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博士(薬学)西田 満 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(薬学)西田   満 学位論文題名

TGF‑ グ およ び Wnt フ んミ リーシグナル伝達系に お け る Smad の 役 割

学位論文内容の要旨

  TGFBフ ァ ミ リ ー とWntフ ん ミ リ ー は と も に 種 々 の 生 物 の 形 態 形 成 や 器 宮 形 成、 細 胞の 増 殖・ 分化 な ど に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 知 ら れ て い る 。 こ れ ら の タ ン バ ク 質 は 細 胞 外 に 分 泌さ れ た 後 、 細 胞 膜 上 の 特 異 的 な 受 容 体 に 結 合 し 、 様 々 な 細 胞 内 伝 達 因 子 を 介 し て 核 内 に シ グ ナ ル が 伝え ら れ る 。1FIBシ グ ナ ル 因 子 で あ るSmadフ ァ ミ リ ー は 受 容 体 に よ り ル ン 酸 化 さ れ た の ち 核 移 行 し 、種 々 の 転 写 因 子 と 複 合 体 を 形 成 し 、 標 的 遺 伝 子 の 転 写 を 活 性 化 す る 。 一 方 、Wntシ グ ナ ル が 活 性 化 さ れ る とDcateninが 細 胞質 内 に蓄 積 し核 へ 移行 する 。 核移 行 したDcateninは 転写 因 子LEFl汀CFと 複合 体を 形 成 し 、 標 的 遺 伝 子 の 転 写 を 活 性 化 す る 。Wntシ グ ナ ル は ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル 胚 に お い て オ ー ガ ナ イ ザ ー 形 成 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 本 研 究 で は オ ー ガ ナ イ ザ ー 形 成 に お け るWntシ グ ナ ル 伝 達 系 の 分 子 機 構 を 検 討 し た ( 第1章 ) 。 ま た 、BMPシ グ ナ ル 伝 達 因 子Smad8の 選 択 的 ス プ ラ イ シ ン グ 産 物 を 新 た に 単 離 し 、 こ の BMPシ グ ナ ル 伝 達 系 に お け る 役 割 を 検 討 し た ( 第 2章 ) 。

1Wntシ グ ナ ル 伝 達 系 に お け るSmad4の 関 与

  Wntシ グ ナ ル は ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル 胚 に お い て 、Homeobox遺 伝 子Tween (Xtwn)の 発 現 を 直 接 誘 導 す る こ と に よ ル オ ー ガ ナ イ ザ ー 形 成 に 関 与 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 こ れ ま で の 研 究 か ら 、Xtwn遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー に はLEFlrrCF結 合 配 列 の 存 在 が 確 認 さ れ て い る が 、 詳 細 な 解 析 は さ れ て お ら ず そ の 発 現 機 構 は 明 ら か で は な い 。 そ こ でXtwnプ ロ モ ー タ ー の 様 々 な 欠 失 変 異 体 を 用 い て 、 そ れ ら の オ ー ガ ナ イ ザ ー 領 域 に お け る 活 性 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 オ ー ガ ナ イ ザ ー 領 域 に お け るXtwnの プ ロ モ ー タ ー 活 性 に は 、LEFlrrCF結 合 配 列 を 含 む 領 域 以 外 に 、さ ら にそ の5. 上流 側 領域 の関 与 が明 ら かに な った 。ま た 、 オ ー ガ ナ イ ザ ー 領 域 に お け るXtwnの プ ロ モ ー タ 一 活 性 は 不 活 性 型Smad4を 発 現 さ せ る こ と に よ り 顕 著 に 阻 害 さ れ た 。 一 方 、Smadフ ん ミ リ ー のXtwnプ ロ モ ー 夕 一 へ の 結 合 を 検 討 し た 結 果 、Smad4の 特 異 的 結 合 が 確 認 さ れ た 。 そ の 結 合 部 位 は 欠 失 変 異 体 の 解 析 に よ り 明 ら か に な っ た プ ロ モ ー タ ー 活 性 に 必 要 な 領 域 に 一 致 す る こ と か ら 、Smad4Xtwnプ ロ モ ー タ ー に 直 接 結 合 す る こ と に よ ル オ ー ガ ナ イ ザ ー 領 域 で のXtwn遺 伝 子 の 発 現 誘 導 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ た 。

