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レンガの凍結融解に伴って発生する AE の詳細な分析

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Academic year: 2022

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レンガの凍結融解に伴って発生する AE の詳細な分析

北見工業大学大学院 ○学生員 宮川郁朗

北見工業大学 正会員 中村 大,川口貴之,山下 聡,川尻峻三

1. はじめに

寒冷地でレンガを建設材料として用いる場合,必ず凍害という問題が 付きまとう.写真-1は凍害で発生したレンガのひび割れの一例である.

中村らは現地調査と曝露実験1),室内再現実験2), 3)を行って,レンガの ひび割れ発生メカニズムを明らかにした.図-1 は中村らが提案したレ ンガのひび割れ発生メカニズムを,花壇のレンガを例に模式的に示した ものである.晩冬,夜間の寒気によって深部まで凍結していたレンガは,

日中の日差しや暖気によって表面から融解していく.ただし,晩冬の日 差しは弱いため,レンガは上部しか融解しない.この状態で夜を迎える と,日中に発生した融解部分は寒気によって閉じ込められるように再凍 結することとなる.この時,レンガ上部の水分が閉塞するように凍結す ることで内部圧力が高まり,レンガにひび割れが発生する.中村らは上 記の凍結融解現象を,閉塞型の凍結融解現象と定義した.本研究ではこ れまでの研究をさらに進め,AE計測システムとX線CTスキャンを用 いて,レンガの凍結によるひび割れ発生メカニズムの詳細を明らかにす ることに取り組んでいる.特に,本文ではレンガのひび割れに直結する 振幅の大きなAEが,どのようなタイミングで,何処に発生するのかに 着目して実験結果を整理した.

2. 実験概要

本研究では花壇で発生したレンガのひび割れを模擬して室内実験を 実施した.供試体には市販の普通レンガを用いたが,密度が大きく X

線の透過が困難であったため,通常の寸法の1/2(縦10cm,横5cm,厚さ3cm)にカットした.実験にはこの供試 体を飽和させて用いている.

図-2に実験装置を示す.コンテナ内に2本のレンガを設置して実験を行った.いずれのレンガも風化火山灰で埋 設して,上部が地表面から出るようにしている.レンガには4つのAEセンサと15本の温度センサを配置した.こ のような実験装置で凍結融解を行い,AE 計測システムを用いて AE 波をオシロスコープで記録する.本研究では AE波の振幅がしきい値2Vを超えた時刻をAE到達時刻としており,各センサで計測されたAE到達時刻の差から AEの発生位置を推定した.また,AE最大振幅からは破壊の規模を推測しており,本文では4つのAEセンサで計 測されたAE最大振幅の平均値が5Vを超えるAEを規模が大きいものとして扱っている.

凍結融解は上記の実験装置を恒温装置に入れて行った.まず,恒温装置の温度を-15C に設定し,レンガ全体を 凍結させる.次に,設定温度を+15Cとし,レンガの上部のみを融解させる.融解は図-2のCH8の温度センサがプ ラスとなるまで行い,これを確認した後で再凍結させた.最後に,レンガ全体の凍結を確認した後, 設定温度を

+15Cとしてレンガ全体を融解させて実験を終了させる.

3. 実験結果および考察

本研究では同条件の実験を2回実施した.ただし,このうちの1回はひび割れが発生しなかった.以降,ひび割 キーワード 土木材料,ひび割れ,凍害

連絡先 〒090-8507 北海道北見市公園町 165 番地 北見工業大学 寒地岩盤工学研究室 TEL0157-26-9539

AEセンサ×4個

風化火山灰

温度計測用 AE計測用兼

撮影用

5cm

AE CH1 AE CH2

AE CH4 AE CH3

断熱材

CH1 CH2 CH3 CH4 CH5 CH6 CH7 CH8 CH9

CH10 CH11 CH12 CH13 CH14 CH15

5cm 3cm

6cm

5cm 温度センサ×15個

レンガ供試体

図-2 実験装置 写真-1 レンガのひび割れ

図-1 ひび割れ発生メカニズム

凍結 融解

日中 融解方向

凍結 凍結方向

夜間 未凍結

0C線 地表面

土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑525‑

Ⅴ‑263

(2)

れが発生した実験をケース(a),ひび割れが発生しなかった実験をケース (b)とする.本文では主にケース(a)について詳述していく.

図-3 にケース(a)における供試体温度と AE 最大振幅の経時変化を示 す.図には,供試体中央に設置した3本の温度センサ(CH5,CH8,CH11)

の値と,4つのAEセンサで計測されたAE最大振幅の平均値を示して いる.図から,再凍結時(区間②)および再凍結後の融解時(区間④)

において,AEが集中的に発生していることが確認できる.図-4にケー ス(a)の区間②を拡大して示す.図から,再凍結開始から11 分後には,

温度センサCH5,CH8 が0C付近で一定になっていることがわかる.

