10EVM = -15dB
4.10 特性評価
4.10.3 e-SLM 方式のピーク電力抑圧特性
OFDM-PLCシステムにおけるe-SLM方式の特性を評価する. サブキャリア数を64, FFT点数
を128とし,変調方式をQPSKとする. 伝送路モデルは2ブランチ型の数式モデルを用いる. ま
ず, e-SLMによるピーク電力低減効果を確認するため,α=1の場合の送信信号の瞬時電力値の
CCDF特性を図4.12に示す.黒線はピーク電力抑圧を行っていない場合の特性を表す. 青,緑,赤 はそれぞれ候補系列数を U=4, 16, 64とした場合の特性を表す. 図4.12より, CCDF=10−4にお ける正規化瞬時電力値を,抑圧を行っていない場合と比較して,U=4の場合に約2dB,U=16の場
合に約2.8dB,U=64の場合に約3.5dB低減できることがわかる.ここで,Uを増やすことでピー
ク電力をより低減できるが,候補系列探索に係る計算量は増加する.したがって,計算量とピーク 電力抑圧量の間にトレードオフ関係が存在することがわかる.
4.10. 特性評価 115
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
7 8 9 10
Instantaneous power at CCDF=10
+ ,
[dB]
Weighting factor 5
6
Received signal Transmit signal
図4.13αとCCDF=10−4における正規化瞬時電力値の関係.
図4.13にe-SLMにおける重み付き係数αとCCDF=10−4における正規化瞬時電力値の関係
を示す. e-SLMでは,受信信号推定のためにCSIを必要とするが,ここではCSIは受信機側で誤
りなく推定され,送信機側に通知されるものとする. 候補系列数はU=64とする. 黒線が送信信 号,赤線が受信信号の特性を表す.ここで,送信信号および受信信号の瞬時電力値はそれぞれの平 均電力で正規化されているものとし,受信信号は雑音の影響を受けていないものとする*2.図4.13 より,αが増加するにつれて,送信信号のピーク電力が減少しており,受信信号のピーク電力は増 加していることがわかる. また,α=0.5とすることで,送信信号と受信信号のピーク電力は同程 度抑圧されることがわかる. ここで,α= 1として,送信信号のピーク電力を低減しているにも関 わらず,受信信号のピーク電力値が上昇しているのは,伝送路によって各サブキャリアの位相が変 化し,ピーク電力が再生成されているためである.送信信号のピーク電力は送信電力増幅器にお ける非線形歪みを増加させる要因となり,一方で受信信号のピーク電力はブランキングによるイ ンパルス性雑音の誤検出を招き,信号に非線形歪みを発生させる要因となるため, 最適なαを選 択する必要がある. 本検討では, BERを最小化させるためのαを最適なαとする.
*2ここでは, PLC伝送路の利得を1としているため,送信信号と受信信号は同じ値で正規化されている.
4.10. 特性評価 116
10 20 30
7 8 9 10
Instantaneous power of the received signal at CCDF=10
-.
[dB]
//0
of the received pilot signal [dB]
5 6
1
0.6
0.ϰ
0
図4.14Eb/N0とCCDF=10−4における正規化瞬時電力値の関係.
提案方式では,送信機側で受信信号を推定するため,伝送路の推定値の精度がピーク電力抑圧特 性に影響を与える.図4.14に受信パイロット信号のEb/N0と受信信号のピーク電力特性を表す. 本図における瞬時電力値は,実際に受信された信号を観測したものであり,送信機側で推定したも のとは異なる.ピーク電力の抑圧特性はEb/N0が低い領域で大きく劣化している.これは,チャネ ル推定精度が低下したために受信信号の推定精度が低下したためである.