  Xtwnプ ロ モ ー タ ー 内 にSmad4LEFlrr CFの 結 合 配 列 が 隣 り 合 わ せ て 存 在 す る こ と か ら 、Smad4LEFlff CFや そ の 会 合 分 子 で あ るp‑cateninと 複 合 体 を 形 成 し て い るこ とが 考 えら れ た。 そ こで 培養 細 胞 系 を 用 い て 検 討 し た と こ ろ 、Smad4LEFi‑p‑cateninの 結 合 に 加 え 、Wntシ グ ナ ル 依 存 的 な 内 在 性 の Smad4p‑cateninの 複 合 体 形 成 が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル 胚 予 定 外 胚 葉 に お い て 、 Smad4Wn【 シ グ ナ ル 依 存 的 に 核 移 行 す る こ と を 明 ら か に し た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、Smad4Wntシ グ ナ ル 依 存 的 にXLwn遺 伝 子 発 現 に 関 与 し て い る こ と が 考 え ら れ た 。

608 ‑

(2)

  Smad4

のXtwn 遺 伝子 発現へ の関与 を詳細に検討するため、すぺてのLEFl[I'CF 結合配列に変異を導入 した

Xtwn

プ口 モータ ーを用 いて、 その オーガナイザ一領域における活性を解析した。その結果、その 変異 プロモ ー夕一 はオ ーガナ イザー 領域特 異的に 活性 化され 、さらに、その活性化は内在性のWnt シ グナ ルによ るもの であ ること を明ら かにし た。し たが って、

Smad4

Xtwn

遺伝 子発現への関与はWnL シグ ナル依 存的な もの である ことが 確認さ れた。 次に 、Smad4 のLEF1 依存的な転写活性に与える影響 を検 討する ため、

LEFlfI

℃F 結合配列のみをもっプロモー夕一を用いて培養細胞系においてレポーター 解析 を行っ た。そ の結 果、Smad4 とp‑catenin は相乗的にLEF1 による転写を活性化することが明らかに なっ た。さ らに、

Xtwn

プロモー夕一の活性もLEF1 存在下においてSmad4 とD ―catenin によって相乗的に 活性 化され た。以 上の 結果か ら、Smad4 はWnt シグナルによって核移行し、

LEFlrr CF

やp‑catenin と複 合体 を形成 するこ とに よりWnt 標的 遺伝子 の転写 を協 調的に 活性化していることが示された。したが って 、これ まで′

pGF‑p

シグナルの中心的な伝達因子として位置づけられていたSmad4 が、Wnt シグナル 伝達 系にお いても 重要 な役割 を担っ ている ことが 示さ れた。

第2 章Smad8B のBMP シグナ ル伝達 系にお ける 役割

  

アフ リ カ ツメガ エルSmadl cDNA を用 いてヒ ト胎 盤cDNA ラ イブラ リーを スクリ ーニン グし た結果 、

BMP

シ グ ナ ル 因子Smad8 の 選 択 的 ス プラ イ シ ン グ 産物 を 新 た に 単離 し

Smad8B

と し た。

Smad8B

は 、

Smad8

の受容 体に よるり ン酸化 部位を 含むC 末端 の47 ア ミノ酸 を欠損 したタンバク質として発現される と予 想され た。受 容体 による

Smad

のり ン酸化 はその 活性に 不可 欠であ ること からSmad8B はSmad8 の不 活性 型であ ると考 えら れた。

Smad8

Smad8B

の転 写産 物は共 に様々 な組織 でみ られた が、その発現量 の比 は組織 によっ て異 なって いた。 このこ とから 、Smad8 とSmad8B の発現 量の バラン スが、それらの 機能 調節に 関与し てい る可能 性が示 唆され た。

