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博 士 ( 理 学 ) 斉 藤 玉 緒

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 斉 藤 玉 緒

学 位 論 文 題 名

Biochemical Study on gp64, a Putative Cell‑Cell  Adhesion Protein of the Cellular Slime IVIold,        Polysphondyli ひ m. pallid ひ rn

( 細 胞 性 粘 菌Polysphon〔 炒ZfMmpaZZZdMmの 細 胞 接 着 夕 ン パ ク 質gp64の 生化 学的 研究 )

学 位 論 文 内 容の 要旨

  近 縁 の Dictyostelium discoideumと 同 様 、 細 胞 性 粘 菌 Polyspカ ondylium pallidumの 細 胞 集 合 は 、 中 心 細 胞 か ら 放 出 さ れ る 走 化 性 物 質 と そ れを 受 容 す る 周 辺 細 胞 の シ グ ナ ル リ レ ー 系 、 細 胞 間 接着 タ ン パ ク 質 に 支 配 さ れ 、 最 終 的 に 数 万の 細胞か ら な る 集 合 体 が 形 成 さ れ る 。 細 胞 性粘 菌 の 細 胞 接 着 の 分 子 的 仕 組 み の 解 析 は、 粘菌の 細 胞 集 合 の み な ら ず 発 生 機 構 の 分 子 的 基 礎 を な す と 考 え ら れ る 。 P. pallidumで はEDTA耐 性 の2種 の 細 胞 間 接 着 成 分 が 存 在 し て い る 。 一 っ は 、 マ イ ナ ー な 成 分 で 集 合 前 期 に 発 現 し 始め 、 も う ー っ は 主 要 な 成 分 で 増 殖 期 か ら発 生後期 に か け て 存 在 す る も の で あ る 。 こ の主 要 な 成 分 は 、 一 価 抗 体 に よ る 接 着 阻 害実 験から 分 子 量64kDaの 糖 タ ン パ ク 質 (gp64) で あ る こ と が 明 ら か に さ れ た 。 精 製gp64に 対 し て 作 製 し た 単 ク ロ ー ン 性 抗 体 はP.palliclumの!ffll胞 接若 を阻 害し 、こ の阻 害能は L‑フ コ ー ス に よ り 中 和 さ れ た 。 こ の結 果 は 、gp64の 桝i鎖 が 知I胞 接 着 に 関 与す ること を 示唆 して いる。

こ れま で、 細胞性 粘菌 の翁 ‖胞1刊 接着 夕ンパ ク質 の柵 造に13す る研 究は ほとんどなされ て いな い。P. p´1′ ′´f′Umのgp64はD.イ ´sc0′deUmの荊n胞接着タン.パクcontact sitcsA(csA) よ り も 量 的 に 多 い こ と か ら 構 造 解 析 に 適 し た タ ン パ ク 質 で あ る 。 そ こ で 、 夕 ン パ ク 質 の 構 造 解 析 を す る 前 提 と し てgp64の 大 量 精 製 の シス テ ム を 碓 立 し た 。 本 精 製 法 は 、 界 面 活 性 剤 に よ る可 溶 化 、 超 遠 心 に よ る 可 溶 化 成 分 の 分 離、 硫酸ア ン モ ニ ウ ム に よ る 塩 析 、DEAEセ ル ロ ー ス ・ ク 口 マ 卜 グ ラ フ ィ ー の4っ の ス テ ッ プ か

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らなる。特に有効なステップは硫酸アンモニウムによる塩析の過程で、2.5M 〜3.0 M の硫安で現れる不溶性の浮上画分を回収することにある。本方法により3x 1010 の 集 合 期 の 細 胞 か ら 6.4mg の gp64 を 短 時 日 で 精 製 す る 事 が で き る 。 先 に決 定 されてい た gp64 の cDNA 配列から、 gp64 のア ミノ酸配列には 次の 3 つの 構造上の特徴が見られた。1 )全体で10 箇所のアスパラギン結合糖鎖の付加可能な部 位が存在すること。2 )N 末端とC 末端の両側に疎水性アミ丿・酸の配列が存在し糖脂質 アンカーによる修飾が予想されること。3 )cDNA 配列から予想されるアミノ酸 320 残 基中システインが36 残基存在すること。

