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2.1 溶液に対する水の置換が及ぼす影響(実験1)

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(1)

論文 アルカリシリカ溶液の濃度が高炉スラグ使用ジオポリマーの物性に 与える影響

坪内 徹朗*1・市川 敬悟*2・三島 直生*3・畑中 重光*4

要旨:本報ではジオポリマーの現場での使用を目指し,粉体として高炉スラグを用いたジオポリマーの基本 的物性を調べた。また,コスト面および環境負荷面で影響の大きい水ガラスの量を減らすことを目的として,

水ガラスの一部を水で置換した場合の物性に与える影響について検討するとともに,凝結遅延剤の適用性に ついても検討した。その結果,多量の水で置換する場合,急結するおそれが高くなるとともに,圧縮強度が 低下すること,凝結遅延剤においてはグルコン酸ナトリウムおよびL-酒石酸ナトリウムはいずれも凝結遅延 効果を持つこと,後者は強度発現性において前者に優れていることを確認した。

キーワード:ジオポリマー,高炉スラグ,水ガラス,水酸化ナトリウム,コスト,凝結遅延剤

1.

はじめに

コンクリート構造物に使用されるセメントは,その製 造工程において地球温暖化の一因とされるCO2ガスを大 量に排出するため,セメントの使用量削減に向けた早急 な対策が望まれている。最近では,このCO2ガスの排出 量を低減するために,セメント代替材料としてジオポリ マーの利用が期待されている。

ジオポリマーとは一般にアルカリシリカ溶液とアルミ ニウムシリケート粉末との反応によって得られる非晶質 の重縮合体であり,粉体としてフライアッシュを主とす

るもの1)~3)が多いが,本研究では現場での使用を目指し,

常温養生で高強度な硬化体が得られやすい高炉スラグ微 粉末を使用し,流動性や凝結時間から実用化にむけての 可能性を探るため,以下のシリーズの実験を行う。

実験1では,コスト削減効果を狙って,水ガラス水溶液 の一部を水で置換した時の圧縮強度に与える影響を明確 にする。

実験2では,多量の水で置換した際に認められる急結に 対する,凝結遅延剤の急結防止効果を把握する。

2. 実験概要

2.1 溶液に対する水の置換が及ぼす影響(実験1)

(1)要因と水準

表-1に,実験1の要因と水準を示す。要因として,溶 液に対する水の容積置換率(以下,

v

w),溶液/粉体質量 比(以下,

W/P)

,水酸化ナトリウム水溶液(以下,

NH)

の使用の有無,および溶液に用いる水の違いを取り上げ た。ここで,溶液とは水ガラス2号の原液(以下,WG)

に水を加えたもの,または,WGにNHと水を加えたもの を指す。なお、厳密にはW/Pはvwによって変化するが、

ここではvwの要因の影響を明確にするために、vw

=0%を

基準として粉体量および溶液の合計容積を固定し、溶液 の内割で水に置換することとした。

(2)使用材料

表-2に,実験1の使用材料を示す。粉体としては,高 炉スラグ微粉末の二水石こうが添加されていないもの

(以下,BS)を使用した。溶液としては水ガラス2号の 原液(WG)および10mol/Lの水酸化ナトリウム(NH)

を使用した。また,溶液に加える水は水道水(以下,

Wa)

のほか,蒸留水(以下,DWa)も使用した。

(3)調合および練混ぜ方法

表-3に本実験で使用したジオポリマーの調合表を示 す 。

WG+Wa+NH

の 溶 液 は

WG

NH

の 質 量 比 が

WG:NH=2:1となるように混合した。練混ぜにはモルタル

用ハンドミキサーを使用し,60秒間練り混ぜ,30秒間か き落としをした後,さらに90秒間練り混ぜた。

*1

三重大学大学院 工学研究科建築学専攻 大学院生 (学生会員)

*2 三重大学大学院 工学研究科建築学専攻 修了生 (正会員)

*3

三重大学大学院 工学研究科建築学専攻准教授 博士(工学) (正会員)

*4

三重大学大学院 工学研究科建築学専攻教授 工博 (正会員)

要因 水準

vw(%)*1 0,25,50,75 溶液/粉体質量比(W/P) 0.50,0.55,0.60

NHの添加 あり、なし

使用する水 水道水、蒸留水

【注】 *1 vw:溶液に対する水の容積置換率 表-1 要因と水準(実験 1)

vw vWa

vWG+vWa+vNH

×

100[%]

