博 士 ( 医 学 ) 小 林 正 伸
学 位 論 文 題 名
Synergistic effects of interleukin ‑ iB and interleukin ‑ 3 0n the expansion of human hematopoietic progenitor cells in liquid cultures
( 液 体 培 養 系 に お ける ヒ ト造 血 前 駆細 胞 増幅 に 対す る イ ン タ ー ロ イ キ ン − 1 ロ と イ ン ター ロ イキ ン ―3 の 相 乗効 果 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
目 的
すべて の血球 細胞は ,多 能性幹 細胞か ら赤芽 球,巨 核球 ,穎粒 球/マ ク口ファージ系などの各 種 細胞 への分 化・増 殖によ って供 給さ れてい る。こ れらの 分化 ・増殖 は種々の因子の複雑な組み 合 わせ によっ て調節 され, 細胞系統,分化段階によって異なる調節因子が存在するとされている。
こ れ ら の 因 子の 中 で , インタ ー口イ キン‑iBと イン夕 一口イ キン・3は ともに 多能性 幹細 胞の増 殖 を支 持する と報告 されて いる。 筆者 はこれ まで液 体培養 系を 用いて 増殖因子の前駆細胞増幅を 支 持す る能カ を測定 しよう と試み てき た。今 回の研 究では ,イ ン夕一 口イキ ン・3とコ 口ニ― 形 成 法に て相乗 的に働 くと報 告され てい るイン 夕一口 イキン ・1ロの液 体培 養系に おける 相乗効 果 に っい て検討 した。
材 料 およ び 方 法
1) 造 血 因 子 お よ び 抗 体 : 造 血 因 子 と し てrecombinantのhuman interleukin亠1ロ(IL ‑ 1),recombinant human interleukin―3 くIL―3) ,recombinant human inter‑
leukin←6くILー6),recombinant human granulocyte―colony stimulating factor (G―CSF),recombinant human granulocyte/macrophage colony stimulating factor (GM―CSF)を 用 い た 。 細 胞 純 化 に は 抗HPCA―1抗 体 (CD34)を 用 い , 直 接 効 果 ナ ょ の か 間 接 効 果な の か を 判 定 する た め に 抗IL ‑1抗体 , 抗IL―6抗 体 , 抗G―CSF抗 体 , 抗GM ‑ CSF抗 体 を 用い た 。
2)ヒ ト骨 髄細胞 の調整 :正常 ヒト骨 髄を 採取後 ,フィ コール ・コ ンレイ に重層 し比重 遠沈に
て単核細胞を得た。培養皿にて1時間培養し,非付着細胞を集めた。この操作を2回繰り返 して非付着細胞分画を得た。非付着細胞分画からニューラミニデース処理羊赤血球との口ツ ゼット形成細胞を除去し,T細胞除去・非付着細胞分画を得た。CD34陽性細胞はT細胞除 去 ・ 非 付 着 細 胞分 画よ り抗HPCA→1抗体 と 抗マ ウスIgGをコ ート したimmunobeads を用いて分離した。
3) 液体 培養 :細 胞 を6―well plateに5施ず つ植 え込 み ,IL―l100 ng/mE,L−3100 u/紺 ,IL―6100 ng7mE,GM ‑ CSF 100 ng/mE,G―CSF 100 ngl mEを単 独あるい は組み合わせて添加し一週間培養した。一部の実験系では抗IL ‑1抗体,抗IL―6抗体,
抗G・CSF抗体,抗GM・CSF抗体を培養系に加え た。培養後付着細胞をも含め て全細胞 を回収し,コロニー形成法にて前駆細胞数の増減を検討した。
.4)コロニ一形成法:2XlO゜個の新鮮骨髄細胞および上記サイトカインを用いて液体培養し た細胞を,30%牛胎児血清,1%牛血清アルブミン,lX10―。M2−メルカプトエタノール とO.3%軟寒天を添加した培養液に入れ,白血球遊走プレートの各we11にO.4紺ずつ植え込 ん だ。 刺 激因 子と してIL―3100u/ 紺 ,EP02u/紺 を加 えて14日 間 培養し た。40個 以上の顆粒球とマ ク口ファージを含むコロニーをCFU・GM(顆粒球/マク口ファージコ 口ニ一形成細胞),100個以上の赤芽球を合むコ口ニーおよび3個のクラスターよりなるコ口 二一をBFU・E(赤芽球バースト形成細胞),赤芽球と赤芽球以外の細胞よりなるコ口二ー をCFU亠Mix(混合コ口ニー形成細胞)として算定した。
