博 士 ( 医 学 ) 斉 藤 伸 治
学 位 論 文 題 名
Angelman 症 候 群 お よ び Prader − Willi 症 候 群 の DNA 診 断 法 開 発 と そ の 評 価
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
Angelman症 候 群 (AS) お よ びPraderーWilli症 候群 (PWS) の 原 因遺 伝 子は15qll
−q13に 近 接 し て 存 在 し 、 ゲノ ム 刷 り込 み を 受け て いる と 考 えら れ てい る 。 すな わ ち 、DNA欠 失 も し く は 片 親 性 ダ イ ソ ミ ー (UPD:相 同15番 染 色 体 両 方 が 同 一 の 親 由来 )により 父由来15qll−q13を 欠いたと きにPWS、母 由来15qll−q13を 欠レヽたとき にASを 発 症 す る 。PWSと 比 較 レ てASは 臨 床診 断 が難 し く 多数 例 に おけ る 解析 の 報 告 は 少 な い 。 ま た 、 従 来 のDNA診 断 は 主 と し て サ ザ ン 法 を 用 い た た め に 、 方 法 の 煩 雑 さ や 低 い 多 型 検 出 率 な ど の 点 で 問 題 が あ っ た 。 本 研 究 の 目的 は @AS多 数例 に お け るDNAレ ベ ル の 異 常 を 検 討 す る 。 @ASお よ びPWSに 対 す る ポ リ メ ラ ー ゼ 連 鎖 反応(PCR)を用いた簡便なDNA診断法を開発する。の2点である。
封象と方法
患 者 : AS患 者61名 ( 男28名 、 女33名 、平 均 年 齢10.2歳 ) とPWS患 者14名 (男8名 、 女6名 、 平 均 年 齢5.5歳 ) を対 象 に した 。AS患 者61名 中8名 (4家族 ) は家 族 例 で、
残り53名は散発例であり、PWS患者はすべて散発例であった。
染 色 体 分 析 : 染 色 体 高 精 度GTG分 染 法 に よ る 分 析 をASの57例(57家族 ) 中49例 、P WS14例全例に行った。
分子遺伝学的解析:
(1) サ ザ ン 解 析 :15qllーq13に マ ッ プさ れ る6種類 の ク 口ー ン 化DNAを プ ロー ブ と した(括弧内は座位): IR39 (D15S18),ML34 (D15S9),IR4 (D15Sll),TD3−21 (D15S18
),2883−H3,(GABRB3),IR10 (D15S12)。内部対照プ口ーブとして21ー4U (D21Sll0)を 用い、シグナル強度を比較してDNAコピー数を判定した。
(2) ニ塩 基 反 復多 型 (DNRP):15qll−q13にマップ される3種 の座位(D15Sll,GABR B3,D15S97)、15q13−terにマップ される2種 の座位(ACTC.D15S87)、およ びllqに
−138―
マ ッ プ さ れ るD11S527の 計6種 のDNRPを 用 い た 。PCRに て 増 幅 し 、 放 射 性同 位元 素(
RI)標識法、および非RI法にて検出、比較した。
ま盍墨
A≦患者!三壷墜墨DNA去の頻度ユ匁失蝠ユ匁去の親起源
AS患 者57例 ( 家 族 例 は1患 者 と し て 扱 っ た 。 ) 中38例 (65.5% ) にDNA欠 失 を 検 出 し た 。 散 発 例 に お け る 欠 失 幅 はD15S9−D15S12領域 の5座 位を 共通 して 含み 、数 例 で はD15S18に 及 ん で い た ( 表1) 。 家 族 例 で は1家 族 に の み 欠 失 を 認 め 、 そ の 欠 失 幅 は 小 さ くD15Sl0とGABRB3の2座 位 だ け を 含 ん で い た 。 欠 失 の 親 起 源は 判定 可能 で あ っ た26家 族 全 例 に お い て 母 由 来 で あ っ た。 欠 失 が な く か つ 家 族 検 索 の で き た 14例 す べ て にUPDは 検 出 され ず 、 そ の う ち11例 (78.6% )の15番 相同 染色 体は 両親 由来であった。
染色佳分抵結墨とDNA鰹柢結墨とQ比較
AS患 者49例中12例 (24.5% )とPWS患者14例中6例 (42. 8'X)と に染 色体 分析 結果 とDNA解析結果との不一致を認めた。
DNRPt.るDNA匁失蠱よ墜UPDの捻出
両 親 の 検 索 が 可 能 で か っ サ ザ ン 解 析 に よ りDNA欠 失 の 有 無 が 既 知 のAS患 者37 例 お よ びPWS患 者14例 に つ い てDNRPに よ る 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 ( 表2) 、 サ ザ ン 解析 と矛 盾す るも のは 無く 、RI標識 ではAS患 者の33 (89. 2%) /37、PWS患者の12( 85.7%) /14において遺伝学的情報を得た。非RI法ではAS患者の30 (85‑. 7%) /37、PWS 患者の12 (85. 796) /14であった。
童塞
