博 士 ( 医 学 ) 伊 藤 靖
学 位 論 文 題 名
マ ウ ス MHC ク ラ ス H 対 立 遺 伝 子 産 物 に 特 異 的 に 結 合 す る ノ \ ト チ ト ク 口 ー ム c 由 来 ペ プ チ ド p43 ― 58 の
ア グ レ ト ー プ 上 の ア ミ ノ 酸 の 決 定
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
緒言
以 前 の 研 究 で 、 ハ ト チ トク ロ ー ムc由 来 のペ プ チ ド p43‐58は 、I−A゜ 分 子を 持 つ マ ウ ス に お い て 免 疫 原 性 があ り 、T細 胞 反 応を 誘 導 で きる が 、I‐A ̄ 分 子を 持 つ マ ウス で は 免 疫 原 と は な ら な いこ と が 示 され た 。 さ らに 、p43‐58上 の46番 と54番残 基 は 、 I・ パ 分 子 と 結 合 する ア グ レ トー プ と し て働 く こ と 、こ の 部 位 のア ミ ノ 酸 を他 の ア ミ ノ酸 に 置 換 する とI# 分 子 結合 性 と な り、 こ の 置 換ペ プ チ ド1まI‐A ̄ 分 子を 持つマウ ス に お い てT細 胞 反 応 を 誘 導 す る こ と が 判 明 し て い る 。 本 研 究 で は 、 他 のI・A分子 拘 束 性T細 胞 反 応 に お い て も 、 ア グ レ ト ー プ の 位 置 が 保 存 さ れ て い る で あろ う と の 作業 仮 説 の 基に 、 各I‐A分 子 結合 性 ペ プ チド を 検 索 し、 最 終 的 にそ れ ぞ れのI一A分子 と結 合 す る アミ ノ 酸 モ チー フ を 決 定し た 。
材 料 と 方 法
種 々 のBl0バ ッ ク グ ラ ウ ン ド のH‑2コ ン ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 、46番 と54番 残 基 を 置 換 し たp43璃 由 来 の ペ プ チ ド で 免 疫 し 、 得 ら れ た り ン パ 節T細 胞 の 増 殖 反 応 をin vitmで ペ プ チ ド と 抗 原 提 示 細 胞 と 共 に 培 養 レ て調 べ た 。 さら に 、 同 様に し て 得 られ たT細 胞 をT細 胞 腫 瘍 削 晒147と 融 合 し て 、T細 胞 ハ イ ブ リ ド ー マ を 作 製 し た 。 こ れ ら のT細 胞 ハ イ プ リ ド ー マ を 用 い て 、 種 々 の ペ プ チ ド に 対 す る 反 応 をILえ 産 生 能 で 測 定 し た 。 ま た 、T細 胞 ハ イ プ リ ド ー マ を 刺 激 で き な い ペ プ チ ド と と も に培 養 し て 、 競 合 的 抑 制 試 験 を 行 い 、 ペ プ チ ド とI‐A分 子 と の 結 合 カ を 解 析 し た 。
結果
リンパ飾T細胞反応におけるアグレトープ上のアミノ酸置換の影響
50Vはp43‑58の50番 残 基 の ア ス パ ラ ギ ン 酸 を バ リ ン に 置 換 し た ぺ プ チ ド で あ る 。 こ の50Vを も と に 、46番 と54番 残 基 を 正 電 荷の ア ル ギ ニン(R)、 負 電荷 の ア ス パラ ギ ン 酸(D)、 あ る い は 疎 水 性 の ア ラ ニ ン(A)に 置 換 した ペ プ チ ドを 作 製 し た。 こ れ ら の ペプチドでBlO(I‑め、B10.G(I‐Aつ、B10.S(I‐Aつ、B10.SM(I.Aつマウスを免疫して得
ーたりンパ節T細胞を、in vitroで同系の脾臓細胞と種々の50V関連ペプチドと培養し て、増殖 反応を測 定した 。B10、B10.G、B10.Sにお いては 、50V54」kで免疫して得 られ たT細胞 は 、 免疫 原 で ある50v54Aに最 も 強 く 反応 し た 。一 方 、B10.SMでは 46R50v5ん が最も 強い免 疫原とな り、血viめでもT細胞を 一番強 く刺激で きた。46 番または54番残基 を他のア ミノ酸に 置換したペプチドは、免疫原のペプチドより弱 い反応レか誘導しなかった。
