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雑誌名 福井医科大学研究雑誌

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(1)

日本の新生児マススクリーニングで初めて発見され たプロピオン酸血症患児の療育に関する検討

著者 重松 陽介, 笠川 洋子, 家森 由香, 冨田 香, 北山 富士子, 畑 郁江, 眞弓 光文, 田中 幸枝

雑誌名 福井医科大学研究雑誌

巻 1

号 2

ページ 275‑282

発行年 2000‑06‑30

URL http://hdl.handle.net/10098/970

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福 井 医 科 大学 研 究 雑誌 第1巻 第2号(2000)

日本 の 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ング で 初 め て発 見 され た プ ロピオ ン酸血症 患児の療育 に関す る検討

重 松 陽 介1),笠 川 洋 子2),家 森 由 香3>,冨 田 香3>,北 山 富 士 子3>, 畑 郁 江4),眞 弓 光 文4),田 中 幸 枝5)

看 護 学 科')基 礎 看 護 学 講 座,附 属 病 院2)看 護 部,3)栄 養 管 理 室, 医 学 科4)小 児 科 学 教 室,5)実 験 実 習 機 器 セ ソ タ ー

(平 成12年4月12日 受 理)

The first case with propionic acidemia found in newborn screening by tandem mass spectrometry in Japan; clinical management during infancy

Yosuke SHIGEMATSU1), Youko SASAKAWA2), Yuka IEMORI3),

Kaori TOMITA", Fujiko KITAYAMA", Ikue HATA'', Mitsufumi MAYUMI4), Yukie TANAKA"

"Department of Health Science, School of Nursing, 2)Unit of Nursing

, University Hospotal, 3)Department of Nutrition , University Hospital,

"Department of Pediatrics , School of Medicine, 5)Central Research Laboratories

, Fukui Medical University

Abstract: The purpose of this study was to clarify the factors which influence the efficacy of treatment on a patient with propionic acidemia who was found in our pilot study of newborn screening by tandem mass spectrometry. The patient was classified into a milder form of this disorder based on the enzymological analysis. She was symptom-free until diagnosis at 26 days, and had no apparent developmental delay at 24 months of age. The patient was treated with carnitine and protein-restricted diet using a special formula for this disorder, which was supplemented with an strawberry flavor to improve the odor and taste and with tetrasaccharide to increase calories. The mother was trained to calculate the patient's intake of calories and protein, and the assessment of diet therapy was done using her daily records.

When the patient could not have sufficient calories because of such diseases as gastroenteritis and other febrile illnesses, intravenous glucose infusions were done irrespective of the presence of ketosis. Nursing staff played an important role in the outpatient clinic in preventing infec- tious diseases and in judging the patient condition. The mother was encouraged to continue diet therapy in our clinic where the favorable course of patient's development was ascertained using a developmental scale. Our experiences indicated that early assessment of the mother's character and repeated confirmation of family members' understanding about the disease by nursing staff were important for successful treatment of the patient.

Key Words: mass screening, propionic acidemia, diet therapy, family care

一275一

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重 松 陽 介,笠 川 洋 子,家 森 由 香,冨 田 香,北 山 富 士 子,畑 郁 江,眞 弓 光 文,田 中 幸 枝

は じめ に

我 が 国 で は 現 在 、6種 の 先 天 異 常 症(フ ェ ニル ケ トソ尿 症 、 メ ー プ ル シ ロ ップ尿 症 、 ホモ シス チ ン尿 症 ・ガ ラ ク トー ス血 症 ・先 天 性 甲状 腺 機 能 低 下 症 ・先 天 性 副 腎 過 形 成)を 対 象 疾 患 と して 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ソ グが 行 わ れ て い る 。 こ の 目的 は 、 早 期 発 見 ・早 期 治 療 に よ り心 身 障 害 を 防 止 す る こ とで あ る 。 更 に近 年 、 有 機 酸 代 謝 異 常 症 や 尿 素 サ イ クル異 常 症 も対 象 と して 、質量 分 析 計 を 用 い た 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ン グの 試 験 研 究 が 国 際 的 に行 わ れ て い る 。 我 が 国 で は 筆 者 ら が 中心 とな り1997年 か ら福 井 県 を 中 心 に試 験 研 究(1)を始 め 、最 近 では広 島県や徳 島県 に ス ク リー ニ ソ グ地 域 が 広 が って い る。 この新 しいマ スス ク リー ニ ング試験研 究 の中 で、本邦 で初め て、 プ ロ ピオ ソ酸 血 症 患 児 を 発 病 前 に ス ク リー ニ ソ グ した(2)。 プ ロ ピオ ン酸 血 症(以 下 本 症 と略)と は 、 希 な 遺 伝 性 代 謝 異 常 症 で 、 い くつ か の ア ミノ酸 の 代 謝 過 程 に 障 害 が あ り体 内 に プ ロ ピオ ソ酸 が 蓄 積 し、 そ の 害 作 用 に よ り脳 障 害 な どが 引 き起 こ され る疾 患 で あ る(3)。本 症 は 新 生 児 期 に 発 症 す る 重 症 型 と乳 児 期 以 降 に 発 症 す る軽 症 型 に 分 類 され 、 患 児 は 後 者 と考 え られ た 。 この患 児 につ いて 、 新 生 児 期 か ら小 児 科 医 、 栄 養 士 、看 護 職 の チ ー ム で食 事 療 法 を 中 心 と した 治 療 と療 育 に取 り組 み 、 2歳 現 在 ほ ぼ 良 好 な 発 育 を 得 て い る 。 こ の2年 間 の 療 育 の取 り組 み に つ い て 、患者家 族へ の聴 き 取 り調 査 を 含 め 再 検 討 し、 看 護 職 の役 割 に つ い て も検 討 した の で報 告 す る 。