表-2 使用材料(実験 1)

種類 材料名 略号 密度

(g/cm3) 粉体 高炉スラグ微粉末(石こう添加なし) BS 2.91

水ガラス2号

(Na2O/SiO2モル比:2.5)

(Na2O:28%,SiO2:12%,水:60%)*1

WG 1.45 水酸化ナトリウム水溶液(10mol/L) NH 1.35 【注】 *1:水ガラス2号における質量割合

溶液

コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1,2016

(2)

要因 水準

NHの添加 あり、なし

遅延剤の種類 3種

Re/P(%)*1 0,1,3,5

【注】 *1 Re/P:凝結遅延剤の添加率(粉体質量比)

(4)実験方法

練混ぜ直後の試料に対してフロー値の測定を行った。

フロー値は,

JIS R 5201

「セメントの物理試験方法」のモ ルタルフロー試験に準拠して測定した。また,材齢28日 後に圧縮強度試験を行った。養生は20℃,

60%RHの条件

下で所定の材齢まで型枠内での封かん養生とし,供試体 はφ50×100mmの円柱試験体を各調合3本ずつ作製した。

2.2

水の置換による急結への凝結遅延剤の効果(実験2)

(1)要因と水準

表-4に要因と水準を示す。要因としてはNHの使用の 有無,遅延剤の種類の違い,遅延剤の添加率(以下,

Re/P)

を取り上げた。なお,

Re/Pは粉体に対する質量比とした。

(2)使用材料

実験2においては粉体,溶液ともに実験1と同様のもの を使用している。溶液に置換する水はWaを用いた。

表-5に使用した凝結遅延剤を示す。凝結遅延剤はジ オポリマーに適用実績3)のあるグルコン酸ナトリウム

(以下,GNA),L-酒石酸ナトリウム(以下,LST),そ してセメントに添加されている二水石こう(硫酸カルシ ウム二水和物)(以下,CSD)を用いた。

表-6に調合表を示す。実験1において急結が認められ たW/P=0.5,vw

=75%の調合を用いた。なお,溶液におけ

るWGとNHの比率および練混ぜの方法は実験1と同様で ある。

(3)実験方法

フレッシュ性状の経時変化をみるため,

JIS R 5201

「セ メントの物理試験方法」のモルタルフロー試験に準拠し て,フロー値を練混ぜ後から30分ごとに2時間後まで計測 した。凝結時間はプロクター貫入抵抗試験により計測し た。プロクター貫入抵抗試験は断面積が25mm2の針を使 用し,容器はφ123×104mmのプラスチック製円筒容器 を使用した。供試体は実験1と同様の条件下で養生し,材 齢28日 後 に 圧 縮 試 験 を 行 っ た 。 ま た , 供 試 体 に は

φ50×100mmの円柱試験体を各調合3本ずつ使用した。

3.

実験結果および考察

3.1

溶液に対する水の置換の影響(実験1)

3.1.1

ペーストフロー値

図-1に溶液/粉体比(W/P)がフロー値に及ぼす影響 を,図-2に水の容積置換率(vw)がフロー値に及ぼす影 響を示す。ここで,フロー値がフローテーブルの直径の

300mmを超える場合,全てフロー値を300mmとして表示

している。

(1)溶液:WG+Waシリーズ

図-1(a)によれば,W/Pが増加すると,フロー値も 同様に増加する傾向にあった。vwに着目すると,25%,

50%が0%を概ね上回る結果となっている。なお,W/Pに

関わらず,

v

wが50%以上のものは急結が認められたため,

原因を探る目的で,使用する水を水道水から蒸留水に変 更したものをWG+DWaシリーズとして検討した。

(2)溶液:WG+DWaシリーズ

図-1(b)より,W/Pが増加すると,フロー値も増加 する傾向にあり,フロー値はWG+Waシリーズの結果と ほぼ同等であった。

v

wが50%以上のものはWG+Waシリー

表-4 要因と水準(実験 2)

表-5 使用した凝結遅延剤(実験 2)

表-6 調合表(実験 2)

凝結遅延剤の名称 略号 密度(g/cm3)

グルコン酸ナトリウム GNA 1.80

L-酒石酸ナトリウム LST 1.78 二水石こう

(硫酸カルシウム二水和物) CSD 2.32

表-3 調合表(実験 1)