そこで、これらの特徴に基づきgp64 がどのように細胞接着に関わるのか、その分子 的機構を明らかにする目的でgp64 の構造解析を行った。

まず、糖鎖の種類を調べるために、精製gp64 のへキソサミン分析を行ったところ、

gp641 分子あたり 9.9 分子のグルコサミンを検出したが、ガラクトサミンは検出さ れなかった。このことから、gp64 に存在する糖鎖はセlJ ン・スレオニン結合型糖鎖 ではなく、アスパラギン結合型であると判断した。糖鎖付加可能な配列を持つ10 箇 の小さなペプチドを精製し、各ペプチドについてアミノ酸組成分析とアミノ酸配列分 析により糖鎖の有無を調べた。その結果、NXT / S の配列を持つ6 箇所は全て糖鎖が付 加 し て い る が 、 NXC の 4 箇 所 に つ い て は 付 加 が 認 め ら れ な か っ た 。 次に、N 末端とC 末端のプ口セッシングと糖脂質アンカーによる修飾についての解析 を行った。ピリジルエチル化 gp64 を直接エドマン分解に供することにより、N 末端 19 残基からなるシグナル・ペプチドのプロセッシング(除去)があることを明らか にした。次に真の C 末端を決定するため、ピリジルエチル化gp64 をりシルエンドペ プチダーゼで消化し逆相H PLC でギお製後、全てのペプチドの帰属を決定したが、C 末 端を含むと考えられるペプチドのみは回収できなかった。そこで、C 末端にりジンを 持っペプチド(リジンペプチド)を特典的に回収するアンヒド口トリプシン親和性カ ラムによルリジンペプチドとC 末端ペプチドの分離を行い真のC 末端を決定した。そ の結果真のC 末端は予想より22 残基N 末端側のScr279 であることが明らかとなった。

これらの特徴からgp64 は糖脂質アンカー型タンパク質と想定し、アンカーの榊造解 析 を 進 め た 。 gp64 の 糖 脂 質 ア ン カ ー は Thy‑l antigen , variantsurfacc glycoprotcln   ( VSG )のようなフォスファチジルイノシ卜ール特異的フォスフォ リパー ゼC ( PI . PLC )で切断される典型的なものとは異なり PI . PLC には非感受

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性で、亜硝酸による脱アミノ反応により切断を受ける。しかも、脱アミノ反応によっ て生じ る物 質が フォ スファ チジ ルイ ノシ卜 ール (PI )と は異なった。アンカーに含 まれる脂肪酸はエステル結合を切断する弱アルカリ処理では切断されず、アミド結合 を切 る 強 酸 処 理 で 切 断 さ れ る もの で あ っ た 。主な 脂肪 酸は C22 :0 でヒ ド口 キシ 脂 肪酸は 含ま れて いな かった 。こ のこ とは、 gp64 の糖 脂質 アンカーが酵母などの下等 真核生物に見られるセラミドを含むものであることを示唆するものである。そこで、

脂肪 酸 抽 出 後の サンプ ルに 長鎖 塩基 の有無 を分 析し 、C18 フ ァイ トスフ アン ゴシ ン を持つ こと を明 らか にした 。っ まり 、gp64 の糖 脂質 アン カーは一般のPI を含むアン カーではなくフォスフォセラミドを含むものであることが明らかになった。細胞接着 タンパク質には糖脂質アンカーを持っものが若干報告されているが、細胞性粘菌にお いては解析された接着タンパク質の全てが糖脂質アンカーを持つことが示されている。

また、セラミドを持つ糖脂質アンカーは下等真核生物に限られており、細胞性粘菌の 進化的立場を考える上でも興味深い点である。

最後 に gp641 分 子 あ た り 36 残 基存 在 す る シ ス テ イ ン の 存 在 様式 に つ い て 調 べた 。 ま ず SH 基 検 出 試 薬 DACM に よ る 反 応 を 行 な い 、 36 残 基 全 て が S‑S 架 橋 を 形 成し て いるも のと 推定 され た。そ こで、そのS‑S 架橋の位置を決定することにより他の接着 タン パ ク 質 と の topological な相 同 性 を 調 べ た 。 精 製 gp64 を各 種 の タ ン パ ク質 分 解酵 素 に よ り分 解し、 得ら れた 全て のペプ チド を逆 相HPLC で2 回 精製後 、ア ミノ 酸 組成分 析と アミ ノ酸 配列分 析に より S‑S 架橋 の位 置を決 定し た。最終的に1 分子あた り18 箇 所 存 在す るS‑S 架 橋のう ち15 箇所 を決 定した 。そ の結 果、 フィブ ロネ クチ ン や補 体 系 の タ ン パ ク 質 に 特 徴 的に 見 ら れ る Sushidomain を 少な くと も5 つ持 つこ と が明 ら か と な っ た 。 Sushidomain の 存 在 を S − S 架 橋 構 造 を 含め て 明 ら か に した の は無脊椎生物については本研究が始めてである。このドメインの機能についてはまだ はっきりしていないが、タンパク質ータンパク質の相互作用に関与することが示唆さ れており、細胞接着にこのドメインがどのように関わるのか大変興味のある今後の課 題である。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    落 合    廣 副 査    教 授    吉 川 正 明 副 査    教 授    高 橋 孝 行 副査   助教授   奥山英登志

学 位 論 文 題 名

Biochemical Study on gp64, a Putative Cell‑Cell  Adhesion Protein of the Cellular Slime Mold,        Polysphondyliu,rn palli 'urn