AS患耋!三盤竝 DNA欠失壷よ埜UPD
本 研 究 に お い てAS症 例 の 約6536がDNA欠 失 を も つ こ と が 示 さ れ た 。 欠 失 の 親 起 源 は 例 外 な く 母 由 来 で あ り 、 グ ノ ム 刷 り 込 み仮 説 を 支 持 す る 。 散 発 例 で の 欠 失 範 囲 はD15S9ーD15S12の5座 位 を 含 み 、 そ れ よ り 小 さ い もの は 無 く 、PWS患者 での 典型 的 欠 失 範 囲 と 一 致 し 、 欠 失 生 成 機 序 の 共 通 性を 示 唆 す る 。 こ の 典 型 的 な 大 き な 欠 失 は 家 族 例 で は み ら れ ず 、1家 族 に の み 小 さ な 欠 失 が 検 出 さ れ た 。 非 欠 失 例 で は UPDは 認 め ず 、 大 部 分 (85.7% ) で15番 染 色 体 の 両 親 由 来 が 証 明 さ れ た。 した がっ て 、AS患 者 に お け るUPDの頻 度 はPWS患 者の 場合 と異 なり 非常 に低 いと 考え られ る。
染色倦匁去壅とDNA匁去壅の比較証価
ー139 ‑
染 色体 分 析結 果 とDNA解析 結 果と の不一 致が少なか らずみられ た。染色体15 qll−q13領域は正常 変異が多く 、正確な診 断にはDNA解析が必要と考えられる。
DNRP診断法cD証価
本研究は15qllーq13領域では複数のDNRPを組み合わせることによりPCRと通常の 電気泳動と の組合せでも高率に多型情報がえられることを示した。手技の簡便さ を考え合わせると、DNA診断の第一選択であると考える。
表1. 61例AS患者 における欠 失範囲
欠失例数/解析例数 群
D15S18 D15S9 D15Sll D15Slo GABRB3 D15S12
家族、非欠失 (AS1−AS5)
0/5 0/5 0/4 ' 0/5 0/3 0/5
家 族 、 欠 失 3 0 / 30/30/3 3/3 3/3 0/3 (AS6 − AS8)
散発 、 欠失 37 10/34 28/28 13/13 34/34 37/37 25/25 (AS9‑AS45)
散 発 、 非 欠 失
(AS46−AS61)
0/12 0/12 0110 0/15 0/13 0110
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学位論文審査の要旨
Angelman症候詳 およびPrader−Willi症候群のDNA診断法開発とその評価
Angelman症候 群(AS)およ びPrader―Willi症候 群(PWS)の約60%に15qll‑
q13の 微小欠 失が合併し 、染色体高 精度分染法 のレベルで は区別でき ない。欠 失の 親 由来 はPWSで は父 由 来、ASでは 母由 来である。PWSでは欠 失の無い症 例 の大 部 分が 両 方 の15番染 色 体が 母 親に 由来す る母性片親 性ダイソミ ー(母性 UPD) である 。これに対 し、ASでは極 少数の例に 父性片親性 ダイソミー が見っ かっ て いる 。PWSと 比べ てASは 臨 床診 断が 難しく、多 数例におけ るDNA異常 の 検 討 は な く 、DNA診 断 の 可 能 性 を 明ら か にす る ため に は、DNA異 常 の種 類 と 頻度 を 明らか にすること が必要であ った。また 、従来のDNA診断は主 としてサ ザン 法 によ り 行 われ て いた た め、 手 技の 煩雑さ、低 い多形検出 率等の点で 問 題が あ った。 最近、開発 された二塩 基反復多形 は多形性に 富み、PCRを用いる ため に 、簡 便 に 行い 得 る。 こ の新 手 法の 両疾患に対 する応用の 可能性を明 ら かにする こともまた 必要である 。
そこ で 斉藤 氏 はAS患 者61名とPWS患 者14名を対象 として高精 度GTG分染 法によ る染 色 体分析 を行うと同 時に15qll―q13にマッ プされる6種類の クローン化DN Aを プ ロ ーブ と して 用 いサ ザ ン解 析 を行 った。更 に又計6種の二塩基 反復多型 を用 い 、PCRにて増幅し 、放射性同 位元素(RI) 標識法、お よび非RI法に より 検出 、 比較 を 行 った 。 その 結 果AS患者57例中38例 (65.5%)にDNA欠失を 検出 した。散 発例におけ る欠失幅はD15S9―D15 S12領域の5座位を共通して含み、数
例ではD15 S18に及んで いた。家族 例では1家族にのみ 小さな欠失を認めた。欠
失の 親 起源 は 例 外な く 母由 来 であ っ た。 欠失がなく かっ家族検 索のできた14 例す べ てにUPDは 検 出さ れ ず、 そ のう ち11例(78.6%) の15番相同染色 体は両 親由 来 であ っ た 。AS患者49例 中12例 (24.5%)とPWS患者14例中6例(42.8%) と に 染 色 体 分 析 結 果 と DNA解 析 結 果 と の 不 一 致 を 認 め た 。 一方 、 両親の 検索が可能 でかっサザ ン解析によ りDNA欠失 の有無が既 知のAS患