BS WG W NH GNA LST CSD 0

15 0 0 0 15 0 0 0 15 44 0 0

0 44 0 0 0 44 73 0 0

0 73 0 0 0 73 0

14 0 0 0 14 0 0 0 14 43 0 0

0 43 0 0 0 43 72 0 0

0 72 0 0 0 72 【注】 *1 Re/P:凝結遅延剤の添加率(粉体質量比)

WG+W+NH

0 0

3

5

0.5 75 1435 120 380 60 1

凝結遅延剤

75

0.5 1452 182 376 0

単位量(g/L)

3

5 溶液の種類 W/P vw

(%) Re/P*1)

(%)

1 WG+W

BS WG Wa NH

0 1452 726 0

25 1452 545 125

50 1452 363 250

75 1452 182 376

0 1383 761 0

25 1383 571 131

50 1383 380 262

75 1383 190 394

0 1320 792 0

25 1320 594 137

50 1320 396 273

75 1320 198 410

0 1435 478 0 239

25 1435 359 127 179

50 1435 239 253 120

75 1435 120 380 60

0 1366 501 0 250

25 1366 376 133 188

50 1366 250 265 125

75 1366 125 398 63

0 1303 521 0 261

25 1303 391 138 195

50 1303 261 276 130

75 1303 130 414 65

【注】*1 DWaを用いたシリーズも同様の調合である WG+Wa+NH

0.55

0.6

0.5

0.55

0.6 W/P vw

(%)

単位量(g/L)

溶液

0.5

WG+Wa*1 0

(3)

ズと同様に急結が認められたため,水道水の使用が急結 を引き起こす要因となっているわけではないと言える。

(3)溶液:WG+Wa+NHシリーズ

図-1(c)によれば,他の溶液に比べてフロー値が大 きく,

W/P=0.55以上のものはいずれも300mmを超えてい

た。このことから,

NHの添加によりフロー値が大きくな

ることが分かった。なお,このシリーズにおいてもvwが

50%以上のもので急結したものがあった。

(4)vwがフロー値に与える影響

図-2によれば,全てのグラフに共通してvw

=25%まで

はフロー値が増加傾向にあるが,その後のフロー値の増 減にはばらつきがある。原因として,急結のタイミング の違いがフロー試験結果に影響したと考えられる。

3.1.2 圧縮試験結果

図-3に溶液/粉体比(W/P)が圧縮強度に及ぼす影響 を,図-4に水の容積置換率(vw)が圧縮強度に及ぼす影 響を示す。

(1)溶液:WG+Waシリーズ

図-3(a)からわかるように,

v

w

=0%を除いてW/P=0.55

までは圧縮強度が増加する傾向にあるが,それ以降は低 下する傾向が見られた。

v

wに着目すると,0%および25%

はいずれも150N/mm2前後,50%においては120N/mm2前 後の圧縮強度を示すことがわかった。75%においては

W/P=0.5, 0.55の場合で70 N/mm

2を越える圧縮強度を持つ が,

W/P=0.6の場合においては60N/mm

2よりも小さい圧縮 強度となっている。これらより,vwが25%程度の場合は 強度に大きな影響を与えることはないが,vwが50%以上 の場合は強度が低下するため,多量の水でWGを置換す ると強度が低下すると言える。なお,

v

w

=75%の供試体に

おいては全ての供試体の中~上部に収縮によると思われ るひび割れが入っており,多量の水でWGを置換するこ とがひび割れを起こす原因となると考えられる。

(2)溶液:WG+DWaシリーズ

図-3(b)についてはW/P=0.5,vw

=75%の供試体は急

結により作製することができなかったため,本図には記 載していない。このシリーズにおいてはW/Pと圧縮強度 との関係にはかなりばらつきがあった。前述のWG+Wa シリーズと比較して,強度に大きな差異はないため,加 える水を水道水から蒸留水に置き換えることによる強度 への影響はあまりないと言える。このシリーズも同様に

v

w

=75%の供試体にひび割れが見られた。

(3)溶液:WG+Wa+NHシリーズ

図-3(c)からわかるように,W/Pの増減と圧縮強度 の高低には明確な関係が認めらなかった。図-4より,

NH

の添加がないシリーズと比較すると,W/P=0.5を除き,

v

w

=50%まではNHを加えることで圧縮強度が高くなって

0 50 100 150 200 250 300

0.50 0.55 0.60

フロー値(mm)

W/P

=0% =25%

=50% =75%

0 50 100 150 200 250 300

0.50 0.55 0.60

フロー値(mm)

