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雑誌名 福井医科大学研究雑誌

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Academic year: 2021

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(1)

遺伝性疾患患児を持つ母親の次子妊娠に対する意思 決定と育児負担の検討

著者 佐々木 綾子, 田邊 美智子, 重松 陽介, 畑 郁江

雑誌名 福井医科大学研究雑誌

巻 1

号 2

ページ 327‑340

発行年 2000‑06‑30

URL http://hdl.handle.net/10098/974

(2)

福 井医 科 大 学 研 究雑 誌 第1巻 第2号(2000)

遺伝性疾患 患児 を持う母親 の次子妊娠 に対 する 意 思決定 と育 児負担の検討

佐 々 木 綾 子*,田 邊 美 智 子*,重 松 陽 介**,畑 郁 江***

看護学科 *臨 床 看 護 学 講 座

,**基 礎 看 護 学 講 座,医 学 科 (平 成12年4月12日 受 理)

***小 児 科 学 教 室

A study of decision making of the following child and child care strain in the mothers who have children with hereditary diseases

Ayako SASAKI*, Michiko TANABE*, Yosuke SHIGEMATSU**, Ikue HATA'

*Department of Clinical Nursing, School of Nursing

**Department of Health Scinece

, School of Nursing

***Department of Pediatrics

, School of Medicine

Abstract: The purpose of this study was to investigate the factors which influenced the deci- sion making when the mothers, who had children with hereditary disease, have the following children, and to clarify the child-care strain to the mothers. Semi-structural interviews with informed consent were done to four mothers. The results were as follows: The decision mak- ings were done by the following factors; (1)the severity of the disease, which was not appar- ent infancy of the ill child when the mother expected the following child, (2)the positive results of prenatal diagnosis, (3)the lower possibility of inheritance of the disease (4)the mother's hope that the following child may help the ill child and the other sibling, (5)the mother's confidence in bringing up the ill child. The strain in child-care was exaggerated by difficulties in the care itself and fear about the future of the ill children, lack of the feeling of achievement in child-care , persisting medical treatment, and burden of house work. The data in this study indicated that the mothers could cope with their strain through having spare time and having jobs for their own lives with the help of their husbands and family members.

Key Words: Decision making, Mother of child with here pregnancy, Child-care strain

ditary disease, The following child's

(3)

1.緒 言

児 の疾 患 が 遺 伝 性 で あ る,あ る い は そ の 可 能 性 が あ る 場 合,母 親 は 次 の 子 ど もの 妊 娠 に 対 し不 安 を 抱 い た り,子 ど も の異 常 に 責 任 を 感 じて い る こ とが 多 い(1)。また 患 児 が 心 身 め 障 害 を伴 った 場 合,患 児 の 治 療 に 関 す る こ と以 外 に も発 育 ・発 達 の遅 れ や 学 習 の 遅 れ,し つ け の 問 題 家 族 の 協 力 体 制,患 児 の 兄 弟 ・姉 妹 との か か わ り,経 済 的 な 問 題,周 囲 の 人 々 の 反 応 な ど,母 親 の心 労 は 際 限 な く増 大 す る。 一 方,遣 伝 性 疾 患 と密 接 な 関 係 に あ る 出 生 前 診 断 は1996年 か ら大 半 の 臨 床 検 査 会 社 を 含 む 数 社 が,ス ク リー ニ ン グ テ ス トの 受 注 を 開 始 した り,マ ス コ ミや 妊 婦 向 け 雑 誌 で 取 り上 げ られ る頻 度 も増 え て お り,一 般 の妊 婦 や そ の予 備 群 の 女 性 た ち の 間 で の 認 識 度 も高 ま っ そ い る(2)。適 応 理 由 は 高 齢 妊 娠 に よ る もの が 最 も多 く,次 い で,染 色 体 異 甑 先 天 代 謝 異 常 が 対 象 と な って い るが(2),出 生 前 診 断 そ の もの や 異 常 が あ った 場 合 の 意 思 決 定 に つ い て は,胎 児 の 生 命 権 や 同 じ疾 患 を もつ 子 ど も の 生 存 権 へ の 影 響,親 の決 定 権 へ の疑 問 な ど倫 理 的 な 問 題 を 抱 え て い る(3)。本 研 究 で は,遺 伝 性 疾 患 患 児 を もつ 母 親 が 次 の 子 ど も を妊 娠 す る時 の 意 思 決 定 内 容;及 び 育 児 負 担 に つ い て 明 らか に す る こ とを 目的 と した 。 病 児 を 持 つ 母 親 の 問 題 に つ い て は,慢 性 疾 患 や 障 害 児 の ケ ア の立 場 か ら多 くの 報 告 が され て い るが,遺 伝 性 疾 患 患 児 を も つ 母 親 が,次 め 妊 娠 を 考 え る と きの 意 思 決 定 に つ い て は,ダ ウ ン症 児 を もつ 母 親 の 報 告 が み られ る他 は少 な い(4・5)。

意 思 決 定 に 対 す る看 護 介 入 や 育 児 負 担 を 軽 減 す る た あ の親 役 割,育 児 能 力,家 族 力 を 高 め る よ う な 看 護 介 入 の ガ イ ドラ イ ソに つ い て 明 らか にす る こ とは 意 義 あ る もの と考 え る 。

皿.研 究 目的

1.遺 伝 性 疾 患 患 児 を 持 つ 母 親 の,次 子 妊 娠 時 の意 思 決 定 内 容 と育 児 負 担 を 明 らか にす る 。

皿.用 語 の 定 義

1.遺 伝 性 疾 患:遺 伝 性 が考 え られ る,ま た は 疑 わ れ る疾 患 。

2.育 児 負 担:遺 伝 性 疾 患 患 児 を 持 つ 母 親 が,患 児 の育 児 を 行 う中 で 体 験 した り感 じた 育 児 の 困 難 さや ス トレス 。

3.コ ー ピ ソ グ:遺 伝 性 疾 患 患 児 を 持 つ 母 親 が,育 児 負 担 を 軽 減 す るた め に とる 行 動 。

1v.研 究 方 法

1.対 象:F病 院 小 児 科 外 来 に 通 院 中 の 遺 伝 性 疾 患 患 児 の 母 親 で,本 研 究 に 同意 が得 られ た4名 。 2.期 間:平 成11年12月 〜 平 成12年3月

3.方 法

1)デ ー タ収 集 方 法

① 患 児 の 定 期 検 診 に 来 院 時,小 児 科 外 来 診 察 室 で 半 構 成 的 面 接 を行 った 。

② 母 親 に 承 諾 を 得,面 接 時 に 録 音 ま た は 記 録 を 行 った 。

(4)

遺伝 性 疾 患 患 児 を持 つ 母 親 の 次子 妊 娠 に対 す る意 志 決 定 と育 児 負 担 の検 討

③ 面 接 時 間 は 約30分 か ら60分 で あ った 。

④ 患 児 の 経 過 は 外 来 カ ル テ よ り情 報 収 集 した 。 2)内 容

① 属 性:夫 婦 の年 齢 ・職 業 ・家 族 構 成 ・保 育,就 学 状 況

② 告 知 に 対 す る母 親 の 思 い

③ 次 子 妊 娠 時 の 意 思 決 定 内 容

④ 育 児 の 困 難 状 況

⑤ 育 児 支 援 状 況

⑥ 育 児 負 担 や ス ト レス の 有 無 及 び コ ー ピ ソ グ

4.分 析 方 法:面 接 内容 を 逐 語 録 に し,質 問 項 目 ご と に 各 事 例 の 特 徴 を,複 数 の 研 究 者 に よ り分 析 した 。,

V.結 果

1.対 象 の 特 性(表1)

1)患 児 の 診 断 時 の 年 齢 は,生 後1週,生 後10か 月,生 後1年 半 で,面 接 時 の 患 児 の 年 齢 は1歳 2か 月,2歳5歳'11歳 で あ っ た 。 性 別 は 女 児,男 児 と も2名 ず つ で あ っ た 。 母 親 の 年 齢 は29 歳 か ら36歳 で,職 業 は 常 勤 者1名,パ ー ト1名,無 職 が2名 で あ っ た 。 家 族 構 成 は 核 家 族2名, 父 親 方 の 祖 母 と の 同 居2名 で あ っ た 。

表1対 象 の特 性

事例1事例2事例3事例4

疾患名

プ ロ ピオ ソ酸 血 症

ア ジ ソ ソ病

高 イ ソ ス リ ン性 低 血 糖 症

成 長 ホ ル モ ソ単 独 欠 損 症

家族構成

父 親(39歳 ・会 社 員) 母 親(36歳 ・主 婦)

