 医 療 機 関 お よ び ヘ ル ス シ ス テ ム

・BrighamandWomen's/i  aulknerHospitals

・McLeanHospital

・Newton‑WellesleyHospital

・TheNorthShoreMedicalCenter‐4病 院 ,訪 問 看 護 組 織,医 師 診 療 所

・SpauldingRehabHospitalNetevork‑1病 院 ,5診 療 所,在 宅(50地 域)

○ 医 療 提 供 実 績

① 病 院 部 門

・病 床 数3

,172床,入 院 患 者 数 延131,623人,外 来(ER含 む)1,637,799名 総 外 科 手 術 件 数102,233

② 診 療 所 ・ヘ ル ス セ ン タ ー ・在 宅 医 療

・プ ラ イ マ リ ケ ア 受 診955

,102人

・ヘ ル ス セ ン タ ー 受 診373 ,268人

・在 宅 医 療611

,343人

○ 経 営 規 模

① 職 員 数

・医 師6 ,605名(病 院 勤 務 医)

・PCHI提 携 開 業 医 プ ラ イ マ リケ ア1 ,060名,専 門 医3000名

・看 護 婦(正 看 及 び 准 看)5

,641名

・そ の 他 職 員16

,981名

② 財 政 規 模

・事 業 収 益332万 ドル(医 業 収 益249万 ドル,研 究 助 成 金55万 ドル)

出 所)PartnersHealthcare,Inc.,AnnualReport2000よ り 作 成 。

一92一

(14)

た バ ラ ンス ド ・ス コ ア カ ー ド(BalancedScoreCard)を 作 成 して い る 。 こ の 支 出報 告 で は,入 院 医 療 費,外 来 医 療 費,薬 剤 費,プ ラ イ マ リケ ア 医 受 診,専 門 医 受 診 な ど,20項 目 に亘 る 支 出 に つ い て 各 医 師 の 支 出 額 が 平 均 値 か ら ど の 程 度 ズ レて い る の か が 一 目 で わ か る よ う に な って お り,各 項 目で 例 え ば2aを 超 え た場 合,理 由 を説 明 す る報 告 書(whyreport)を 提 出 しな け れ ば な ら な い 。 この や り方 は 製 造 業 の 品 質 管 理 と全 く同 じで あ る が,製 造 業 で は製 品 の 自然 的 属 性 が 管 理 され る の に 対 し,こ こ で は 項 目 別 支 出 額 が 測 定 され 管 理 さ れ る点

に特 色 が あ る 。

バ ラ ンス ド ・ス コア カ ー ドは,医 師 個 々 人 に つ い て だ け で な く,医 療 機 関 ご と,あ る い は 「ポ ッ ド」 ご と に も作 成 さ れ,ケ ア グ ル ー プ 社 の 品 質 管 理 部 門(Center forQualityandvalue)に 集 約 され る 。 ポ ッ ドとは,医 師 6人 か ら15人 を単 位 とす る小 集 団 の こ とで,診 療 ガ イ ド

ラ イ ンや ク リテ ィカ ル パ ス,フ ォ ー ミ ュ ラ リ ー な ど は 全 て ポ ッ ド単 位 で 策 定 さ れ る 。 各 医 師 は 自分 の所 属 す る ポ ッ ドで の 決 定 に 従 う義 務 が あ り,ポ ッ ドの 決 定 か ら逸 脱 し た 医 師 は リス トア ップ され 何 ら か の 処 分 を受 け る。 ま た ポ ッ ド間 で の 医 療 の 質 評 価 や 患 者 満 足 度 の 比 較 評 価 も行 わ れ,支 出 や 成 果 で 平 均 を大 き く外 れ る ポ ッ ドは や は り報 告 書 を提 出 しな けれ ば な らな い56。

IT医 療 管 理 の 医療 費 節 減 効 果 に は 驚 くべ き もの が あ る。 ケ ア グ ル ー プ社 で は,導 入 前 と比 較 し て,医 療 費1,000万 ドル,薬 剤 費1,800万 ドルの 合 計2,800万 ドル の 節 約 を達 成 した 。 さ ら に,保 険給 付 管 理 もあ わせ て 電 子 化 す る こ とで,給 付 事 務 コ ス トも従 来 の7分 の1に 縮 減 した 。 情 報 シ ス テ ム 構 築 の た め の 投 資 費 用 は2年 間 で 500万 ドルで あ るか ら,大 変 な効 率 化 で あ る57。

以 上 か ら窺 わ れ る よ う に,ケ ア グ ル ー プ 社 に お い て はIT医 療 管 理 と医 師 の 小 集 団 管 理 と結 合 す る こ と で, 形 式 的 に は 医 師 な い し ポ ッ ドの 自発 性 に基 づ い て,し か し実 質 的 に は 医 療 支 出 管 理 に 基 づ い て,医 師 が 管 理

