第 3 章 貧困削減へ向けた国際協力
3.2. 貧困削減に向けた取り組み
3.2.3 NGO の活動
NGOの活動は、従来から政府やドナーが届かない分野・地域などへのサービス提供や、
近年ではより住民・市民参加を重視する活動をしてきた実績を持ち、貧困削減のための 主要なパートナーとして広く認識されている。
現在ラオスで活動するNGO は、ラオスの N GO、国際N GO、そして「大衆組織(Mass
Organization)」の 3 つに分類することができる。ラオスの短い歴史の中で市民社会の発
達は限定的なものに過ぎず、また、多民族の国家統合を最重要視したラオス政府は、国 内 NGO の自発的発達を積極的に支援するようなことはなかった。したがって、ラオス の国内 NGO は、カンボジアやベトナムに比べると、ほとんど存在しないか、存在して も公的に開発計画に参加したり、外部から資金援助を受けることを自ら好まないものが 多い。数少ない国内NGOの代表的なもので、開発に携わっているものには、Participatory Approach Training Centre、Credit Group、Handicap Associationなどがある。
ラオスの NGO の活動が比較的限定されている理由として、ラオスには、憲法でその存 在が認められており、規模が全国におよぶ「大衆組織」とよばれる団体が存在し、NGO を代替していることが挙げられる。大衆組織は、村落レベルまで末端組織を伸ばしてお り、これまでに政府、二国間ドナー、国際 NGO など様々なパートナーと協調しながら 草の根活動をしてきた。ラオス政府によれば、これらの大衆組織は、PRSPの策定過程に おいて市民参加を促進するための中核的な枠組みと位置付けられている。代表的なもの は、ラオス女性同盟(LWU: Laos Women’s Union)という女性のための組織である。LWU
はこれまでに保健、教育セクターでの活動をはじめ、女性をターゲットとする所得創出 のプログラムなどを実施してその活動が内外から高く評価されてきた。LWUは、今後の 活動方針として、i) ジェンダーの平等、ii) 人材能力育成、iii) 子供と女性の権利保障、
iv) 貧困削減、の 4 分野に重点を置いている。そのほかの大衆組織には、青少年活動を 中心とするラオス青年同盟(LYO: Lao Youth Organization)、少数民族の参加を促進する ラオス国家復興前線(LFNR: Lao Front for National Reconstruction)、民間セクターを代表 するラオス労働組合連合(LFT U: Lao Federation of Trade Unions) などがある。
一方、国際NGO(IN GO)によるラオス援助は、1986年に新経済メカニズム(NEM)が 採択されてから急増し、1986 年に130 万ドルほどだった援助額は、1996 年には約1600 万ドルとなった。その後のラオス政府の発表によれば、援助総額はやや減少し、1999 年 には約1260 万ドルとなっている。1990 年代に INGO の活動は主に、保健、緊急援助、
農業などのセクターに多かったが、現在では総合的農村開発プロジェクトが最も多くな っている。また、UNDP によれば1995年にINGOの活動は、首都を除くと、Xayaboury、 Savannakhet, Luangnamtha、Champasack、Borikhamxay、Huaphanh、Xiengkhuangなどに比 較的集中している。従来から、ラオス政府は、IN GOの開発への貢献を評価しながらも、
その政治的な活動に対しては慎重な姿勢をとってきた。したがって国際NGOの活動は、
提言活動98ではなく、主に公共サービスの実施が中心となっている。また、増加するINGO の援助に対して、1998年の大統領法令は、INGOの窓口を外務省の国際組織部に定めて 許可制をとっている。1999年にはおよそ80のINGO がラオスで活動していたといわれ、
代表的なものに、World Vision、CARE International、Handicap International、Action Nord Sud, Save the Children、Adventist Development and Relief Agency (ADRA), Consortium, Family Planning Australia, Medecins sans Frontieres, Norwegian Church Aidなどがある
ラオスで活動する国内・国際NGOは、連帯と協調を促進するために、1994年からNGO フォーラムを開催していたが、1996年になるとラオス政府によって停止された。しかし 農業、保健、ジェンダー、エイズ、人材育成などの分野で、非公式に会合が続いている。
