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博士(工学)西 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)西 学位論文題名

都市地下空間を活用した交通施設計画に関する研究

学位論文内容の要旨

  現在の わが国 におい て, 東京を はじめ とする 大都 市圏が かかえ ている 問題の中でも道路の交通 渋 滞や 公共交 通機関 のピー ク時 の混雑 として あらわ れてい る交 通問題 は,極めて深刻な状況にあ る 。そ の対策 にっい ては, 各方 面から 種々の 研究が 行われ てお り,計 画の段階を終え,具体的な 実 施 に ま で 進 ん で い る も の も あ る が , 全 般 的 に は 容 易 に 進 ん で い な い よ う に 思 われ る 。   本論文 は,都 市地下 空間 を有効 に活用 するこ とに よって ,これ らの深 刻な交通問題を解決する ー っの 方策を 得るこ とを目 的と して, 「都市 空間を 活用し た交 通施設 計画に関する研究」として ま とめ たもの である 。

  第1章は序 論であ り,本 研究の 目的 ,系譜 ,構成 を記し てい る。

  第2章に おいて は, 地下空 間の利 用目的 とその 変遷 ,地下 空間利 用に対 する 人間の 心理と 意識 に っい てを論 じ,そ れらを 踏ま え,都 市地下 空間を 活用し た交 通施設 計画の課題にっいて考察し て いる 。

  都市 問題 解決の 手段の ーっと して, 以下 の4っ の地 下利用 の方向 が考え られ る。@ 地下に 必ず し もあ る必要 のない 施設の 地下 化によ る地上 のスペ ースの 確保 と都市 景観向上,◎都市部での過 密 ,立 地難に よる交 通・通 信, 工ネルギ−,廃棄物搬送システムの地下化や駐車場,倉庫,工場,

レ クリ ェーシ ョン施 設等の 地下 化,◎ 防災の ための 地下空 間利 用の活 用,@気候の厳しい都市で の 地下 空間利 用や地 下空間 自体 のもつ 特性を 生かし た利用 であ る。

  更に, 地下の 交通施 設計 画を推 進していくに当たっての技術面,コスト面,心理面(ソフト面)

の3点の 課題に 対して ,最後 の心 理面, ソフト 面の問 題こ そが, 地下空 間を利 用・開 発し ていこ う とす るとき の,大 きく立 ちは だかる 問題で ある。 すなわ ち, 人間の 心理面からの拡充をどう解 決 して いくの かとい う,利 用者 の意識 まで考 えた計 画が必 要で ある。

  第3章は ,「都 区部 におけ る地下 自動車 道路建 設」 の実現 化に向 けての 課題 にっい て論じ てい る 。

(2)

  大都市都区部における交通渋滞問題,駐車場問題などの解決をめざして,地下自動車道路を建 設しようとする場合,地下空間がもつ特有の問題も含めてその課題も数多く存在すると考えられ る。そこで,第3章では,各人の考えっく問題点の列挙と点数評価,その集約・検討,一対比較 アンケート,ファジィ理論による構造決定,という一連のプ口セスからなるファジィ構造化技法 を用いてその課題の発掘,次いでそれら課題間の構造化を行うことにより,@地下といえども地 上部の土地所有者の同意が必要,◎地下道路網ネットワークの形成が不可欠,出口部分における 滞留,◎建設費が高額,改築・修繕に対する困難性,@ドライバーの心理的抵抗感,◎非常時の 安全対策特に火災発生時の安全対策,という5っの問題系に集約されることが明らかとなった。

  上記,5っの問題系に対するーっの解決策として「出口のない地下自動車道路システム」を提 案した。

  そのシステムは,都心地域の地下自動車道路の出口の代わるものが大規模地下駐車場であり,

人はそこで自動車を離れ,人のみが地上の目的地へと向う仕組となる。荷物は荷さばき場から別 の配送システムヘ積み変えられるというイメージである。

  第4章は,AHP法による歩行者の経路選択に関して論じている。

  地下歩道は地上歩道に比べて閉鎖空間であるが故に,利便性というような計量し易い要素は,

もとより必要であるが,快適性,安全性あるいは安心性というような感覚的で普通の方法では計 量し難い要素をも重視する必要があるなど歩行者経路選択意識のような複数個の計量化が難しい ものの分析にっいて,AHP法は有効な方法と考えられる。

