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雑誌名 福井大学医学部研究雑誌

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(1)

著者 柄谷 和宏

雑誌名 福井大学医学部研究雑誌

巻 20

ページ 1‑16

発行年 2020‑03

URL http://hdl.handle.net/10098/10774

(2)

Abstract:

Despite the advent of an era in which cancer genomic medicine is being developed on a nationwide scale, it is clear that human resource development in this field has not progressed equally among all medical professionals in Japan. In the future, even universities with a shortage of teachers specializing in genomic medicine will need to undertake comprehensive genetic analysis as a technical background and provide educational opportunities to understand the point and convenience of technology. In this study, we designed and implemented a Simulation-based practical training program which uses databases and pathway analysis as experiential training for beginners, and examined the effect on the improvement of genomic literacy of graduate medical students.

First, a survey of graduate students at the University of Fukui showed that about 90% of graduate students consider bioinformatics education to be insufficient. The simulation-based practical training program was conducted mainly for graduate students as one of the optional courses in the doctoral program of the Graduate School of Medical Sciences, University of Fukui from 2015 to 2018.

The results of the student questionnaire showed that the students' evaluation of the training program was high overall, and that it was effective to recognize the importance of global analytical techniques of gene expression in future medical treatment. These results suggest that this training program plays an effective educational role as a gateway to human resource development in genomic medicine for universities that are falling behind in genomic medicine education.

Key Words: genomic medicine, database, pathway analysis, medical education, literacy education 要旨:

ゲノム医療が全国規模で展開する時代に入っているが,そのための人材育成は全体に等しく進んでいるとは言い難い。

今後は専門の教員が不足している大学でも,ゲノム医療の技術的な背景となる網羅的遺伝子解析に接し,技術の要点と 利便性を理解するための教育機会を用意することが必要になる。本研究では,初心者に向けた体験実習として,データ ベースとパスウエイ解析を使う「研究シミュレーション実習」を考案,実施し,医学系大学院生のゲノムリテラシーの 向上に及ぼす影響を調べた。まず,福井大学医学系大学院生を対象とした調査から,大学院生の約90%がバイオインフォ マティクス系の教育が不十分と考えていることが明らかになった。そこで,大学院生を主な対象にした研究シミュレー ション実習を,20152018年に福井大学大学院医学系研究科博士課程の選択授業の一つとして実施した。受講者アン ケートの結果は,実習としての評価が総合的に高いこと,今後の医療における網羅的解析技術の重要性を認識させる効 果があったことを示していた。これらの結果は,ゲノム医療教育を始めようとする大学にとっての研究シミュレーショ ン実習が,ゲノム医療に携わる人材育成の入り口として有効な教育的役割を果たすことを証明している。

キーワード:ゲノム医療,データベース,パスウエイ解析,医学教育,リテラシー教育

ゲノム医療に導く新たな大学院実習教育の試み

―研究シミュレーション実習の概要と成果―

柄谷 和宏

ライフサイエンス支援センター・バイオ実験機器部門

A New Graduate Training Program for Genomic Medicine -Outline and Results of a Simulation-Based Practical Training Program-

KARAYA, Kazuhiro

Division of Bioresearch, Life Science Research Laboratory, University of Fukui

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− 2 −

Ⅰ . 緒言

高密度DNAマイクロアレイの開発により1, 1つの実験から大量の遺伝子発現情報が得ら れるようになり,膨大な遺伝情報を解析する ための技術がライフサイエンス研究において 必要になってきた。大量の遺伝子配列情報ま で確認できる次世代シークエンサーの登場で,

解析技術の難易度と重要性は増したが,ゲノ ム医療や個別化医療の実現を技術的な面で可 能にした。次世代シーケンサー実験解析には,

当初高いコストが必要であったが,比較的安 価に行うことができるようになったことから2, 一般の医療現場への導入が急速に進みつつあ る。アメリカで2014年に341遺伝子を搭載し たがん遺伝子パネル(MSK-IMPACTTM)が開 発されたことは3,がんゲノム医療を広く進 めるための大きな支援要素となった。日本で も,日本人のためのがん遺伝子パネルとして 開発されたOncoGuide ™ NCCオンコパネルシ ステム4が保険適用されるなど,がんゲノム 医療は「がんゲノム医療中核拠点病院」とそ の連携病院で実現している5。がんゲノム医 療以外にも,「IRUD(未診断疾患イニシアチ ブ)」の推進が国立研究開発法人日本医療研究 開発機構(AMED)の協力のもと進められて おり6,7,網羅的解析技術を利用したゲノム医 療や個別化医療の医療現場への展開は,今後 さらに幅広く進んでいくと思われる。このよ うな方向性を持ってゲノム解析が医療に展開 することは,大量の遺伝子情報を解析する技 術が医学分野において重要度を増していくこ とを意味している。

がんゲノム医療の場合の診療体制は,患者 説明,検体準備,シークエンス実施,レポー ト作成,専門家会議,患者説明,治療の順に 進むチーム医療となっている8。専門性の高 い各担当をつなぐのが,多数の専門家から成 るエキスパートパネルであり,エキスパート パネルはがんゲノム情報管理センターとの連 携も行う8。がんゲノム医療では,がんゲノ ム情報管理センターのデータベースに蓄積さ れた情報を利用してエキスパートパネルが議 論を進める。その診療結果はデータベースに

さらに蓄積され,その後のがん治療のための 情報資源として還元される。ゲノム医療の本 質は,ゲノム検査の結果を元に個別に治療提 案を行うことであり,治療提案は遺伝子異常 の相関,薬剤とその副作用,シグナル伝達系 における分子間相互作用などから判断してい くことになる9。これらの判断はデータベー スに蓄積された情報を利用して行われるため,

ゲノム医療に携わる医師にはデータベースを 活用する能力と,医師の多くに馴染みがなかっ たビッグデータの情報解析技術が要求される。

しかし,バイオインフォマティクスの教育,

訓練に必要な熟練者自体が不足している現状 であり10,解析経験のない医療関係者にも一 から教育を行わなければならない状況に苦慮 する大学は少なくない。そのため,今後のゲ ノム医療のための重要な課題の一つは,ゲノ ム医療の現場を担う人材の育成である。がん ゲノム医療を例にすると,短期的な課題はゲ ノム医療専門職の増員と育成である9。公的 な人材育成事業は何種類も進行しており8,11, 基本的には卒後研修で行われる。長期的な課 題は,「ゲノム医療の知識がどの医師にも必要 であるという時代が到来することを見据えた」