され,ま た 費 用 最 小 化 原 理 に基 づ く医 療 行 為 の 標 準 化 が お し進 め さ れ て い る 。 い わ ゆ る 「 ベ ス トプ ラ ク テ ィ ス」 を実 現 す る 可 能 性 も持 つ が,し か し直 接 の 目 的 は コス ト効 率 性 で あ っ て,医 療 の 質 向 上 を直 接 の 目 的 と は して い な い 。 し た が っ て,医 療 の 質 を め ぐ っ て 患 者 ・住 民 と紛 糾 す る可 能 性 も拭 い きれ ず,厳 しい 医 療 管 理 に対 す る医 師 の 不 満 と結 合 した 場 合,マ ネ ジ ドケ

アへ の 反発 と同 じ構 図 が 再 現 され か ね な い、,

と は い えIT医 療 管 理 は,医 療 へ の 患 者 参 加 を促 す 条 件 に もな る 。 医 療 に お け る 透 明 性 や 利 便 性 の 向 上, 患 者 教 育 の 進 展 な どで あ る 。 そ こで こ の 点 に つ い て 見

て み よ う。

② 患 者 参 加 の 取 り組 み

ケ ア グ ル ー プ 社 の 場 合,電 子 カ ル テ の 開 示 は 無 論, 自分 の プ ロ ブ レ ム リ ス トや ア レ ル ギ ー 歴,検 査 結 果, 投 薬 内 容,通 院状 況 な ど,先 に 述 べ た 診 療 情 報 を 閲 覧 す る こ とが で き,さ ら に そ れ ら に 対 す る疑 問 を書 き込 む こ と もで きる 。 病 気 へ の 疑 問 に対 して は 電 子 メ ー ル で 主 治 医 か ら迅 速 な 返事 が な され る〜8。

ま た,ウ ェ ブ 上 で 診 療 予 約 や 専 門医 へ の 紹 介,薬 の 再 処 方 な ど を依 頼 す る こ と も で き,患 者 の利 便 性 が 格 段 に 向 上 して い る 。 い わ ゆ るWebケ ア で あ る。 例 え ば 診 療 予 約 の 場 合,主 治 医 の 診 療 予 約 状 況 が コ ン ピ ュ ー ター の 画 面 上 に表 示 さ れ,空 き時 間 を ク リ ッ クす る だ け で 予 約 が 成 立 す る 。 薬 の 再 処 方 も便 利 で.再 処 方 の 画 面 か ら メ ー ル を送 信 す れ ば よ い 。 処 方 箋 が 迅 速 に主 治 医 か ら指 定 薬 局 店 に 送 付 さ れ る た め,患 者 は診 療 所 に行 か ず して薬 を補 充 す る こ とが で き る。

さ ら に,ケ ア グ ル ー プ のIT医 療 管 理 で は,患 者 教 育 が 重 要 な柱 と して 組 み 込 ま れ て い る 。 医 学 的 知 識 に つ い て は,医 学 雑 誌500誌,医 学 教 科 書80冊,代 表 的 な 診 療 ガ イ ドラ イ ン60種 が ウ ェ ブ上 に 掲 載 さ れ て お り, 自分 の 病 名 を 入 力 して 検 索 す る こ と で,患 者 は 自 由 に 雑 誌 記 事 や 論 文 を 閲 覧 す る こ とが で き る,薬 剤 に つ い て も 同様 で,代 表 的 な フ ォ ー ミュ ラ リー が 閲 覧 可 能 な ほ か,処 方 薬 品 名 を 入 力 す る こ とで,副 作 用 情 報 や 薬 品 間 の 相 互 作 用 につ い て知 る こ と も で き る 。 な か で も 外 科 手 術 につ い て は 「 患 者 が 安 心 し納 得 す れ ば 術 後 の 回復 も早 くな る」 と して,胆 石 除 去 を は じめ 代 表 的 な 手 術30種 類 に つ い て わ か りや す い ビ デ オ教 材 が 掲 載 さ

れ て い る 。

患 者 の 自発 的参 加 を 促 す ケ ア グ ル ー プ 社 の取 り組 み は,医 療 の 透 明 性 と ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ を 向 上 す る 可 能 性 を有 す る。 他 方 で は,マ ネ ジ ドケ ア も端 緒 的 に 取 り組 ん だ 需 要 管 理 や 共 同 意 思 決 定 を い っそ う洗 練 し た 患 者 管 理 の 仕 組 み で あ る との 側 面 も,看 過 しえ な い だ

ろ う5° 。

参照

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