  Smad8

はBMP 受 容体 で あ る

ALK2

に よりル ン酸化 された 後、

Smad4

と 結合し 核移 行する ことが 知られ て い る。 そ こで 、Smad8B と 他のSmad フんミ ルーと の相 互作用 を培養 細胞系 を用い て検 討した 結果、

Smad8B

Smad8

とSmad4 に 特 異 的 に結 合する こと が明ら かにな った。 次に、

Smad8

とSmad8B を それぞ れ 培 養細 胞 に発 現させ 、免疫 螢光法 によ り細胞 内局在 を解析 した 。その 結果、

Smad8

BMP

受容体 で あ る

ALK2

の 恒常 的 活 性 型

(CA‑ALK2)

依 存 的に 細 胞 質 か ら核 へ 移 行 し たが 、

Smad8B

CA‑ALK2

の 存 在 に 関わ ら ず細 胞質に 局在し た。こ れら の結果 より、

Smad8B

は細 胞質 でSmad8 とSmad4 に結 合する こ とに より機 能して いる と考え られた 。

  

培養 細胞系 を用 いたレ ポータ ー解析 によ り、Smad8B のBMP シグナル伝達系に与える影響を検討した。

Ga14‑Smad8

CA‑ALK2

依 存 的 に レ ポータ 一遺伝 子の転 写を 活性化 させた が、そ の活性 はSmad8B を共 発現 させる ことに より 顕著に 抑制さ れた。 ー方、

Smad8B

Ga14‑Smadl

による転写活性には全く影響を 与 え なか っ たこ とから 、Smad8B は 特異的 にSmad8 の機 能を抑 制す ること が示さ れた。 次に、

BMP

シグ ナル によっ て発現 が誘 導され ること が知ら れてい るXvent2 遺伝子 のプロモーターを用いて、そのプロ モ ー タ一 活 性 に 与 える

Smad8B

の 影 響を調 べた。 その結 果、Smad8B はCA‑ALK2 に よるXvent2 プロモ ー タ ー の活 性 化を 抑制す ること が示さ れた 。以上 の結果 からSmad8B は細 胞質でSmad8 や

Smad4

と複合 体 を 形 成し 、

Smad8

の機能 を特異 的に 抑制す ること により

BMP

標 的細 胞のシ グナル 応答性 を調 節して い るこ とが示 された 。

609

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授

教 授

助 教 授

助 教 授

有賀寛芳 上野直人

(岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所)

松本健一 松岡一郎

学 位 論 文 題 名

TGF‑ グ お よ び Wnt フ ァ ミ リ ー シ グ ナ ル 伝 達 系 に      お け る Smad の 役 割

  TGF‑p

フんミル ーとWnt フんミリーは共に初 期発生過程における最も重要 な現象のーっで ある体軸形成に関 与していることが知られて いる。体軸形成の制御機構は 種を超えて高度 に保存されており 、実験動物として主にアフ リカツメガエル(Xenopus laevis) などの両生 類を 用い た解 析 がな され てきた。その解析に より、TGF‑p フんミリーに属 する骨形成因子

(BMP)

は 中胚 葉の 腹側 因 子と して 、ま た外 胚 葉に おけ る神 経 分化 の抑 制因 子として作用 していることが明 らかにされている。また、 両生類の体軸形成にはオーガ ナイザーと呼ば れる 機能 領域 が 不可 欠で あり、このオーガナ イザ―の形成機構にはWnt シ グナル伝達系が 重要 な役 割を 果 たし てい るこ と がわ かっ てき た。

  