医師全体の教育体制の構築であり12,平成28 年度改訂の「医学教育モデル・コア・カリキュ ラム」13には「遺伝子工学の手法と応用やヒ トゲノムの解析を理解する」ことが目標に位 置づけられている。こちらは基本的に卒前教 育としての位置づけになっている12。しかし コア・カリキュラム13には臨床遺伝医学に関 する内容は記載されておらず,実際に大量の 遺伝子データの取り扱いを経験できる大学は 少ない。慶応大学で個人のゲノムを教材とし た実習を実施した例14があるが,このような 実習においてはバイオインフォマティクス専 門の教員が果たす役割が大きい。この分野の 人材は限られており,基礎から養成する教育 機関も少ない10ため,このような取り組みが できる大学は限られる。バイオインフォマティ クス系の授業がない大学で実施するには専門 性が高すぎる例でもあり,より初心者向けの 工夫も必要になると考えられる。

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福 井 大 学 医 学 部 医 学 科 の2019年 授 業 シ ラ バスではコア・カリキュラム13に対応して,

2018年度以降の入学者には遺伝医療・ゲノム 医療に関する講義が設けられているが,それ 以前の入学生には専門の講義は設けられてい ない。2018年以降の入学者にも,実際に大量 の遺伝子データの取り扱いを経験する実習は 予定されておらず,医師になるまで網羅的遺 伝子解析に接する機会は提供されない。また,

それ以前の入学生には専門の講義は全く設け られていない。そこで本研究ではまず,福井 大学医学系大学院生に対するアンケート調査 を実施し,大量の遺伝子情報を扱うための教 育についての福井大学の現状を調査した。こ のアンケート結果からは,大容量遺伝子デー タの取り扱い経験,バイオインフォマティク ス技術の利用経験に関して,大学院生がほぼ 未経験のままであることが推測された。福井 大学においてこの状況に対応するゲノム医療 のための教育を行うためには,バイオインフォ マティクス専門教員のいない条件で,研修の ために確保する時間が限られる医師,大学院 生を対象にして実行可能にしなければならな い。ゲノム医療の長期的課題を考えると,卒 前教育で行うことが理想であるが12,実現に は「医学教育モデル・コア・カリキュラム」13 に踏み込んだ講義枠の確保が必要である。そ のためここでは,実現可能な授業として大学 院教育の中で行う卒後教育を前提に考え,実 験や解析の経験もできる実習として,データ ベースとパスウエイ解析を利用した研究シ ミュレーション実習の考案に至った。データ ベースとそこから引き出したデータの利用は ゲノム医療を進めるために必要な技術の一部 で,ダウンロードしたデータから遺伝子相関,

分子間相互作用などを調べ,生体反応を推測 することはゲノム医療でも行われる作業であ る。パスウエイ解析は,生命現象を制御する 生物学的経路や生体分子間相互作用をデータ ベース化したものであり,網羅的解析データ を重ね合わせることで薬剤などに対する生体 反応を推定することができる。網羅的遺伝子 解析データベースとパスウエイ解析を組み合

わせた実習は,まさにゲノム医療の一部をシ ミュレーションする実習と言える。またこの 実習は,受講者の研究の参考となる網羅的遺 伝子発現データをデータベースから取得し,

得られたデータのパスウエイ解析によってそ の実験系で起こっている生物学的機能変化を 推測する解析実習とした。模擬実験系の生物 学的機能変化を通して自分の研究の実験系で 起こることをシミュレーションすること,網 羅的遺伝子発現実験の解析例を一通りシミュ レーション体験すること,なども含め,多重 的な意味で「研究シミュレーション実習」と した。多数存在するパスウエイ解析の手段の 中で,この実習では生物学的な機能変化の解 釈 を 行 う 点 で 優 れ たIPA(Ingenuity Pathway Analysis : QIAGEN)を利用した。特に遺伝子 発現変動と疾病や生物学的機能変化をリンク して提示する仕様は,医師にとっての研究シ ミュレーション実習という観点からは効果的 である。IPAの利用を前提にして,実習にお けるパスウエイ解析では,解析の進め方を固 定した。具体的には,比較した細胞間で有意 に変化したと推測される疾病関連因子や細胞 機能変化を絞り込み,その中の変動が大きい 遺伝因子間のパスウエイ図の作成の手順で実 習を進めた。実習進行のひな形を決めること によって,受講者主導で行う実習形式が可能 となり,講師に求められる役割の多くは解析 補助となるため,講師の技能面での負担軽減 を見込むことができる。データベースの検索 方法とダウンロード方法,パスウエイ解析ソ フトの使用方法を習得すれば研究シミュレー ション実習の講師は務まることになり,福井 大学で実現可能な実習実施案として成立する。

研究シミュレーション実習は,福井大学大 学院医学系研究科博士課程授業の選択実習課 題「パスウエイ解析による研究シミュレーショ ン」として,2015~2017年の3年間実施した。

福井大学の医学教育としては,「大容量遺伝子 解析技術が今後の医療のために必要な技術で ある」ことを認識するためのリテラシー教育 がまず必要と考えられるため,ゲノム医療教 育課題の長期的視野に立った卒後研修と位置

(5)

− 4 − 付けている。実習後実施した受講者アンケー トから,この実習のリテラシー教育としての 教育効果,ゲノム医療人材育成のための教育 法としての可能性について考察する。

Ⅱ . 研究方法

1.大学院医学系研究科博士課程学生のバイオ データベースの利用経験についてのアンケー ト調査

福井大学医学部医学科にゲノム医療のため の授業,実習は,2017年までの授業シラバス には記載がなく,2018年以降の入学者が臨床 医学課程に進んだ段階で遺伝子医療・ゲノム 医療の講義が開始される予定になっている。

2018年以前の入学者はこれらの内容を主題と した授業,実習を受けていないことが予想さ れるため,この世代の医師,医学生のゲノム 情報を取り扱う技術に対する教育状況の確認 を目的として,大学院医学系研究科博士課程 の学生を対象にアンケート調査を行った。