対 象 と方 法

1)マ ス ス ク リー ニ ン グ試 験 研 究 法

現 行 の 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ン グで は 生 後5日 目頃 に 採 血 に よ り血 液 濾 紙 を 作 成 し検 査 施 設 に 郵 送 して い る 。 この 血 液 濾 紙 の うち 、 両 親 か ら文 書 で の 説 明 に よ る同 意 が 得 られ た もの に つ い て 検 査 機 関 か ら取 り寄 せ 、試 験 研 究 に供 した 。 マ ス ス ク リー ニ ソ グ分 析 は 特 殊 な質 量 分 析 法 を用 い て 行 っ た(145)。

2)症 例 の 診 断 と医学 的 管 理

対 象 患 児 は 、 生 後5日 採 血 の血 液 濾 紙 を 用 い た マ ス ス ク リー ニ ソ グ検 査 に よ りプ ロ ピオ ン酸 血 症 疑 い と され 、 生 後24日 目に 尿 有 機 酸 分 析 に よ り本 症 と化 学 診 断 され た 。 そ の 後 皮 膚 繊 維 芽 細 胞 を 用 い て酵 素 診 断 と遺 伝 子 診 断 を 行 い 、 本 症 の 確 定 診 断 を 得 た 。 化 学 診 断 され た 時 点 ま で に 、患 児 に 本 症 の症 状 は 認 め られ て い な か った 。 酵 素 診 断 の 結 果 か ら、患 児 は 乳 児 期 発 症 型 の 軽 症 例 と 判 断 され た 。

医 学 的 管 理 は 、福 井 医 科 大 学 小 児 科 専 門 外 来 と栄 養 管 理 室 に て 、 プ ロ ピオ ソ酸 血 症 治 療 用 特 殊 ミル クを 使 用 した 食 事 療 法 と カル ニ チ ソ治 療 を 行 った 。栄養 治療 の 目標 は、 自然 蛋 白摂 取 を1.2g /kg/日 に 制 限 し、 カ ロ リー摂 取 は100kca1/kg/日 以 上 と した 。 治 療 の評 価 は 、 体 重 増 加 の 良 否 、 尿 中 有 機 酸 排 泄 量 ・血 中 プ ロ ピオ ニ ル カ ル ニチ ン濃 度 、 そ の 他 血 液 生 化 学 検 査 値 、 急 性 発 症 の 有 無 な ど に よ った 。 嘔 吐 や 傾 眠 傾 向 と い った 本 症 の 急 性 増 悪 の 可 能 性 を示 す 症 状 が あ る時 、 また は 経 口摂 取 が 減 少 しカ ロ リー摂 取 が 不 十 分 な 時 に は 、 尿 中 ケ トソ体 が 陽 性 で な い か や 血 中 ア ンモ ニ

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日本 の 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ン グ で 初 め て 発 見 さ れ た プ ロ ピ オ ン酸 血 症 患 児 の 療 育 に 関 す る 検 討

ア は 高 くな い か な どを 検 査 し、 積 極 的 に外 来 通 院 あ るい は 入 院 で 補 液 療 法 を 行 うこ と と した 。 肺 炎 な どの 細 菌 感 染 症 に 対 して抗 生 剤 を 使 用 す る場 合 、 低 カル ニチ ソ血 症 を 来 す ビバ リル エ ス テ ル 型 経 口抗 生 剤 の 使 用 は 禁 忌 と した 。 発 達 の 評 価 と して 、 遠 城 寺 式 乳 幼 児 分 析 的 発 達 検 査 と新 版K 式 発 達 検 査 を 行 っ た 。

