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博士(薬学)福田宏太郎 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(薬学)福田宏太郎 学位論文題名

ヒ ト 増 殖 細 胞 核 抗 原 ( PCNA ) の構 造 と 機能 の 解 析 学 位論文内容の要旨

  序 論 ― 増 殖 細 胞 核 抗 原 (PCNA)は 、DNA polymerase6(pol6) の 補 助 因 子 と し て 機 能 し 、 真 核 細 胞 のDNA複 製 に 必 須 な 蛋 白 質 で あ る 。 著 者 は 、 ヒ ト PCNAの 高 次 構 造 な ら び に 活 性 部 位 に 関 す る 情 報 を 得 る た め 、 蛋 白 質 工 学 的 手 法 に よ っ て 各 種 変 異 体 を 作 製 し 、 そ の 機 能 に 対 す る 影 響 を 解 析 し た 。 得 ら れ た 結 果 を 近 年 解 析 さ れ た 出 芽 酵 母PCNAの 三 次 構 造 の 情 報 と 合 わ せ て 考 察 し た 。   1 PCNA変 異 体 の 構 築 お よ び 発 現 一 構 築 し たPCNAの 変 異 体 は 、14種 類 のN

末 端 ま た | まC末端 欠失 変異 体、2. 30種類 の酸 性も し< は塩 基性 アミ ノ酸 をア ラ ニ ン に 変 換 し た 部 位 特 異 的 変 異 体 の 計34種 類 で あ る 。PCRに よ る 部 位 特 異 的 変 異 法 に よ っ て 各 種PCNA変 異 体 発 現 用 プ ラ ス ミ ド を 構 築 し 、 変 異 体 蛋 白 質 の 発 現 お よ び 精 製 を 行 っ た 。 こ の 段 階 で 、A2‑9お よ びA250‑261に お い て は 、 抽 出 液 中 に 目 的 の 蛋 白 質 が 同 定 さ れ な か っ た ( 封 入 体 の 形 成 ) 。 さ ら に 、 ゲ ル ろ 過 を 用 い た 精 製 に お い て も 他 の 変 異 体 蛋 白 質 と は そ の 溶 出 さ れ る 挙 動 が 異 な っ て い た ( 三 量 体 形 成 能 の 欠 失 ) 。 出 芽 酵 母PCNAX線 結 晶 解 析 か ら 、 欠 失 さ れ た ア ミ ノ 酸 残 基 は .ヽ リン グ構 造の 外枠 を構 成す るB― シー トの 一部 を含 んで おり 、 そ の 欠 落 が 分 子 構 造 に 影 響 を 及 ぽ し た と 考 え ら れ た 。

  2PCNA変 異 体 に よ るReplication Factorg(RFC)ATPase活 性 お よCF pol6DNA合 成 の 活 性 促 進 効 果‑ RF‑Cは 、ATP存 在 下 で プ ラ イ マ ー の3| 末 端 に 特 異 的 に 結 合 す る 複 製 蛋 白 質 の1つ で あ り 、PCNARF‑CATPase活 性 を 促 進 す る 機 能 を 持 っ て い る 。3. 末 端 に お け るRFCPCNAの 複 合 体 形 成 は 、holoenzyme 形 成 過 程 の 初 期 段 階 に お こ り 、PCNAに よ るRFCATPase活 性 促 進 の 変 動 が 、 直 接 の 相 互 作 用 を 反 映 す る こ と に な る 。pol6PCNAに よ っ て そ のprocessivity が 上 昇 す る が 、 そ の 活 性 に はPCNAの 有 す る2つ の 機 能 、1pol6PCNA間 の 直 接 の 相 互 作 用 、2 PCNADNA間 の 相 互 作 用 に 依 存 す る こ と に な る 。 そ こ で 著 者 は 精 製 し た34種 類 のP.CNA変 異 体 を 用 い 、RF‑CATPase活 性 お よ びpol6 のDNA合成の活 性促進効果について検討した。