  第4章では,札幌市都心部,特に札幌駅周辺地区における地上街路,地下通路,スカイウェイ という多様な歩行者空間を対象に,歩行者の経路選択の要因にっきアンケート調査を行い,AHP 法を用い解析した結果,計測が難しいとされる歩行者の意識にっいて,以下に示すような分析結 果を得ることができた。

  第一点は,「通勤者は到着時刻を重視しており,通勤自体に余裕のないものは,距離時間項目 を最重要視するが,余裕を持って通勤しているものは,通路の状態や,周りの環境のことを考慮 しながら経路を選択する傾向がある」という点であり,第二点は,「AHP法による要因間のウ エイト付を基に作成したモデルからみて,地下経路を選択する大きな要因としてtま,温度適当,

足元が良,信号が少の3項目である」という点である。

  第5章は,交通結節点,特に地下鉄駅を中心に発達してきた地下商店街にっいて,その発達過 程,成立条件,そして計画課題と方策にっいて論じている。

  地下商店街の発達過程としては,地下鉄駅と連結するもの,国鉄(現JR)の駅前広場の交通

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動線処理に起因するもの,駐車場整備の手段として考えられたものがある。そして近年では,そ れらに加えて,地場商業の活性化のためにという新しい要因からの発想も出現してきている。

  地下商店街の成立・不成立の最大課題であるその採算性に関して,収益の絶対額ではなく,収 益額と投資額の関係を示す収益性指数を採用し分析を進めた結果,地下商店街の経営的成立基盤 は必ずしも万全でないことが明らかにされた。

  以上述べたように,本研究では,都市地下交通施設のうち,地下自動車道路,地下歩行者道路 および地下商店街の3項目にっいて取り上げている。なぜならば,地下鉄道,地下鉄および地下 駐車場にっいてfま,施設としてかなり昔から普及をしており,現在までには研究も相当程度なさ れ,それぞれが抱える課題も解決へとむかっているに比して,本研究で取り上げる地下自動車道 路,地下歩行者道路および地下商店街にっいては,現在よりも将来にその普及が予測されるもの であり,快適で安全な施設を整備するためには,具体的に研究されねばならない重要な課題が残 されている状況にあるからである。

  地下開発利用における最大のネックは,地下空間に対する心理的不安,人間的側面をどう解消 し,市民との合意形成を得た計画的整備を推進していけるかという点である。すなわち,人間の 心理面からの拡充をどう解決していくのかという,利用者の意識まで考えた計画が必要となる。

  そのためには,課題の性格に適合する分析手法を選定し,目的に合わせた方法論を開発し,予 測することで対処することが不可欠となる。

  本研究では,地下交通施設計画のそれぞれの課題解決に当たって,上記の人間の意識面,心理 面を考慮できる分析手法を開発もしくは組み合わせることで,都市における地下利用に関して,

一っの方向性を見い出すことができたものと考える。

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

五 十嵐 三 田地 大 内 佐 藤

日出夫 利之     東 馨一

本論文は,都市の地下空間を交通空間として活用する場合,引き起こされるであろう諸問題に

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関し て,土 木計画 学及び シス テム工 学的手 法によ り研 究し, 土木工 学上の 有益な新知見と方法論 を得 たもの で,そ の内容 は6章によ って 構成さ れる。

  第1章は 序論で あり, 本研究 の目 的,既 存研究 の系譜 ,及 び本論 文の構 成にっ いて記 述し てい る 。 すな わ ち 地 下 空間 の 利 用に対 する 人間の 心理と 意識に 関する 調査 デ―夕 を整理 するこ とに よっ て,人 間が地 下空間 を利 用しよ うとす る場合 に配 慮され るべき 基本事 項を明確化し,次いで 既往 例にお ける地 下空間 の利 用の目 的とそ の変遷 を整 理検討 して, 今日我 が国において,特に注 目さ れてい る大深 度地下 空間 活用に 対する 有益な 新知 見を得 ている 。

  第2章で は,地 下空間 利用に 対す る人間 の心理 と意識 を多 数のア ンケー ト調査 結果に 基づ き,

地下 空間利 用にお いて, 負の 心理的 影響を もたら す原 因とし ては, @自然 光の不足,◎外部眺望 の困 難,◎ 密室性 及び閉 鎖性 ,.@ 方向や位置認識における混迷性などを指摘し,それらに対処す るた めのデ ザイン 上の工 夫に っいて 論及し ている 。

