• 検索結果がありません。

機関投資家とその影響力

ドキュメント内 見る/開く (ページ 86-109)

 本章の課題は、現代のアメリカにおいて機関投資家がその主要な投資主体であ り、本論の課題を検討する際の分析対象としてとりあげられるべき投資家グループ であることを明らかにすることである。そこで、まず、現代のアメリカの株式市場 は、いわゆる 機関化 現象をともなっていることが確認される。次に、機関投資 家はいくつかのタイプがあるにもかかわらず、その投資決定の類似性により一っの グループとしてみなされうることが示される。

第1節  アメリカの株式市場の機関化

 本節では、以下で注目する機関投資家が戦後から現代に至るまでアメリカの株式 市場においていかにして成長してきたかを概観する。

第2次大戦後のアメリカにおいては、平時への復帰にともなう資金需要構造の変 化を背景として、金利水準の低下による金融緩和政策がとられた。この金融緩和政 策は、企業の資本蓄積を促進させる役割を果たすと同時に、株式市場の拡大を促進 した。すなわち、政府の資金需要を代表する国債市場から解放された貯蓄が主とし て企業証券市場、特に株式市場へと向かうこととなった1。このような構造的な資 金流入によって、株式に対する需要が増加し、株価の持続的な上昇をがもたらされ た。この株価の上昇によって、株式の配当利回りが社債利回りを下回るいわゆる

「利回り革命」といわれる事態が発生することとなった。

 この新しい株価形成のメカニズムを現実化させた背景は、一っには、IBMに代表 されるような高成長企業が出現したことであった。この種の企業は、留保利益の累 積と、有利な条件で調達できる株式資本の累積による機能資本の増大によって、総 資本利益率が横這いあるいは低下しているにもかかわらず、純利益や一株あたり収 益・配当が急増する。そのため、株式取得時点におけるPERが高く配当利回りが低

くても、長期闘投資するうちに、取得コストを基準にした配当利回りは配当の憩増 のために増加し、また、PERが高水準に維持されれば株価も急上昇することになる からキャピタル・ゲインも大きくなる。したがって、これらの企業の株式は、たと

ll.取得時にPERが高くとも長期間投資すれば十分採算がとれる株式であった。また、

他方でこのような株価上昇を支えるには、それらを大量に買い続ける投資家が不可 以下の記述は、北條〔1992,59〜62頁〕に基づいた。

      78

欠であるが、その役割を担ったのが機関投資家であった2。このような背景を持っ て、1950年代中頃以降、アメリカの株式市場において機関投資家が台頭してくるこ

ととなる。

 機関投資家には、年金基金、投資会社(投資信託)、生命保険、損害保険、個人 信託基金、財団、教育基金(大学基金)等が含まれる。戦後において急速に成長し たのは企業年金基金であり、当時は生命保険会社を通して国債やモーゲージなどの 株式以外への証券投資が一般的な姿勢であったが、その後、商業銀行信託部を主導 的な受託者とするようになり、普通株を大量に取り込んだ投資姿勢をとるように

なった3。

 このように、機関投資家は1950年代中頃から次第に保有資産における株式保有比 率を上昇させてくる中で、アメリカの株式市場における機関投資家の果たしている 役割と影響力の増大が注目されてくる。そのため、1967年のいわゆる『パットマン 委員会報告』似来、SECによる『機関投資家調査』5や、メトカーフ委員会およびリ ビコフ委員会といったアメリカ議会の小委員会での調査等によって研究が進められ

てきた。

 このような機関投資家の株式市場における影響力の増大は、先に記したように、

戦後のアメリカ経済の成長期、そしてそれを体現した企業収益の長期的上昇と共に 進展してきたのであるが、アメリカ経済は1960年代末から1970年代初頭にかけてス タグフレーションに陥り、それによって生じた企業収益の低下にともない、その 後、株価は低迷することになる。この状況に対して、機関投資家は、少数の優良銘 柄への集中投資に向かうこととなった。これによってこれらの優良銘柄のPERの水 準を極端に引き上げ、他の銘柄のPERの水準との差を大きく開かせることとなり、

いわゆる二重相場が形成された。このように、1960年代末の企業収益の低迷の下で なお高いパフォーマンスを達成しようとすれば、それまでの成長株の長期投資に変 わって、短期的な売買によるキャピタル・ゲインの取得と、そのような状況でもな お高い成長率を示す一部の銘柄への集中投資への向かわざるを得なかったといえ

る6。

 1970年代後半から機関投資家は株式の組入れを引き上げはじめるとともに7、

1980年代では機関投資家のその運用姿勢は変化した。すなわち、それまでの現代 2  以上の記述は、西川・松井〔1989,280〜281頁〕に基づいた。

3  以上の記述は、服部〔1992,179−181頁〕に基づいた。また、投資会社、生 命保険、企業年金の当時の成長の詳細な分析については、北条〔1992、第2章第2

節〕を参照。

4   House of  Representatives 〔1968〕 。

5   Securities and Exchange Commission 〔1971〕 。

6  以上の点にっいては、佐賀〔1991,21〜26頁〕に基づいた。

7   Business Week〔1978〕を参照。

       79

ポートフォリオ理論の実用化の流れを受けてインデックス・ファンドが採用されは じめた。さらに、コンピューター技術の発展やデリバティブ布場の創設などの証券 市場規制改革を背景として、ポートフォリオ・インシュアランスなどのいわゆるプ ログラム取引が広く行われることとなった。これらにくわえて、レーガン政権下の 規制緩和による景気の上昇によって、株式市場は活況を呈することとなった。しか し、価格の大幅な変動など、これらの市場に与える悪影響も問題視されるようにな り、1987年のブラック・マンデーの暴落を一つの景気として、199〔咋代初頭まで、