B10、B10.G、B10.Sは、クラスn分子はIIA分子しか持たないので、これらの反応 はI・A分子に拘束されていると考えられた。B10.SMは2種のクラスII分子(I−AI‐E) を発現し ているの で、ど ちらの分 子によ る反応かを調べるため、抗クラスII抗体で 抑制 試 験 を行 っ た 。46R50V54Aで 免 疫し て得 られたB10.SMのT細胞 の反応は 、抗
I‐A抗体によって45%、抗I‐E抗体では15ゲ。抑制された。従って、B10.SMにおける 46R50V54Aに 対するT細 胞反応の マジョリ テイー は、I.A分 子に拘 束されて いると 考えられた。
50V関連ペ プチド特 異的T細胞ハ イプリド ーマの 反応性
次に 、50V関 連 ペプ チ ド の1細 胞 の 刺激 能 を クロ ー ン レベ ル で 調べ るため に、
B10、B10.G、B10.Sを50Vま たは50V54Aで 、B10.SMを46R50V54A‑C'免疫 し てT細 胞ハ イブリ ドーマを 作製した 。B10、B10.G、B10.Sの いずれの マウスから得られた T細 胞ハ イ ブ リド ー マ も50V54Aに 一 番強 く反 応した。46番ある いは54番 残基を置 換レ た他の ペプチド は、50V54Aよ り弱い反応しか引き起こさなかった。この点は、
リン パ節T細胞の 反応と同 じであ った。ま た、B10.SMを46R50V54」气で免疫して作 製 し たT細 胞 ハイブ リドーマ も、46R50V54Aに強く 反応し 、その他 のペプ チドには 弱 い 反 応 し か 示 さ ず 、 リ ン パ 節 T細 胞 の 反 応 パ タ ー ン と 一 致 し た 。
I‑Aq _ マ ウ ス の T細 胞 反 応 に お け る 50番 残 基 の エ ピ ト ー プ 機 能 50番残基 がエピト ープとして働くことは、I̲A分子とI‐A分子を有するマウスにお いて判 明してい る。この ことが 他のI・A分 子をもつマウスでも、成立することを確 認す る た めに 、B10.GとB10.Sを50V54Aある いはB10.SMを46R50V54で免疫し て 得 たT細 胞 を そ れ ぞ れ50番 残 基 を グ ル タ ミ ン 酸 (E) に置 換 し た50E54Aま たは 46R50E54Aで 刺激した が、反 応は認め られな かった。 また逆 に、B10.GとB10.Sを 50E54Aあ る い はB10.SMを46R50E54Aで 免 疫 し て 得 たT細 胞 は 、50V54Aま た は 46R50v54Aには 反 応 しな か っ た。 従 っ て、50番 残基にVを持 っペプチ ドとEを持つ ペプチ ドとで1ま異な るT細胞を刺 激するこ と、っ まりこれ らのマ ウスでもT細胞は 50番残基 をエピト ープと して認識 している と考え られた。
また、エ ピトー プである50番残基 を置換し ても、B10、B10.S、B10.Gでは46番に フェ ニ ールアラ ニン(F)、54番にAを 、B10.SMでは46番にR、54番にAを持 っペプチ ドが強く りンパ 節T細 胞を刺激 できた 。このこ とから エピトープのアミノ酸の置換 は 、 ア グ レト ー プ とI‑A分子 と の 間の 結 合 には 影 響 を与 え な い と考 え ら れた 。
競合 的抑制 試験によ るペプ チドとI‑A分子 間の結合 カの解析
T細胞 反 応 性と ペプチド とI‑A分子間の 結合性と の関係 を解析す るため 、前述の 50番 残基のVに特異 的なT細胞/ヽイプ リドー マを用い て競合 的抑制試 験を行った。