W/P

=0% =25%

=50% =75%

0 50 100 150 200 250 300

0.50 0.55 0.60

フロー値(mm)

W/P

=0% =25%

=50% =75%

(a)溶液:WG+Wa (b)溶液:WG+DWa (c)溶液:WG+Wa+NH 図-1 溶液/粉体比(W/P)がフロー値に及ぼす影響

vw

vw

vw

vw vw

vw vw

vw vw

vw vw

vw

0 50 100 150 200 250 300

0 25 50 75

フロー値(mm)

v

w

(%)

WG+Wa WG+Dwa WG+Wa+NH

0 50 100 150 200 250 300

0 25 50 75

フロー値(mm)

v

w

(%)

WG+Wa WG+Dwa WG+Wa+NH

0 50 100 150 200 250 300

0 25 50 75

フロー値(mm)

v

w

(%)

WG+Wa WG+Dwa WG+Wa+NH

(a)W/P=0.5 (b)W/P=0.55 (c)W/P=0.6 図-2 水の容積置換率(vw)がフロー値に及ぼす影響

(4)

おり,NHの添加は水の容積置換率が低い場合において,

強度発現に寄与していると言える。

このシリーズにおいては水で置換することによるひび 割れは見られなかった。

3.2 水の置換による急結への凝結遅延剤の効果(実験2)

3.2.1 ペーストフロー値

(1)溶液:WG+Waシリーズ

このシリーズにおいて,CSDを加えた調合は,急結に より練り混ぜることができなかった。図-5に添加率

(Re/P)がフロー値に及ぼす影響を示す。いずれの調合 も急結によりフロー値の経時変化を見ることができなか ったため,練混ぜ直後のフロー値のみを示す。これによ ると,GNAを用いた場合,Re/Pの増加とともにフロー値 が増加する傾向にあるが,それほど大きな影響はないと 言える。LSTの添加はフロー値には影響がないことがわ かった。

(2)溶液:WG+Wa+NHシリーズ

図-6に,各遅延剤の添加率(Re/P)がフロー値に及ぼ す影響を示す。練混ぜ直後のフロー値はNHを添加するこ とで全体的に大きくなった。またフロー値は,

GNA, LST,

CSD,無添加の順に大きく,凝結遅延剤による流動性の

向上が見られた。練混ぜ直後はおおむね各凝結遅延剤の 添加率とフロー値の間に相関がみられるが,練混ぜから

30分後以降はいずれも150mm前後のフロー値であった。

3.2.2 プロクター貫入抵抗試験結果

(1)溶液:WG+Waシリーズ

図-7に,凝結遅延剤の添加が凝結時間に及ぼす影響 を示す。図からわかるように,いずれも2時間後には始発 の貫入抵抗値に達したが,24時間後に終結に達したもの は無添加のものとLSTの添加率が3%のものであった。無 添加のものと比較すると,どちらの凝結遅延剤も遅延効 果があるが,効果にはばらつきがあった。

(2)溶液:WG+Wa+NHシリーズ

図-8に,凝結遅延剤の添加が凝結時間に及ぼす影響 を示す。これによると,いずれも5時間後には始発を迎え ていた。24時間後に終結を迎えたものは無添加のものと

CSDを添加したものであり,GNAおよびLSTは,無添加

のものと比較すると凝結の遅延効果を持つことは明らか

(a)W/P=0.5 (b) W/P=0.55 (c) W/P=0.6 図-4 水の容積置換率(vw)が圧縮強度に及ぼす影響

0 30 60 90 120 150 180

0.50 0.55 0.60

圧縮強度(N/mm2)

W/P

=0% =25%

=50% =75%

0 30 60 90 120 150 180

0.50 0.55 0.60

圧縮強度(N/mm2)

W/P

=0% =25%

=50% =75%

0 30 60 90 120 150 180

0.50 0.55 0.60

圧縮強度(N/mm2)

W/P

=0% =25%

=50% =75%

(a)WG+Waシリーズ (b) WG+DWaシリーズ (c) WG+Wa+NHシリーズ 図-3 溶液/粉体比(W/P)が圧縮強度に及ぼす影響

vw vw

vw vw

vw

vw

vw

vw

vw

vw

vw

vw

0 30 60 90 120 150 180

0 25 50 75

圧縮強度(N/mm2)

v

w

(%)

