2.2 相対論的運動論
2.2.2 相対論的 Boltzmann 方程式の導出
この章では相対論的なボルツマン方程式の導出を行なう。非相対論の場合と同様に粒子 は中性で短距離力のみが働くと仮定する。また縮退はしていないと仮定する。
ロレンツスカラー関数f の時間発展方程式を求めよう。そのために先の証明と同様に 全位相空間の粒子数は時間に依存しないことを用いる。位相体積をdµ =d3xd3pとし全 位相空間の粒子数をN(t)と置いたとき、次の式が成り立つ。
∆N =f(t+ ∆t,x+v∆t,p+F∆t)dµ(t+ ∆t)−f(t,x,p)dµ(t) = 0 (2.149) この式でv =p/p0 で、Fは外力を表す。この式を微少な時間∆tで展開することを考え よう。そのためにまずdµの微笑時間変化を求めておく。時間変化は次のように座標変換
と考えられる。
dµ(t+ ∆t) =|J|dµ(t) (2.150)
J = ∂¡
x1(t+ ∆t), x2(t+ ∆t),· · · , p3(t+ ∆t)¢
∂(x1(t), x2(t),· · · , p3(t)) (2.151)
∆tを微小と考えるとヤコビアンJ は次のようにして展開できる。
J = 1 + ∂Fi
∂pi∆t+O£
(∆t)2¤
(2.152) f をテイラー展開したものと合わせると、式(2.149)は次のように展開できる。
∆N
∆t =
·∂f
∂t +vi ∂f
∂xi +Fi ∂f
∂pi +f∂Fi
∂pi
¸
dµ(t) (2.153)
=
·∂f
∂t +vi ∂f
∂xi + ∂(f Fi)
∂pi
¸
dµ(t) = 0
この式をロレンツスカラーにするために座標時間t を固有時sで書き直すと次のように なる。
DN Ds =γ
·∂f
∂t +vi∂f
∂xi + ∂(f Fi)
∂pi
¸
dµ(t) (2.154)
= p0 m
·∂f
∂t +vi∂f
∂xi + ∂(f Fi)
∂pi
¸ dµ(t)
=
·pν m
∂f
∂xν + p0 m
∂(f Fi)
∂pi
¸
dµ(t) = 0
第一項は共変な形なので第二項を共変な形に変形しよう。まず相対論的力学より次のよう な四元化力が定義される。
Kµ =
µp·F m , p0
mF
¶
(2.155)
pµKµ = 0 (2.156)
また式(2.154)の∂/∂pは座標xを止めての偏微分だったが、更にp0 を独立変数として 考慮すると連鎖律より次のようになる。
∂
∂p → ∂p0
∂p + ∂
∂p = p
∂p0
∂
∂p0 + ∂
∂p (2.157)
これらを考慮して式(2.154)の第二項を次のように変形する。
p0 m
∂(f Fi)
∂pi =p0
· 1 p0
∂
∂p0
µfK·p p0
¶ + 1
p0 1
∂p ·(fK)
¸
(2.158)
= ∂f K0
∂p0 + ∂
∂p ·(fK)
= ∂f Kµ
∂pµ
以上により全粒子数の変化は次のように共変形式で書ける。
DN Ds =
·pν m
∂f
∂xν + ∂(f Kν)
∂pν
¸
dµ(t) = 0 (2.159)
非相対論の場合と同様にボルツマン方程式の精度によりつく無限小のスケールの下限未 満のスケールで起きる衝突の効果を入れると上の式の右辺は0ではなく衝突による項が 入ってくる。基本的な考え方は非相対論の場合と同じように衝突によりpに入ってくる 粒子数から出て行く粒子数を引けばよく、式(2.23)をそのまま拡張すればよい。その際 に問題になるのが相対速度vrel と微分散乱断面積dσをいかに共変的に表すか、という問 題である。
まず次のような状況を考えよう。二本の衝突粒子のビームがあったとし、それぞれの粒 子の数密度をn1、n2 とする。このとき相対論的な散乱断面積を粒子2の静止系での全散 乱断面積σ =R
dσ、そして相対速度vrel を粒子2の静止系での粒子1の速度と定義しよ う。この定義によりこれらの量はロレンツスカラーである。すると粒子2の静止系で体積 dV の中で時間dtの間に起こる衝突の数dν は次のようになる。
dν =σvreln01n02dV0 dt0 (2.160) 粒子2の静止系での量として0 をつけた。dν は定義よりロレンツスカラーである。
この式を任意の座標系でも使えるように拡張しよう。任意の座標系でのdν を次のよう に表す。
dν =An1n2dV dt (2.161)
Aは粒子2の静止系でσvrel に等しくなる量であり、今から形を求める量である。
四元体積dV dtはロレンツスカラーである。dν がロレンツスカラーなので、An1n2 は ロレンツスカラーでなくてはならない。nの変換則について考えよう。一般のnについて 粒子の静止系での値に添え字0をつけると、粒子数ndV の不変性から粒子の静止系から 一般の系にロレンツ変換すると次のような関係が得られる。
n=γn0 = p0
mn0 (2.162)
この関係により、An1n2 の不変性はAp01p02の不変性と同等であることが分かる。とこ ろでAp01p02はp01 のためにこのままの形では粒子2の静止系でσvrel にはならない。この ため次の量を考えることにする。
A p01p02
p1µpµ2 =A p01p02
p01p02−p1·p2 (2.163)
この量の分母はロレンツスカラーであり不変性を変えない。また粒子2の静止系で p02 = m2、p2 =0でありるためこの量は粒子2の静止系で σvrel になる。また粒子2の 静止系ではA=σvrel より、Aは任意の静止系で次のようになる。
A=σvrelp1µpµ2
p01p02 (2.164)
この式を完全に共変形式にするためにvrel を任意の基準系における運動量で表そう。
p1µpµ2 は粒子2の静止系で次のように書ける。
p1µpµ2 = p m1
1−vrel2 m2 (2.165)
これより
vrel = s
1− m21m22
(p1µpµ2)2 (2.166)
この式は全て共変な量で書かれているので求めていた式である。またこの表式はp1とp2 について対称であり、これは相対速度がどちらの粒子に対して定義するかによらないこと に注意するべきである。
dν でn =R
d3p f を代入した式を用いると非相対論の時と同様の議論で衝突項が計算 でき、次のようになる。
µ∂f
∂t
¶
coll
dµ(t) =dµ(t) Z
(f0f10 −f f1)pµpµ1
p0p01vrelσd3p1 (2.167)
= m p0
µ∂f
∂s
¶
coll
dµ(t)
以上より相対論的なボルツマン方程式は共変な形式で次のようになる。
pν ∂f
∂xν +m∂(f Kν)
∂pν =p0 Z
(f0f10 −f f1)pµpµ1
p0p01vrelσd3p1 (2.168) 両辺をp0で割り整理すると次のようにも書ける。
∂f
∂t + pi p0
∂f
∂xi + ∂(f Fi)
∂pi = Z
(f0f10 −f f1)pµpµ1
p0p01vrelσd3p1 (2.169)