2.2 相対論的運動論
2.2.8 moment 展開
ではこの散逸係数(2.302)、(2.303)、(2.304)の非相対論的極限、超相対論的極限でどう なるかを見てみよう。まず非相対論的極限ζ À1はセクション2.2.4と同様にベッセル関 数の漸近展開を用いると次のようになる。
µ' 25 256σ
rmT π
1 ζ2
µ
1− 183 16
1 ζ +· · ·
¶
(2.305) κ' 75
256mσ rmT
π µ
1 + 13 16
1 ζ +· · ·
¶
(2.306) η' 5
64σ rmT
π µ
1 + 25 16
1 ζ +· · ·
¶
(2.307) この式より最低次は非相対論の表式になっていることがわかる。更にbulk viscosityは非 相対論的極限で消えることが分かる。
同様にして超相対論的極限ζ ¿1では次のようになる。
µ' 1 288π
T σζ4
· 1 +
µ49
12 + 76 lnζ 2 + 6γ
¶ +· · ·
¸
(2.308) κ' 1
2πσ µ
1− 1
4ζ2+· · ·
¶
(2.309) η' 3
10π T σ
µ 1 + 1
20ζ2+· · ·
¶
(2.310) 非相対論的極限の場合と同様にこの極限でもbulk viscosityは消えることが分かる。
式(2.313)の中の量は次のように定義される。
Tµνρ ≡
Z d3p
p0 pµpνpρf (2.314)
Pνρ ≡ 1 2
Z d3p p0
d3p1
p01 (p0νp0ρ+p0ν1 p0ρ1 −pνpρ −pν1pρ1)f f1pµpµ1vrelσ (2.315) これらの方程式はn, uµ, T,Π, pµν, qµが14個のmomentの時間発展を記述する方程式を 全て含んでいる。ところがTµνρ は14-moment より高次のmomentも含んでしまってい るので、必要なmomentだけを抜き出してやらなければならない。そこで分布関数f を 14-momentのみが含まれる形で求めてそのf を用いてTµνρ を計算しよう。
uµ の静止系でのエントロピー密度をs とすると、セクション2.2.1からf を用いて次 のように表される。
s≡ −uµ n
Z d3p
p0 pµf(lnf −1) (2.316) 14-momentを残すために次の14個のconstraintを課そう。
Nµuµ=uµ
Z d3p
p0 pµf (2.317)
Tµνuµ=uµ
Z d3p
p0 pµpνf (2.318)
Thµνiρuρ =uρ
Z d3p
p0 phµpνipρf (2.319) 本来NµとTµν に全てのmomentが含まれているのでそれをconstraintとして課せばよ いのだが、計算が煩雑になり導出される式は上のconstraint から得られる式と同じなの でこの論文ではこちらを課して考える。
ここで次の関数を考える。
F =−uµ n
Z d3p
p0 pµf(lnf −1) +λ µ
Nµuµ−uµ
Z d3p p0 pµf
¶
(2.320) +λν
µ
Tµνuµ−uµ
Z d3p p0 pµpνf
¶
+λhµνi
µ
Thµνiρuρ−uρ
Z d3p
p0 phµpνipρf
¶
この関数をf について変分すると、エントロピー増大側より14-moment以外のmoment は全て減衰した分布関数f が得られる。Euler-Lagrange方程式を解くとf は次のように 求まる。
f = exp h
−n(λ+λµpµ+λhµνiphµpνi) i
(2.321) この14個のλ、λµ、λhµνiには考えたい14個のmomentが含まれている。そこでこれら を次のように平衡部分と非平衡部分に分離する。
λ =λE+λN E, λµ=λEµ +λN Eµ , λhµνi =λN Ehµνi (2.322)
するとf は次のように書ける。
f = exp£
−n(λE+λEµpµ)¤
×exp h
−n(λN E +λN Eµ pµ+λN Ehµνiphµpνi) i
(2.323) 第一項は平衡部分なので局所平衡分布f0 であり、さらに今平衡に近い場合を考えるとし て非平衡部分のmomentは1より非常に小さいとするとf は次のように展開できる。
f =f0n
1−n(λN E +λN Eµ pµ+λN Ehµνiphµpνi)o
(2.324) λN Eµ 、λN Ehµνiをuµを用いて次のように分解しよう。
λN Eµ = ˜λuµ+ ˜λνγµν (2.325)
λN Ehµνi= Λuµuν + 1
2Λρ(γµρuν +γνρuµ) + Λρσ µ
γµργνσ − 1
3γρσγµν
¶
(2.326) 以上より分布関数f は次のようになる。
f =f0n
1−nλN E −n(˜λuµ+ ˜λνγµν)pµ (2.327)
− n
·
Λuµuν + 1
2Λρ(γµρuν +γνρuµ) + Λρσ µ
γµργνσ − 1
3γρσγµν
¶¸
phµpνi)
¾
このf からΠqµphµνiを求めよう。まずf を次の四元粒子流束の定義式に代入する。
Nµ =
Z d3p
p0 pµf =
Z d3p
p0 pµf0 (2.328)