また、INGO の中には、市民参加や自立支援を促進するために、CIDSE (Comite International pour le Development et la Solidarite)やCAA(Community Aid Abroad)などの ように、ラオスの人材を育成し、彼らの手による活動を支援しようという現地化戦略を とる傾向が見られる。
98「提言活動」とは、INGO の政策提言(Advocacy)を指す。主に欧米のINGOは、近年、知識集約的な活 動を展開しており、環境、人権、貧困などの分野で、様々な形式の提言活動を行っている。
別 別 別
別 添 添 添 添
別添1: 主要な貧困指標と不平等指標
別添2: WFP の脆弱性指標の算出方法
別添3: 本文中に掲載されている図の原データ 別添4: ラオスにおける各ドナーの活動状況 別添5: 参考文献・資料
別添6: 社会経済データマトリックス
別添1:主要な貧困指標と不平等指標
指標タイプ 指 標 定義または解説 特 徴
貧困者比率
(Head-count ratio)
貧困ライン未満の人数の対象人口 全体の人数に対する比率
n H = q
q: 貧困層の人数 n: 集団全体の人数
貧 困 の規 模 を最 も分 か り 易く表示。
貧困ギャップ比率
(Poverty gap ratio)*3
貧困ライン未満人口の平均所得と 貧困ラインとの格差の貧困ライン に対する比率の平均値
∑
<
−
=
z yi
i
z y z P n1
1
n: 集団全体の人数 z: 貧困ライン yi: 各人の所得
貧 困 の乖 離 度あ るい は 深 度(depth)を表示。
貧困指標 (P overty indicators) *1
貧困ライン未満人口の平均所得と 貧困ラインとの格差の貧困ライン に対する比率の2乗値の平均値
2 2
1
∑
<
−
=
z yi
i
z y z
P n
n: 集団全体の人数 z: 貧困ライン yi: 各人の所得
貧困の重度(severity)を表 示。
ジニ係数
(Gini coefficient)
ロ ー レン ツ 曲線*5 と完 全 公平 線
(45°直線)に囲ま れる面 積が、
45°直線を斜辺とする横軸を含む 三角形の面積に占める割合
対 象 人口 全 体の 所得 分 配 が完全公平の場合は0に、
完全不公平の場合は 1 に なる。
不平等指標 (Inequality indicator) *1
タイル指数
(Theil index)*4
y y y y
Z n i
n
i
ilog
) 1 1 (
1
∑
==
n: 集団全体の人数 yi: 各人の所得
y: 各人の所得の算術平均値
対象人口全体(N)の所得 分 布 が完 全 に公 平の 場 合 は0に、完全不公平の場合 は ln(N)となる。ただし、
経 験 的に タ イル 指数 が 1 を超えることは稀である。
収入源の分散の程度
(Income diversification) (明確な一般的定義なし)
農 村 では 収 入源 を分 散 さ せるよりも、リスクの低い ひ と つの 収 入源 に集 中 さ せ る 方が リ スク 低減 に 効 果的との批判がある。
貧困リスク (Vulnerability) *2
相 互 扶助 ネッ ト ワー ク の構築の程度
(Links to networks)
(明確な一般的定義なし)
こ の 項目 を 含む 世帯 調 査 は ほ とん ど 実施 され て い ない。
別添2:主要な貧困指標と不平等指標
WFP は、「各郡の脆弱性(District Vulnerability)」の比較を行うため、「主成分得点分析」
脆弱性指標(”Factor Score Analysis” Vulnerability Index)を算出している。この目的は、i) ラオスにおける「脆弱性の高い郡」の特性を判明すること、そして、ii) 脆弱性の地域(郡)
間の格差を調査すること、である。WFP が分析用に使ったデータは、全国134郡別の、
6つの経済社会指標である。
経済社会指標:
i) 米生産: 乾期の灌漑農地での 1ha 当たりの生産量+雨期の高地での収穫量
(農業統計1998/99年)
ii) 家畜: 牛・水牛の所有数 / 家庭数(農業統計、1998/99年)
iii) 森林: 「高密度森林」/ 家庭数(森林のメコン委員会、1997年)
iv) 道路: 6km以内に道路がない村の数 / 村の合計数(LECSII、1997/98年)
v) 粗死亡率 (人口調査 1995年)
vi) 教育: 未就学の人口の割合(人口調査 1995年)