3)聴 き取 り調 査

患 児 が2歳0ヶ 月 時 に 、 患 児 の 療 育 全 般 に つ い て再 検 討 す る こ とを 目的 に 、母 親 に対 して 、 専 門 外 来 担 当 医 が 面 談 に て 聴 き取 り調 査 を 行 っ た 。 母 親 お よび 家 族 の疾 患 に 対 す る理 解 度 、患 児 の 療 育 に対 す る 家 族 の 協 力 と経 済 的 負 担 、病 院 で の 医 療 に 対 す る満 足 度 を 調 査 項 目 と した 。

結 果

1)患 者 の 家 族 背 景

両 親 は 血 族 結 婚 で は な く、家 系 に 患 児 と 同 じ疾 患 を 有 す る もの は確 認 で き な い 。1歳 半 年 上 の 健 康 な 兄 が お り、家 族4人 の核 家 族 で あ るが 、 近 所 に 父 方 の 両 親 と父 の 姉 が 居 住 して い る 。 父 親 は 会 社 員 で 、 母 親 は 専 業 主 婦 で あ る 。 母 親 は 短 大 で 簿 記 を 専 攻 した 。 父 親 の 姉 は 栄 養 士 で あ る 。

2)病 名 の告 知

生 後24日 、 化 学 診 断 結 果 が判 明 した 時 に 、両 親 に 対 して 病 名 の 説 明 を 担 当 医 か ら行 った 。 遺 伝 性 疾 患 で あ る こ とに つ い て 、 本 症 は 常 染 色 体 劣 性 遺 伝 形 式 で 遺 伝 す る疾 患 で あ り両 親 は 保 因 者 で あ る こ と 、兄 は 患 者 で な い こ と 、数10万 人 に1人 に 発 生 す る非 常 に希 な疾 患 で あ り、 初 発 例 に つ い て の発 生 の 予 測 は 困 難 で あ る こ と 、 出 生 前 診 断 は 可 能 で あ る こ とが 説 明 され た 。治 療 と予 後 に つ い て は 、 ア ミ ノ酸 の代 謝 に 関 連 した 疾 患 で あ り、 無 治 療 で は 心 身 障 害 を 来 す 可 能 性 が 大 き い こ と、 蛋 白質 を制 限 しカ ロ リー を 充 分 取 る こ と と解 毒 剤 と して カル ニチ ソを 服 用 す る こ とで こ の よ

うな 障 害 を 防 ぐこ とが で き る と説 明 され た 。

告 知 の 段 階 で 、 両 親 の 性 格 や 理 解 能 力 に つ い て の 詳 細 な 調 査 は 行 え なか っ た 。 3)栄 養 指 導

栄 養 指 導 は2‑4週 ご との 小 児 科 専 門 外 来 受 診 に あ わ せ 、母 親 に対 して 行 わ れ た 。 乳 児 期 早 期 は 、 プ ロ ピオ ン酸 血 症 治 療 用 特 殊 ミル ク と通 常 の調 整 乳 を 混 合 して使 用 し、 生 後6ヶ 月 時 か ら特 殊 ミル クに 加 え て 自然 食 品 を用 い た 離 乳 食 を 開 始 した 。 栄 養 士 か ら患 児 に と っ て 適 切 な 離 乳 食 メ

ニ ュー を 提 示 し、母 親 に 食 品 の カ ロ リー と蛋 白 含 有 量 が 計 算 で き る よ うに 指 導 し、1日 の摂 取食 品 とそ の カ ロ リー及 び 蛋 白量 を ノ ー トに記 録 させ た 。

治 療 開 始 直 前 に は 混 合 栄 養 で あ り、 治 療 用 特 殊 ミル クの 哺 乳 を 開 始 した と ころ 、嫌 が って 充 分 な哺 乳 量 に な らず1日 摂 取 カ ロ リー は 約85Kca1/kg前 後 で あ っ た 。 特 殊 ミル クの 特 有 の 苦 み と臭 い が 原 因 と考 え られ 、 これ に対 して 、 フ レーバ ー 、 マ ル トオ リゴ糖 を 主 成 分 と した 甘 味 料 を 使 用 して 飲 み や す くな る よ う工 夫 した と こ ろ 、 兄 も欲 しが っ て 飲 め る程 度 に 食 味 は 改 善 した 。 摂 取 カ ロ リー も次 第 に 目標 値 あ た りに増 加 した が 、 摂 取 量 は 日に よ っ て む ら が あ り、 平 均 す る と100