5) 限界 希釈 液体 培 養法 :CD34陽性細胞を段階希 釈して(各we11あたり1,5,25,125 個),96―we11plateに植えIL―3およびIL―1とIL―3の存在下で一週間培養した。一週 間後,8個以上の生細胞を含むwe11を陽性として各希釈段階における陽性率を算定した。
結 果
1)骨髄単核細胞を用いての造血前駆細胞増幅
CFU―GM,BFU―E,CFU―Mixい ず れ に お いて も 単独 で添 加さ れた 場 合に はIL―3 が最も効率 良く前駆細胞を増幅した。IL ‑3との組み合わせではILー1のみがIL・3単独と 比 較し てよ り効 率 良く 増幅した 。IL―1とIL ‑3の組み合わせ にて,CFU・GMは約4ー11 倍 に , BFU― Eは 13―20倍 に , CFU亠 Mixは 20―40倍 に 増 幅 さ れ た 。 2) 骨 髄 非 付 着 細 胞 , 骨 髄T細 胞 除 去 ・ 非 付 着 細 胞 を 用 い て の 造 血 前 駆 細 胞 増 幅 IL・1の相 乗効果が直接効果か間接効果を調べるために,サイトカイン産生細胞であるT
細胞およびマクロファージを除去した細胞分画で同様の実験を行ったところ,IL―1のIL ‑ 3に対する相乗効果はCFU ‑ GMを除いて同様に認められた。
3)抗サイトカイン抗体の効果
IL ‑1とILー3の 相乗 効 果に対する各 種抗サイトカイン抗体の効 果を検討するために IL・1とIL―3を添加した培養系に各種 抗サイトカイン抗体を添加し たところ,抗IL・1 抗 体ではIL ‑1の相乗効果は完 全に消去され,抗GM,CSF抗 体の添加によって部分的に消 去された。
4)CD34陽性細胞を用いての造血前駆細胞増幅
CD34陽 性細 胞を 用い て 一週 間培 養す る と, 同様 にIL―3単独 に比 べ てIL―1とIL― 3によってより多くの前駆細胞が維持された。単核細胞,非付着細胞,T細胞除去・非付着細 胞 を 用 い た 時 と は 異 な り ,IL・1とILー3に よ っ て も 増 幅 さ れ な か っ た 。 5)限界希釈液体培養におけるIL ‑1とIL ‑3の効果
CD34陽性 細胞中でIL・3単独にたいし ては24個中1個が反応して増 殖し,IL・1とIL ‑ 3に対しては16個中1個が反応して増殖した。
考 案
今回の研究 ではin vitro造血前駆細胞の増幅には試みた組み合わせの中ではIL―1とIL・3 が最も良かっ た。またIL・1の相乗効果は,一部T細胞やマク口ファージ以外の骨髄スト口ー マ細胞からのGM・CSF産生によるものと考 えられた。しかしながら,相乗効果の主要な部分 は直接効果に よることが示唆された。CD34陽性細胞分画でIL・1とIL−3によっても増幅さ れなかったが,この結果はCD34陽性分画に骨髄スト口ーマ細胞さえ除去されてしまったためと 考えられた。 今回の研究では未熟前駆細胞であるCFU・Mixを数十倍にまで増幅できたが,実 際の骨髄移植に応用するためには真の骨髄幹細胞の増幅を確認することが必要であり,ヒトにお いても何らかの幹細胞確認法の開発が必要であろう。さらに今後の研究によって,より効率良く 増幅する方法が開発され,ヒトでの幹細胞確認法が開発される必要があるが,今回の研究の試み は 今 後 の 骨 髄 移 植 に 新 し い 展 望 を み た ら す 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。
結 語
IL−1とIL・3の組み合わせは液体培養系におけるヒト造血前駆細胞の増幅に対して有効で あ り ,IL・1の 効 果 は 直 接 効 果 と 間 接 効 果 と の 両 方 に よ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
I研 究 目 的
学位論文審査の要旨
すべ ての血 球細胞 の分化 ・増殖は種々の因子の複雑な組み合わせによって調節され,細胞系統,
分化段 階によ って 異なる 調節因 子が存 在す るとさ れてい る。こ れらの 因子の中で,インターロイ キン・1ロ とイン ターロ イキ ン・3はと もにマ ウス多 能性幹 細胞 の増殖 を支持すると報告されてい る。筆 者はこ れま で液体 培養系 を用い て増 殖因子 のヒト 前駆細 胞増幅 を支持する能カを検索しよ うと試 みてき た。 今回の 研究で は,イ ンタ ー口イ キン―1ロ とイン ターロ イキン‑3との 液体培 養 系にお ける相 乗効 果にっ いて検 討した 。
H材 料およ び方法 .