第1子(患 児 ・11歳 ・女 児 ・小6特 殊 学 級) 第2子(10歳 。男 児 ・小4)

第3子(8歳 ・女 児 ・小2) 父 親(35歳 ・会 社 員) 母 親(35歳 ・主 婦) 義 母(62歳)

第1子(患 児 ・6歳 ・男 児 ・幼 稚 園) 第2子(患 児 ・1歳2か 月 ・双 胎 ・男児)

第3子(1歳2か 月 ・双 胎g男 児) 父 親(29歳 ・会 社 員)

母 親(29歳 ・パ ー ト) 第1子(患 児 ・2歳 ・男 児) 第2子(0歳 ・男 児) 父 親(35歳 ・会 社 員) 母 親(35歳 ・団 体 職 員) 義 母(64歳)

第1子(7歳 ・男 児 ・小1)

第2子(患 児 ・5歳 ・男 児 ・保 育 園)

発 育 ・発 達 ・介 護 ・治 療 状 況

発 育 ・発 達 介 護 状 況:

介 助 治 療 状 況:

:精 神 発 達 遅 滞 セ ル フ ケ アー 部 要

低 蛋 白 食,内 服

発 育 ・発 達:低 身 長 介 護 状 況:自 立

治 療 状 況:1日3回 内 服(副 腎 皮 質 ホ ル モ ソ)

発 育 ・発 達 心 身 発 達 遅 滞 介 護 状 況:セ ル フ ケ ア全 面 介 助

治 療 状 況:定 期 検 診 の み 発 育 ・発 達:低 身 長

介 護 状 況:自 立

治 療 状 況:1日2回 母 親 が 注 射(成 長 ホ ル モ ン)

(5)

2)対 象 患 児 の 特 徴

事 例1(プ ロ ピオ ソ酸 血 症)は 第1子 で,現 在 小 学 校6年 生,普 通 学 校 の特 殊 学 級 に 在 籍 し, 次 年 度 は 養 護 学 校 の 中 等 部 に 進 学 予 定 で あ る 。 発 育 ・発 達 状 況 は 精 神 遅 滞 が あ り,簡 単 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンは 可 能 で あ る 。着替 え,排 泄 な どは 自立 してい るが,入 浴 は危険 なた め介助 が必要 で あ る。 行 動 は 落 ち着 か ず,勝 手 に 歩 き回 る な ど の多 動 傾 向 が あ る。 治 療 状 況 は ,低 蛋 白食 と内 服(ビ タ ミンBT)で あ る。

事 例2(ア ジ ソ ソ病)は 第1子 で,第2子 ・3子 の二 卵 性 双 胎 の うち一 人 も同 じ疾 患 で あ る。

幼 稚 園 に 通 園 中 で,次 年 度 は 小 学 校 入 学 予 定 で あ る。 発 育 ・発 達 状 況 は 低 身 長 の み で,治 療 状 況 は1日3回 の 内 服(副 腎 皮 質 ホ ル モ ソ)で あ る 。

事 例3(高 イ ンス リン性 低 血 糖 症)は 第1子 で2歳,家 庭 内 養 育 中 で,母 親 は パ ー トの た め 日 中 は 近 くに 住 む 父 方 の 祖 母 が 養 育 して い る 。 発 育 ・発 達 状 況 は,心 身 発 育 ・発 達 遅 滞 が あ り;セ ル フ ケ ア 全 面 介 助 で,治 療 は 経 過 観 察 と週2回 機 能 訓 練 の た め ,他 院 に通 って いる。

事 例4(成 長 ホ ル モ ン単 独 欠 損 症)は,第2子 で,保 育 園 通 園 中 で あ る 。 発 育 ・発 達 状 況 は, 低 身 長 が あ り,治 療 状 況 は1日2回 ホ ル モ ン剤 を 母 親 が 注 射 して い る 。

事 例1・2・3は 実 際 に患 児 の後 に次 の 子 を 出 産 して い た が,事 例4は ま だ 次 の子 は 出産 して お らず,最 近 第3子 を 流 産 して い た 。

3)告 知 に対 す る母 親 の 思 い(表2)

事 例1は,出 生 時 異 常 な く,生 後10か 月 目に 熱 発,痙 攣 に よ る入 院 時 に 病 名 を 診 断 され た 。 母 親 は 発 達 が 遅 れ て い る とは 感 じて い た 。 診 断 に よ る シ ョ ッ ク よ り も病 状 が 重 症 で あ っ た た め,

「生 き て い て ほ しい,絶 対 育 て て み せ る」 とい う気 持 ち が 強 か った 。

事 例2は,日 本 で 出 生 した が 父 親 の 仕 事 の た め シ ソ ガ ポ ー ル で育 ち,生 後10か 月 目に 風 邪,下 痢,脱 水,口 唇 色 不 良 の た め 受 診 し現 地 で診 断 され た 。 時 々帰 国 し受 診 して いた が,4歳 の 時 に 家 族 と共 に 全 面 的 に 帰 国 した 。母 親 は,子 育 て で は 親 も悪 い と こ ろ が あ った と,出 産 や 育 児 の ス トレス を 感 じて い た 。 育 児 中 も,子 ど も との 孤 独 な 生 活 で,子 ど もか ら の信 号 が 出 て い た の か も しれ な い が 気 づ か な か った こ とや,過 保 護 に な っ だ こ と,言 葉 の 壁 が あ り,生 後10か 月 か ら1年 の 間,成 長 が 止 ま って し ま った こ と な どを 述 べ て い た 。 同 じ疾 患 が 親 族 に あ った の で ,可 能性 は 否 定 して い な か った が,「 何 で 自分 の 子 が こ うな った のか と思 った 。一 生 治 ら な い 病 気 が 自 分 の 子 ど も に ふ りか か る とは 思 わ なか った 」 と述 べ て い た 。

事 例3は,生 後1日 目に 低 血 糖 を 指 摘 され,生 後2か 月 半 の間 入 院 。最初 は大 丈 夫 だ ろ う と思 っ て い た が,他 の 異 常 も出 て きた こ と で疾 患 が 確 実 に な っ た と感 じて い た 。

事 例4は,ミ ル クの 飲 み が 少 な い 程 度 で,発 育 が 遅 れ て い た が,特 殊 な 検 査 が 必 要 で あ った た め,1歳 半 で 遺 伝 子 診 断 が 行 わ れ た 。 遺 伝 子 が な い と聞 か され,第1子 の 時 は 何 と も なか った た め,妊 娠 中 の ス トレス が 原 因 か と 自分 を責 め て い た 。

(6)

遺 伝 性 疾 患患 児を 持 つ 母親 の次 子 妊娠 に対 す る意 志 決 定 と育 児負 担 の検 討

表2イ ン タ ビ ュー か ら抽 出 され た 告 知 に 対 す る母 親 の思 い

事例1事例2事例3事例4

告 知 に 対 す る母 親 の 思 い

発 達 が遅 れ てい る とは 思 って いた 。 妊 娠 中 異 常 な く,出 産 時 は 出 血 多 量 で どち らか とい うと 母 体 の方 が あぶなか った 。 診 断 された 時 、 子 ど もが死 にかけ ていた ので 身 体 が 不 自 由 にな って も 生 きていて ほ しい と思 った 。 医 師 か らは 「蛋 白 の悪 い物 を 身 体 か ら出 す こ とが で きず,頭 の 発 達 が遅 れ て い る。 薬 を飲 んでため ない よ うにす る」 と説 明 を受 け た 。 シ ョック よ りも絶 対 育 て て みせ る と思 った 。

つ わ りで お 腹 の 子 ど もに ス トレス を か け て い た 。 出 産 で嫁 ぎ先 に 帰 り,ス ト レス だ っ た 。 子 ど もの 方 に 気 持 ちが 行 か な か った 。 出 産 時 い きみ か た 教 え て くれ な か った 。 無 理 矢 理 産 ん だ 。 母 乳 を 飲 ま な い 子 で,搾 って 捨 て よ く子 ど もが 泣 い た 。3か 月 く ら いは 子 ど も との 孤 独 な 生 活 で 信 号 が で て いた の か も しれ な いが 気 づ か なか った 。 よ く吐 い た 。 自 分 自 身 、 膀 胱 炎 や 乳 腺 炎 に な り ど こ に もは け 口 が な く,自 分 が この よ うな 状 態 だ った か ら 、 こ の 病 気 に な った と思 っ た 。 子 育 て て は 親 も悪 い と こ ろが あ った 。 大 き く育 た な い と言 わ れ,過 保 護 に な っ た 。 シ ソ ガ ポ ー ル で 言 葉 の 壁 が あ っ た 。10か 月 か ら1年 の 間 成 長 が 止 ま って し ま った 。 ホ ル モ ソの バ ラ ンス が 悪 か った 。