50E関連ペ プチドは エピト ープであ る50番残 基が免疫 原とは 異なるの で、これらの ハ イ ブリ ド ー マを刺 激するこ とがで きない。 そこで 、T細 胞ハイブ リドー マを50V 関連 ペプチ ドで刺激 してい る培養中 に、50E関連ペ プチドを 抑制ペ プチドとして加 えた 。B10、B10.G、BlO.S由来のT細 胞ハイプ リドーマ では、50E鍋`が最も強く 反応 を抑制 し、次に50Eが 中程度に 抑制し た。B10.SM由来 のT細 胞ハイブリドーマ では 、46恥班 る4A〉50胤 `の順に 反応が 抑制され た。
46番と54番 残基 に 着 目す る と 、リ ン パ 節T細 胞 とT細 胞 ハイ ブ リ ド ーマを 最も強 く刺 激でき たペプチ ドの46番 と54番残基 のアミ ノ酸モチ ーフは 、T細 胞ハイブリド ーマ の反応 を最も強 く抑制 するペプ チドの46番と54番残基のアミノ酸の組み合わせ と一 致した 。
結諭と考察
I‑A゜.q,。分子においては、46番にF、54番にAの組み合わせを持っペプチドが、l‑A 分 子 に おぃ ては46番にR、54番にAのア ミノ酸 を持っペ プチド が、今回 用いた ペプ チ ド の 中 で は そ れ ぞ れ のI‑A分 子 に 最 も 強 い 結 合 カ を も つ こ と が 判 明 し た 。 っ まり 、MHC分 子 に結 合 し てい る ペ プチ ドを抽出 して、 これらの ペプチド 間で 共 通のアミ ノ酸配 列を探す とぃう 、従来の方法とは異なるアプ口ーチによって、ク ラ スH分 子結合 性ペプチ ドを解析 レ得た 。本研究 では、 置換した 部位が46番と54番 残 基に限ら れ、置 換したア ミノ酸 も限られているので、別のアミノ酸に置換するこ と でより強 くI‑A分子と結 合する ペプチド が作製で きる可 能性は除 外できない。し か し、ここ で示さ れたアミ ノ酸モ チーフは 、T細 胞反応 を指標に レて、決定された も のである ので、 実際にT細胞を 誘導す るのに十 分な結 合カを作 り出すと考えて構 わないと思われる。
学 位 論 文 審査 の 要 旨 主 査 教 授 小野 江 和 則 副 査 教 授 細川 眞 澄 男 副 査 教 授 長 嶋 和 郎
学 位 論 文 題 名
マ ウ ス IVIHC ク ラ ス n 対 立 遺 伝 子 産 物 に 特 異 的 に 結 合 す る ノ \ ト チ ト ク ロ ーム c 由来 ペ プ チ ド p43 − 58 の
ア グ レ ト ー プ 上の ア ミ ノ 酸の 決 定
免 疫 応 答 を 始 動 さ せ る へ ル パ ―T細 胞 を 活 性 化 す る た め に は 、 抗 原 提 示 細 胞 内 で 処 理 さ れ た 抗 原 由 来 の べ プ チ ド がMHC分 子 内 に 結 合 さ れ 、 提 示 さ れ な け れ ば な ら な 。 ヽ 。 現 在 で は 、 抗 原 ベ ブ チ ド とMHC分 子 ′ と の 結 合 性 が 、 免 疫 応 答 の 質 、 量 を 規 定 す る 最 も 重 要 な 因 子 で あ る と 考 え ら れ て いる。
本 論 文 に お い て は 、 種 々 の MHCハ プ 口 タ イ プ の マ ウ ス に お い て 、 MHCク ラ ス II分 子 の ー つ I一A分 子 と の 結 合 性 を 有 す る ペ プ チ ド 上 の ア ミ ノ 酸 モ チ ― フ を 決 定 す る こ と を 目 的 と し た 。 ハ 卜 チ 卜 ク 口 一 ムc由 来 の ペ ブ チ ドp43‑58は 、I−A゜ 分 子 を 持 つ マ ウ ス に お 。 、 て 免 疫 原 性 が あ り 、T細 胞 反 応 を 誘 導 で き る 。 こ の 際 、p43ー58上 の46番 と54番 残 基 は 、 エ −A゜ 分 子 と 結 合 す る ア グ レ ト ー ブ と し て 働 く こ と 、 こ の 部 位 の ア ミ ノ 酸 を 他 の ア ミ ノ 酸 に 置 換 す る と エ ―A 分 子 結 合 性 と な り 、 こ の 置 換 ベ プ チ ド はI−A 分 子 を 持 つ マ ウ ス に お ぃ て 、T細 胞 反 応 を 誘 導 す る こ と が 判 明 し て 。 ヽ る 。 そ こ で 他 のI‐A分 子 拘 束 性T細 胞 に お い て も 、 ア グ レ ト ー プ の 位 置 が 保 存 さ れ て い る で あ ろ う と の 作 業仮説の基に、各I一A分子結合性ペプ チドを検索した。
