第 3 章 運動論的方程式の線形摂動 61
3.1.3 Result
k−√
πeb2Erfc(b) = 0 (3.27)
この分散関係式により求まったωを用いて固有関数δρ、δu、δT を求めれば、δf は次 のようにして解が得られる。
δf(v) =X
n
Cnf¯0(v) 1−iωn+ik·v
·δρωn
ρ0 + 2v·δuωn + µ
v2− 3 2
¶ δTωn T0
¸
e−i(ωnt+k·x) (3.28) ここでCn は定数係数である。
なお分散関係式に現れる補誤差関数Erfc(z)は、|arg(z)|< π/4でのみ値を持つ。この ことはこの分散関係から得られるω の位相速度は、音速程度を上限に持つことを示す。
ところで式(3.28)を求める過程で両辺にψµを掛けて積分したが、これは式(3.28)より matching condition を課したことと等価になっている。すると上の議論より matching
condition は保存則と等価であるはずなので、得られた固有値方程式も保存則になってい
るはずである。これは式(3.21)にbを掛けたものと式(3.23)にiを掛けたものを足すこ とで
−ωδρ+k·δu= 0 (3.29)
という連続方程式が求まることからも正しいことが分かる。
終わりに1−iω+ikv= 0の場合について考えよう。この場合分散関係は連続量kvに 依存したcontinuous modeになっていて、この分散関係を満たす固有関数は式(3.17)か ら次の式を満たす。
0 = Z
d3v0f¯0(v) τ
·m ρ0
+ v RT0
·v0+m µ v2
2RT02 − 3 2T0
¶ µ v02 2RT0
− 3 2
¶¸
δf(v0) (3.30)
=δf0
つまりこのモードは巨視的な変数であるρ、u、T 以外のf のmomentに摂動を入れた 場合の減衰を表している。なおこのモードに関して式(3.30)だけからは独立な固有モー ドを求めることは出来ず、別の方法で求めなければならない。これに関してはセクション 3.1.6 で議論することにする。
0.001 0.01 0.1 1 10 100
0.1 1 10
(ωτ)
k τ Cs
図3.1 熱伝導を表す分散関係
0.001 0.01 0.1 1 10 100
0.1 1 10
(ωτ)
k τ Cs
図3.2 減衰音波を表す分散関係
0.001 0.01 0.1 1 10 100
0.1 1 10
(ωτ)
k τ Cs
図3.3 shear flowの分散関係の減衰部分
実線が ω の虚数部分で減衰率を表し、点線がω の実数部分で振動数を表す。実線は k2 に比例しており、Navier-Stokes方程式の減衰項を長波長側できちんと再現できてい ることが分かる。またNavier-Stokes方程式が短波長では近似が悪くなることも分かる。
shear flowと熱伝導は減衰項のみが得られ、希薄気体中では縦波のみが伝播することを確
認できる。
また次のようなモードも発見した。
0.001 0.01 0.1 1 10 100
0.1 1 10
(ωτ)
k τ Cs
図3.4 shear flowに付随する運動論的なモードの分散関係
0.001 0.01 0.1 1 10 100
0.1 1 10
(ωτ)
k τ Cs
図3.5 運動論的なモード1の分散関係
0.001 0.01 0.1 1 10 100
0.1 1 10
(ωτ)
k τ Cs
図3.6 運動論的なモード2の分散関係
これらはIm ωが1から始まっており、流体近似では得られなかった運動論的なモード を表している。後のセクションでこれらのモードの固有関数を調べ、これらがどのような 物理を表すかを議論する。
また減衰波の実験と合わせやすいようにプロットした図は次のようである。
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0.01 0.1 1 10
Re (k/ ω)
1 / τ ω
図3.7 位相速度の実数部分
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0.01 0.1 1 10
Im (k/ ω)
1 / τ ω
図3.8 位相速度の虚数部分
この結果は同様の計算を行なった Bhatnagar らの仕事 [19] を再現し、Sirovich ら の [35] 結果とも矛盾しない。
固有関数
各モードの物理的意味を調べるために固有関数を調べる。式(3.21)、(3.23)、(3.25)に 得られた分散関係を代入し、δρ を1として規格化し、密度、速度、温度の揺らぎに付い て各モードをプロットすると次のようになる。
0.01 0.1 1 10
0.1 1 10
k τ Cs
δ ρδ u δ T
図3.9 熱伝導モードの固有関数
0.1 1 10
0.1 1 10
k τ Cs
δ ρδ u δ T
図3.10 減衰音波モードの固有関数
0.1 1 10 100
0.1 1 10
k τ Cs
δ ρδ u δ T
図3.11 運動論的モード1のモードの固有関数
0.1 1 10 100
0.1 1 10
k τ Cs
δ ρδ u δ T
図3.12 運動論的モード2の固有関数
熱伝導による緩和と予想された純粋に減衰のみして伝播しないモードは長波長でδT が 優勢でδuが0であるので、確かに熱伝導による緩和であると考えられる。興味深いこと にこのモードは波長が短くなるにつれてδuが大きくなり、これは純粋な熱伝導のみの散 逸は流体近似のみでしか成り立たないことが分かる。
また減衰音波モードはδρ、δuが優勢なのでこれは音波を表していると考えられる。こ のモードは短波長でδT が他を凌駕するようになり、音波は長波長領域のみでの近似的描 像であることが分かる。残りの2つのモードは同じような振る舞いをする。これらは密度 の摂動は小さく、速度、温度の摂動がどの波長領域でも大きい。ただしこれらはωの虚数 部分のプロットからも分かる通り減衰が衝突時間よりも短く、また振動数と同程度か大き いので波としては伝播せず、巨視的には現れないものである。