従 姉 に 同 じ病 気 が あ った の で も しか した ら とは 思 っ て い た 。 何 で うち の 子 が と 思 った 。 家 系 的 な ことあ るか も しれ な い と思 った 。 一 生 治 らない病 気 が 自分 の子 どもに降 りか か って くる とは 思 わ なか った 。 生 活 はで き るが親 子 に しかわか らない思 いがあ る 。人 に 治 る って い われ て も よけ い

なお世 話 医 学 しか 信 じられ ない 。

ず っ と付 き添 い 大 丈 夫 だ ろ うと 思 って い た が 、 受 診 す る と他 の 異 常 もい ろ い ろ で て きて 病 気 が どん どん 確 実 に な って い った 。 よ く 自 分 自 身 泣 い て い た 。 少 な い 疾 患 な の で,イ ン タ ー ネ ッ トで 情 報 収 集 した 。

父 親 が角 膜 移 植 を してお り,医 療 に 詳 し く,病 気 に対 して慎 重 だ った 。 産 まれ た と きお で こ が 出 ていた のが気 にな っていた 。 病 気 につ いては 成 長 ホル モ ンが不 足 してい る といわ れ,医 学 的 な ことはわ か らなか った。 成 長 ホルモ ンの遺 伝 子 が ない と聞 か され,兄 の時 は 何 もな か った の に 原 因 はなん だ ろ うか と思 った 。 お腹 の 中 にい る ときのス トレスが 原 因 か と 自分 を責 め た 。 夫 は 命 が あ る ん だ か ら十 分 と い った 。

注)下 線 部 は,母 親 の 思 い が特 に 表 出 され た 部 分 2.次 子 妊 娠 時 の意 思 決 定 内 容(表3)

事 例1は 第2子,第3子 と も羊 水 検 査 を 受 け て い た 。 子 ど もは 結 婚 当 初 か ら3人 欲 しい と考 え て い た た め,普 通 の 母 親 が 次 の 子 ど も を持 つ こ と を希 望 す る の と同 じ考 え方 で,2年 た った ら子 ど も を 作 ろ う と計 画 し て い た 。 「こ の 子 が 手 が か か っ て 産 め な い の で は な か っ た が,2人 目,3 人 目産 ん で初 め て,普 通 の 子 の 育 児 は 楽 と い うの が わ か った 。 羊 水 検 査 は 小 児 科 医 の薦 め で 行 い, 異 常 な か っ た の で妊 娠 中 は 心 配 して い な か っ た し安 心 で きた 」 「そ の 時 は 段 々 と よ く な る と信 じ て 疑 わ な か った 。 大 変 さが わ か らな か った 。 重 大 な病 気 と も思 って い なか った 。 そ ん な に 差 が な い と思 って い た 」 と述 べ て い た 。 羊 水 検 査 で異 常 が み つ か った 場 合 に つ い て は 「結 果 が 出 て か ら 考 え れ ぽ よ い,最 初 の子 に 異 常 が あ る な ん て,障 害 が あ る な ん て 考 え て い な か った 」 と述 べ て い

た 。

事 例2は,遺 伝 的 な 可 能 性 は 聞 い て い た が,兄 弟 が あ っ た 方 が よ い と考 え,も し同 じ病 気 が あ っ た と し て も,育 て ら れ る と思 っ て い た 。 しか し,出 生 時 疾 患 の 特 徴 で あ る 皮 膚 色 が 黒 い の を 見 て,

「ま た か と シ ョ ッ ク だ っ た が,薬 を 飲 め ば 大 丈 夫 と思 い,第1子 ほ ど で は な か っ た 。 か わ い そ う と は 思 っ て い る 」 と 述 べ て い た 。

(7)

表3イ ン タ ビ ュー か ら抽 出 さ れ た 次 子 妊 娠 時 の意 思 決 定 内容 と母 親 の 思 い

事例1事例2事例3事例4

意思決定内容 と母親の思い

どち らか とい うと性 格 は 楽 天 的 。 最 初 か ら3人 ほ しか った 。 普 通 の母 親 が 次 の 子 ど もを 持 つ ことを 希 望 す るの と一 緒 の考 え 方 で2年 た った ら子 どもをつ くろ うと計 画 した 。 自然 に 次 の子 が ほ しか った 。 この 子 が 手 が か か ら な い か ら産 め な い とい うの で は な く,2人 目,3人 目 を 産 ん で 初 め て,普 通 の 子 は 楽 とい うの が わ か った 。 子 ど も って 手 が か か る も の と最 初 の 子 は 思 うか ら,

こん な もの か な って 思 った 。 重 大 な 病 気 と 思 って い な か った 。 そ ん な に 差 が な い と 思 っ て い た 。 羊 水 検 査 で安 心 した 。 妊 娠 時 羊 水 検 査 の こ とは 小 児 科 医 の 薦 め で 行 い,妊 娠 中 は 心 配 して いなか った 。 も し同 じだ った らど うしよ うとい うことにつ いて は,結 果 が 出 てか ら考 えれぽ いい と 思 って いた 。 病 気 の上 の 子 の時 も異 常 があ るなん て,障 害 が あるな んて考 え てい なか った 。 そ の ときは段 々 よくな る って 信 じて疑 わな い ところが母 親 に はあ る。 子 ど もが2歳 の時 に下 の 子 を産 んで い るか ら。 だか らそ の時 は 大 変 さがわか って いな い。 本 当 の大 変 さはや っぱ り学 校 行 って か らだ った 。

遺 伝 す るとは 聞いていた 。それで も兄 弟があ ったほ うが よい。 上 の 子 に兄 弟 がい ない とよ くない 。 も しも同 じ病 気 に な って も育 て られ る とい う自信 が あ り,不 安 は なか った 。 次 の子 を 得 る こ とに 対 し前 向 きだ った 。 一 人 目の よ うな 子 育 て を した くな い 。 次 の 子 の 妊 娠 は 妊 娠8か 月 か ら 切 迫

早 産 で 入 院 。 点 滴 治 療 し,2500gと2700gの 双 胎 の 男 児 だ った 。 入 院 中 双 胎 の うち 一 人 が 同 じ病 気 とわ か った と き,病 気 の こ とを 忘 れ て い た が,顔 を 見 た と き色 が 黒 か った の で シ ョッ クだ っ た 。 や っぱ りと思 った 。 薬 を 飲 め ぽ 大 丈 夫 と思 い,上 の 子 ほ どの シ ョ ッ クで は な か った が,翌 日 薬 を 飲 ませ な くち ゃ と思 った 時 は っ と して か わ い そ うだ と思 っ た 。

遺 伝 す る ものか しな いのか不 安 だ ったが,小 児 科 医 に遺 伝 しに くい と言 わ れ た 。 しか し,元 気 に産 まれ るか 心 配 だ った 。 生 まれ た とき何 ともないが 障 害 児 を二 人 持 つ 友 人 に 「1歳 まで に 遅 れ がわ か った」 といわれ た 。 上 の子 も最 初 はそ う思 ってい なか ったが,首 がす わ る まで に発 達 が遅 れて 病 気 が は っ き りした ので,今 回 の子 も成 長 ・発 達 の節 目で あ る1歳 に な るま で 少 し不 安 。

この子 のため に も う一 人 と考 え てい る。 遺 伝 す る可 能 性 は1/4の 確 率 といわれ た 。 父 親 は 万 が 一 同 じ病 気 に な って もそ れ は そ れ で 仕 方 が な い とい って い る。 も う一 人 ほ し い も の は ほ しい 。 も し,こ の 子 が 病 気 で な か った ら い らな い 。 長 男 で あ る 兄 の プ レ ッシ ャー が きつ い 。 も う一 人 い た 方 が よい。 兄は 何 をす るに も守 らない といけ ない と思 ってい る様 子 。 義 母 は 大 分 迷 ったが 子 ど も のた めに と思 ってい る。 わが ままが す ご く何 もか も独 占 して しま うの で,も う一 人 い た 方 が よい

と しぶ しぶ 承 諾 してい る。

注)下 線 部 は,母 親 の 思 い が 特 に表 出 され た部 分

事 例3は,遺 伝 性 疾 患 の可 能 性 は 少 な い と聞 い て い た が,「 次 の 子 が 元 気 に 生 まれ るか心 配 だ っ た 。第1子 は 首 が す わ る ま で に 発 育 ・発 達 が遅 れ て,病 気 が は っ き り した の で,今 回 の 子 も1歳 に な る ま で は 本 当 に異 常 な い か 不 安 」 と述 べ て い た 。