一277一

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重 松 陽 介,笠 川 洋 子,家 森 由 香,冨 田 香,北 山 富 士 子 ,畑 郁 江,眞 弓 光 文,田 中 幸 枝

kcal/kg/日 に達 しな い 日が 多 か った 。

離 乳 食 開 始 後 は 、 低 蛋 白 米 や 低 蛋 白 小 麦 粉 と い った 低 蛋 白高 エ ネ ル ギ ー特 殊 食 品 を 積 極 的 に導 入 して カ ロ リー 摂 取 増 加 の工 夫 を 行 った 。MCT製 品 、 ゼ リー 、 ジ ュ ー ス 、でんぷ ん製品(揚 げ せ ん べ い)な ど も紹 介 して 使 用 させ た 。 ミル クが 飲 め な い場 合 は 、食 事 に 混 ぜ て み る な どの 工 夫

も行 った 。

患 児 は い わ ゆ る 食 が 細 い 児 で 、蛋 白摂 取 に つ い て も制 限 量 に も達 しな い 状 態 で あ った の で 、 良 質 の 自然 蛋 白質 が 出 来 る だ け 多 く取 れ る よ うに食 品 の選 び 方 や 調 理 方 法 を 指 導 した 。 また 、 うど ん や ご飯 な どの 主 食 の み の 摂 取 が 多 く、 この こ とで 全 体 的 に蛋 白質 の 摂 取 が 少 な め に な っ て い た の で 、副 食 も き ち ん と摂 取 す る よ う指 導 を 行 った 。 担 当 医 に よ る疾 患 の 説 明 時 に蛋 白質 の 毒 性 を 強 調 した た め か 、 母 親 が 蛋 白質 摂 取 量 ひ い て は 食 事 量 の増 加 に 積 極 的 で な い 印 象 を 栄 養 士 が 指 摘 し、 担 当 医 と栄 養 士 とが と もに 、 必 要 な 食 事 量 を 取 ら な い と体 蛋 白 の 異 化 が 進 んだ り と、か え っ て 体 に よ くな い こ とが起 こ る こ とを 再 確 認 させ た 。

ま た 、食 習慣 の 問 題 と して 、 兄 妹 共 に ポ テ トチ ップ ス な どの ス ナ ッ ク菓 子 の摂 取 が 多 か った の で 、菓 子 類 の摂 取 は 減 らす よ う指 導 した 。 野 菜 の 摂 取 も少 な い 傾 向 が あ った の で 、 副食 に 取 り入 れ 、 お や つ と して 果 物 を 積 極 的 に 取 り入 れ させ た 。

4)患 者 の 治 療 経 過

図1に 患 者 の 体 重 及 び 主 な 生 化 学 検 査 指 標 を 示 した 。 食 事 治 療 と カル ニチ ン投 与 が 開 始 され て、

病 的 な 有 機 酸 で あ る メ チ ル クエ ン酸 の尿 中 排 泄 は 低 下 し、 治 療 前 か ら軽 度 上 昇 で しか な か った 血 図1プ ロピオン酸 血症患 児の治療 中の体重 および血中 ・尿 中生化学指 標物質 の推移

(nmo]/ml)血 中 プ ロピオ ニル カル ニチ ン

5

0

尿 中 メ チ ル ク エ ン 酸(

uglmgCr) 100

50

0

体 重 (+2SD)

(Kg) 10

(平均

 ひ  ひ ロ くア

̲̲o‑一 一〇 一一〇 一一一一〇...

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日本 の 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ン グ で 初 め て 発 見 され た プ ロ ピオ ソ酸 血 症 患 児 の 療 育 に 関 す る 検 討

中 の プ ロ ピオ ニ ル カ ル ニ チ ン濃 度 も更 に 低 い値 に 保 た れ た 。

生 後 半 年 を過 ぎ た 頃 よ り、 ウ イ ル ス 感 染 症 に よる と考 え られ る発 熱 や 気 道 お よ び 消 化 器 症 状 が 出 没 す る よ うに な った 。 外 来 受 診 時 に 感 染 症 罹 患 児 と接 触 す る こ と も原 因 と考 え られ 、 他 の 患 者 か ら隔 離 で き る よ うに 看 護 職 が 対 応 した 。 ま た 、 患 児 が この よ うな感 染 症 罹 患 時 に摂 取 カ ロ リー 量 の 少 な い 日が あ れ ぽ い つ で もた め らわ ず に 小 児 科 外 来 を 受 診 す る よ うに母 親 に対 して指 導 した 。 さ ら に 、 患 児 の 受 診 に あ た り医療 側 は 専 門 外 来 だ け で な く一 般 外 来 あ る い は 救 急 外 来 で も対 応 し た 。 即 ち 、 医 師 あ る い は 看 護 婦 が 電 話 で の 相 談 を 受 け 、 外 来 受 診 の 可 否 を判 断 し、 可 能 な 限 り専 門 外 来 の担 当 医 に 連 絡 を 取 った 。 入 院 治 療 は11ヶ 月 時 に 急 性 胃腸 炎 、1歳7ヶ 月 時 に 尿 路 感 染 症 、1歳10ヶ 月 時 に急 性 胃腸 炎 、1歳11ヶ 月 時 に 肺 炎 の 診 断 で行 わ れ た 。 外 来 で の 補 液 療 法 は 、

