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TOBにおける機関投資家の持株提供

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@案

第3節   TOBにおける機関投資家の持株提供

 第1節でふれたように、敵対的な買収はプロクシー・コンテストと同様に、経営 者に対するモニタリング装置である。多くの場合、TOB後に現職経営陣は交代さ れることとなる。したがって、TOBにおいて買付者に持株を提供する株主は、持

ZZ

@ 反対株主が提案したプロクシー・コンテストにおける機関投資家の 弱

腰 の姿勢と、現職経営陣による提案に対する 強気 の姿勢の好対照について、

Jarrell〔1991, PP.345−346〕においては、2っの実証結果が矛盾だとされ、機関 投資家のモニタリングへの無関心と経営陣への賛成傾向を指摘するPoundの主張に 疑問が投げかけられている。しかし、次のように考えれば、2っの対照的な姿勢は 矛盾にはならないであろう。すなわち、もし反対株主による株主提案と経営陣によ る提案という形式による機関投資家の意思表明に差があるとするならば、おそら く、その差は、現職経営陣への反対の度合いの差に起因すると思われる。すなわ ち、反対株主による反対提案の方が、現職経営陣による提案への反対よりも、経営 陣に対する反対の度合いが大きいと機関投資家が感じているということである。こ う考えれば、機関投資家は反対株主による経営陣への反対提案に同調して投票する ことに躊躇しやすいことの一つの説明は可能である。

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株の提供という行為によって現職経営陣の交代を望んでいることを結果的に表明す ることになる。

 そこで、実際のTOBにおける機関投資家の持株提供の判断において、ターゲッ ト企業の現職経営陣との関係がどれだけ考慮されているかが問題となる。これに答 えようとしたのが、Eakins〔1993〕である。 Eakins〔1993〕では、1985年から1988 年までに行われた成功・失敗を含むTOB259件をサンプルとし、 TOBの前後で のターゲット企業の機関投資家の所有比率が分析されている。さらに、機関投資家 は利益相反の有無で3っに区分されている。すなわち、利益相反のある機関投資家 には、銀行信託部、保険会社、企業年金基金が、利益相反のない機関投資家には、

投資顧問会社(ミューチュアル・ファンドを含む)と公的年金基金が、そしてその 他の機関投資家にはこれら以外のものが含まれる。ここで分かるように、利益相反 のある機関投資家に企業年金基金が含まれていることが第2節でみた実証分析との 相違である。しかし、第1節で指摘したように、企業年金基金も利益相反の可能性 が十分にあるため、この相違は大きな問題とはならないと考えられる。

 まず、それぞれの機関投資家のタイプ別の所有比率の変化をみてみよう。図表6

は、TOB発表前の四半期、 TOBが発表された四半期、そしてTOBが終了した

四半期におけるターゲット企業の平均の機関所有比率を示したものである。一見し て分かるように、成功したTOBにおいていずれのタイプでも大きく所有比率が減 少している。これに対して、失敗したTOBにおいては減少が小さいことが分か る。しかし、図表6ではTOBにおける機関投資家の持株提供と利益相反の有無の 関係が十分に示されていない。

 そこで、Eakins〔1993〕では、この関係をより明確に示すために、機関所有比率 の変化と、利益相反の有無およびターゲット企業の経営者の反対との相関関係を考 察している。すなわち、TOBが行われる前後の四半期でのターゲット企業の所有 比率の変化を、機関投資家の利益相反の有無と、経営者の反対にっいての回帰分析 が行われている。その回帰式は次のものである。

       PERCHjtニαo+α1(TYPEDUMjt)+α2(REACTDUMj)

 ここで、

  PERCHj、= TOBが発表された前後の四半期における企業jのtタイプの機関       投資家の所有比率の変化の合計

  TYPEDUM,,= 機関投資家のタイプについてのダミー変数(その機関投資家が利        益相反と考えられる場合は1、そうでなければ0とされる)

  REACTD田.= ターゲット企業の経営者の反応についてのダミー変数(そのT

     J

       OBに経営者が反対すれば1、そうでなければ0とされる)

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図表6 TOB前後の四半期におけるターゲット企業の機関所有比率 機関投資家

フタイプ TOB発表前の

@四半期末 TOBが発表さ

黷ス四半期末

TOBが終了し

@た四半期末

パネルA  成功したTOB(194件)

利益相反のある

@機関投資家

11.59 i8.76)

4.97 i7.56)

2.65 i6.16)

(変化率) 一57.1% 一77.1%

利益相反のない

@機関投資家

24.89 i16.44)

9.88 i11.54)

5.56 i9.40)

(変化率) 一60。3% 一77.7%

その他の

@関投資家

4.94 i4.93)

2.11 i3.77)

0.95 i2.29)

(変化率) 一57.3% 一80.8晃

パネルB  第1買付者が失敗したTOB(65件)

利益相反のある

@機関投資家

8.79 i9.59)

4.71 i7.64)

3.60 i7.56)

(変化率) 一46.4% 一59.0%

利益相反のない

@機関投資家

20.74 i20.13)

9.97 i12.94)

7.01 i11.70)

(変化率) 一51.9% 一66.2%

その他の

@関投資家

4.19 i5.35)

1.97 i3.38)

1.27 i2.52)

(変化率) 一53。0% 一69.7%

パネルC  どの買付者も失敗したTOB(28件)

利益相反のある

@機関投資家

11.84 i11.95)

10.17 i11.60)

9.09 i11.32)

(変化率) 一14.1% 一23.2%

利益相反のない

@機関投資家

23.10 i15.61)

19.92 i12.86)

19.21 i13.52)

(変化率) 一13.8% 一16。8%

その他の

@関投資家

4.63 i5.91)