  そ の 結 果 、A2‑9お よ びA250261に お い て は 、 両 者 の 活 性 促 進 効 果 が見 られ な か っ た 。 こ れ は 両 変 異 体 蛋 白 質 の 抽 出 や 精製 の段 階で 予想 され てい た 通り 、゛ 本 来 維 持 し て い る 高 次 構 造 が 失 わ れ た こ と が 起 因 し て い る と 考 え ら れ る 。   !:PCNAのg圭端ルー‐プとRF‑Cの相互イ´酎羽一A257−261とA254‑261におし、ては、

pol6DNA合 成 の 促 進 効 果 が 野 生 型 と 同 様 に 見 ら れ た 。 し か し 、RF‑CATPase活 性 の 促 進 効 果 に お い て は 、A257‑261が 野 生 型 と 変 わ ら な か っ た の に 対 し 、A254‑261は そ の 効 果 を 示 さ な か っ た 。 こ の こ と か ら PCNA

(2)

Lys254‑Ile255

―Glu256 のアミノ酸残基が、RF‑C のATPase 活性の促進効果に関与 していることが明らかになった。さらにこの領域について詳しく解析した結果、

255

番 目の イソ ロイ シン がこ の促 進効 果に関与していることが示唆された。こ の 領 域 は 、出 芽 酵 母

PCNA

のX 線 結晶 解析 の結 果か らル ープ とし て全 体の 構造 から 突出 して おり 、この 部分 がRF‑C と 直接 相互 作用 して いる と推 定された。

  4

ー:PCNA のりング構造の内側に位置するa ,ヘリックスとDNA の相互作用―塩 基 性ア ミノ 酸を アラニ ンに 変換 した 変異 体に つい て、

'pol6

のDNA 合 成促 進効 果について調ぺた。その結果、Lys13 、Lys14 、Lys20 、Lys77 、Lys80 、Arg146 、

Arg149

、Arg210 、Lys217 をアラニンに変換した変異体においては、野生型に対 し てほ とん どそ の活性 を失 って いた 。ま たArg64 、

Lys80

Lysll0

Lys168

Arg210

をア ラニ ンに変換した変異体においても、部分的にその活性が弱まって いた。

  

上 記 の 塩 基 性 ア ミ ノ 酸 の一 群は 、出 芽酵 母PCNA の

X

線結 晶解 析の 結果 から 判 明し たり ング 構造の 内側 のQ ーヘ リッ クス 領域に ほぼ 一致 (ocAl :

Lys13

Lys14

Lys20

aBl

Lys77

Lys80

aA2

Arg146

Arg149

aB2

Arg210

Lys217

) し て い た 。 よ っ てこ れら 塩基 性ア ミノ 酸が 、DNA と相 互作 用す るの に重要な役割を果たしていると示唆された。

  

さらにp016 によるDNA 合成反応の生成物について解析した結果、伐‐ヘリック ス 上 の 塩 基 性 ア ミノ 酸 は お も に

pol6

の 合 成 反 応 の 初 期 の 段 階 、 っ ま り

DNA clamping

活 性と して機 能す ると 考え られ た。 また、4 つのa‑ ヘリックス上の塩 基 性ア ミノ 酸を

2

箇所 同時 にア ラニ ンに 変換 した変異体について同様に解析し た 結果 、こ れら が協調 的に

DNA clamping

活性 とし て機 能し てい るこ とが 判明 した。

  

≦ :PCNA 量

pol6

の相互作用一酸性アミノ酸をアラニンに変換した変異体につ い て

pol6

DNA

合 成 促 進 効果 につ いて 調べ たと ころ 、Asp41‑ Ala とAsp122 →

Ala

変 異体 にお いて は、 野生 型に 対し て部 分的な活性の低下を示した。以上の 結 果 か ら、

Asp41

Arg64

Lysll0

Asp122

そ してLys168 が、

pol6

のDNA 合 成 促進 効果 に重 要なア ミ丿 酸と して 同定 され た。 出芽 酵母

PCNA

の三 次構 造と比 較す ると

Asp41

、Arg64 そ して

Asp122

p

‐ シート構造を連結し、かっりング構 造の 同じ 表面 から突出しているループ上に存在していた。よってこれらのアミ ノ 酸 残 基 が 、

pol6

と 直 接 相 互 作 用 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

6

. PCNA とRF ―C の相互作用―酸性アミノ酸をアラニンに変換した変異体につ い て、

RF

C

AIPase

活性 の促 進効 果に つい て調べた。Asp41 →Ala 変異体は、

野 生型 に対 して ほと んど その 活性 を失 って おり、 また

Asp97

Ala

変 異体 にお いては50 ―80 %の活性を示した。

  