WG+Wa WG+Dwa WG+Wa+NH

0 30 60 90 120 150 180

0 25 50 75

圧縮強度(N/mm2)

v

w

(%)

WG+Wa WG+Dwa WG+Wa+NH

0 30 60 90 120 150 180

0 25 50 75

圧縮強度(N/mm2)

v

w

(%)

WG+Wa WG+Dwa WG+Wa+NH

0 50 100 150

0 1 2 3 4 5

フロー値(mm)

Re/P(%)

無添加 GNA LST (CSD:練混ぜ不可)

図-5 添加率がフロー値に及ぼす影響(WG+Wa シリーズ)

(5)

であったが,24時間後においても終結に達しなかった。

図-8(c)より,CSDは添加率の増加とともに凝結時間 が早くなっており,CSDには凝結を早める効果があると 言える。このシリーズにおいては,無添加およびいずれ の凝結遅延剤を添加したものもWG+Waシリーズの結果 と比較すると凝結時間が長いため,

NHには凝結遅延を助

長する効果があると考えられる。

3.2.3 圧縮試験結果

(1)溶液:WG+Waシリーズ

図-9(a)に各凝結遅延剤の添加率(Re/P)が圧縮強 度に及ぼす影響を示す。なお,GNAのRe/P=3%の供試体 は研磨時に2本破損したため,1本の結果である。LSTお よびGNAはともにRe/P=3%においては激しい強度の低 下が見られたが,それ以降は横ばいであった。文献3)

よると,GNAよりLSTのほうが強度発現性に優れている とされており,本実験でも同様の結果が得られた。

(2)溶液:WG+Wa+NHシリーズ

図-9(b)に各凝結遅延剤のRe/Pが圧縮強度に及ぼす 影響を示す。Re/P=3%のGNAは研磨時に供試体の全数が 破損したため,圧縮強度を0としている。これより,

Re/P=1%においてはいずれも無添加の圧縮強度を上回っ

ており,LST, CSD ,GNAの順に高かった。Re/P=3%

においては同様の順位で若干の強度低下が認められた。

Re/P=5%においてはいずれもRe/P=3%の時の圧縮強度よ

り若干の増加が見られた。文献3)およびWG+Waシリーズ と同様に,GNAよりもLSTのほうが強度発現性において 優れていた。また,CSDは無添加とほぼ変わらない強度 であった。

0 7 14 21 28 35 42

0 4 8 12 16 20 24

貫入抵抗値(N/mm2)

経過時間(h)

無添加 GNA 1%

GNA 3% GNA 5%

終結 (28.0 N/mm

2

)

始発 (3.5 N/mm

2

)

0 7 14 21 28 35 42

0 4 8 12 16 20 24

貫入抵抗値(N/mm2)

経過時間(h) 無添加 LST 1%

LST 3% LST 5%

終結 (28.0 N/mm

2

)

始発 (3.5 N/mm

2

)

0

50 100 150 200 250 300

0 1 2

フロー値(mm)

経過時間(h) 無添加 GNA 1%

GNA 3% GNA 5%

0 50 100 150 200 250 300

0 1 2

フロー値(mm)

経過時間(h) 無添加 LST 1%

LST 3% LST 5%

0 50 100 150 200 250 300

0 1 2

フロー値(mm)

経過時間(h) 無添加 CSD 1%

CSD 3% CSD 5%

0 7 14 21 28 35 42

0 4 8 12 16 20 24

貫入抵抗値(N/mm2)

経過時間(h)

無添加 CSD 1%

CSD 3% CSD 5%

終結 (28.0 N/mm

2

)

始発 (3.5 N/mm

2

) 0

7 14 21 28 35 42

0 4 8 12 16 20 24

貫入抵抗値(N/mm2)

経過時間(h)

無添加 GNA 1%

GNA 3% GNA 5%

終結 (28.0 N/mm

2

)

始発 (3.5 N/mm

2

) 0 7 14 21 28 35 42

0 4 8 12 16 20 24

貫入抵抗値(N/mm2)

経過時間(h)

無添加 LST 1%

LST 3% LST 5%

終結 (28.0 N/mm

2

)

始発 (3.5 N/mm

2

)

(a)GNA (b)LST (c)CSD 図-6 各遅延剤の添加率がフロー値に及ぼす影響(WG+Wa+NH シリーズ)

(a)GNA (b)LST 図-7 凝結遅延剤の添加が凝結時間に及ぼす影響(WG+Wa シリーズ)

(a)GNA (b)LST (c)CSD 図-8 凝結遅延剤の添加が凝結時間に及ぼす影響(WG+Wa+NH シリーズ)

(6)

4.