4.10.4 BER
特性
e-SLMとブランキングを用いるOFDM-PLCシステムの, 2ブランチ型伝送路モデルにおける
BER特性を評価する. 図4.15,図4.16にQPSK変調時, 16QAM変調時のブランキング閾値と BERの関係を示す.ここで,受信Eb/N0=25dBであり, e-SLMの候補系列数はU=64,α=0とし た. Class-A雑音のパラメータはA=0.01,Γ =0.0001とする. 図4.15,図4.16において,実線と 破線はそれぞれe-SLM適用時,非適用時の特性を表す. “lower bound,”のラベルは,すべてのイン パルス性雑音が,非線形歪みなく完全に除去できた場合の特性を表す. 赤線はブランキング非適 用時の特性を表す. 図より,ブランキング閾値が低い場合は, 受信信号が誤って検出され,非線形
4.10. 特性評価 117
0 10
10
ିଵ10
ିଶ10
ିଷB E R
5 10 15 20
w/ e-SLM w/o e-SLM
Lower bound w/o blanking
w/ blanking
[dB]
図4.15ブランキング閾値とBERの関係(QPSK,Eb/N0=25 dB,U=64).
歪みが発生することによってBER特性が大きく劣化していることがわかる. 一方で,閾値が高い 場合にはインパルス性雑音が正しく検出されないために,ブランキング非適用時の特性に漸近す ることがわかる. また, QPSK変調時, 16QAM変調時ともにBERを最小とするブランキング閾 値は7dBであることがわかる. これは, OFDM変調においては,受信信号の振幅値の確率的な性 質は変調方式に依存しないためである.
4.10. 特性評価 118
10
10
ିଵ10
ିଶB E R
0 5 10 15 20
w/ e-SLM w/o e-SLM
Lower bound w/o blanking
[dB]
w/ blanking
図4.16ブランキング閾値とBERの関係(16QAM,Eb/N0=25 dB,U=64).
4.10. 特性評価 119
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
Weighting factor 10
ିଵ10
ିଶ10
ିଷB E R
IBO 2dB IBO 4dB IBO 6dB IBO 8dB
図4.17 e-SLM適用時の電力線通信におけるαとBERの関係(16QAM,U=64,Ab=7 dB).
図4.17に, 16QAM変調時の異なるIBOに対するαとBERの関係を示す.ここで,ブランキン グ閾値は図4.16の結果より7dBとし,候補系列数はU=64とした. Eb/N0は35dBとした. 提案 方式において,αは送信信号のピーク電力と受信信号のピーク電力を調整するためのパラメータ であり,送信機側の増幅器の非線形歪みと受信機側におけるブランキングによる非線形歪みの程 度を調整する. α=1を用いる場合は送信信号のピーク電力のみを最小化するため, 電力増幅器の 非線形歪みは最小限に低減できるが,受信機側のブランキングによる歪みは考慮できない.α=0 とした場合は受信信号のピーク電力のみを最小化するため,ブランキングによるインパルス性雑 音の誤検出による非線形歪みの影響は最小限に低減できるが,電力増幅器による非線形歪みは考 慮していない. 図4.17より, IBO=2dBの場合はα=0.6, IBO=4dBとした場合はα=0,4を用いる 場合にBERを最小化できることがわかる. IBO≥6dBとなると,増幅器による非線形歪みの影響 は小さくなるため,α=0として,受信信号のピーク電力のみを最小化することで, BERを最小化 できることがわかる.以上より,最適なαは増幅器のバックオフ量依存することがわかる.
4.10. 特性評価 120
1/2
of the received pilot signal [dB]
10
10
ିଵ10
ିଶ10
ିଷB E R
0 10 20 30 40
w/ blanking
Lower bound
w/ blanking + e-SLM ( 1.0) (conventional SLM)
w/ blanking (w/o e-SLM )
w/ blanking + e-SLM ( 0.4) (proposed)
図4.18 e-SLM適用時の電力線通信におけるBER特性(QPSK, IBO=4dB,U =64,Ab=7 dB).