調査名: バイオデータベースに関するアンケー ト調査

調査実施主体: 福井大学ライフサイエンス支 援センター・バイオ実験機器部 門

調査方法:無記名記入式 調査期間:2016~2019年度

調査対象: 福井大学大学院医学系研究科博士 課程授業「バイオデータベース演習」

受講者

質問内容: オープンアクセス可能な公共デー タベースの利用経験について。

医学課程でのバイオデータベース の教育に関する印象。

今後の医療を考えたうえで遺伝情報 を取り扱う技術教育に対する意見

このアンケート調査は,「バイオデータベー ス演習」後に受講者に協力を依頼して行い,

事情により早退した受講者以外の出席者全員 から回答を得た。講義受講者は福井大学大学 院医学系研究科博士課程在学者であり,福井

大学以外,医学部以外の出身者も少数含まれ る。また,講義後の短時間で行うために選択 肢型の回答形式にしたが,それでも回答欄が 空欄となっている箇所もあったため,結果は 百分率表示とした。

2.研究シミュレーション実習

ゲノム医療の現場で膨大な量のゲノム情報 のデータを取り扱うことを考えると,学生時 代に網羅的遺伝子実験,解析の経験をしてお くことは,大きなメリットとなる。この意味で,

遺伝子情報を取り扱うための教育方法として 実習教育は欠かせない。福井大学での実習実 施を前提として考えた場合,バイオインフォ マティクス専門ではない教員が講師となるこ とと遺伝子情報の解析経験が少ない学生の受 講することを考慮する必要があるため,比較 的使用方法が容易なDNAアレイデータベー スとパスウエイ解析に着眼した。また,学習 効果と実習後の自学意欲を高める効果を狙い,

自分の研究テーマに関連した題材を実習課題 に取り入れることができる実習形式を考えた。

用いるバイオインフォマティクス技術の難易 度が低いこと,データが蓄積されてきた期間 が長く,関連題材を検索するために有利であ ることから,次世代シークエンスデータでは なくDNAアレイデータを実習用の題材とし た。パスウエイ解析を行うシステムは,IPA

(Ingenuity Pathway Analysis : QIAGEN)を選択 した。詳しいマニュアル,利用法を学ぶ研修 が用意されていることから,DAVID(https://

david.ncifcrf.gov/) や KEGG(https://www.

genome.jp/kegg/kegg_ja.html) な ど の フ リ ー の システムと比べて,パスウエイ解析経験がな い教員を講師として育成することが容易であ ることが大きな理由である。また,他の有料 のパスウエイシステムと比べ,生物学的機能 変化を視覚的に捉えやすい表示方法を持つシ ステムであり,生物学的変化と遺伝子発現の 変化を関連付けて行う実習のためのシステム として適当である。これらの条件と方法を考 え 併 せ て, 自 分 の 研 究 テ ー マ の 参 考 に な る DNAアレイデータをデータベースから探し出

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し,パスウエイ解析を通して受講者の研究の 展開をシミュレーションする,研究シミュレー ション実習を考案した。自分の研究テーマを 持つ受講生を対象とすることから,この実習 は大学院教育の一環として行うことが適して いると考えた。

研究シミュレーション実習は,2日間の1 日当たり1〜2時間で行う解析実習である。1 日目に受講者の研究課題を題材として,課題 を進めるうえで参考になる網羅的遺伝子発現 データをデータベースから探し出す。2日目は 探し出した網羅的遺伝子発現データのパスウ エイ解析を行い,受講者の研究にフィードバッ クできる生物学的変化を調べる。2日間の具体 的な実習内容は以下の通りである。

実習内容:

1日目 DNAアレイ実験データの検索(約1 時間)

1.受講者の研究課題についてのインタビュー。

2.受 講 者 の 研 究 に 近 い 実 験 系, も し く は 参 考になる実験系のDNAアレイ実験データ を NCBI GEO(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/

geo/) か ら 検 索。 検 索 に はNCBI GEOも し く は ArrayExpress(https://www.ebi.ac.uk/

arrayexpress/)の検索機能を利用。

3.検索したデータから1つを選んでダウンロー ド。

2日目  受講者の課題の参考となる網羅的デー タのパスウエイ解析(約2時間)

1.パスウエイ解析についての説明と1日目の ダウンロードデータの内容確認。

2. IPAのDiseases & Function機能を使い,実験 系の中で活性化した,もしくは抑制化した 細胞機能,疾病関連機能から受講者が注目 するものをピックアップ。

3.ピックアップした細胞機能の遺伝因子群か らパスウエイ図を作成。

4.作成したパスウエイに関連した文献を,IPA の機能を利用して調べる。

少人数対象の実習として行う実習の利点を 生かし,1日目,2日目の実施日程は講師と受

講者の話し合いで決めることとした。1日目と 2日目の間に講師がダウンロードデータの前処 理,規格化,標準化,IPAへのデータ投入を行 い,受講者はデータダウンロードサイトに記 載されている実験の詳細についての予習を行 う。この実習の講師は,福井大学の共通機器 の管理部門であるバイオ実験機器部門に依頼 した。DNAアレイ実験経験があることと,福 井大学大学院医学系研究科博士課程授業「実 験基礎演習」を担当していることが理由であ る。正確なパスウエイ解析を行うためには,

適正なダウンロードデータの前処理,規格化,

標準化が必要となる。専門性が高いこの作業

は(株)Subioのデータ解析受託サービスを利

用し,講師負担の軽減と技術不足の解消を図っ た。研究シミュレーション実習は,福井大学 大学院授業の中で,以下の要領で実施した。

講義名: 福井大学大学院医学系研究科博士授 業・共通科目・実験基礎演習

課題名: パスウエイ解析を利用した研究シミュ レーション

講師: バイオ実験機器部門所属のDNAアレイ 機器管理者

受講者: 福井大学大学院医学系研究科博士課 程在学者及び福井大学に在籍する者 実施期間:2015~2018年度

実習日数:2日間

実習時間:1日当たり1~2時間

受講人数:講師1名に対して受講者1名~数名 使用システム: IPA(Ingenuity Pathway Analysis

: QIAGEN)

実験基礎演習は大学院授業の一環でありな がら,大学院生以外の福井大学在籍者も実験 研修のために受講することができる。受講者 募集から実習実施の過程で受講者の種別選択 をするのは手続きのうえで困難なので,医師 以外の研究シミュレーション実習の応募も受 け入れた。

(7)