事 例4は,次 の 子 ど も に発 症 す る確 率 は1/4と 説 明 を 受 け て い た 。 患 児 に 対 し過 保 護 に な って い る の で この 子 の た め に も う一 人 い た方 が よい と思 い,次 の子 ど もを 持 つ こ とを 希 望 して い た 。 ま た,健 常 な 第1子 の 兄 と し て の プ レ ッ シ ャ ー が き つ い た め,も う一 人 い た 方 が よ い と 思 っ て い た 。

3.育 児 の 困 難 状 況 と支 援 者(表4)

事 例1は,「 普 通 学 校 へ の 入 学 が 困難 で,親 の 思 い と関 係 機 関 との 葛 藤 が あ った」「す ぐに興 奮 パ ニ ッ ク状 態 に な る た め ,下 の子が小 さい ときは,母 親 の睡 眠時間 が少 なか った 」 「3歳 以 降 言 葉 が で な か った こ とは,3歳 は 発 達 の節 目で あ りシ ョ ッ クだ った 」 「小 学 生 の 時,歯 の 治 療 で 暴

(8)

遺 伝 性 疾 患 患 児 を持 つ 母 親 の次 子 妊娠 に対 す る意 志 決定 と育 児 負担 の検 討 表4イ ン タ ビ ュー か ら抽 出 さ れ た 困 難 状 況 と支 援 に 対 す る母 親 の 思 い

事例1事例2

困難状況

小 さい ときの大 変 さ と,今 の 大 変 さが違 う。 若 か った 時 は 身 体 が 動 いた 。 今 が大 変 。6年 間 育 て て きたの に一,ど うして悪 くな ってい くの か と思 う。 小 さい ときは 家 族 が 世 話 で きるが 、 外 に 出 る と教 育 関 係 機 関 な ど精 神 的 な重 圧 の方 が 強 か った 。 一 番 傷 つ い た の は,学 校 に 入 るの に 手 のか か るお子 さんは普 通 の学 校 に 行 っては 困 る,そ れ 相 応 の学 校 に 行 くべ きとカ㍉ 障 害 者 蔑 視 の 言 葉 ではな い と言 いなが ら,そ れに あ た る 言 葉 をぽんぽ ん と言 われ て世 間 とい うの は困 難 だ と思 った 。 厳 しさを 感 じた 。 学 校 で こん な風 当 た りなのに,一 般 社 会 に 出 る ともっ と大 変 だ ろ うな と思 う。 養 護 学 校 で も障 害 者 教 育 してい るの に,ど う して知 的 障 害 者 には風 当 た りが強 いんだ ろ うか 。 養 護 学 校 で 話 した ら,見 え な い 障 害 とい うのは理 解 が され に くとい うこ とは言 われ た 。

子 育 ての 大 変 さは,す ぐに 興 奮 す る,パ ニ ック状 態 にす ぐな る こと 。 その 時 々で あ るが,ま ず 大 変 だ った のは2〜3歳 ぐらいの 時 で夜 泣 き っ て い うか 夜 起 きる,夜 中 目 ざめ て2時 か ら4時 の 間 騒 い で い る 。 睡 眠 時 間 が短 い,起 きて いる時 間 が 多 くって,夜 中 に 騒 がれ るか ら。 こっち は寝 る時 間 が ま とまった寝 方 でで きない ので あの子 が3〜4歳 って 言 うと下 の子 が2歳0歳 で,そ れ ぞれみ ん な ま とま って 寝 て くれ る とい い が,そ うはいか なか った 。 その 時 が 大 変 だ った 。 主 人 の実 家 が九 州, 私 が近 畿 で何 かあ った ら近 畿 の母 に お願 い して 出 て きて も らって,そ れ が で きない ときは ど うしていた のか 。 よ く過 ご して これ た な と思 う。3 歳 以 降 、が くっ ときた のは,言 葉 が まだで なか った こ と,話 せ なか った

こ と 。3歳 まで に 知 能 の 基 本 が 作 られ る と言 うの を テ レ ビで 見 た りす る か ら,4歳 くら い に な って,あ 一,や っ ぱ りだ め だ な っ て い うの で が っ く りき た こ とが あ っ た 。 自 然 に 言 葉 は 出 る もの と思 っ て い た 。 小 学 校 以 降 で は,学 校 の 先 生 も1回 変 わ って,や っ ぱ り最 初 の 先 生 と 合 うか ら 入 学 した が,次 の 先 生 と なか な か 合 わ な か っ た 。6年 生 の 時 に6年 間 で こ こ までか と,が く っ と した 時 期 が あ った 。 どれ だ け 一 生 懸 命 が ん ぽ っ

て も,結 果 が 出 な い だ け に が く っ と くる 。 も う ち ょ っ と待 っ て い ら れ る よ うに な るか と思 っ て い た が こ の 状 態 。 一 番 シ ョ ッ クだ っ た の は ち ょ っ とで も 虫 歯 が あ る と歯 医 者 に み せ に い く。 段 々 大 き くな って 来 るの で, 暴 れ 方 が 違 う。 自 分 の 脇 腹 に 子 ど も の 手 が 入 って,骨 に ひ び が 入 っ た 。 これ か ら どん どん 大 き くな る し,自 分 は 年 い って,衰 え て い くの に 今 で こ の 状 態 だ と,将 来 ど うな る か とそ の 時 の シ ョ ッ クは す ごか った 。 ち ょっ と自分 で抱 えす ぎていたか な と思 う。 機 能 訓 練 に行 って い る他 院 の 医 師 に も、 一 人 でかか えて い る と子 ど もと気 持 ちのず れ が 生 じた ときに つ らい 思 いをす る といわれ た。 公 共 の機 関 を 利 用 した方 がい い と勧 め られ ていたが 具 体 的 に隣 の 市 まで 行 か ない とデ ィサ ー ビス の よ うな もの を 受 け る ところがな い 。祖 母 の葬 式 が あ った とき も連 れ て い って大 暴 れ し た 。 ち ょっ と預 か って もらえ る ところが 気 軽 に あ る とい い が 、 なか な か 難 しい 。 子 どももす ぐな じめ るか とい うと、 普 通 の 子 で もそ うで はな い ので 、 とて も心 配 で預 け られ ない とい うのは あ る。

ち ょ っ と した こ と(は く ・下 痢 ・熱 ・脱 水 ・薬 を 出 す)で も 神 経 質 で 病 院 に か か りっ き りだ った 。 シ ンガ ポ ー ル で は 錠 剤 を 割 っ て 飲 ませ て い た 。 苦 い か ら い や が る 。 無 理 や りだ と 吐 きそ うに な る 。 バ ナ ナ,ヨ ー グル トに 混 ぜ る 。 何 を して もだ め な と きが あ った 。 無 理 矢 理 飲 ませ た り, 忘 れ る 時 が あ った 。 帰 国 後 は 実 母 や 義 母 が 細 くて 小 さ い か らか わ い そ う で み て られ な い と,み ん な が 協 力 して くれ た 。 本 人 も 自 覚 で き る よ うに な り,毎 日 薬 を なぜ 飲 む の か わ か って い る 。 保 育 園 は 初 め て 母 親 か ら離

支 援

〈夫 〉

〈 県 外 に 住 む 実 母 ・ 義 母 〉

母 親 もそ うだ が,主 人 が 大 きい 。 ま め な 人 なの で よ く動 いて く れ る。 そ の 分 会 社 の 仕 事 もい っ ぱ い 抱 え て,毎 日夜 中 に 帰 っ て くる 。 土 日 もほ と ん ど 出 て る し,責 任

感 の 強 い 人 だ か ら よ け い に 自 分 が フ ル 活 動 して 先 に 倒 れ る ん じゃな いか って,そ っ ち の 方 が 不 安 。 私 に

した ら一 番 の 支 援 者 は 主 人 。 た だ ほ と ん ど休 みが ない人 なの で ち ょっと辛 い とき居 づ らい とい う 自 分 の 思 いが あ る 。 負 担 か け た くな い とい う 自分 の 思 い が あ る 。 県 外 の 母 親 は ど う して も 下 二 人 お い て 外 出 し な