1) 造 血 因 子 お よ び抗 体 : 造 血 因子 と し てrecombinantのhuman interleukin一1ロ(IL ‑ 1), human interleukin―6 くIL←6) , human granulocyte―colony stimulating f actorくGーCSF) , human granulcoyte/macrophage―colony stimulating factor (GM・CSF)を 用 い た 。 細 胞 純 化 に は 抗HPCA,1抗 体 (CD34)を 用 い , 一 部 の 実 験 で は 抗IL・1抗 体 , 抗IL亠6抗 体 , 抗G・CSF抗 体 , 抗GMーCSF抗 体 を 用 い た 。 2) ヒト骨 髄細胞 の調 整:正 常ヒト 骨髄を 採取後 ,フ ィコー ル・コ ンレイ に重 層し比 重遠沈に て 単核 細 胞 を得た 。培養 皿にて2回 ,1時間培 養し, 非付着 細胞 分画を 得た。 非付着 細胞 分 画 から 羊 赤 血 球 と のロ ッ ゼ ッ ト 形成細 胞を除 去し,T細 胞除去 ・非 付着細 胞分画 を得た 。 CD34陽 性 細 胞 はT細 胞 除 去 ・ 非 付 着 細 胞 分 画 よ り 抗HPCA ‑1抗 体 と 抗 マ ウ スIgGを コー トしたimmunobeadsを用 いて分 離した 。
3) 液 体 培 養 : 細 胞 を6ーwell plateに5紺 ず つ 植 え 込 み ,IL―1100 ng7mE,L―3100 u/ 紺 ,IL−6100ng7樹 ,GM―CSF 100ng/mt,G―CSF lOOng/mEを 単 独 あ る い は 組 み合 わ せ て 添 加 し一 週 間 培 養 した 。 一 部 の 実験 系 で は抗IL・1抗 体, 抗IL・6抗体 ,抗 G・CSF抗 体 , 抗GM−CSF抗 体 を 培 養 系 に 加え た 。 培 養 後付 着 細 胞 を も 含め て 全 細 胞 を 回収 し,コ ロニー 形成法 にて 前駆細 胞数の 増減を 検討し た。
保紀 和 知義 崎川 上 宮 皆 川 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
4)コロニ一形成法:2 Xl0"個の新鮮骨髄細胞および液体培養した細胞を,30%牛胎児血清,
1%牛血清アルブミン,1 Xl0‑4M2一メルカプト工夕ノールと0.3%軟寒天を添加した培 養液に入れ,自血球遊走プレートの各wellに0.4mEずつ植え込んだ。刺激因子としてIL− 3100u/紺,EP02u/紺を加えて14日間培養した。
5) 限界 希釈 液 体培養法:CD34陽性細胞を段階希釈して (各wellあたり1,5,25,125 個),96・well plateに植えIL ‑3およびIL・1とIL・3の存在下で一週間培養した。一週 間後,8個以上の 生細胞を含むwellを陽性として各希釈段階における陽性率を算定した。
結 果
1)骨髄単核細胞を用いての造血前駆細胞増幅
造血因子単独で添加された場合にはIL・3が最も効率良く前駆細胞を増幅した。IL,3と の 組 み 合 わ せ で はIL−1の み がIL・3単 独 と 比 較 し て よ り 効 率 良 く 増 幅 し た 。 2) 骨 髄 非 付 着 細 胞 , 骨 髄T細 胞 除 去 ・ 非 付 着 細 胞 を 用 い て の 造 血 前 駆 細 胞 増 幅 IL,1の相乗効果が直接効果か間接効果を調べるために,サイトカイン産生細胞であるT 細胞およびマクロファージを除去した細胞分画で同様の実験を行ったところ,IL・1のIL・ 3に対する相乗効果はCFU GMを除いて同様に認められた。
3)抗サイトカイン抗体の効果
IL,1とIL・3を添加した培 養系に各種抗サイトカイン抗体を添加したところ,抗IL―1 抗体ではIL・1の相乗効果は 完全に消去され,抗GM・CSF抗体の添加によって部分的に消 去された。
4)CD34陽性細胞を用いての造血前駆細胞増幅
C D34陽 性細 胞を用いて 一週間培養すると,同様にILー3単独に比べてIL―1とIL―3 によってより多くの前駆細胞が維持された。
5)限界希釈液体培養におけるIL ‑1とIL ‑3の効果
CD34陽性細胞中でIL一3単 独にたいして↓ま24個中1個が反応して増殖し,IL一1とIL― 3に対しては16個中1個が反応して増殖した。
IV考案および結語
1.インター口イキン1口とインター口イキン3とは相乗的に骨髄単核細胞,非付着細胞,お よ びT細胞 除 去非 付着 細胞 を用 い た造 血前 駆細 胞 の生 体外 での 増幅 を 支持 した 。
2. 限 界 希 粡 液体 培 養 法 に おい て 純 化 し たCD34陽 性細 胞 に対 して も,イ ン夕一 口イキ ン1ロ と イン タ ーロイ キン3とが インタ ーロ イキン3単 独に比 較して 効率良 く増 殖を支 持した 。 3. イ ン タ ー 口 イ キ ン1ロ と イ ン タ ー ロ イ キ ン3と の 相 乗 効 果 の 一 部 は 抗GM―CSF抗体 に よ って 消 去 さ れ た 。
4. 純 化 し た 細胞 分 画 を 用 いる と イ ン夕一 口イ キン1ロと インタ ー口イ キン3によ っても 前駆 細 胞 の 増 幅は支 持され ず,造 血因 子以外 の骨髄 問質細 胞との 相互 作用な どが必 要であ るこ
と が 示 唆 さ れ た 。
こ れ らの 検 討 の 結 果, イ ン タ ー 口 イキ ンiBと イン夕 一口イ キン3とに よって ヒ卜造 血前 駆細 胞 の生体 外増幅 が最 も効率 良く支 持され ,そ の効果 の大部 分は直 接効果 により,一部は間接効果 に よるこ とが示 唆さ れた。