アメリカの株式市場は低迷することとなる8。

 ただし、このような時代ごとの株式市場における変遷にもかかわらず、機関投資 家の株式保有額はほぼ一貫して上昇傾向を示してきた。図表1から分かるように、

機関投資家の合計の株式保有額は、インフレの影響を別とすれば、1950年では114 億ドルであったのが、1970年ではその21倍の2,398億ドルとなっている。また、最 近2〔降問をみても、1980年では5,330億ドルであったのが、199〔}年では約3倍の1兆 4780億ドル、1999年では約18倍の9兆5,514億ドルと大きく増加している。これを 1950年から1999年までの約50年間でみると、838倍の上昇である。比率でみると、

図表2にあるように、1985年まで一貫して上昇している。その後、1992年までいく らか低下傾向を示したが、その後に再び増加し、1998年にはっいに全体の50%を超 えるに至っている。これに対して、個人投資家の占める割合は、低下傾向を示して いる。すなわち、1950年には90.2%であったのが、1970年では68.O%、1980年では 59.1%、1990年では51.〔瀦となり、1994年にはっいに5(瑞を下回っている9。このよう に、アメリカの株式保有の推移から、機関投資家の保有比率の上昇とそれにともな う個人投資家の保有比率の低下という特徴があることがわかる。

 また、時価総額上位の企業における機関投資家の所有比率をみてみると、図表3 の示す通り、1989年では、上位500社においてすでに5臨を超えるに至っている。さ

らに、個別にみていけば、Ph i l ip Morris(65%), Johnson&Johnson(62%),

3M(66%),  Eli  I.ily(69%),  American  Express(63%),  Pfizer(63%), Digital

Equipment(71%), Capital Cities/ABC(88%)と50%を大きく上回る所有比率を占め る企業もある1°。さらに、保有資産額の大きな機関投資家の地位も大きい。すなわ ち、トップ20のファンドは、時価総額トップ10位の企業の発行済株式数の7.篇を占 めており、別の10の投資マネージャーはトップ1〔歴業の株式の7.8%を占めている。

この両者合計で15.5%を所有しており、これは全機関投資家の所有の約1/3に相当す 8  以上の点については、由井濱〔1990,15〜17頁〕に基づいた。

   ただし、個人投資家数は増大している。たとえば、岡部〔1987〕を参照。9

1°  Brancat。〔1991, pp.21−22, table 1−7,1−8〕.1989年の時価総額トップ 50社より6(務を超えたものを抽出した。

       80

c◎

図表1 アメリカにおける投資家別の株式保有額

合計 家計 機関投資家

@合計 丁機関  付M託部 保険会社  のロ険会社

︑基金 2ミ 

ミユ ユ」

Eファンド

ローズ ・エン h・ファンド

ブローか・

fィーテ

州・地方 外国人

9

o

o

o

o

●    , 。b

o

9 .b o

o o

●     ,

.1

9    . o o o

o

9    ●

o o o o 9

●    o o o 5

9    .

o o

,    .

o o

9    . ,    ● ,    ・ o o o

9     , ,    ● ,    ● o . ●

9    ・ 9     , ,    ● o o o

,    ● 9    ・ ,    6

o

o o

●    ● 9    ● ,    ・

o

,      , 9     ● ,    ●

,    o 9    ● 9    , o

,    , 9     ・ ,    6

o

●    . 9    ・ 9    ・ o

o

,    . ,    ・ ,    6

,    , ●    ・ 9    ● 6 o ,    ・ ,    5

,    o 9    ● 9    ・ ,    ● ,     5 ,    ●

,    , 9    ・ ,    5

o ,    ● g     o ,    ● o

,    o ,    ● ●    ● 0. ,    . ,     ・ ,    ・ ,    ●

●    , ,    ● 9    ・ o o o ,    ・ ,    ・ ,    ・

●    o

ル。

(出所)Flow of Funds AccQunts:Annual Flows and Outstandi㎎s,1946−1953,1954−1962,1963−1972,1973−1981,1982−1990,1991−1999, Board of Governers   of the Federal Reserve Syste田, June 9, 2000,

cO

図表2 アメリカにおける投資家別の株式保有比率

合計 家計 機関投資家

@合計 丁機関  打M託部 保険会社

その ロ険会社

︑基金 公・

@基金

ミユーユカ・ファンド ローズ・エン

h・ファンド プローか・

fィーテ

州・地方 外国人

o

o o

o

o o

o

o

o

さ   ● 6

o o

1

o 6

o

.b

6

o

o

o

o o

o o

o

o

o

9 o

o o o o

o o

o o 5 o

o o o

o 6 o o o o o

o

o

o o

o o 6 o o o o o

o o

o o o

o

o o 6

9

o o o

9 6

o   .

5

在     o。 ざ       ζ L

(出所)肌ow of Funds AcQounts:Annual lows and凸」tstandi㎎s,1946−1953,1954−1962了1963−1972,1973−1981」982−1990,1991−1999, Board of GQverners   of the.F6deral Reserve System,−June 9, 2000. .

ドキュメント内 見る/開く (ページ 86-109)