くて はな らない時 に見 て も らって いる 。 他 に は 支 援 者 は い な い 。 夫 は まめ な 人 で,役 員 な ど町 内 か ら も頼

まれ 得 る 。 市 内 の 学 校 だ った の で,若 い 夫 婦 に かか って い る 。 主 人 も引 き 受 け て い

る 。 夫 婦 で忙 しい 、 土 日外 出 が 必 要 な 時 は母 親 に 頼 む 。

〈 夫 〉 〈 実 母 〉 〈 義 母 〉

義 母 と実 母 に支 援 し て も ら っ て い る 。 今 回 は 義 母 の支 援 が 大 きい 。 入 院 時 の 付 き 添 い も して も らった 。

(9)

事例3事例4

れ た の で ス トレス だ っ た 。 幼 稚 園 は 元 気 に 通 っ て い る 。

食 事 が大 変 だ った 。 食べ る ことが 好 きではな い。

注 射 を い や が る(1〜2回/日,母 親 が 自 己 注 射,2歳 か ら3歳)。

食 が 細 い,食 事 は 身 長 の 伸 び る よ うな 物 を 食 べ さ せ る よ うに して い る 。

自分 の 通 院 中 もみ て くれ るq1歳 ま で 用 事 あ る時1人 ず つ 預 か って も らった 。 今 は 2人 と も義 母 が み て くれ る 。 楽 に 外 出 す る 時 間 が も て る 。

〈夫 〉 〈義 父 母 〉 車 で5分 の と こ ろ に 住 ん で い る義 父 母 が, 喜 ん で 仕 事 中 み て く れ たが,甘 やか され て

しま った 。5月 ま で パ ー ト休 み 。 訓 練 が あ る と きは 下 の 子 を 預 か って くれ る 。 夫 の協 力 が あ って 遊 び に 出 た り して い る 。

〈夫 〉 〈 実 母 〉 近 くに 住 ん で い る 実 母 。 土 ・日仕 事 の 時 は 兄 と一 緒 に 見 て く れ る。

注)下 線 部 は,母 親 の 思 い が 特 に表 出 され た 部 分

表5イ ン タ ビ ュー か ら抽 出 さ れ た 育 児 負 担 ・ス トレス と コー ピ ング

事例1事例2事例3

育 児 負 担 ・ス ト レ ス や っぱ り我 慢 す るこ とが 多 い 。

うるさ く言 いす ぎて いた 。 私 が い ない とだ めだ,父 親 では だめ だ と思 って いた 。 親 子 関 係 のパ ラ ンス が ぎ く し ゃ く し て い た 。 も っ と 父 親 を た て れ ば よか っ た 。 私 し か わ か らな い と 思 って い た(シ ン ガ ポ ー ル で は)。 帰 国 し て か ら楽 に な った 。

ス トレスが 持 続 す る ことは なか っ た 。

対処行動

泣 きた い ときは1日 落 ち込 む 。 これ 以上 ない とい うと ころ まで1日 落 ち込 む が,な る よ うに しか な らないか ら と思 って、

わ ざ と 自分 を落 ち込 ませ ると きがあ る 。あ とは時 間 が解 決 し て どん どん気 分 があが って い く。 そ うい う性 格 な ん です 。 ど うしよ うもない ときは,仕 方 ないか ら落 ち込 む 所 ま で落 ち込 んで しまお うとい う感 じ。 主 人 が ち ょっ とつ い て くれ るの も 発 散 に はな るが時 間 が解 決 して くれ るのを待 つ 。

な るべ く夜 は義 母 にみ て もらわ な いが 具 合 が悪 い時 は み て もら う。 外 に 出たか った 。 夫 の 休 み の 時1日 ず つ 義 母 と 私 で時 間 を 自 由に使 った 。 今 年 に な って 双 子 が 歩 け る よ う にな り,散 歩 がで きる 。 自分 の 受 診 のた め 病 院 へ 行 くの は 大 変 だ が,子 どもが 薬 飲 んで いる こ とや 病 気 の こ とを忘 れ る ことが で きる。 育 児か ら手 がは なれ る。 仕 事 もで き る。 義 母 に は 友 達 との 集 ま りが あ る と,

母 も誘 う。

出 て も ら う。 外 に 行 く と き 義

仕 事 に 行 って い て よか った 。 切 り替 え に な る 。 専 業 主 婦 で み て い た ら も っ とイ ライ ラ して い た 。

(10)

遣伝 性 疾 患 患 児 を持 つ 母 親 の次 子 妊 娠 に対 す る意 志決 定 と育 児 負担 の検 討

事例4

母 自 身 の 注 射 の ス ト レ ス 。 子 ど もの わ が ま ま 。

痛 み の 発 散 が 親 に 向 か う。 育 児 よ りも姑 の 身 体 が 悪 い こ とが ス トレス 。 家 事 全 般 を や らな くて は な らな い 。

家 族 で 出 か け る。

注)下 線 部 は,母 親 の 思 い が 特 に表 出 さ れ た部 分

れ,母 親 の 肋 骨 に ひ び が 入 った と き,こ れ か ら ます ます 大 き くな る し,自 分 は 年 老 い て衰 え て い くの に,今 で こ の よ うで は 将 来 ど うな る の か と考 えた 」 な ど就 学 に 伴 う親 自身 の葛 藤 や 養 育 上 の 困 難 や 将 来 に 対 す る不 安 を あ げ て い た 。 支 援 者 は,夫 と必 要 時 県 外 に住 む 祖 母 で あ っ た が,母 親 の 負 担 は 大 きか った 。

事 例2は,ち ょっ と した こ と で も母 親 が 神 経 質 に な り,病 院 受 診 した こ とや,毎 日内 服 さぜ る こ との 大 変 さ な どを あ げ て い た 。 「成 長 し内服 の 必 要 性 は 理 解 して きた が,幼 少 時 は 大 変 だ った 」

と述 べ て い た 。 支 援 者 は 父 方,母 方 の祖 母 で あ った 。

事 例3は,養 育 の 他 に 食 事 面 で の 困 難 を あ げ て い た 。 支 援 者 は夫 と近 くに 住む 祖 父 母 で あ った 。 事 例4は,注 射 を い や が る こ と と食 事 面 で の 困 難 を あ げ て い た 。 支 援 者 は 同 居 して い る祖 母 で あ った 。

4.育 児 負 担 ・ス トレス と コ ー ピ ソ グ(表5)

事 例1は,「 我 慢 し,時 間 が 解 決 して くれ る 」 と述 べ,具 体 的 な コ ー ピ ソ グは 行 って いなか った 。 事 例2は,海 外 で の 育 児 は 「私 が い な い とだ め だ,父 親 で は だ め だ,親 子 関 係 の バ ラ ン ス が 崩 れ て い た」 と述 べ て い た が,帰 国後 は 「私 しか わ か らな い と背 負 っ て い た こ とが 帰 国 後 楽 に な っ た 」

と,夫 と義 母 の支 援 に よ り,育 児 負 担 が軽 減 し母 親 の 時 間 の確 保 を して い た 。事 例3は,育 児 負 担 感 は 特 に な く,仕 事 に 出 か け る こ とが コ ー ピ ソ グ とな って いた 。 事 例4は,注 射 と義 母 の 身 体 が 弱 い た め 家 事 全 般 を 担 って い る こ とが 負担 で あ り,コ ー ピ ソグは 家 族 と出 か け る こ とで あ った(7

v【.考 察 1.対 象 の 特 性

患 児 は 事 例1・2・4が 小 学 校 や 養 護 学 校 進 学 とい う環 境 の 変 化 を近 々に控 えて いた 。事例2・

4は 身 体 的 な発 育 遅 滞 の み で あ った が,事 例1は 精 神 遅 滞,3は 心 身 の発 育 ・発 達 遅 滞 を 伴 っ て い た 。 同 じ遺 伝 性 の疾 患 で も,症 状 は 多 様 で あ り,個hの 患 児 の症 状 に対 応 した ケ ア の あ り方 を 考 え る必 要 が あ る 。 また 事 例1・2・3は 第1子 が 患 児 で,う ち事 例2は 双 胎 の う ち 第2子 が 同 じ疾 患 で あ った 。 事 例4は 第2子 が 患 児 で あ った 。 これ らの こ とか ら,出 生 順 位 に よ っ て も,母 親 や 家 族 の受 け 入 れ 方 は 違 って くる もの と考 え られ,患 児 が 第1子 の場 合 は 初 め て の 育 児 に よ る 負 担 感 に 加 え,障 害 の受 容 や 育 児 ・治 療 に よる 負 担 感 が あ る もの と推 察 され る 。

(11)