1歳 時 、1歳3ヶ 月 時 に2回 、1歳10ヶ 月 時 の 入 院 前 日 、1歳11ヶ 月 時 の入 院 前 日に行 っ た 。 患 児 の外 来 及 び 入 院 治 療 に は 母 親 が 付 き添 い 、 兄 の世 話 や 家 族 の 食 事 な どは 父 方 祖 父 母 や 姉 が 援 助 した 。 しか し、1歳7ヶ 月 時 の 入 院 前 日に は 、 外 来 で の 補 液 療 法 を 勧 め られ た に もか か わ ら ず 、 母 親 に は 予 想 外 で あ った の か 、 兄 を1人 で外 で 遊 ぽ せ て い る と の こ とで 帰 宅 し、補 液 療 法 が 行 え な か った 。

5)発 達 の 評 価

専 門 外 来 受 診 時 に2‑3ヶ 月 ご とに遠 城 寺 式 乳 幼 児 分 析 的 発 達 検 査 を 担 当 医 が 行 っ た 。 図2に 図2プ ロピオン酸 血症患 児の 「遠城 寺式 ・乳 幼児分析 的発達検 査表」 に基 づ く発達経過

(○:移 動運動,口:発 語,そ の他 の領域 の発達年 齢 は暦 年令相 当で推移 した)

24 発 達 年 齢 (月)

18

12

6

0 0

S o日

0 0 0

口/O

口 0

O

口 0

6 1218

暦 年 齢(月)

24

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重 松 陽 介,笠 川 洋 子,家 森 由 香,冨 田 香,北 山 富 士 子,畑 郁 江,眞 弓 光 文,田 中 幸 枝

そ の経 過 を示 した 。 乳 児 期 に は 筋 緊 張 が や や 低 下 して お り、 お座 り、這 う、立 つ とい う移 動 運 動 の 点 で 少 し遅 れ が 見 られ た が 、 手 の 運 動 の 発 達 年 齢 は 歴 年 齢 相 当 に 推 移 した 。 また 、1歳 以 降 、 単 語 数 の 増 加 が 少 な か った が 、 言 語 理 解 で は歴 年 齢 相 当 に 推 移 した 。社 会 性 も歴 年 齢 相 当 に 推 移 した 。 各 領 域 の判 定 課 題 内 容 に つ い て 、 患 児 の 年 齢 段 階 とそ の 次 の 段 階 の事 項 を母 親 に提 示 し、

次 回 外 来 受 診 ま で の患 児 に 対 す る 在 宅 で の関 わ り方 の 目標 と した と こ ろ 、母 親 は これ らの 課 題 達 成 に 向け て 積 極 的 に取 り組 ん だ 。

1歳9ヶ 月 時 の 新 版K式 発 達 検 査 で は 、発 達 指 数 は 総 合 で100で あ った が 、 言 語 社 会 領 域 で77 と低 く、 言 葉 の 遅 れ が 見 られ た 。

母 親 は 、几 帳 面 で お とな しい 性 格 で 医 療 者 に 積 極 的 に 話 しか け る こ と も少 な か った 。 母 親 か ら 患 児 へ の 声 掛 け の少 な い こ とが 患 児 の 語 彙 増 加 の 遅 れ の 背 景 に な って い る 可 能 性 が 考 え られ た の で 、 絵 本 を 読 み 聞 か せ る な ど の 時 間 を 多 く と る こ とが 指 導 され た 。2歳 時 点 で は 、語 彙 は 次 第 に 増 加 して い た 。

6)母 親 へ の 聴 き取 り調 査

経 済 的 な 問 題 に つ い て は 、患 児 の 疾 病 は 小 児 慢 性 特 定 疾 患 研 究 事 業 の 対 象 疾 患 で あ り、 この 疾 患 で の 入 院 外 来 診 療 に 関 して は 自己 負 担 は な い 。 自宅 は 病 院 ま で 車 で 約15分 と近 く、 自家 用 車 で の 通 院 に か か る費 用 は 少 なか った 。 特 殊 食 品 の 購 入 に 月 約1万 円 を 支 出 して い た が 、 母 親 は これ