図4.18,図4.19に1ビット当たりの受信信号電力とAWGNの電力比,Eb/N0とBERの関係 を示す. ブランキング閾値は7dBとし, e-SLMの候補系列数はU=64,α= 0.4とした. 伝送路モ デルは2ブランチ型の数式モデルである. 実線及び破線はe-SLM適用時,非適用時の特性をそれ ぞれ表す. 比較のため,インパルス性雑音が受信機側で信号に歪みを発生させることなく完全に 除去できた場合の特性を黒線で示す.赤線はインパルス性雑音のブランキングを行っていない場 合の特性である. ブランキングによる非線形歪みは発生しないものの,インパルス性雑音の影響 によってBER特性が劣化していることがわかる. 青線はe-SLMにおいてα=1とした場合の特 性であり,これは送信機側のピーク電力のみを抑圧する従来のSLM方式と等価になる. 送信機側 の増幅器における非線形歪みの影響は軽減できるものの,ブランキングによる非線形歪みの影響 でBER特性が劣化していることがわかる. 緑の実線はα=0.4の提案方式とブランキングを併用 する場合の特性である. e-SLMとブランキングを併用することで,送信機側の電力増幅器におけ る歪みとブランキングによるインパルス性雑音の誤検出による非線形歪みの影響を軽減できるの で, BER=10−2を達成するためのEb/N0を,送信機側のピーク電力のみを抑圧する従来方式と比
較して,約5.1dB低減できることがわかる. また, BERの改善量はQPSK等の低変調多値数の方
式を用いる場合に大きい. これは,インパルス性雑音のブランキングによる雑音軽減がEb/N0≤
4.10. 特性評価 121
3/4
of the received pilot signal [dB]
10
10
ିଵ10
ିଶ10
ିଷB E R
0 10 20 30 40
w/ blanking
Lower bound
w/ blanking + e-SLM ( 1.0) (conventional SLM)
w/ blanking (w/o e-SLM ) w/ blanking + e-SLM ( 0.4)
(proposed)
図4.19 e-SLM適用時のBER特性(16QAM, IBO=4dB,U =64,Ab=7 dB).
20dBの範囲で特に有効なためと考えられる. Class-A雑音モデルでは,インパルス性雑音の強度 は, AWGNの電力とインパルス性雑音の電力比Γ = σ2w/σ2I で定義される. したがって,Eb/N0が 高い領域では,インパルス性雑音の電力が小さくなり,ブランキングが必要なくなる.しかしなが ら,高Eb/N0領域では非線形歪みによる誤り率のフロアが発生しやすいことから, 提案方式を用 いて受信信号のピーク電力を低減することが有効である.
4.10. 特性評価 122
/
[dB]
10 20 30 40
10
10
ିଵ10
ିଶ10
ିଷB E R
w/ blanking
w/ blanking + e-SLM ( 1.0) (conventional SLM)
w/ blanking (w/o e-SLM ) w/ blanking + e-SLM ( 0.4)
(proposed)
図4.20適応windowing方式の窓幅とBERの関係.
図4.20に“Measured channel II,”における適応 windowing適用時のBER特性を示す. ブラ ンキング閾値は7dBとし,α=0.4 のe-SLMを用いる. 比較として,固定の窓幅αGI を用いる固
定 windowing方式と理想チャネル推定時の BER特性を併せて示す. 信号の帯域幅は6.5MHz
(8.5MHz - 15MHz)とし, SNRの高い上位 96サブキャリアのみを伝送に用いるものとする. 図
より,αGI が小さい場合は,インパルス応答の情報が失われるためにチャネル推定精度が劣化し, BER特性が大きく劣化していることがわかる. またαGI が大きい場合には雑音が残留するため に,チャネル推定制度が少し劣化していることがわかる.提案の適応windowing方式では,チャネ ル行列の変化量が最大となる手前の窓幅を適応的に決定できるため, 固定windowing方式と比較 してチャネル推定精度を改善できるため, BER特性を改善できることがわかる.