2.告 知 の受 け 止 め 方

母 親 が 患 児 の 疾 患 に 対 す る告 知 時 に,ど の よ うな 受 け 止 め 方 を した の か は,次 子 妊 娠 時 に も影 響 す る と考 え る 。 わ が 子 の 疾 患 が 遺 伝 性 疾 患 で あ る場 合,ま た そ の疾 患 が 心 身 の 障 害 を 伴 う よ う な疾 患 の場 合,母 親 や 家 族 は2重 の 苦 しみ を 背 負 うこ とに な り,さ らに 次 の 子 ど も を 持 つ こ と を 希 望 す る場 合 に は大 き な負 担 感 とな り うる。 しか し,告 知 の時 点 では 児 の 予 後 や そ の 先 に 続 く育 児 の 困 難 さ ま で は,想 像 の 域 で あ り,漠 然 と した 不 安 を 抱 え て い る と推 察 され る 。 事 例1は 生 死 を さ ま よ う状 況 で あ った た め,疾 患 に つ い て考 え る こ と よ りも生 存 を 願 う方 が 先 で あ っ た 。 親 族 に 発 症 者 が い た こ とに よる不 安 を抱 え て い た の は 事 例2の み で あ った 。 事 例2は 遺 伝 の 可 能 性 は 否 定 して い な か った が,「 何 で うち の 子 が 」 と受 容 が す ぐに は で きな か った 。 事 例3は 当 初 は 低 血 糖 のみ で あ った が,検 査 で他 の 異 常 が 見 つ か る中 で,認 め ざる を え な い状 況 で あ っ た 。 事 例4は 第1子 が 異 常 な か った た め,病 気 に な っ た の は妊 娠 中 の ス トレス が 原 因 か と 自分 を 責 め て い た 。

また,事 例3は,出 生 後 ま もな い 時 期 に 診 断 を 受 け て い た が,他 の3事 例 は 発 育 ・発 達 の 遅 れ を 感 じな が ら も生 後10か 月 か ら1歳 半 の 間 に診 断 を 受 け て い た 。

この よ うに 告 知 時 は4事 例 が そ れ ぞ れ の 受 容 過 程 を示 して い た 。 子 ど もに 心 身 の 障 害 が あ る こ とを告 知 され た 時 に,家 族 が そ の こ とを 認 知 し,受 容 す る まで に は い くつ か の 段 階 を 経 過 す る こ とが 報 告 され て い る(6)。そ れ らは,① 混 乱 を示 す シ ョ ックの 段 階 ② 否 定 や 失 望 ,将 来へ の不 安, 罪 悪 感 を示 す 防 衛 反 応 の 段 階,③ 問題 に 現 実 的 な方 法 で対 応 す る順 応 の段 階,④ 経 験 を プ ラ ス に 生 か し,将 来 予 測 の 元 に 困 難 を 積 極 的 に 克 服 して い こ う とい う適 応 の 段 階 で あ る。 しか し,必 ず し も4事 例 の よ うに す べ て の親 が 同 じ経 過 を た ど るわ け で は な く,区 分 も明確 では な い。 また, 疾 患 の 受 容 の 他 に,障 害 の可 能 性 が 明 らか とな った 場 合,両 親 は障 害 を も った我 が 子 の 出 生 と養 育 の 過 程 に お い て,我 が 子 の 養 育 は も と よ り,夫 婦 や 兄 弟,祖 父 母 とい った家 族 関 係 や 家 庭 生 活 を 取 り巻 く近 隣 との 関 係,あ る い は 自 己 の 価 値 観 と現 実 の 構 造,ア ン ビバ レ ソ ドな 感 情 な ど様 々 な ス トレス に さ ら され る こ とに な る こ とが 指 摘 され て い る(3)。

この よ うな 状 況 か ら,障 害 児 を もつ 親 た ち は 我 が 子 が 障 害 児 で あ る こ と を 知 っ た と き の 悲 嘆 や 混 乱 か ら徐 々 に立 ち 直 り,子 ど もに 対 す る 教 育 的 配 慮 や 努 力 へ と向 い,や が て そ の 子 が 自 分 た ち の 人 生 に とっ て何 者 に もか え が た い存 在 へ と究 極 的 に 昇 華 され る こ とが 報 告 され て い る{7)。 しか し,そ の過 程 は 時 間 の か け 方 も内 容 も多 様 で あ り,そ の事 例 に合 わ せ た 対 応 が 必 要 で あ る。 特 に, こ うした ス トレス は 両 親 は も と よ り時 に は,家 族 全 体 に 危 機 的 状 況 を もた らす こ とか ら ,夫 や 家 族 全 体 へ の 支 援 が 重 要 と考 え る。

3.次 子 妊 娠 時 の意 思 決 定

事 例1は,患 児 が2歳 の 時 に 次 子 を 妊 娠 して お り,そ の 時 は 患 児 の病 状 が段 々 よ くな り,育 児 の 大 変 さ もまだ 深 刻 で は な く,普 通 の母 親 が 次 の 子 ど もを持 つ こ とを 希 望 す る の と 同 じ よ うに, 次 の子 ど もを妊 娠 して い た 。 また,羊 水 検 査 で 異 常 が な か った こ とに よ る安 心 感 が 大 き な 意 思 決 定 要 因 とな って い た と考 え られ る。

(12)

遺 伝 性 疾患 患 児 を 持 つ母 親 の 次 子妊 娠 に 対 す る意 志 決 定 と育 児 負 担 の検 討

事 例2は,遺 伝 的 な 可 能 性 は 否 定 しな か っ た が,兄 弟 が いた 方 が よ い とい うこ と と,同 じ疾 患 で も育 て られ る とい う自信 か ら次 の子 の 妊 娠 を 意 思 決 定 して い た 。

事 例3は 小 児 科 医 よ り遺 伝 性 疾 患 で あ る可 能 性 は 低 い と い う説 明 を 受 け,次 の 子 を 妊 娠 して い た が,出 生 後 も異 常 が な い か 不 安 を 抱 い て い た 。

事 例4は,遺 伝 の可 能 性 は1/4の 確 率 とい わ れ なが らV,「 この 子 が 病 気 で な か った ら,次 の 子 ど もは い らな い,兄 の プ レ ッ シ ャ ーが きつ い の で も う一 人 い た ほ うが よい 」 と健 常 な 第1子 の 兄 弟 と して の負 担 軽 減 の た め,次 子 妊 娠 を 意 思 決 定 して いた 。

これ らの 結 果 を ま とめ る と,① 患 児 の乳 幼 児 期 に 次 の 子 ど もを 妊 娠 した た め,育 児 負 担 が 一 般 的 な 育 児 と変 わ らな い と認 識 して い た,② 羊 水 検 査 に よ る安 心 感 ③ 兄 弟 が い た 方 が 現 在 及 び 将 来 助 け 合 え る,④ 疾 患 が あ りなが ら も一 度 患 児 を育 て た 経 験 か ら育 て られ る とい う自 信,⑤ 遺 伝 的 な 可 能 性 は 低 い,⑥ 兄 弟 が い た方 が,健 常 な 第1子 の 負 担 感 を 軽 減 で き る,な どが 次 子 妊 娠 時 の 意 思 決 定 要 因 と して 作 用 した と考 え られ る 。