らが 家 計 の 負 担 に な る 額 とは 考 え て い な か っ た 。

患 者 の療 育 につ いて の他 の 家 族 の関 わ りにつ いて 、 父 親 は 患 児 の入 浴 な どで協 力 してい るが 、 食 品 の選 択 で 肉 な どの蛋 白の多 い食 品 を食 べ させ て しま うな ど、 食 事 に関 す る理 解 が 少 ない こ とを 問 題 と

してあげ てい る。 父方 祖 父 母 につ いては 、患 児 の 入 院 や 外 来 通 院 時 に たのみ ご とが 出 き る点 で 頼 りに していた 。 た だ し、 祖 父 母 に 、 患 児 が 遺 伝 性 の疾 患 であ る こ とは周 囲 に他 言 しな い よ うに と忠 告 され た ことを回 答 した 。 祖 父 母 に対 す る患 児 の病 気 の説 明は 両 親 か ら行 わ れて いた 。栄 養 士 の叔 母 は 、 専 門 でな いか らと患 児 の栄 養 治 療 には積 極 的 には参 加 して いな い ものの 、兄 の世 話 な どで協 力 してい た 。

食 事 療 法 に つ い て 、食 事 を 作 っ て も患 児 が あ ま り食 べ て くれ な い こ とに 困 惑 して お り、食 べ に 来 る ま で 待 って い る こ とが 多 い と回 答 した 。 患 児 の成 長 に 関 して は 、小 柄 だ が 色 々 な こ とが 出 来 る よ うに な って きて い る こ とを 外 来 で 確 認 して も らい うれ しい と回 答 した 。 次 子 を 希 望 す るか ど

うか の 問 い に は 、 二 人 で 充 分 で あ る と回 答 した 。

考 察

プ ロ ピオ ソ酸 血 症 は 、重 症 型 で は 治 療 が 困 難 で早 期 に 肝 移 植 を 必 要 とす る と考 え られ る もの の、

軽 症 型 で は 発 病 前 の早 期 に診 断 し食 事 療 法 な ど の適 切 な 治 療 を 行 え ぽ 心 身 障 害 を 防 ぐ こ とが で き る と され て い るが 、 そ の有 効 性 は 実 証 され て い な か っ た 。

乳 児 期 に 急 性 発 症 した 患 老 の 治 療 に お い て は 、 既 に脳 障 害 が 進 行 して お り、 また 味 の 悪 い 治 療 用 特 殊 ミル クを 哺 乳 させ る こ とが 困 難 で あ る こ とか ら、 多 くの 症 例 に お い て 治 療 効 果 は 極 め て 不

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日本 の 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ン グ で 初 め て 発 見 され た プ ロ ピオ ソ酸 血 症 患 児 の 療 育 に 関 す る 検 討

十 分 で あ る 。 我 々が 過 去 に診 断 し現 在 も治 療 を 行 っ て い る別 の 本 症 患 児 も知 能 障 害 を 有 した ま ま で あ る。 更 に 、本 症 が 極 め て 希 な疾 患 で あ る こ とか ら 、療 育 上 の問 題 を克 服 す るた め の 当 事 者 間 で の経 験 の交 流 も少 な い 。

それ 故 、 我hは 新 しい マ スス ク リー ニ ソ グの試 み の 中 で 本 症 患 者 を 我 が 国 で初 め て 見 い だ し治 療 を 行 った が 、 医 療 者 に と って も患 者 とそ の 家 族 に と って も不 確 定 要 素 を抱 え た 取 り組 み で あ った 。 また 、 本 症 が遺 伝 性 の疾 患 であ る こ とも 、療 育 にあ た って は 重 要 な 要 素 と して 扱 う必 要 が あ った 。 しか しな が ら 、 本 症 治 療 の 有 効 性 の 根 拠 と して 、類 似 の 有 機 酸 代 謝 異 常 症 の 出 生 前 診 断 例 で の 早 期 治 療 の経 験(3)があ り、食 事 療 法 に つ い て は フ ェ ニ ル ケ トソ尿 症 で の 治 療 経 験 の積 み 重 ね が あ る 。 本 症 患 者 の 療 育 に あ た っ て は 、 こ の よ うな 成 功 例 を 全 面 に 出 して 家 族 へ の 説 明 を行 い 、 前 向 きに 取 り組 む こ と と した 。 具 体 的 な 食 事 メ ニ ュ ー をわ か りや す く提 示 して栄 養 指 導 を 行 っ た り、