得られたNµにuµとγνµ を作用させると次の二つの式が得られる。
λN E + ˜λm µ
G− 1 ζ
¶
+ Λm2 µ
1 + 3G ζ
¶
= 0 (2.329)
˜λµγµν +mGΛµγµν = 0
同様にして式(2.327)をTµν の定義式に代入する。得られた Tµν をセクション2.2.5 のように分解すると次のような式が得られる。
phµνi =−2n2m2TG
ζΛhµνi (2.330)
Π = −n2T
·
λN E +Gmλ˜+ µ
1 + 5G ζ
¶ m2Λ
¸
qµ =n2T
·
Gmγµν˜λν + µ
1 + 5G ζ
¶
m2γµνΛν
¸
λN E µ
G− 1 ζ
¶ + ˜λm
µ 3G
ζ + 1
¶
+ Λm2 µ
15G ζ2 + 2
ζ +G
¶
= 0
以上で14個の式(2.329)、(2.330)が得られ、これらの式を解くことで14個の未定係数が 全て巨視的な量で表される。これらを代入すると求めたい分布関数f は次の形になる。
f =f0
½
1 +α0Π P
µ
α1+α2uµpµ+ ζ
m2uµuνpµpν
¶
(2.331) + α3
qµ P
µG
mpµ− 1
m2uνpµpν
¶
+ phµνi P
ζ
2Gm2pµpν
¾
係数は次のように与えられる。
α0 = 1−5Gζ−ζ2+G2ζ2
20G+ 3ζ−13G2ζ−2Gζ2+ 2G3ζ2 (2.332) α1 = 15G+ 2ζ−6G2ζ+ 5Gζ2+ζ3−G2ζ3
1−5Gζ−ζ2+G2ζ2 α2 = 3ζ
m
6G+ζ−G2ζ 1−5Gζ −ζ2+G2ζ2 α3 = ζ
ζ+ 5G−G2ζ
このf を用いて散逸項の発展方程式を導こう。まずTµνρ、Pµν は次のように計算で きる。
Tµνρ = (nC1+C2Π)uµuνuρ+ 1
6(nm2−nC1 −C2Π)(ηµνuρ+ηµρuν +ηνρuµ) (2.333) +C3(ηµνqρ+ηµρqν +ηνρqµ)−6C3(uµuνqρ+uµuρqν +uνuρqµ)
+C4(phµνiuρ +phµρiuν +phνρiuµ)
Pµν =B1(ηµν −4uµuν) Π +B2(uµqν +uνqµ) +B3phµνi (2.334) 係数Ci は次のように与えられる。
C1 = m2
ζ (ζ + 6G) (2.335)
C2 =−6m ζ
2ζ3−5ζ + (19ζ2−30)G−(2ζ3−45ζ)G2−9ζ2G3 20G+ 3ζ−13G2ζ−2ζ2G+ 2ζ2G3
C3 =−m ζ
ζ + 6G−G2ζ ζ + 5G−G2ζ C4 = m
Gζ(ζ+ 6G)
またBiは散乱断面積に関係する量で、セクション2.2.7でも現れたIi を含む。
B1 =− ζ 3m2P
(1−ζ2−5ζG+ζ2G2)I1
20G+ 3ζ −13G2ζ−2ζ2G+ 2ζ2G3 (2.336) B2 = ζ
3m2P
I1−I2
ζ+ 5G−ζG2 B3 = ζ
30m2P
2I1−6I2+ 3I3
G
以上により得られた結果を発展方程式(2.313)に代入すれば求めている式が得られる。
ここで散逸項の時間微分を除いた二次の量、つまり散逸項と勾配量の二次の項を落とす と、次のような式になる。
C2
2 DΠ + 1
2(m2+C1)Dn− ζ
2TnC10DT −5C3∇µqµ (2.337) +1
6(nm2+ 5nC1)∇µuµ=−3B1Π 5C3Dqµ− 1
6
·
(m2−C1)∇µn+ ζ
T nC10∇µT −C2∇µΠ
¸
−C4∇νphµνi (2.338)
−1
6(nm2+ 5nC1)Duµ =−B2qµ C4Dphµνi+ 2C3∇hµqνi+ 1
3(nm2−nC1)∇hµuνi =B3phµνi (2.339) この式で0 はζ に関する微分を表す。最後に式(2.337)、(2.338)に含まれるDn、Duµ、 DT を消すために次の流体方程式を代入する。
Dn+n∇µuµ= 0 (2.340)
nhEDuµ =∇µ(P + Π)− ∇νphµνi−Dqµ ncVDT =−P∇µuµ− ∇µqµ
すると式(2.337)、(2.338)は次のようになる。
C2
2 DΠ− n
2(m2+C1)∇µuµ+ ζ 2T
C10
ζ2+ 5ζG−ζ2G2−1(∇µqµ+P∇µuµ) (2.341)
−5C3∇µqµ+ 1
6(nm2+ 5nC1)∇µuµ =−3B1Π 5C3Dqµ− 1
6
·
(m2−C1)∇µn+ ζ
T nC10∇µT −C2∇µΠ
¸
−C4∇νphµνi (2.342)
− 1
6nhE(nm2+ 5nC1) h
∇µ(P + Π)− ∇νphµνi−Dqµ i
=−B2qµ
以上により得られた式(2.339)、(2.340)、(2.341)、(2.342)が14-moment展開の基礎方程 式である。非相対論の場合と同様に、式(2.339)、(2.341)、(2.342)はそれぞれphµνi、Π、 qµの発展方程式になっている。なお式(2.339)、(2.341)、(2.342)においてphµνi、Π、qµ
の緩和が十分進み、これらの時間微分と勾配を0とおくとChapman-Enskogの一次の展 開から得られた散逸項が得られることに注意せよ。