事 例1に つ い て は,出 生 前 診 断 を 受 け た こ とが 大 きな 意 思 決 定 要 因 とな って いた 。 妊 娠 前 半 期 に 行 わ れ る先 天 異 常 の 胎 児 診 断 に は,羊 水 検 査,絨 毛 検 査,胎 児 採 血,超 音 波 診 断 な どの 方 法 が 応 用 され て い るが,こ れ らの 胎 児 診 断 は,倫 理 的 に も社 会 的 に も多 くの 問 題 を 包 合 して い る こ と が 指 摘 され て い る(3)。今 回 は 小 児 科 医 の薦 め で羊 水 検 査 を 受 け,「 異 常 が 見 つ か った 場 合 は そ の時 考 え る 」 と比 較 的 楽 観 的 で あ った 。 出 生 前 診 断 の 是 非 に つ い て は,生 命 の 質 の選 択 とい う倫 理 的 な 問 題 が 内在 して い る こ とか ら,女 性 の 自己 決 定 ・選 択 も複 雑 で あ る こ と,ま た,流 産 の リス ク や 中 期 中 絶 に対 す る抵 抗 感,障 害 児 の存 在 を否 定 す る こ とに な る とい う人 権 感 覚 か ら,漠 然 と し た 健 常 児 志 向 と障 害 児 出 生 の積 極 的 回 避 行 動 の間 に は,距 離 が あ る こ とが 指 摘 され て い る(2)。ま た 遺 伝 相 談 外 来 を訪 れ た 妊 婦 の 中 に,羊 水 検 査 を 希 望 しな い妊 婦 が 見 られ る よ うに な っ た こ と な ど,出 生 前 診 断 を選 択 しな い 妊 婦 が み られ て い る(2)。「日本 で は 出 生 前 診 断 に 伴 う,心 理 社 会 的 サ ポ ー トシス テ ムが まだ 十 分 に整 っ て い な い 。」 「医 療 者 は 羊 水 検 査 を 受 け る 選 択 を し て い る場 合 で も,障 害 児 を 全 面 的 に 否 定 して い る わ け で は な い とい う認 識 を 持 つ と共 に,検 査 を 受 け な い 選 択 を した 場 合 で も,自 信 を も って どん な子 ど も で も受 け 入 れ られ る とい う気 持 ち に な っ て い る と は 限 らな い こ とを知 るべ きで あ る」 と報 告 され て い る よ うに(2),当 人 が ど の よ うな 決 断 を くだ し た と して も精 神 的 負 担 は 計 り知 れ な い 。 事 例1は 第2子,第3子 の 妊 娠 時,患 児 の 育 児 負 担 や 障 害 の深 刻 さ が あ ま りなか った こ とに よ り,一 般 の 母 親 が 次 の子 ど もを持 つ こ とを 希 望 す る の と 同 じ思 い で 次 の 子 を妊 娠 して い た 。 「第1子 に 異 常 が あ る な ん て,障 害 が あ る な ん て 考 え て い な か っ た 。 そ の時 は 段hよ くな る と信 じて疑 わ な か った 。」 と述 べ て い る こ とか ら も,予 後 に つ い て は 漠 然 と して い た と考 え られ る。

事 例2・4は 患 児 を 支 え る兄 弟 ・姉 妹 の 存 在 を 希 望 した こ とが,意 思 決 定 要 因 で あ った 。 長 期 に わ た り療 育 に手 の か か る障 害 児 の 誕 生 は,兄 弟 ・姉 妹 に も様 々 な ス トレス を もた ら しや す い 。 さ らに,現 在 また は将 来 的 に 兄 弟 。姉 妹 が 受 け る で あ ろ う諸 問 題 は,患 児 に心 身 の 障 害 が あ れ ば

(13)

あ る程 大 きい こ とが 予 想 され る が,そ れ で もあ え て,親 が 養 育 困 難 と な っ た と き に 助 け 合 っ て い け な い か とい う思 い が あ る と考 え られ る。 また,兄 弟 ・姉 妹 自身 疾 患 や 患 児 の 状 態 の理 解 が 進 む につ れ,精 神 的 サ ポ ー トが 必 要 な存 在 と成 り得 る。 した が って ,兄 弟 ・姉妹 の存在鳳 母親に とっ て,安 心 や 支 援 の役 割 と兄 弟 ・姉 妹 自身 の不 安 や 心 配 の も と とな る こ とが 考 え られ ,ア ン ビバ レ

ン トな心 理 状 態 が 予 想 され る 。

事 例3は 遺 伝 す る確 率 は 低 い と説 明 を受 け た ご とが意 思 決 定 要 因 とな っ て い た 。 しか し,第2 子 が 正 常 に経 過 す る か ど うか の 不 安 を 抱 い て い た 。 た とえ ,出 生前診 断 に よる異 常 や 出 生後 異 常 が 認 め られ な い 場 合 で も,母 親 や 家 族 の抱 く不 安 に 対 し,正 確 で安心 で きる情報 の伝 達 や,外 来 通 院 の場 面 な どで 支 援 して い く必 要 が あ る。

4,育 児 負 担 と支 援

ノ ー マ リゼ ー シ ョ ソ思 想 の 広 範 な 普 及 に 伴 い,障 害 児が地域 におい て社会 生 活 を営 む こ とが 自 然 な もの に な りつつ あ る今 日,療 育 に 多 くの 手 を と られ が ち な母 親 の生 活 は,そ れ だ け 家 庭 以 外 の 活 動 か ら制 約 され た もの に な りが ち で あ る こ とが 報 告 され て い る(7)。 今 回 対 象 と した4事 例 の 育 児 の 困 難 さは,育 児 そ の もの の 大 変 さや療 育 上 の 困 難 や 将 来 に 対 す る不 安 ,育 児 のや りがい感 充 実 感 の な さ,治 療 に 関 係 す る もの,家 事 との両 立 な どで,夫 や 家 族 の支 援 を 受 け ,母 親 の 自由 な時 間 が 保 証 され る こ と,母 親 の就 業 に よる生 き 甲斐 感 な どが コ ー ピ ン グ と して あ げ られ た 。

心 身 の 障 害 が な い 場 合 は 学 校 生 活 な どの 環 境 へ の 適 応 や 内 服 や 注 射 な どの 治 療 に 関 す る こ と で あ った が,心 身 の 障 害 を 伴 う場 合 は,将 来 の こ とや 兄 弟 へ の影 響 を 心 配 して い た 。 日常 生 活 で 実 際 に 子 ど も と接 す る際 に 受 け る ス トレス や 将 来 の予 想 が つ きが た い こ とか ら くる ス ト レス は,こ の時 期 の母 親 に と って む しろ一 般 的 で あ る。 ま た,健 常 幼 児 の母 親 群 は ,幼 児の年 齢 と共 に,母 親 の ス トレスが 低 下 して い く減 少 が見 られ た の に 対 し,障 害 幼 児 の母 親 群 で は ほ とん ど の 尺 度 に お い て変 化 がみ られ な い こ とが 報 告 され て い る(8)。さ らに,子 ど も の成 長 ・時 間 的 経 過 と ス ト レ ス の 関 係 に つ い て は,家 族 外 の人 間関係 か ら生ず るス トレス,障 害 児の人間 関 係 か ら生ず る ス ト

レス,障 害 児 の 発 達 の 現 状 お よび 将 来 に 対 す るス トレス,不 安か ら生ず るス トレスが あ げ られ, 他 方,学 習 の 困 難 な 障 害 児 の 療 育 は,毎 日が 同 じこ との繰 り返 し とな るな ど,障 害 児 の 母 親 の ス

トレス 克 服 の 困 難 さが 指 摘 され て い る(7)。

一 方,家 族 関 係 に お け る ス トレス の 低 さ と,両 群 の ス トレス の構 造 が共 通 して い る こ と に,そ の提 言 の 糸 口が 示 唆 され(8),夫 の サ ポ ー トは,母 親 の育 児 ス トレス を 緩 和 す る役 割 を 持 つ こ とが 報 告 され て い る(9)。した が って,家 族 関 係 と夫 の 役 割 や 支 援 は,母 親 の 育 児 の 困 難 さや ス ト レス を 含 む 育 児 負 担 を軽 減 す る鍵 とい え る 。 ・

支 援 者 が 身 近 に い な い 事 例1は,夫 の支 援 は 受 け な が ら も,コ ー ピ ン グは 「我 慢 や 時 間 に よ る 解 決 」 で あ った の に 対 し,事 例2・3は,夫 や 義 父 母 の 支 援 や,仕 事 を持 つ こ とで,ま た 事 例4 は,夫 の 支 援 や 家 族 と 出か け る こ とで コ ー ピ γ グを行 って いた 。 これ らの こ とか ら,家 族 の 支 援 が あ る こ と,気 分 転 換 が で き る よ う母 親 に 時 間 的 な保 証 をす る こ と な どが 重 要 と考 え る。

(14)

遺 伝 性 疾 患 患 児 を持 つ 母親 の次 子 妊 娠 に対 す る意 志 決定 と育 児 負担 の検 討 5.問 題 点 と看 護 介 入 の 可 能 性