検 査 値 の 改 善 を 平 易 に 繰 り返 し説 明 した り、 ま た 、遠 城 寺 式 乳 幼 児 分 析 的 発 達 検 査 で逐 次 順 調 な 発 達 を 確 認 す る こ とに よ り、我hの 専 門 外 来 は 家 族 の 信 頼 を 得 られ て い っ た と考 え る 。

我 々 の取 り組 み の 中 で不 足 して い た の は 、 患 者 家 族 の 療 育 へ の 取 り組 み の 評 価 に 関 して で あ ろ う。 治 療 経 過 の 中 で 、 患 児 の言 語 発 達 の 遅 れ が 明 らか に な り、母 親 が お とな しい性 格 で あ り患 児 へ の 声 掛 け が 不 足 して い た こ と もそ の 背 景 に あ った もの と考 え られ 、積 極的 な声掛 け指導 とい う 面 で の 対 応 が 後 手 に な った 可 能 性 もあ る 。 近 年 、核 家 族 化 が 進 行 し、育 児 不 安 の 問 題 が 多 く取 り 上 げ られ る よ うに な って きて お り、 この よ うな 問 題 に 対 処 す るた め の評 価 法 の 検 討 が な され て い る(6)。母 親 の 評 価 に つ い て は 、 こ の よ うな 尺 度 を 用 い て早 期 に 行 っ て お くべ き と考 え られ た 。

一 方、慢 性 疾 患 患 者 の 治 療 効 果 を 高 め る た め に セ ル フ ケ ア 行 動 カ ウ ンセ リ ソ グの 重 要 性 が 指 摘 され て い る(7>。本 症 の よ うな遺 伝 性 の 慢 性 疾 患 で は 、 小 児 期 に は 患 者 自身 の セ ル フケ アで は な く、

両 親 や 家 族 が 治 療 を 支aZ..るこ とに な る 。 最 初 に 家 族 へ の 病 名 告 知 を 行 った あ と 、家 族 の 本症 に対 す る理 解 と治 療 へ の 取 り組 み に つ い て 、 繰 り返 し確 認 す る作 業 が 必 要 で あ っ た と 思 わ れ る。 この こ とに よ って 、祖 父 母 の 遺 伝 性 疾 患 に対 す る理 解 や 父 親 の 食 事 療 法 へ の 参 加 を 進 め る こ とが 出 来 た の で は な い か と考 え られ た 。

本 症 の よ うな遺 伝 性 代 謝 異 常 症 患 児 とそ の 家 族 の 生 活 の 質 に 関 す る研 究(8)では 、 疾 患 の 重 症 度 に よ って 診 療 費 以 外 の患 者 の 介 護 に 関 わ る支 出 や 通 院 に か か る費 用 が 家 族 の 負 担 に な っ て い る こ とが 示 され て い る 。 我 々の 症 例 で は 、特 殊 な 治療 食 の 食 材 購 入 に 一 定 の 出 費 が あ る こ とが わ か っ た 。 乳 幼 児 期 で は 食 事 量 が 少 な い の で あ ま り問題 とな っ て い な い が 、 今 後 本 例 で も負 担 が 大 き く な る可 能 性 は あ り、 対 応 を 考 慮 す る必 要 が あ ろ う。 た だ し、 早 期 治 療 を 行 った 成 果 で経 済 的 に も 心 理 的 に も負 担 は 少 な くな っ て い る も の と考 え られ る 。

特 殊 外 来 で の 看 護 職 の役 割 に つ い て は 、 本 症 の 食 事 療 法 の 内 容 や 感 染 症 罹 患 時 の 問 題 に つ い て 理 解 を した 上 で 、 母 親 との 電 話 で の対 応 や 、 外 来 受 診 時 に お け る 他 の感 染 症 罹 患 児 か らの 隔 離 の 点 で の 配 慮 、 罹 病 時 の症 状 の 把 握 と医 師 との 連 携 な どで 重 要 な 役 割 を 果 た した 。 さ ら に 、 慢 性 疾 患 を有 す る 患 者 とそ の 家 族 の セ ル フ ケ ア を め ざ した 支 援 を 行 う こ と も重 要 で あ る。そ の た め に は 、

一281一

(9)

重 松 陽 介,笠 川洋 子,家 森 由香,冨 田 香,北 山富 士 子,畑 郁 江,眞 弓光文,田 中幸 枝

今 後 チ ー ム医 療 と して 、遺 伝 性 代 謝 疾 患 患 者 用 の セ ル フ ケ ア行 動 カ ウ ンセ リ ソ グの た め の 問 診 モ デ ル 作 成 が 重 要 で あ り、 看 護 職 が そ の 実 施 に お い て も中 心 的 な 役 割 を 果 た す こ とが 期 待 され る 。