出芽 酵母

PCNA

の三 次構 造上 にお ける 位置 を検討 した 結果 、Asp41 、Asp97 は

C

末端ループと同様にp ‐シート構造間を連結し、リング構造の同,じ表面から突

出 し て い る ル ー プ 上 に 存 在 し てい た。 よっ てこれ らの アミ ノ酸 残基 は、

C

端 ル ー プ と と も に

RF‑C

と 直 接 相 互 作 用 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

  

まと め―

PCNA

が特 徴的 なり ング 構造 を形 成する こと によ って 、多 彩な 機能

を も っ た 分 子 表 面 を 提 供 し て い る こ と が 明 ら か に なっ た 。 さ らに 、pol6 、

RF‑C

と とも に構 成されるholoenzyme 形成過程のメカニズム解明への糸口を見い

出した。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教 授    大 教 授    有 助教授   加 助教授   井

塚栄子 賀寛芳 藤宏幸 上英夫

学 位 論 文 題 名

ヒ ト 増 殖 細 胞 核 抗 原 ( PCNA ) の 構 造 と 機 能 の 解 析

   申請 者 は、 増殖 細 胞核 抗原 ( PCNA ) の高次 構造ならび に 活性部・位に関す る研究を行っていたが、今回蛋白質工 学 的 手法 によ っ て各 種変 異 体を 作製 し 、その機能 に対す る 影 響を 解析 し た。 得ら れ た結 果を 近 年解析され た出芽 酵 母 PCNA の 三 次 構 造 の 情 報 と 合 わ せ て 考 察 し た 。    構 築 し た PCNA の 変 異 体 は 、 1 . 4 種 類 の N 末 端 ま た は C 末 端 欠 失 変 異 体 、 2 . 36 種 類 の酸 性も し くは 塩基 性 アミ ノ 酸 をア ラニ ン に変 換し た 部位 特異 的 変異体の計 40 種 類 で あ る 。 PCR に よ る 部 位 特 異 的 変 異 法 に よ っ て 各 種 PCNA 変 異 体 発 現 用 プ ラ ス ミ ド を 構 築 し 、 変 異 体 蛋 白 質 の発現および精製を行った。

   この 段 階で 、△ 2‑9 お よび △250‑261 に おいては、抽出 液中に目的の蛋白質が同定されなかった(封入体の形成)。

さ ら に、 ゲル ろ 過を 用い た 精製 にお い ても他の変 異体蛋

白 質 とは その 溶 出さ れる 挙 動が 異な っ ていた(三 量体形

成 能 の 欠 失 ) 。 出 芽 酵 母PCNA の X 線 結晶 解 析か ら、 欠

失 さ れた アミ ノ 酸残 基は 、 リン グ構 造 の外枠を構 成する

p‑ シー ト の一 部を 含 んで おり 、 その 欠落 が分子構造に 影

(4)

響 を及ぽ した と考え られた。

PCNA 変 異 体 に よ る ReplicatlonFactorC ( RF ‐ C ) の ATPase 活 性 お よ び pol6 の DNA 合 成 の 活 性 促 進 効 果 を 調 べ た と こ ろ 、 2‑9 お よ び 250‑261 を 欠 失 し た も の は 、 両 者 の 活 性 促 進 効 果 が 見 ら れ な か っ た 。 こ れ は 両 変 異 体 蛋 白 質 の 抽 出 や 精 製 の 段 階 で 予 想 さ れ て い た 通 り 、 本 来 維 持 し て い る 高 次 構 造 が 失 わ れ た こ と が 起 因 し て い る と 考 え ら 、 れ る 。

  257‑261 と 254‑261 欠 失 体 に お い て は 、 pol6 の DNA 合 成 の 促 進 効 果 が 野 生 型 と 同 様 に 見 ら れ た 。 RF‑C の ATPase 活 性 の 促 進 は 、 257‑261 欠 失 体 が 野 生 型 と 変 わ ら な か っ た の に 対 し 、 254‑261 欠 失 体 は そ の 効 果 を 示 さ な か っ    た 。    こ の    こ    と か    ら PCNA の Lys254 ー Ile255‑Glu256 の ア ミ ノ 酸 残 基 が 、 RF‑C の ATPase 活 性 の 促 進 効 果 に 関 与 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。