1)次 の 子 ど もを持 つ こ とに 関 す る意 思 決 定 の難 し さに 対 す る看 護 介 入

遺 伝 性 疾 患 に 関 す る 相 談 の場 と して遺 伝 相 談 が あ げ られ る 。遺 伝 相 談 は相 談 老 が 自分 で判 断 し, 決 断 す るた め の 偏 見 の な い 十 分 な 情 報 を 提 供 し,そ の 相 談 者 の 決 断 を 認 め,事 後 の フ ォ ロ ー も含 め て 支 援 す る シス テ ムで あ る 。 しか し,胎 児 診 断 を め ぐる生 命 の 質 の選 択 とい う倫 理 的 問 題 か ら, 女 性 また は家 族 が 自己 決 定 す る に は,環 境 が 整 って い な い の が 実 状 で あ る⑩ 。 今 回 対 象 と した4 事 例 は 小 児 科 医 に よ る相 談 が 行 わ れ て い た 。看 護 職 が か か わ る機 会 は遺 伝 相 談 の た め に 医 療 機 関 を 訪 れ た と き,羊 水 検 査 や超 音 波 診 断 を は じめ とす る出 生 前 診 断 の 場 面,障 害 児 や 遺 伝 性 の疾 患 を 持 った 児 を 出 産 した 場 合 な どが あ る 。 具 体 的 な か か わ りに つ い て は,出 生 前 診 断 で は,① 情 報 提 供,② 情 報 を ど う理 解 し受 け 止 め て い るか 確 認,③ 当事 者 の 自己 決 定 の過 程 に か か わ り,当 事 者 の 価 値 観 や 自己 決 定 内 容 を 尊 重 し,自 己 決 定 後 も継 続 した 関 わ りを もつ,な どが あ げ られ る 。 また,出 産 か ら育 児 期 に か け て は,受 容 過 程 に 関 わ る と共 に,医 療 ・福 祉 ・教 育 の 連 携 が 円 滑 に い くよ う,看 護 職 は 専 門 的 立 場 か ら患 児,母 親,家 族 を 支 援 して い く こ とが 重 要 で あ る。

2)育 児 負 担 軽 減 の た め の 支 援

患 児 を 取 り巻 く母 親 ・家 族 が よ り豊 か な 生 活 を送 り,成 長 ・発 達 して お くた あ に は 家 族 の 力 が 不 可 欠 で あ る。 ま た,母 親 や 家 族 が 直 面 した 問 題 を ど こに,あ る い は誰 に 相 談 す れ ぽ よい の か を 知 り,ス トレス を 軽 減 で き る手 だ て が 生 活 圏 内 に お い て 実 際 に 講 じ られ る こ とや,医 療 ・福 祉 ・ 教 育 な ど多 領 域 に また が る援 助 が 不 可 欠 で あ る(7)。一 般 の母 親 の育 児 負 担 感 軽 減 の た め に は 母 親

に,一 人 に な れ る 自 由 な 時 間 を 保 証 す る こ とが 重 要 で あ る こ と(13)が指 摘 され て い る よ うに,病 児 を もつ 母 親 に お い て も 同 じ こ とが い え よ う。 今 日,一 部 の心 身 障 害 児 に つ い て は,統 合 保 育 ・教 育 が 推 進 され,患 児 の 居 住 地 の近 隣 で の保 育 サ ー ビスを 受 け る こ とが で き る よ う に な っ て き て い る。 しか し,事 例1の 母 親 は気 軽 に デ ィサ ー ビス を 受 け られ る よ うな体 制 や 環 境 が,患 児 とそ の 家 族 が 住 む 近 隣 に不 十 分 で あ る こ とを 指 摘 して い た 。 また 事 例4は,患 児 の疾 患 や 具 体 的 な 育 児 方 法 な ど に関 す る情 報 を,同 じ立 場 の 母 親 や 家 族 で 情 報 交 換 す る こ とを 希 望 して い た 。 した が っ て,育 児 負 担 軽 減 に は 「親 の会 」 の組 織 や 医 療 機 関 や 行 政 が 中 心 とな って 現 在 行 わ れ て い る情 報 交 換 の機 会 を支 援 す る こ と も重 要 な 役 割 とい え る 。 さ らに,患 児 と患 児 の 兄 弟 ・姉 妹 に 対 して も, 児 の成 長 に 合 わ せ,支 援 を 行 っ て い く必 要 が あ る 。

田.本 研 究 の 限 界 と今 後 の 課 題

本 研 究 の対 象 者 は4事 例 で あ っ た た め,一 般 化 す るに は 限 界 が あ る 。 今 後,様 々 な 状 況 に あ る 母 親 や 家 族 を 対 象 に検 討 す る 必 要 が あ る。 今 回 は母 親 の想 起 に よ る面 接 内 容 を 中 心 と した た め, 今 後 は 告 知 直 後 や 発 達 の 節 目で の 母 親 や 家 族 の 思 い を 縦 断 的 に把 握 し,よ り具 体 的 な 看 護 介 入 の 方 策 を 考 え て い く必 要 が あ る と考 え る。

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㎜.ま と め

遺 伝 性 疾 患 患 児 を 持 つ 母 親 の次 子 妊 娠 時 の意 思 決 定 内 容 及 び,母 親 の 育 児 負 担 に つ い て 明 ら か に す る こ とを 目的 に,小 児 科 外 来 に通 院 中 の 病 児 の 母 親 で 本 研 究 に 同意 が得 られ た 母 親4名 を 対 象 に,半 構 成 的 面 接 を 行 った 。 そ の結 果,以 下 の こ とが 明 らか に な った 。

1.遺 伝 性 疾 患 児 を 持 つ 母 親 の次 子 妊 娠 時 の 意 思 決 定 は,① 患 児の乳幼 児期 に妊娠 したた め,育 児 負担 が 一 般 的 な 育 児 と変 わ ら な い と認 識 して い た,② 羊 水 検 査 に よる安 心,③ 兄 弟 が い た 方 が 現 在 及 び 将 来 助 け 合 え る,④ 疾 患 が あ りなが ら も一 度 患 児 を 育 て た 経 験 か ら育 て ら れ る とい う 自 信,⑤ 遺 伝 的 な 可 能 性 は低 い,⑥ 兄 弟 が い た 方 が,健 常 な 第1子 の 負 担 感 を 軽 減 で き る と 思 っ た

こ とな どが 要 因 と して あ げ られ た 。

2.育 児 負 担 は,育 児 そ の もの の大 変 さや 療 育 上 の 困 難 や 将 来 に対 す る不 安,育 児 の や りが い感 充 実 感 の な さ,治 療 に 関 係 す る もの,家 事 との 両 立 な どが あ げ られ た 。 これ らの 育 児 負 担 に 対 し て夫 や 家 族 の 支 援 を 受 け,母 親 の 自 由 な 時 間 が保 証 され る こ と,母 親 の就 業に よ る生 き甲斐 感 な どが コー ピン グ とな って い た 。

本 研 究 に ご協 力 い た だ い た 皆 様 に 深 謝 い た します 。

引 用 文 献

1)長 谷 川 智 子:障 害 を も つ 子 の 受 け 止 め 方:基 本 は 普 通 の 子,助 産 婦 雑 誌53(5),p26〜31,1999.

2)玉 井 真 理 子 他:出 生 前 診 断 の 説 明 実 施 率 と検 査 実 施 率 お よ び 妊 婦 の 意 思 決 定 ,母 性 衛 生,41(1),p124

〜132 ,2000.

3)鈴 森 薫:出 生 前 診 断 診 断 と 治 療 社,p32〜40,1996.

4)又 吉 国 雄:羊 水 検 査 を 希 望 しな か っ た 母 親 た ち 一 医 療 者 が 知 っ て お くべ き心 理 的 側 面,助 産 婦 雑 誌 ,47 (2),p150^‑154,1993.

5)玉 井 真 理 子:羊 水 検 査 を 選 択 し な か っ た ダ ウ ン症 児 の 母 親 た ち,助 産 婦 雑 誌,49(4),p332〜335,1995 , 6)森 秀 子:障 害 児 を も つ 家 族 の ケ ア,小 児 看 護,16(4),p460〜463,1993.

7)及 川 克 紀 他:障 害 児 を も つ 家 族 の 問 題 発 達 障 害 研 究317,p54〜61,1995.

8)新 美 明 夫 他:就 学 前 の 心 身 障 害 幼 児 を も つ 母 親 の ス ト レス,発 達 障 害 研 究,3(3),p206〜215,1981.

9)丸 光 恵 他:慢 性 疾 患 患 児 を もつ 母 親 の 育 児 ズ ト レ ス の 特 徴 と 関 連 要 因,千 葉 大 学 看 護 学 部 紀 要,19,p45

^‑51 ,1997.

10)川 元 知 子:遺 伝 相 談 ペ リ ネ イ タ ル ケ ア 夏 期 増 刊,P140〜143,1999.

11)松 田 一 郎:厚 生 省 心 身 障 害 研 究 班 平 成9年 度 報 告 書:出 生 前 診 断 の 実 態 に 関 す る 研 究,1,1998.

12)窪 谷 健:ダ ウ ン症 に 続 く妊 娠 と 出 生 前 診 断 の 選 択 に 関 す る 調 査,東 京 母 性 衛 生 学 会 雑 誌,10,p47,1994.

13)大 日 向 雅 美:子 育 て と 出 会 う と き,日 本 放 送 出 版 協 会,p72〜83,1999.

参照

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