− 6 − 3.研究シミュレーション実習についてのアン ケート調査

研究シミュレーション実習の教育効果を確 認するため,実習受講者に対してアンケート 調査を実施した。

調査名: 研究シミュレーション実習について のアンケート調査

調査実施主体: 福井大学ライフサイエンス支援 センター・バイオ実験機器部門 調査方法:無記名記入式

調査期間:2015~2018年度

調査対象:研究シミュレーション実習受講者 調査内容: 研究シミュレーション実習の評価

ゲノム医療教育としての研究シミュ レーション実習について

     実習内容についての意見

このアンケート調査は「パスウエイ解析によ る研究シミュレーション」の受講生に協力を 依頼し,実施した。既述の通り,研究シミュレー ション実習を行った実験基礎演習のワーク ショップは大学院生以外も受講可能であるた め,受講者の所属に関する選択肢を設け,受 講者を分類してアンケート結果の集計を行っ た。無記名方式ではあるが所属の選択肢を設

けたことは受講者に説明し,了解を得てアン ケートの回答を依頼した。

4.実習後の受講者の網羅的遺伝子発現実験,

解析に関する研究動向の調査

研究シミュレーション実習により受講者が 網羅的遺伝子解析に関して受けたインパクト が,その後の研究に与えた効果を確認するた め,実習後の受講者の研究動向を調査した。

実習で実際に行ったのはDNAアレイデータの 解析とパスウエイ解析であることから,共同 利用設備のDNAアレイ機器とIPAの利用状 況を調べ,実習で学んだ技術を研究に反映し た受講者の数を調査した。利用状況はバイオ 実験機器部門の協力を得て,2015年度以降の DNAアレイ機器使用記録とIPAの使用記録か ら調べた。受講者が利用していた場合,実習 を受講した日程と機器,ソフトの利用日を確 認し,実習後の利用回数のみカウントした。

Ⅲ . 研究結果

1. 福井大学医学課程アけるバイオインフォマ ティクス関連教育の現状

福井大学におけるゲノム医療のための技術 教育に関して現状を調べるために,医学部課 程に在籍する大学院生へのアンケート調査を 原著論文

6 調査実施主体:福井大学ライフサイエンス支援セン ター・バイオ実験機器部門

調査方法:無記名記入式 調査期間:2015~2018年

調査対象:研究シミュレーション実習受講者 調査内容:研究シミュレーション実習の評価

ゲノム医療教育としての研究シミュレ ーション実習について

実習内容についての意見

このアンケート調査は「パスウエイ解析による研 究シミュレーション」の受講生に協力を依頼し,実 施した。既述の通り,研究シミュレーション実習を 行った実験基礎演習のワークショップは大学院生 以外も受講可能であるため,受講者の所属に関する 選択肢を設け,受講者を分類してアンケート結果の 集計を行った。無記名方式ではあるが所属の選択肢 を設けたことは受講者に説明し,了解を得てアンケ

ートの回答を依頼した。

4. 実習後の受講者の網羅的遺伝子発現実験,解 析に関する研究動向の調査

研究シミュレーション実習により受講者が網羅 的遺伝子解析に関して受けたインパクトが,その後 の研究に与えた効果を確認するため,実習後の受講 者の研究動向を調査した。実習で実際に行ったのは DNA アレイデータの解析とパスウエイ解析であるこ とから,共同利用設備のDNAアレイ機器とIPAの利 用状況を調べ,実習で学んだ技術を研究に反映した 受講者の数を調査した。利用状況はバイオ実験機器 部門の協力を得て,2015年以降のDNAアレイ機器使 用記録とIPAの使用記録から調べた。受講者が利用 していた場合,実習を受講した日程と機器,ソフト の利用日を確認し,実習後の利用回数のみカウント した。

【研究結果】

1. 福井大学医学課程におけるバイオインフォマテ ィクス関連教育の現状

福井大学におけるゲノム医療のための技術教育

に関して現状を調べるために,医学部課程に在籍す る大学院生へのアンケート調査を実施した。アンケ ートは,福井大学大学院医学系研究科博士課程の大 学院授業「バイオデータベース演習」で行い,デー

1 福井大学医学部におけるバイオデータベースに関するアンケート結果

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実施した。アンケートは,福井大学大学院医 学系研究科博士課程の大学院授業「バイオデー タベース演習」で行い,データベースの利用,

関心についての質問と回答から福井大学のバ イオインフォマティックス関連の教育状況を 推測した。福井大学大学院医学系研究科博士 課程には福井大学の医学課程を修了した学生 が多く在籍しており,直近数年の教育状況を 判断するための母集団としても適切であると 考えた。2016~2019年度の「バイオデータベー ス演習」の講義終了後の受講者にアンケート を配布,記入を依頼し,合計60名から回答を 得た。アンケートの質問内容と結果は図1に 示している。

2018年までの福井大学医学部医学科の授業 シラバスを調べると,遺伝子医療,データベー ス,バイオインフォマティクスなどを主題と する講義はない。このため,アンケートQ1で,

データベースを主題とした講義の受講経験に 関する質問に対して「経験あり」の回答が2 割弱あるのは,留学生や他大学,他学部の出 身者がこの割合であるためと考えられる。受 講した講義内容にデータベース関連の内容が 含まれていたかを問う質問(Q2)では,「はっ きり覚えていない」とする回答者が34%現れ ている。これは基礎医学や臨床医学の講義の 中で,最新の遺伝子解析,ゲノム医療などの 話題を取り上げるなど,各講師独自の工夫の 跡であることが考えられる。しかし,少なく ともデータベースの利用に関しては,学生に 強い印象が残す成果に至っていないことが推 測される。

網羅的遺伝子解析を学生時代に体験しよう とした場合,講師側からの題材の提供がなけ れば,医師免許を持たない医学生が可能な題 材の入手方法は,オープンアクセス可能なデー タベースを通じてのみである。そのためQ3 の質問を通じて,データベースから網羅的解 析データを入手できる能力のある学生の割合 を調べた。大学院初期に至る段階で,PubMed 以外のデータベー スの利用経験者は17%の み で あ っ た。Q3で はPubMed以 外 の デ ー タ ベースの利用経験者に,使用したデータベー

スの種類を記入してもらっているが(data not shown),大半はGenbankやPDBなど遺伝子,

タンパク質を個別に調べる用途が主のもので あった。1名がパスウエイ関連のデータベー ス で あ るKEGG(https://www.genome.jp/kegg/

kegg_ja.html)を利用した経験があると回答し,

網羅的な遺伝子解析を体験した可能性も考え られるが,その他に大容量データを入手する できるデータベースの利用経験者はいなかっ た。このことは,福井大学医学部に所属して いたほとんどの学生が,大容量遺伝子情報の 取り扱いを経験しないまま医学課程を修了し ていることを示している。