   出 芽 酵 母 PCNA の X 線 結 晶 解 析 の 結 果 か ら 、 こ の 領 域 は

ル ー プ と し て 全 体 の 構 造 か ら 突 出 し て お り 、 こ の 部 分 が

RF‑C と 直 接 相 互 作 用 し て い る と 推 定 さ れ た 。

   部 位 特 異 的 変 異 体 に つ い て 、 . RF ・ C の ATPase 活 性 の 促

進 効 果 に つ い て 調 べ た 。 そ の 結 果 、 Asp41 ‑+Ala は 、 野

生 型 に 対 し て ほ と ん ど そ の 活 性 を 失 っ て お り 、 ま た

Asp97 → Ala に お い て は 50‑80 % の 活 性 を 示 し た 。

   出 芽 酵 母 PCNA の 三 次 構 造 上 に お け る 位 置 を 検 討 し た 結

果 、 Asp41 、 Asp97 は C 末 端 ル ー プ と 同 様 に p‑ シ ー ト 構

造 間 を 連 結 し 、 リ ン グ 構 造 の 同 じ 表 面 か ら 突 出 し て い る

ル ー プ 上 に 存 在 し て い た 。 よ っ て こ れ ら の ア ミ ノ 酸 残 基

は 、 C 末 端 ル ー プ と と も に RF‑C と 直 接 相 互 作 用 し て い

    ‑ 454 −

(5)

ることが示唆された。

   次に PCNA のりング 構造の内側に位置する Q ‐ヘリック スと DNA の 相互作用を調ぺるために、塩基性アミノ酸を アラ ニン に変 換し た 変異 体に つい て、 pol6 の DNA 合成 促進 効果について調べた。そ の結果、 Lys13 、 Lys14 、 Lys20 、 Lys77 、 Lys80 、 Arg146 、 Arg149 、 Arg210 、 Lys217 をアラニンに変換した変異体においては、野生型 に対してほとんどその活性を失っていた。また Lys80 、 Arg210 をアラニンに変換した変異体においても、部分的 にその活性が弱まっていた。これらの塩基性アミノ酸は、

出芽 酵母 PCNA の X 線 結晶 解析 の結 果 から 判明 したりン グ 構 造 の 内 側 の Q _ ヘ リ ッ ク ス 領 域 に ほ ぼ 一 致    ( aAl : Lys13 、 Lys14 、 Lys20 、 QBl : Lys77 、 Lys80 、 aA2 : Arg146 、 Arg149 、 aB2 : Arg210 、 Lys217 )していた。よ ってこれら塩基性アミノ酸 が、

DNA と 相互 作用 する のに 重 要な 役割 を果 た していると 示唆された。

   さら に pol6 による DNA 合成反応の生成物について解析 した 結果、 a‑ ヘリックス上の塩基性 アミノ酸はおもに pol6 の 合 成 反 応 の 初 期 の 段 階 、っ まり DNA clamping 活性として機能すると考えられた。また、4 つのa‑ ヘリッ クス上の塩基性アミノ酸を2 箇所同時にアラニンに変換し た変異体について同様に解析し、た結果、これらが協調的 にDNA clamping 活性として機能していることが判明 し た。

   上記以外の塩基性アミノ酸または、酸性アミノ酸をア

ラニ ンに 変換 した 変 異体 につ いて pol6 の DNA 合成 促進

効 果 に つ い て 調 べ た 。 そ の 結 果 、 Asp41 、 Arg64 、

    ‑ 455 −

(6)

Lysll0 、 Asp122 そ し て Lys168 が、 pol6 の DNA 合 成 促進効果に重要なアミノ酸として同定された。出芽酵母 PCNA の三 次 構 造と 比 較 する と Asp41 、 Arg64 そして Asp122 はp ‐シート構造を連結し、かっりング構造の同 じ表面から突出しているループ上に存在していた。よっ てこれらのアミノ酸残基が、pol6 と直接相互作用してい ることが示唆された。

   したがって申請者は、PCNA が特徴的なりング構造を形 成することによって、多彩な機能をもった分子表面を提 供していることを明らかにした。さらに、pol6 、RF‑C とともに構成されるholoenzyme 形成過程のメカニズム 解明への糸口を見い出した。

   この研究は博士(薬学)の学位を受けるに値するもの

と認めた。

参照

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