  第3章で は,交 通結節 点,特 に地 下鉄駅 を中心 に発達 して きた地 下商店 街にっ いて, 発達 過程 を調 査・整 理し, 成立条 件を 抽出し ,計画 課題を 明確 化し, さらに ,その 解決策にっいて論考し てい る。

  すな わち, 従来 の地下 商店街 の発達 過程は ,@ 地下鉄 駅連絡 通路と して 建築されたもの,◎国 鉄 ( 現JR)駅 前広 場 に お け る 交通 動 線 処 理 のた め に建 築さ れたも の,◎ 駐車場 整理の 手段 とし て建 築され たもの ,そし て近 年では ,@地 場商業 の活 性化の ために 建築さ れた地下商店街が現わ れて きた。

  しか し,こ れら は既成 商店街 との紛争,経営的効率性と公共性とのバランス,不特定多数の人々 に対 する安 全への 配慮, 上層 交通を 通しな がらの 地下 施工の ために 生じる 建設工事費の増嵩など に問 題があ り,経 営的な 成立 基盤は 必ずし も安定 して いない 。そこ で,こ の安定を計るために,

適当 な公共 用通路 や駐車 場な どの公 共的ス ペース を併 設する ことに よって ,公的資金を導入し,

完成 後の経 営の安 定を図 る方 策を提 案した 。

  第4章に おいて は,札 幌駅周 辺地 区にお ける地 上街路 ,地 下通路 ,及び スカイ ウェイ (計 画)

とい う構造 を異に する三 種類 の歩行 者空間 を対象 に, 歩行者 の経路 選択要 因の把握を意図したア ン ケ ート 調 査 を 行 い, こ の 結 果 をAHP法 で 分析 し て, 独創 的な歩 行者空 間経路 選択モ デル を構 築し ,多重 的歩行 者空間 の計 画に斬 新な一 手法を 提示 した。

  また ,これ らの 分析結 果から ,地下 歩行者 空間 計画に おいて 特に配 慮さ れるべき要件として次 の6項目が 指摘 された 。すな わち, @地 下に対 する心 理的恐 怖感の 除去 ,◎方 向・位 置の容 易な 確認 ,◎災 害など の非常 事態 発生時 におけ る分り 易い 避難シ ステム ,@不 健康な環境の改善,◎

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無 窓 ・ 無 音 空間 に お け る 恐怖 緩 和 , ◎ 自然 光 の 欠 如 に対 す る デ ザ イ ン上の 工夫 などで ある。

  第5章に おい ては, 地下自 動車道 路の計 画策 定に当 たり, 発生が 予想 される 問題の 発掘及 びそ れ ら問題 の構造 化に っいて 考究し ている 。

  こ こで は著者 が改良 したフ ァジ一 構造 化技法 を用い て地下 交通 空間計 画立案における基本的課 題 を 発 掘 し , そ れ ら の 課 題 を 構 造 化 し て , 次 の よ う な 問 題 系 を 明 確 化 し た 。   す なわ ち,@ 地下空 間利用 におけ る地 下地権 者の同 意取得 問題 ,◎地 上におけるのと同様に,

地 下にお いても 道路 ネット ワーク の形成 が不 可欠で あり, その出 入口に おい て過度の滞留が生じ る 問題, ◎建設 費が 莫大で 改築・ 修繕が困難な問題,@自動車ドライバーの心理的抵抗感の問題,

◎ 非常時 の安全 対策 ,特に 火災発 生時の 安全 対策の 問題な どであ る。

  こ れら の問題 系を踏 まえて 著者は ,具 体的に 東京都 区部に おけ る地下 交通輸送システム計画案 の 提 案を試 みた 。それ は部心 拠点地 区を 中心に 概ね300m‑‑ 500mの 地点 に複数 の大規 模地下 駐車 場 を設置 し,こ れら を相互 に連絡 して, 地上 道路網 と地下 道路網 は,こ れら の地下駐車場を媒介 と して連 結され ると いう新 しい重 層的な 道路 ネッ卜 ワーク である 。

  こ れを 要する に,著 者は, 都市地 下空 間を活 用した 交通施 設計 画立案 に対して有益な新知見と 有 効な方 法論を 提示 したも のであ り,土 木工 学並び にシス テ厶工 学上貢 献す るところ大なるもの が ある。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照