Q4,Q5は,回答者が今後の活動について,

生命科学系のデータベースと関わる可能性を どう考えているかを把握するために設問した。

Q4の結果から,今後の研究活動において各 種データベースを利用する可能性については 55%が「使う」と断言する回答を寄せており,

医学系の研究現場でのデータベースの重要性 が高くなっていることを学生も認識している ことが示唆される。今後の診療活動における 可能性を問うQ5の結果では,「使う」とする 回答は22%に止まる一方,「わからない」とす る回答は57%に達している。医療現場へバイ オインフォマティックス関連技術が導入され る可能性を否定できないと考えている回答者 が多いことが推察され,この推測はQ6のデー タベースに関する医学教育の現状についての 設問の結果に裏打ちされる。すなわち,デー タベースを利用するための教育について「現 状のままでよい」とする回答者は10%に過ぎ ず,「さらに必要」と考える意見が90%を占め た結果である。今後の医療活動においてデー タベースなどの重要性が上がっていくと考え る回答者が多いことが推測される。

ゲノム医療のようにゲノム解析を行う医療 では,大量の遺伝子データを解釈して治療に つなげるためにデータベースの活用が必要で あり,データベースから引き出したデータを 取り扱う技能が潜在的に要求される。このア ンケート結果は,福井大学の医学教育がゲノ ム医療に対応しているとは言い難い現状と,

(9)

− 8 − バイオインフォマティクスへの教育対応が必 要であると学生側が認識し始めたことを,はっ きりと示している。この分野の教育による支 援が,何らかの形で必要であることを示唆す る結果と言える。

2. 研究シミュレーション実習プログラムの作 製

研究シミュレーション実習は本来,福井大学 に共通機器として導入されたDNAアレイ関連 実験機器の利用率向上を目指して,実験を中 心に研究業務を行う研究者に網羅的解析につ いての理解を深めてもらう目的で検討を進め た取り組みである。福井大学ではバイオイン フォマティクス専門の講座がないため,網羅 的遺伝子発現解析のような解析研究が容易に 定着せず,そのための実験機器の利用も少な い状況であった。そこで網羅的解析の体験シ ステムとして,パスウエイ解析システムのIPA に目を付けた。実験業務が主である研究者に 受け入れやすいと考えた理由として,以下の2 点が挙げられる。

1)論文を全文読んで抽出された知見に対して 作成したナレッジデータベース(Ingenuity

Knowledge Base)を基に成立しているシス

テムであるため,パスウエイ解析の結果と 論文をリンクして調べることができ,バイ オインフォマティクスが専門外の研究者で も納得し易い形で結果を得ることができ る。

2)網羅的解析データをIPAにインプットして 行うオミックスデータ解析の結果表示(特 に細胞機能について)が視覚的に工夫され ており,機能単位,シグナル系路単位での 遺伝子発現変動を視覚的に理解できる。

自前の網羅的解析データを持っていた場合の IPAの活用法の一つとして,「インプットした オミックスデータ解析から生体の表現型の差 を引き起こす細胞機能の変化を推測し,その 原因となる遺伝子の特定を行う」利用法があ る。研究シミュレーション実習は,IPAのこの 利用法に絞って進めることを前提とした。ま ず,データベースから自身の研究に関係した

網羅的解析データを探し,自分の研究のため の模擬実験系のデータと仮定する。次にダウ ンロードしたデータを使ってIPAでパスウエ イ解析を行い,模擬実験系で起こる細胞機能 変化をシミュレーション,重要な機能変化の 原因となる遺伝子因子を推定する。この2ス テップで進める研修会により,網羅的解析実 験の大学内への普及を図る企画を進めていた。

これを大学院生への実習として再構築するこ とにより,福井大学医学部の教育課題「バイ オインフォマティクス専門教員不在の条件で,

大量の遺伝子データの取り扱いに関するリテ ラシー教育,啓蒙活動を行う」を解決できる と考えた。

診療活動も行う多忙な医学系大学院生が受 講できるようにするためには,大学院授業の 枠内で実施できる実習スケジュールが必要に なる。そのため,福井大学大学院医学系研究 科授業の実験基礎演習選択課題の一つとして 実施枠を確保し,1つの課題に与えられる時間 枠の3時間(2時限分)以内で実行可能な実習 プログラムを考案した。図2-1,図2-2に研究 シミュレーション実習の実施例を示す。実際 に行った実習は受講者の研究情報に直結する。

そのため情報保護の観点から,ここでは仮の 研究課題「Id2の妊娠乳腺上皮細胞の増殖,分 化における働き」15を研究する受講者を仮定 し,実施例を示した。この例題を使い,「研 究方法」に詳述した研究シミュレーション実 習の実習内容に沿って行った作業経過の1日 目を図2-1に,2日目を図2-2に示している。

図 の 模 擬 実 習 例 で は,1日 目 にArrayExpress の 検 索 機 能 を 利 用 し て,”mammary gland”,”

development”をキーワードとして入力,さら

にマウス実験のデータに絞りデータ検索した。

この検索にヒットした78個(2019年7月時 点)のデータセットから,マウスの妊娠前後 の各ステージの乳腺上皮細胞の遺伝子発現プ ロファイル(DNAアレイデータセット)であ る,E-GEOD-5831:ArrayExpress ID (GSE7768:

NCBI GEO ID)を選択した。このデータセッ

トの実験系をモデル実験系として考え16,以 後の解析は自分の実験系で起こることも推測

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しながら進めた。(株)Subioのデータ解析受 託サービスへのダウンロードデータの数値化,

標準化の依頼,さらに処理を終えたデータの IPAへのインプットは,1日目と2日目の実習 の間に講師が行った。2日目はIPAの各種機能 を利用し,自身の研究テーマから予想される 細胞内パスウエイのモデル実験系における変 化や,注目する因子や発現変動幅の大きい因 子の間の関連性から,自分の研究テーマに反 映できるパスウエイ図を作成した。さらに作

成したパスウエイ図の根拠となる参考文献を 調べ,自分の研究と重なる論文をピックアッ プした。この模擬実習では,作業時間は,1日 目1時間,2日目1時間の合計2時間の実習時 間で実行可能であった。2日目作業は受講者の 希望に沿い,例示した以外の機能を使った解 析も行うため,模擬実習よりもさらに時間が かかることも想定していたが,実際行った研 究シミュレーション実習でも1時間30分~2 時間の所要時間で実行可能であった。なお,2 べ,自分の研究と重なる論文をピックアップした。