ま と め

新 しい マ ス ス ク リー ニ ソ グ試 験 研 究 に よ り本 邦 で 初 め て プ ロ ピオ ソ酸 血 症 患 児 を 発 病 前 に診 断 し、新 生 児 期 か らの 早 期 治 療 を 行 い2歳 時 点 で ほ ぼ 良 好 な成 長 発 達 を 得 た 。 食 事 療 法 に お い て 必 要 カ ロ リー摂 取 量 を 確 保 す る た め に は 、特 殊 ミル クの 食 味 の 改 善 の 工 夫 な どが 必 要 で あ っ た 。 患 児 が2歳 の 時 点 で 、 そ の 治 療 効 果 や 療 育 上 の 問 題 に つ い て 、 食 事 療 法 、特 殊 外 来 通 院 、 入 院 療 法 な どの 点 で の 家 族 の 関 わ りを 含 め 再 検 討 を 行 った と こ ろ 、母 親 や そ の他 家 族 の疾 患 に 対 す る理 解 や 関 与 の 仕 方 を確 認 す る作 業 が 不 足 して い た こ とが 明 確 とな っ た 。 この よ うな 作 業 を ふ ま え た セ ル フ ケ ア へ の 支 援 の 取 り組 み に お い て 、 チ ー ム医 療 の 中 で 看 護 職 の 果 た す 役 割 が 大 きい と考 え ら れ た 。 今 後 マ ス ス ク リー ニ ソ グ地 域 が 拡 大 され 、多 くの患 者 が 発 見 さ れ る よ うに な れ ぽ 、 これ ら の 経 験 を 生 か して さ らに 早 期 発 見 早 期 治 療 の有 用 性 を 示 して い きた い 。

文 献

1)重 松 陽 介,布 瀬 光 子,畑 郁 江,員 弓 光 文,須 藤 正 克,田 中 幸 枝.ElectrosprayTandemMass

Spectrometryに よ る 有 機 酸 お よ び ア ミ ノ 酸 代 謝 異 常 症 の 新 生 児 マ ス ス ク リー ニ ン グ.日 本 マ ス ・ ス ク リ ー ニ ソ グ 学 会 誌8:13‑20,1998.

2)重 松 陽 介,畑 郁 江,藤 澤 和 郎,中 井 昭 夫,木 川 芳 春,眞 弓 光 文,田 中 幸 枝,須 藤 正 克,芳 野 信.エ レ ク ト ロ ス プ レ ー ・タ ン デ ム マ ス 質 量 分 析 法(ESI‑MS/MS)に よ る 新 生 児 マ ス ス ク リ ー ニ ン グ で 見 い だ さ れ た プ ロ ピ オ ン酸 血 症.日 本 先 天 代 謝 異 常 学 会 雑 誌.14:221,1998.

3)重 松 陽 介.有 機 酸 代 謝 異 常 症.小 児 神 経 学 の 進 歩(第23集),診 断 と 治 療 社.11‑21.1994.

4}Shigematsu,Y.,Hata,1.,Kikawa,Y.,Mayumi,M.,Tanaka,Y.,Sudo,M.,Kado,N.:

Modificationsinelectrospraytandemmassspectrometryforaneonatal‑screeningpilotstudy inJapan.JChromatogrB.731:97‑103,1999.

5)重 松 陽 介:期 待 さ れ る 開 発 途 上 の 診 断 法 ・治 療 法:TandemmassspectrometerỲよ る ア ミ ノ 酸 お よ び 有 機 酸 代 謝 異 常 症 の ス ク リ ー ニ ソ グ.小 児 科.40:1233‑1237,1999,

6)吉 田 弘 道,山 中 龍 宏,巷 野 悟 郎,太 田 百 合 子,中 村 孝,山 口規 容 子,牛 島 廣 治.育 児 不 安 ス ク リ ー ニ ン グ 尺 度 の 作 成 に 関 す る 研 究 一1・2ヶ 月 児 の 母 親 用 試 用 モ デ ル の 検 討.小 児 保 健 研 究.58:697‑704, 1999.

7)宗 像 恒 次.患 者 の 行 動 科 学 一 「自 己 決 定 」 医 療 の 進 め 方.メ デ ィ カ ル リ ス ク マ ネ ジ メ ソ ト,42:36‑39, 1991.

8)高 柳 正 樹 三 笠 洋 明,久 繁 哲 徳.有 機 酸 血 症 、 高 ア ン モ ニ ア 血 症 患 児 の 生 活 の 質 と 負 担 に つ い て の 調 査.

日 本 マ ス ・ス ク リ ー ニ ン グ 学 会 誌8:82,1998.

参照

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