基 礎 と な る ぺ プ チ ド をp43−58の50番 目 残 基 の ア ス パ ラ ギ ン 酸 を バ リ ン に 置 換 し た50vと し た 。 こ の50Vを 基 に 、46番 と54番 残 基 を 正 電 荷 の ア ル ギ ニ ン 、 負 電 荷 の ア ス バ ラ ギ ン 酸 、 あ る い は 疎 水 性 の ア ラ ニ ン の3種 の ア ミ ノ 酸 と そ れ ぞ れ 置 換 し 、 合 計9種 の べ プ チ ド を 作 成 し た 。 こ れ ら の ベ プチドで、Bl0(I一A゜),BlO.G(I一A゜),Bl0.S(I一A ),Bl0.SM(I‑A )マウスを免疫して得たりンパ節 T細 胞 を 、in vitroで 同 系 の 牌 臓 細 胞 の 存 在 下 で 種 々 の50v関 連 ペ ブ チ ド で 刺 激 し て 、 増 殖 反 応 を 測 定 し た 。Bl0,BlO.G,BlO.Sに お い て は 、9種 の ア ミ ノ 酸 の う ち50V54Aで 免 疫 し て 得 ら れ たT
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細胞が、免疫原である50V54Aに最も強く反応レた。ー方、Bl0. SMでは46R50V54Aが最も強い免疫 原となり、in vitroでもT細 胞を強<刺激した。BlO.SMマウスは2種のクラスu分子(I一A,エ‑E) を発現しているので、どちらの分子による反応かを調べるため、抗クラスn抗体で抑制試験を行 った結果、BlO.SMマウスで46R50V54Aに反応するT細胞の マジョリティ―は、I一A分子に拘束さ れることが判明した。
次に、T細胞抗原レセプタ ーと直接結合するエピ卜―プの50番残基をバリンからグルタミン酸 に置換したペプチド50E、及 びそのアナ口グベブチドを用い、同様の実験を行ったが、50v関連ペ プチド詳と基本的に一致した結果が得られた。さらに、これらの結果は各マウス系統でそれぞれ 樹立した、50vアナ口グペプ チド特異的T細胞ハイブリド ―マを用いた反応解析、およびこれら を 用 い た50Eア ナ ロ グ に よ る 競 合 的 抑 制 試 験 に よ り 、 ク 口 一 ン レ ベ ル で 確 認 さ れ た 。 これら各I―A分子との結合ペプチドの結果をまとめると、I一A゜,q. 分子とは、46番残基がフェ ニールアラニン、54番残基がアラニン、IーA 分子とは46番がアルギニン、54番がアラニン、エ一A 分子では46番がグルタミン酸、54番残基がアラニンが、それぞれのIーA分子と結合性のよ。ヽ、ハ プ口タイプ特異的アミノ酸モチーフと決定された。
論文発表に際し、細川教授より、アグレトープ近辺のアミノ酸の影響、各Iー‑ハブ口クイブ拘 束性と、アグレ卜‑プ上のア ミノ酸モチーフの類似性の関係、ベプチドとハイブリッドクラスII 分子との結合性について、長嶋教授より、抗原処理(ブ口セス)、抗原提示細胞の磯能の影響に ついて、柿沼教授より、ペプチド特異的抗体反応について御質問があったが、申請者は適切な解 答を 成し 得た。 以 上、本研究はMHC分子に結合 しているべブチドを抽出して、これらのベブ チド間で共通のアミノ酸配列を探すという、従来の方法と全く異なるアブ口一チによって、クラ スロ分子結合性ペブチドを決定した。また、これらの結果より得られたアグレ卜ーブ上のアミノ 酸モチ―フは、今後ペプチドワクチンを作成する上で、重要な基礎デ―夕となることが予想され
、博士の学位に相当すると判定した。
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