この模擬実習では,作業時間は,1日目1時間,2日 目1時間の合計2時間の実習時間で実行可能であっ た。2 日目作業は受講者の希望に沿い,例示した以 外の機能を使った解析も行うため,模擬実習よりも さらに時間がかかることも想定していたが,実際行 った研究シミュレーション実習でも1時間30分~2 時間の所要時間で実行可能であった。なお,2 日目 の実習前に講師の作業準備期間,受講者の予習時間

を確保するために,1日目と2日目の間は最低1週 間の間隔を空け,実習予定日は講師と受講者の相談 で決定した。

ここで策定した研究シミュレーション実習は,

「バイオインフォマティクス専門教員のいない条 件で,研修のために確保する時間が限られる医師,

大学院生を対象にして行う」ことを可能にしている。

また,ゲノム医療におけるデータベース利用の重要 性は既述の通りであるが,この実習はデータベース

(11)

− 10 − 日目の実習前に講師の作業準備期間,受講者 の予習時間を確保するために,1日目と2日目 の間は最低1週間の間隔を空け,実習予定日 は講師と受講者の相談で決定した。

ここで策定した研究シミュレーション実習 は,「バイオインフォマティクス専門教員のい ない条件で,研修のために確保する時間が限 られる医師,大学院生を対象にして行う」こ とを可能にしている。また,ゲノム医療にお けるデータベース利用の重要性は既述の通り であるが,この実習はデータベースの利用経 験を積むうえでも有意義である。医師や医学 系の実験研究を主とする研究者が,バイオイ ンフォマティクスの技術に歩み寄り,融合を 目指すための実習として有効であることを確 認する価値があると考えられる。

3. 研究シミュレーション実習の実施

研究シミュレーション実習は,福井大学大学

院医学系研究科博士授業の共通科目「実験基 礎演習」の選択課題「パスウエイ解析による 研究シミュレーション」として,2015~2017 年度の3年間受講者を募り,開講した。「実験 基礎演習」は学内に解放された講義であるた め,大学院生以外の応募者も受け入れている。

3年間で17名の実習応募者があり,そのうち 5名は基礎系の研究室に所属する医師以外の応 募者,1名は臨床系研究室所属の医師以外の職 種の応募者であった。医師の受講者は9名で,

1名が教員,8名は大学院生であった(表1)。 受講者アンケートから推測される受講者の学 術的背景は,医師9名の受講者全員が「実務 的にバイオインフォマティクスに接するのは 初めて」と答えており,受講者のバイオイン フォマティクス系の知識,経験は浅いと考え られる(表2)。これは,「バイオデータベース に関するアンケート調査」で調べた福井大学 医学部卒業生の傾向(図1)と一致している。

1 研究シミュレーション実習受講者の内訳

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これに対して医師以外の受講者はある程度経 験を持ち合わせていると考えられ(表2),全 員が福井大学医学部以外の出身者であった。

4. 研究シミュレーション実習の教育効果 実習の教育効果を調べるため,受講者アン ケートを実施し,14名から回答を得た(表1)。 このうち,実習評価に関するアンケート結果 は表3にまとめた。表中の数字は5段階評価 の平均値で,5を最高評価として示している。

質問1に対して医師の受講者からの評価が高 く(5段階評価平均4.9),9名中8名が最高評 価(5段階評価の5)を回答しており,バイオ インフォマティクス体験の実習として成功し ていると考えられる。医師の受講者は質問2

に対しても高い評価を下しており(5段階評価 平均4.9),実習内容についての評価も高い結 果となった。質問3に対しても比較的高い評 価が得られており(5段階評価平均4.6),医学 研究における有用性を認識させることにも成 功したと考えられる。医師以外の受講者の実 習評価では,実習に対する総合評価が比較的 低かった(5段階評価平均4.0)。表2に示され た医師以外の受講者の学術的背景から推測す ると,バイオインフォマティクス経験者には 技術的に物足りない実習であった可能性があ る。他の質問に対する評価は高かったため(5 段階評価平均4.6),研究課題を題材に使う実 習形式と得られた結果については良好な評価 を得られたと考えられる。

3 研究シミュレーション実習の教育効果について①(受講者の自己評価)

4 研究シミュレーション実習の教育効果について②(今後の診療活動への応用について)

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− 12 − 研究シミュレーション実習が,受講生の医療 におけるバイオインフォマティクスの必要性 などに関する意識変化に及ぼした影響を,当 事者である医師資格を持つ受講者のみを対象 に質問した(表4)。医療活動を念頭に置いた 場合の研究シミュレーション実習の教育効果 について高く評価されており(表4-質問5:5 段階評価平均4.8),実際にデータを扱う経験 をしたことから,バイオインフォマティクス 技術の医療における必要性の理解も進んだ(表 4-質問4:5段階評価平均4.5)と考えられる。

バイオデータベースに関するアンケート調査 結果を示した図1 - Q5において,今後の医療 活動にバイオデータベースを使う可能性に対 する質問の回答では,「使う」「わからない」

が8割近くに達していたことを考え合わせる と,この結果は研究シミュレーション実習の 医学系大学院生に対する医学教育効果が高い ことを証明している。

表3,4の結果は,バイオインフォマティク ス経験のない医師に対して行う実習として研 究シミュレーション実習の価値は高く,未体 験の分野への興味を惹起させる効果が高いこ とを示している。福井大学の現在の医学教育 状況には特に親和性が高く,専門の教員がい ない状況で可能な,ゲノム医療のための学習 意欲を惹起する教育プログラムとしての可能 性を示している。

5. 研究シミュレーション実習によるバイオイ ンフォマティクス関連技術への意識改革

受講者アンケートは,研究シミュレーショ ン実習がゲノム医療人材育成の観点からの効

果的な教育効果を発揮したことを示している。

実習効果によるバイオインフォマティクスの 重要性への気づきとその印象度の深さを,受 講者のその後の研究活動を追跡し,調査した。

具体的には,実習後の研究活動に網羅的遺伝 子実験,解析技術を研究に取り入れ,受講後 もこれらの技術を積極的に活用する行動を とっている受講者の割合を確認した。

福井大学で大容量の遺伝子解析ができる共 同利用設備は2019年3月の段階でDNAアレ イ機器のみである。解析のための無料ソフト

(SubioPlatform:Subio,Transcriptome Analysis Console: サ ー モ フ ィ ッ シ ャ ー サ イ エ ン テ ィ フィック)などは個人所有が容易であるため,