材料価格について

実験1はコスト,環境負荷の低減を図って水ガラスの 量を減らし,物性を確かめた。それによって得られた結 果を使用し,図-10に圧縮強度40~60 N/mm2レベルの1L 当たりにかかるコストの比較を示す。

BSおよび普通セメ

ント(以下,OPC)は建設物価2015年10月号より,WG とNHは工業用に販売される標準的な価格を使用してい る。

OPCの圧縮強度とW/Cとの関係は文献

4)より引用し,

実験1の結果は,文献4)の値になるべく近いものを使用し た。図-10より,ペースト製造時の材料価格としては,

高炉スラグを用いたジオポリマーはOPCに比べ2~3倍と なることがわかった。また,ジオポリマーはNHが添加さ れているものの方が,されていないものに比べわずかな がら価格が高くなることがわかった。

5.

まとめ

本研究では,高炉スラグを使用したジオポリマーの基 本物性を調べるため,アルカリシリカ溶液の一部を水で 置換する実験,および,その際に引き起こされる急結防 止のために凝結遅延剤を添加する実験を行い,以下の知 見を得た。

1)フロー値は溶液/粉体比が増加するに従って増加する。

また,水酸化ナトリウムを添加するとフロー値が増加 するとともに,可使時間も長くなる。

2)溶液に対する水の容積置換率が50%以上となると,急 結および養生中のひび割れを招くおそれがある。

3)圧縮強度は多量の水で水ガラス水溶液を置換すると低 下する。

4)グルコン酸ナトリウムは凝結遅延効果を持つが,圧縮 強度の低下が激しい。

5)L-酒石酸ナトリウムは凝結遅延効果を持つが,圧縮強 度への影響にはばらつきがある。

6)二水石こうは凝結を早める効果を持つが,圧縮強度へ の影響は比較的小さい。

7)ジオポリマーペーストは普通セメントペーストと比較 すると同一強度レベルでは材料価格が2~3倍と高い。

ジオポリマーの研究は進みつつあるものの,化学反応 のメカニズムや化学混和剤の作用機構などに関しては不 明な点が多く、それらの解明を今後の課題としたい。

謝辞

本実験で使用した高炉スラグ微粉末およびL-酒石酸ナ トリウムは,それぞれ日鉄住金高炉セメント株式会社お よび李柱国先生(山口大学大学院),東邦化学工業株式会 社より提供していただいた。また,凝結遅延剤に関する 助言を上原元樹氏(鉄道総合技術研究所)に頂いた。本 研究の一部は,科学研究費補助金,挑戦的萌芽研究(代 表者:畑中重光)によった。付記して謝意を表する。

参考文献

1)市川敬悟ほか:ジオポリマーペーストのフロー値に関 する基礎的研究,日本建築学会大会学術講演梗概集

(関東),pp.33-34,2015.9

2)南浩輔,松井卓,舟橋政司:ジオポリマー硬化体の諸 物性に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文 集,vol.35,No.1,pp.1957-1962,2013

3)岡田朋久,菅彰,橋爪進,李柱国,:ジオポリマーに 適用する凝結遅延剤に関する研究,コンクリート工学 年次論文集,vol.37,No.1,2015

4)三島直生,畑中重光,Thanudkij CHAREERAT,湯浅幸 久:セメントペーストの圧縮強度及び弾性係数に及ぼ す細孔構造の影響に関する基礎的研究,第56回セメン ト技術大会講演要旨,pp.36-37,2002

0 10 20 30 40 50 60

40~60

コスト(yen/L) OPC W/C=0.5

WG+Wa W/P=0.6 =75%

WG+Wa+NH W/P=0.5 =75%

材料名 yen/kg

BS 8

WG 65

OPC 10.5 NH 750 vw

vw

図-10 コストの比較(圧縮強度 40~60N/mm2

0

10 20 30 40 50 60 70 80

0 1 2 3 4 5

圧縮強度(N/mm2)

Re/P(%)

無添加 GNA LST

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0 1 2 3 4 5

圧縮強度(N/mm2)

Re/P(%)

無添加 GNA LST CSD

(a)WG+Wa シリーズ

(b)WG+Wa+NH シリーズ

図-9 凝結遅延剤の添加が圧縮強度に及ぼす影響

参照

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