4.08 i5.23>

3.31 i3.32)

(変化率) 一11.9% 一28.騙

(注)数値は平均の所有比率。かっこ内の数値は標準偏差。変化率はTOB発表前の四半期末   の所有比率に対する変化。利益相反のある機関投資家とは、銀行信託部、保険会社、企

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  業年金基金が含まれる。利益相反のない機関投資家とは、投資顧問会社(ミューチュア   ル・ファンドを含む)と公的年金基金が含まれる。その他の機関投資家とは、これら以   外のものが含まれる。サンプル合計数は259件である。したがって、パネルAとパネル   Bの件数の合計がこれにあたる。パネルAは、第1買付者によるTOBが成功したも        L

  の。パネルBは、第1買付者によるTOBが失敗したもの。これには、競合した買付者   (第1買付者のTOB終了後1年闇に現れた買収者)によるTOBが成功したものとし   ないものが含まれる。パネルCは、第1買付者も競合した買付者も成功しなかったも   の。したがって、最終的に成功したTOB件数は231(194+37)件、失敗したTOBは   28件である。

(出所)Eakins〔1993〕p.79, table 2.より作成。

図表7 ターゲット企業の機関所有比率の変化と、利益相反の有無および経営 者の反対との相関

α    α   α   件数   F   R2

パネルA  全サンプル 全サンプル 一〇.66**

i−20.80)

0.07*

i1.85)

0.12**

i3.14)

259 6.79** 0.03

パネルB  成否による区別 成功した場合 一〇.67**

i−20.80)

0.07*

i1.85)

0.12*零 i3.14)

194 6.64** 0.03

第1買付者が ク敗した場合

一〇.59**

i−8.09)

0.07 i0.93)

0.09 i1.20)

65 1.14 0,003 どの買付者も

ク敗した場合

一〇.24**

i2.67)

0.11 i1.14)

一〇.03 i−0.31)

28 0.71 一〇.02

(注)回帰式:PERCH」、=αo+α1(實PED㎝jt)+α2(REACn〕田j)

  PERCHj、=TOBが発表された前後の四半期における企業jのtタイプの機関投資家の所   有比率の変化の合計。買PED㎝j、=その機関投資家が利益相反と考えられる場合は1、そ   うでなければ0。REAen〕田.=そのTOBに経営者が反対すれば1、そうでなければ0。

       J

  かっこ内の数値はt値。*は騙水準での有意、zzは1%水準での有意を示す。成功した場   合、第1買付者が失敗した場合、どの買付者も失敗した場合の説明にっいては図表6を   参照。

(出所)Eakins〔1993, pp.81,83, table 3,5〕より作成。

図表7は、この回帰分析の結巣を示したものである。この回帰式において定数項

(αo)の値は、利益相反のない機関投資家が経営者の反対のない場合でのTOB

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前後の所有比率の低下を表しており、すなわち、TOBで持株提供した比率を意味 する。したがって、パネルAの全サンプルのTOBについてみると、利益相反のな い機関投資家が経営者の反対のない場合にTOB前の所有の66%を提供しているこ とが示されている。また、]rYPEDUM,,は利益相反の有無による機関投資家の所有比率 の低下を表しているから、利益相反のある機関投資家にっいては、ない機関投資家 よりも、TOBの前後で所有比率の減少、すなわちTOBでの持株提供が7%少ない ことが分かる。さらに、REACTDUM,=は経営者の反対の有無による機関所有比率の 低下を表していることから、ターゲット企業の経営者が反対したTOBでは、反対 されないTOBよりも、機関投資家の所有比率の減少は12%少なくなっていること が分かる。このことを換言すれば、まず、利益相反のない機関投資家(っまり、

TYPEDUM」t=o)は、経営者が反対していない場合(っまり、REACTDUM, = O)、そ の所有の6〔ffを売却し、経営者が反対している場合(っまり、REAC TDUM, =1)、そ の所有の54%(60m 一 12%)を売却していることになる。そして、利益相反のある機 関投資家(っまり、買PEI那jt=1)は、経営者が反対していない場合(っまり、

REACTDUM.=0)、その所有の5驕(66%−7%)を売却し、経営者が反対している場     J

合(っまり、REACTDUM.=1)、その所有の47%(6磯一嬬一12%)を売却していると          J

いえる。

 以上から明らかなように、TOBにおいては、利益相反のある機関投資家につい てその持株提供が7%抑制され、さらに、ターゲット企業の経営者が反対する場合に は、利益相反の有無に関わらずすべての機関投資家について持株提供が12%抑制さ れている。これらの2っの持株の抑制はいずれも、機関投資家がターゲット企業の 現職経営陣との関係を考慮した結果の抑制なのであろうか。まず、はじめの7%の抑 制についてみると、これは利益相反の有無による差であるから、経営陣との関係を 考慮した結果だと考えるのが妥当であろう。

 では、12%の抑制にっいてはどうか。経営陣の反対によって機関投資家の持株提 供が抑制されるということは、現職経営陣への配慮を反映しているとみることもで きる。しかし、この12%の抑制は、利益相反の有無以外の理由による持株提供の抑 制である。ここで考えられることは、機関投資家はTOBの成否を予測して勝利者 側につくようにその持株の提供を決定するということである。つまり、単に成功す

る場合には、買付者に提供し、失敗する場合には提供しないというわけである。第

2章でふれたように、経営者の反対はTOBの失敗の可能性を引き上げる。した

がって、機関投資家は経営者の反対から失敗を見込み、そのTOBに対しては持株

を積極的には提供しないことが予測される。そこで、TOBが失敗する場合に機関 投資家の持株提供にどのような差が生じるかが分析される必要がある。パネルBに

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