所在数と使用の把握は困難であるが,IPAシス テムについては共同利用設備に1ライセンス 契約しているのみ(2019年3月時点)である。

したがって,DNAアレイ機器とIPAの使用記 録から,福井大学内で行われる研究用の網羅 的遺伝子実験,パスウエイ解析の多くを把握 することができる。これらの機器管理と実験 相談の窓口となっているバイオ実験機器部門 の協力を得て,研究シミュレーション実習後 のDNAアレイ実験機器とパスウエイ解析の 使用記録を調査し,研究シミュレーション実 習後にこれらを利用した受講者の数を確認し た(表5)。医師である受講者の実習後のIPA 利用率は44%(9名中4名)で,研究のため にDNAアレイ実験を行った割合は33%(9名 中3名)であった。医師以外の受講者の場合,

IPA再利用率は17%(6名中1名)で,研究の ためにDNAアレイ実験を行った割合も17%(6 名中1名)であり,医師受講者の再利用率に

5 研究シミュレーション実習後の波及効果

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比べ低い結果となった。医師受講者が受講前 にはバイオインフォマティクス体験がないこ とを考えると,研究シミュレーション実習の 教育効果の特性は医師,医学生により大きく 働き,バイオインフォマティクスの利便性の 認識についても強い影響を与えるものと考え られる。

表3,4から判断される教育効果は,実習終 了直後のアンケート結果に基づくものだが,

表5の結果は,実習結果の理解度と習得する 技術に対する重要性の理解度の深さを証明し ている。自学自習により理解度を深めようと する意欲の啓発に効果が及び,バイオインフォ マティクス専門教員不在の条件でも,ゲノム 医療教育への導入のための実習として有効性 が高いことを示唆している。

【考察】

福 井 大 学 医 学 部 の 場 合,2018年 度 以 降 の 入学生の臨床医学課程にゲノム医療関連講義 を取り入れる予定になっており,ゲノム医療 関連の教育不足を解消する方向での努力が始 まった。しかし,それ以前の入学生にゲノム 医療,バイオインフォマティクス,バイオデー タベースを主題とした講義は行われておらず,

他の各講義の中で講師が独自に取り入れた内 容に頼っている。福井大学医学部の卒業生が 多数を占める医学系大学院生へのアンケート 結果は,これまでの医学課程において網羅的 解析技術に対応する教育が充足していないこ とを証明している(図1 - Q1,Q2,Q3)。一方,

大量の遺伝子情報の取り扱いが研究,診療に 求められる現状を,大学院生が認識し始めて いる傾向も読み取ることができる(図1 - Q4, Q5)。その結果,データベース教育に関する現 状についての質問では90%に及ぶ回答者が「不 足」と答えており,この分野において福井大 学の医学教育に課題が残っていることをアン ケート結果は示している。

福井大学の場合,この課題についての教育対 策には克服すべき問題が2つあり,1つは多く の時間をかけられないこと,もう1つはバイ オインフォマティクス専門の職員不在で進め

ることが可能な方策を探る必要があることで ある。この2点を解決するための教育手法と して本研究では,研究シミュレーション実習 を考案して実施し,その教育効果を考察した。

この実習では,必要な実験結果をデータベー スから得て,解析のみを行う解析実習として 構築した結果,実習課題に幅広いデータ選択 が可能になった。この利点を生かして,実習 材料を「受講者の研究の参考になる網羅的遺 伝子データ」と設定し,受講者の実習内容に 対する興味を惹きつけ,学習意欲を高める効 果も狙った。データベースから得たデータの 基礎解析は,網羅的遺伝子発現解析の最初の 関門で,バイオインフォマティクス技術を最 も必要とする解析でもある。そこで,この部 分の解析は(株)Subioのデータ解析受託サー ビスに依頼した。講師負担を軽減するためで もあるが,網羅的解析ではこの段階の理解が 進まないことで解析の全体像が掴めない研究 者も多く,受講者のバイオインフォマティク ス経験が浅いことも考え併せて,最初の段階 の解析を外部依頼で賄う形をとった。解析全 体を把握するために解析体験の一部を削るこ とにはなったが,解析の全体像を理解する助 けにはなっており(表3,質問2),バイオイ ンフォマティクス経験がない受講者がこの実 習を高く評価した(表3,質問1)要因である と考える。一連の作業を経験したうえで医療 のためのバイオインフォマティクスを理解し,

学習意欲を高める効果があったことは(表3), 医療従事者に対する網羅的遺伝子発現解析の リテラシー教育の手法として価値が高いこと を示している。

大量の遺伝子発現データから得られる解析 結果をわかりやすく理解してもらうために,

この実習ではパスウエイ解析を活用した。医 師対象の受講者アンケート結果において,研 究シミュレーション実習の診療活動に対する 教育効果という点で高い評価を得ており(表 4),利用したIPAの機能がこの実習の目的に は適合していたと考えられる。IPAは文献情報 を含むナレッジデータベースを利用するパス ウエイ解析であり,この点でKEGGやDAVID

(15)

− 14 − などの無料システムと最も大きく異なってい る。実習後,ほとんどの受講者は完成したパ スウエイ図から,関連した文献情報を調べ,

持ち帰っている。バイオインフォマティクス 初心者の受講者が,実習で得たデータを具体 的に理解するために,文献とつながるIPAの 機能は必要であったと考えられる。医師の実 習評価が高い点(表4)と実習後に自身の研究 のための技術に取り入れる効果があった点(表 5)は,IPAの文献情報検索機能を利用した効 果によるものである可能性がある。経済性の 点で考えるとKEGGなどの利用は有利だが,

この研究の目的に沿った教育効果を考慮する と,IPAの研究シミュレーション実習への適用 は必要要件である。

福 井 大 学 で 研 究 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 実 習 を 行うにあたり求められる講師技能の問題も,