両センサは約20分間一定の値を示しているが(区間⑧),この間にレン ガ上部の水分は氷へ相変化し,体積膨張によって内部圧力が高まってい ると考えられる.その後,温度センサCH5,CH8が低下し始めると(区 間⑨),AEの発生数およびAE最大振幅が増大していることが確認でき る.この時,レンガ内部ではクラックが発生し始めていると推測できる.

供試体内部温度はこの後も継続的に低下していくが(区間⑩),AEの発 生数,AE最大振幅はともに減少していることがわかる.この時点で温

度センサCH5,CH8 の温度は-5C に達しており,レンガ上部の水分は

概ね凍結し終え,新たなクラックが発生しなくなっているものと考えられる.

次に,亀裂が発生したケース(a)と亀裂が発生しなかったケース(b)の規模の 大きなAEの発生頻度に着目する.図-5に各区間におけるAE最大振幅5V以 上のAEの発生数とその発生割合を示す.図から,ケース(b)において発生した 規模の大きなAEは,ケース(a)に比べて非常に少ないことがわかる.特に,ケ ース(a)の区間②では5Vを超えるAEが399個発生しているものの,ケース(b) ではわずか66個しか発生していない.このことから,再凍結時の閉塞凍結が レンガのひび割れに大きく寄与していることが明らかとなった.また,ケース (a)の区間④では規模の大きいAEが98個発生しているものの,ケース(b)では たったの2個しか発生していない.以上のことから,再凍結後の融解時に発生 するAEは,再凍結時に発生したひび割れの閉塞が原因であると言える.

最後に,図-6 にケース(a)における実験終了後のレン ガ上部の写真とひび割れのスケッチ,X線CT画像と推 測したAE発生位置を重ね合わせた画像を示す.図から,

規模の大きなAEが密集している部分とひび割れが良い 一致を示していることが確認できる.このことから,

AEの密集している部分が,レンガにひび割れを発生さ せる内部圧力の発生源であると推測することができる.

4. まとめ

レンガが凍結融解する際に発生するAEと内部温度の変化を計測することで,再凍結時の閉塞凍結がレンガのひ び割れに大きく寄与していることが明らかとなった.また,2つのケースのAE発生挙動を詳細に分析することで,

再凍結後の融解時に発生するAEは再凍結時に発生したひび割れの閉塞が原因であるという確証を得られた.

5. 参考文献

1) 中村大ら:北海道北見市において発生した煉瓦の凍害現象,Journal of MMIJ, Vol.127, No4/5, pp.219-229, 2011 2) 中村大ら:煉瓦の凍害機構に関する検証実験,Journal of MMIJ, Vol.127, No6/7, pp.256-266, 2011

3) 中村大ら:JR北見駅駐車場レンガ壁で生じた凍害メカニズムの解明,Journal of MMIJ, Vol.132, No.1, pp.1-8, 2016 図-3 供試体温度とAE最大振幅の

経時変化

図-4 再凍結時における供試体温度 とAE最大振幅の経時変化

26.8 27 27.2 27.4 27.6 27.8 28 28.2

−15

−10

−5 0 5 10 15

0 5 10 15 20

温度CH5 CH8 CH11 AE最大振幅

温度(°C) AE最大振幅(V)

時間(hour) CH5

CH8 CH11

再凍結開始 AE急増加 AE安定 ケース(a) 亀裂発生の有無:有

温度一定

0 10 20 30 40 50 60 70

−20

−10 0 10 20

0 5 10 15 20

温度CH5 CH8 CH11 AE最大振幅

温度(°C) AE最大振幅(V)

ケース(a) 亀裂発生の有無:有

拡大

区間①

時間(hour)

図-5 規模の大きなAEの 発生数とその発生割合

0 100 200 300 400 500

0 20 40 60 80 100

0 100 200 300 400 500

0 20 40 60 80 100 ケース(a) 亀裂発生の有無:有

AE発生() 発生割合(%)

区間① 区間② 区間③ 区間④ 区間⑤

18 19.6%66

71.7%

22.2%

66.5% 0 0%

ケース(b) 亀裂発生の有無:無

AE発生数() 発生割合(%)

区間① 区間② 区間③ 区間④ 区間⑤ AE発生数 発生割合

AE発生数 発生割合 31 5.3%

399 68.8%

498.4%9816.9%

30.5%

レンガ背面の浅い位置に発生したひび割れ

実験後のレンガ上部 ひび割れのスケッチ CT画像とAE発生位 置の重ね合せ画像 ケース(a)

図-6 実験後のレンガ上部の写真とスケッチ,

X線CT 画像とAE 発生位置の重ね合せ画像 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑526‑

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参照

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