申 請者 はオ ー ガナ イザ ー形成におけるWnt シグナル伝達系の分子機構を 検討し、その結 果、

TGF‑p

シ グナ ル伝 達 因子Smad4 がWnt シグ ナルによる標的遺伝子の発現 誘導に重要な役 割を 担っ てい る こと を示 した 。 また 、BMP シ グナ ル伝達因子Smad8 の新規 選択的スプライ シン グ産 物Smad8B を 同定 し、それがBMP シグ ナル伝達系における新たな抑 制機構を担って い る こ と を 示 し た 。 以 下 に 本 研 究 に よ り 得 ら れ た 主 な 成 果 を 示 す 。

1

)Wnt シ グナルはアフリカツメガエ ル胚において、homeobox 遺 伝子twin (Xtwn) の発現を 直接 誘導することによルオーガナ イザー形成に関与すること が知られている。申請者は、

オ ーガ ナ イザー領域におけるXtwn の 発現誘導には、Smad4 がXtwn プロモーターに直接結合 する ことによって関与しているこ とを明らかにした。

2

) Wnt シグナルが活性化される とp‑catenin が核移行し、転写因子LEFl[rCF と複合体を形成

す るこ と によ って 標的遺伝子の転写を活性化 することが知られている。 申請者は、Smad4

がLEFlff CF やp‑catenin と複合体 を形成することを示した。 また、Smad4 はWnt シグナル依

    

一610 ‑

(4)

存的に核移行することを示した。

3

Smad4

Xtwn

遺 伝 子発 現 への関 与はWnt シ グナル 依存的 であるこ とを示 した。 また、

Smad4

とp‑catenin はLEFI によ る転写 を相乗的に活性化することを明らかにした。これらの 結果か らSmad4 はWnt シグナルによって核移行し、LEFI やp‑catenin と複合体を形成すること に よ り

Wnc

標 的 遺 伝 子 の 転 写 を 協 調 的 に 活 性 化 す る と 結 論 づ け た 。

4

) Smad8 の選択 的スプ ライシ ング産 物Smad8B を同 定した 。Smad8B はSmad フんミリーで保 存さ れてい るC 末端 部分を 欠損し たタン パク質 として 、様々な 組織に発現していることを 示し た。ま た、Smad8 とSmad8B の発 現量の 比は組 織によ って異 なっていることを示した。

5

Smad8B

はSmad8 お よびSmad4 と特異 的に複合 体を形 成する こと、 また、

BMP

刺激に 関 わら ず 細 胞 質に 局 在 す るこ と を 示 した 。

6

) Smad8B は 、BMP シ グナル によるSmad8 の活性 化と標 的遺伝子の発現誘導を特異的に抑 制 する こ と を 示し た 。 以上の 結果か らSmad8B は細 胞質で

Smad8

やSmad4 と 複合体 を形成 し、Smad8 の機能 を特異 的に抑 制する ことによ りBMP 標 的細胞のシグナル応答性を調節し ている と結論 づけた 。

  

本研 究は、こ れまで

TGF‑p

シグ ナルの 中心的 な伝達因子として位置づけられていたSmad4 が 、Wnt シ グ ナ ル伝 達 系 に おい て も重要 な役割を 担って いるこ とを明 らかに すると とも に 、Smad8 の選択 的スプ ライシ ング産 物がBMP シ グナル 伝達系 の抑制 機構を 担って いるこ とを示 したも のであ る。こ れらの 研究結 果は、本研究分野に大きく貢献するものであり、

学位論 文とし て十分 ふさわ しい内 容であ ると判 断した。

  

学位論 文とし て提出された研究結果について口頭発表させた後、研究の内容および周辺 の知識に ついて 試問を 行った 。その 結果、 申請者 の応答 はぃずれも的確であったことか ら、関連 領域に 十分な知識を有しているものと思われる。また、英語の能カに関しては、

国際 誌 に 発 表し た 論 文 から 博 士 の 学位 に 足 る 十分 な 能 カ を有 す る も のと 判 定した 。

611

参照

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