デ ー タ ベ ー ス とIPAの 利 用,( 株 )Subioの デ ー タ 解 析 受 託 サ ー ビ ス に よ り 解 決 し た。

ArrayExpressやNCBI GEOなどのデータベー ス 利 用 方 法 は, 統 合TV17に よ る 自 己 学 習 が可能である。また,IPAには利用方法の習 得のためのワークショップが用意されてい る(https://www.digital-biology.co.jp/allianced/

workshop/)。ワークショップに参加して基礎的

な使用方法をマスターしたうえで,マニュア ルや問い合わせ窓口を利用することで,本研 究の実習の講師役として充分に対応すること ができた。データベースとIPAの使用方法を 習得することで,研究シミュレーション実習 の講師としての役割を果たせることは,受講 者アンケートの良好な評価(表3)からも証明 された。網羅的実験,解析の全体像は把握し ている必要があると考えられることから,少 なくとも網羅的遺伝子実験経験は必要と考え られるため,実験経験がある教員なら講師候 補と成り得る。現在ではDNAアレイや次世代 シークエンスなどの網羅的解析実験経験のあ る教員が皆無の大学は考えにくく,バイオイ ンフォマティクス専門教員はいない大学でも,

ほとんどの大学でこの研究シミュレーション 実習は実施可能と言える。

米国で優れた授業実践のための7原則をま

と め た「Seven Principles for Good Practices in Under-graduate Education.」が1989年に報告さ れており18,この原則を基準に大学教育を考 察する報告は日本でも多い19。具体的な項目 は,1. 学生と教員のコンタクトを促す,2. 学 生間で協力する機会を増やす,3. 能動的に学 習させる手法を使う,4. 素早いフィードバッ クを与える,5. 学習に要する時間の大切さを 強調する,6. 学生に高い期待を伝える,7. 多 様な能力と学習方法を尊重する,の7項目18,19 である。研究シミュレーション実習はこの7 項目の多くを満たしており,特に1,3,4,6, 7項を考えた時,受講者自身の研究テーマを題 材としたことがこれらの項目を満たすための 重要な条件になっている。唯一,項目2につ いては条件を満たすとは言えず,これは結果 的に研究シミュレーション実習がマンツーマ ンで行われたことによる。少人数を対象とし ての募集であったが,受講者の研究テーマを 題材としたことがこの点ではマイナスに作用 し,すべての事例について個別で行う結果と なった。このため,ほとんどの研究シミュレー ション実習において学生間で協力することは できない形での実践となった。代わりに,受 講者の研究テーマについての知識が薄い教員 とバイオインフォマティクス経験が浅い学生 との協働は濃密なものとなり,項目2の条件 を補っている可能性はある。総合的に判断し て,研究シミュレーション実習は優れた大学 の授業実践のための条件に合致した実習教育 であると言える。

受講者アンケートの結果から,受講者が研究 シミュレーション実習を総合的に高く評価し ていることは明らかである(表3)。特に医師 の受講者からの評価が高く(表3),今後の臨 床活動における重要性についての理解も進ん でおり(表4),臨床関係者に適した実習であ ることを示唆する結果となった。一方,医師 受講者のほとんどが網羅的解析系の経験が全 くなく(表2),少ないながらも経験を持つ医 師以外の受講者とアンケートによる評価を比 較すると(表3),研究シミュレーションはバ イオインフォマティクス未経験者に親和性が

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高い教育方法であるとも言える。これらの傾 向は研究シミュレーション実習後の受講者の 研究動向にも表れており,実習後の研究に網 羅的実験,解析を取り入れている受講者の割 合は,医師の受講者の方が高い(表5)。新た に体験した技術の有用性と今後の診療活動に おける必要性を認識させた教育効果が実習に よるものであることと(表3,4),実習後も医 師受講者が研究に網羅的遺伝子解析を取り入 れている事実は(表5),研究シミュレーショ ン実習が自己学習意欲も高める教育効果を持 つことを証明している。これは,研究シミュ レーション実習が,医師にとってゲノム医療 に関連する医学教育の緊急性があることを実 感する実習であったことも示している。これ らのことは,少なくとも福井大学においては,

医学系大学院生へのゲノム医療を施す側への リテラシー教育として成果を挙げた実習とし て成立したことを示している。

現在のゲノム医療の強力な進展を考えると,

自発的に参入する意思の有無にかかわらず,

すべての医師にゲノム医療の知識が必要とな る12ことが明らかである。したがって,ゲノ ム医療のための解析技術に関する教育の実施 は喫緊の課題であるが,そのための教員養成 にはかなりの時間がかかると予想される。図1 に示したアンケート結果は,現在の医学生が バイオインフォマティクスの技術と大きく乖 離した環境で教育を受けていることを示して おり,まずはこの技術に接することが,本格 的なゲノム医療教育への橋渡しの役割を果た すと考えられる。今回の研究シミュレーショ ン実習は卒後教育ではあるが,「受講者自身の 研究の参考になる網羅的遺伝子データ」を利 用したことで,受講者の自発的探究を促し発 展させるきっかけを提供することができたも のと推定され,充分この目的を達成したと考 える。また,KEGGやDAVIDでは初心者に対 して教育効果を発揮できなかったことが予想 され,パスウエイ解析としてIPAのような論 文とリンクしたシステムの利用が,想定以上 にゲノム医療教育としての実習の価値を高め た。研究シミュレーション実習は,大学院授

業としてゲノム医療教育を受けてこなかった 医学系大学院生に補充的な教育として実施し つつ,今後のゲノム医療に関する学部講義の 進展に合わせて,さらに多面的な応用ができ るような教育体制に発展させることが重要と 考える。ゲノム医療を担う各部署の専門家に よる各論の講義と,エキスパートパネルに参 加する医師による総論的な講義から成る,ゲ ノム医療教育のための科目を学部専門科目と して整備できれば理想的である。しかし、相 当の期間を要することは明らかであり,橋渡 し期間の教育手段の選択肢として,研究シミュ レーション実習は有効な方法の一つである。

謝辞

福井大学大学院医学系研究科博士授業・実 験基礎演習において研究シミュレーション実 習を実施するにあたり,歴代のライフサイエ ンス支援センター長,定清直先生,清野泰先 生,青木耕史先生にご支援をいただきました。

また,研究シミュレーション実習の実施とア ンケート調査,調査結果の回収,集計作業に おいて,バイオ実験機器部門所属の高木均氏,

岸本由香氏,山本淳子氏,吉村龍明氏,下村 泰子氏にご協力いただきました。深く感謝申 し上げます。

なお,本研究は科学研究費助成事業挑戦的萌 芽研究(課題番号:26670245)の助成を受け て実施しました。また,本研究は公益財団法 人日本教育公務員弘済会平成27年度日教弘本 部奨励金の助成の一部を受けて実施しました。

本研究内容に開示すべき利益相反事項はあ りません。

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