(細胞性粘菌Polysphondylium pallidum の 細胞接着夕ンパク質gp64 の生化学的研究)

細胞性粘菌の細胞接着の分子的仕組みの解析は、粘菌の細胞集合のみならず発生機構の分子 的 基礎 をなす 研究 と考 えら れる。Po恥!pめぬ面価珊閉矼織zn疋はEDTA耐性の2種の細胞 間接着成分カ靖荘している。―つは、マイナーな成分で集合前期に発現し始め、もうーつは主 要な成分で増殖期から発生後期にかけて存在するもので分子量64k田の糖タンパク質(gp64) である。

  これまで、細胞性粘菌の細胞間接着タンパク質の構造に関する研究はほとんどなされていな い。P.p日Z眦轟lmの餌)64はD匝如鹹ぬumの細胞接着タンパク質CCnlZは頭:teSA(CsA)より も量的に多いことから構造解析に適したタンパク質である。  そごで、申請者はタンパク質の 構造解析をする前提としてまず帥64の大量精製のシステムを検討し、3x1010の集合期の細 胞から6.4mgの鮮)64を短時日で精製するシステムを確立した。

  先に 決定さ れて いたgp64のc睇峨配列から、申請者はgp64のアミノ酸配列に次の3つの 構造上の特徴を認めた。1)全体で10箇所のアスパラギン結合糖鎖の付加可能な部位カ蒋在す ること。2)N末端とC末端の両側に疎水性アミノ酸の配列カヰ薙し糖脂質アンカーによる修飾     一162−

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が予 想さ れること。3) cDNA配列から予想されるアミノ酸320残基中システインが36残基 存在すること。

  まず、糖鎖の結合部位を明らかにするために、糖鎖付加可能な配列を持つ10箇の小さなぺプ チドを精製し、各ペブチドについてアミノ酸組成分析とアミノ鬱鐘己列分析により纜鑞の有無を 調べ た。 その結果、cr/sの配列を持つ6箇所には全て糖鎖カ咐加しているカs NXCの4箇所 には付加を認めなかった。

  次に、N末端とC末端のプロセッシングと糖脂質アンカ―による修飾についての解听を行った。

ピリジルエチル化gp64を直接エドマン分解し、N末端19残基からなるシグナル・ペブチドの プロセッシング(除去)があることを明らかにした。次に真のC末端を決定するため、C末端 にりジンを持つぺプチド(リジンペブチド)を特異的に回収するアンヒド口卜リブシン親和性 カラムによルリジンペブチドとC末端ペプチドの分離を行い真のC末端を決定した。その結果 真のC末 端は 予想よ り22残基N末 端側 のSer279であることを明らかにした。これらの特徴 から餌)64は糖脂質アンカ一型タンパク質と想定し、アンカ―の構造解析を進めた。罫)64の 糖脂質アンカ―はフオスフんチジル・イノシト−´い寺異的フオスフォリパーゼC(PI−PLC)に 非感受性で、亜硝酸による脱アミノ反応により切断を受けた。また、脱アミノ反応によって生 じた物質はフオスファチジルイノシ卜一ル(PI)ではなかった。主な脂肪酸はC22:Oでこれ らの脂肪酸はアミド結合型のものであった。このことは、g晒4の糖脂質アンカーがセラミドを 含むものであることを示唆するものである。そこで、脂肪酸抽出後のサンブルを長鎖塩基の有 無について分析し、C18フんイ卜スフアンゴシンを持つことを明らかにした。っまり、堺)64 の糖脂質アンカ―は一般のPIを含むアンカ―ではなくフオスフォセラミドを含むものであるこ とを明らかにした。

  最 後に 堺 641分子あたり36残基存在するシステインの存在様式について調べた。精製 gp64を各種のタンパク質分解酵素により分解して得られた全てのぺブチドをアミノ醸組成分析 とアミノ酸配列分析によりS―S架橋の位置を決定した。最終的に1分子あたり18箇所存在す るS‐S架橋のうち15箇所を決定した。その結果、gp64カ フアブロネクチンや補体系のタンパ ク質 に特 徴的 に見 られ る亂 血dCma血 を少 なくと も5つ持 つこ とを 明らかにした。Sl竝虹     一163−.

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dcmainの存在をS―S架橋構造を決定して明らかにしたのは無脊椎生物については本研究が初 めてである。このドメインの機能についてはまだはっきりしていないカt夕ンパク質―夕ンパ ク質の相互作用に関与することカ詠唆されており、細胞接着にこのドメインがどのように関わ るのか新たな展望を開いたものといえる。  7編の参考論文のうち6編は英文で、米国生化学 会誌(J.BioI.Chem.誌)の2編を含め権威有る国際誌に投稿されており、最終試験の結果も 満足するものであった。審査員―同は申請者が博士(理学)の学位を受ける十分な資格を有 すると認めた。

参照

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