分析方法は、通常の主成分分析である(主成分分析とは、相関関係にある複数の指標を 合成(圧縮)して、いくつかの「主成分」に変換し、その総合力や特性を求める統計方 法)。WFP が分析した結果は、以下の表に示すとおりである。
指標 第一主成分 第二主成分 第三主成分
米生産 -0.677 0.497 0.095
道路 -0.802 0.152 0.217
森林 0.600 0.444 -0.589
家畜 -0.080 0.887 0.079
粗死亡率 0.842 0.154 0.325
教育 0.864 0.153 0.380
主成分得点 2.925 1.301 0.660
寄与率 (%) 48.755 21.681 11.006
累積寄与率 (%) 48.755 70.435 81.441 [出所] WFP , (2002), District Vulnerability Analysis, p.10
この表で、第一主成分(主成分得点が一番高い合成変数)は、6 つの指標と最も整合性 の高い合成変数である。その説明力(寄与率)は 48.76%と高い。したがって、WFP の 分析では、この第一主成分が、ラオスにおける「脆弱性」の特性を表すと考えられてい る。各成分(指標)の係数を見ると、第一主成分は、米生産、森林、道路、粗死亡率、
教育、の5つの成分(指標)の合成変数であることがわかる。また、家畜の所有数は、
統計的に有意な構成成分ではないことが示されている。このことから、ラオスにおいて、
「脆弱性の高い郡」とは、i) 米の生産が低く、ii) 森林が多く、iii) 道路へアクセスがな く、iv) 死亡率が高く、v) 教育水準の低い、という特性を持っている郡であると考えら れる。これに従い、郡(i)の「主成分得点分析」脆弱性指標(Zi)の基本的な算出式は、
Zi = -0.677・米生産i –0.802・道路i +0.600・森林i +0.842・祖死亡率i +0.864・教育i となるが(WFP が実際に計算した郡別の指標は公開されていない)、最終的な貧困地図 の作成は、定性的要素をも考慮して政府・ドナーと合意されたものを基にしている。
別添3:本文中に掲載されている図表の原データ
第1章 ラオスの貧困概要
図 1-1 貧困の州・郡別分布 (本文 p.7)
(WFP 作成。原データは入手不可。算出方法については別添1の補論を参照。)
図 1-2 ラオスのローレンツ曲線(全国)(本文 p.9)
(単位:%)
Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 支出シェア(1992/93年) 3.4 8.2 13.8 20.3 27.7 36.2 45.9 57.6 72.7 100 支出シェア(1997/98年) 3 7.2 12.3 18.3 25.2 33.2 42.5 53.7 68.7 100
図 1-3 ケシの生産面積・生産量の推移 (本文 p.36)
1992 1996 1998 2000 2001 生産面積(ha) 19190 21601 26837 19052 17255 生産量(kg) 126700 140400 123453 167097 134253
第2章 ラオス政府の取り組み
図 2-1 マネーサプライの変化率の推移 (本文 p.39)
(単位:%)
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 M1 -0.15 12.50 24.51 48.64 17.43 9.51 12.47 5.80 111.40 29.59 55.11 23.27 M2 7.85 15.72 49.01 64.59 31.90 16.41 26.76 65.76 113.28 78.32 36.58 21.14 外貨資産 7.56 5.03 61.76 98.94 -19.47 32.86 99.46 60.97 98.92 154.50 20.46 -9.81 国内預金 16.33 31.45 37.33 33.16 72.54 21.96 -4.88 142.32 94.48 48.34 37.71 68.90
図 2-2 インフレおよび為替レートの推移 (本文 p.40)
(単位:%)
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 為替レート 711.5 717 718 719 923 935 2634.5 4274 7600 8218 9490 消費者物価指数 13.3 9.8 6.3 6.8 19.6 13.0 9.2 95.8 139.7 9.7 12.3 食料価格指数 10.8 11.7 -3.8 2.8 22.4 13.4 10.6 98.5 136.1 8.7 12.1