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社会政策の貧困層への影響

ドキュメント内 2003 3 (ページ 78-83)

第 2 章 ラオス政府の取組み

2.2. 貧困問題をめぐる諸政策

2.2.3 社会政策の貧困層への影響

(1) 教育における戦略ビジョン2020年(The Education Strategic Vision Up to the Year 2020)

ラオス政府は、教育セクターのビジョンやガイドライン、目標を定めた「教育における 開発の枠組み」(Education Development Framework (2001-2005))を策定している。また、

教育省(MOE: Ministry of Education)とドナー間での今後の教育分野における支援を検討

する基礎として、「教育における戦略ビジョン2020」(The Education Strategic Vision Up to the Year 2020)を2000 年に策定している。

教育分野における長期的目標としては、国民の基礎教育へのアクセスを向上し、初等教 育および前期中等教育の就学率の向上および識字率の向上が掲げられている。戦略ビジ ョン2020の概要および具体的な中・長期目標は、以下の表 2-18 および表2-19 のとおり である。

ラオスの教育分野の最も大きな問題点は、学校前教育を含めた基礎教育へのアクセスが 限定的であり、かつ、すべての教育レベルにおいて地域間格差が大きいことである。特 に、初等教育や前期中等教育においては、学校への物理的な距離も含めたアクセスが就 学率のみでなく、代表的な内部効率性指標である留年率や退学率にも影響している。

貧困世帯では子供が労働力として農作業や家事労働に組み込まれていることも要因の一 つであるが、教育省によれば通える範囲に学校がないことが最も大きな要因となってい る。学年が進むにつれてこうした傾向は強くなっており、初等教育の就学年数は5年で あるにもかかわらず、平均の就学年数は貧困層で 3 年、非貧困層でも4.8 年と初等教育 の未修了率が非常に高いことがわかる。

ラオス政府は、国民皆初等教育を実現するために、ドナーの援助に依存しつつも、小学 校建設に注力しているが、ラオスでは村落が距離をおいて点在している上に、近隣の村 落で異なる少数民族が生活しているため、初等教育へのアクセスを徹底するには一村落 に一学校を建設する必要がある。ラオス政府が財源不足を抱えている一方で、学齢児童 あたりの学校建設費用を割高にすることになり、学校がないままの村落が多く残される 結果となっている。

同時に、学校数に見合うだけの教員の確保が遅れていることも基礎教育へのアクセスを 制限する要因となっている。少数民族ではラオ語をまったく解さないことが多く、それ ぞれの民族の言語による教育が求められるが、予算不足とあいまって少数民族の基礎教 育に対応する教員の養成が追いつかず、特に学年が上がると教員数の不足はより深刻に なっている。そのため、村に学校があっても小学校5 年生までのカリキュラムを教える ことのできる教員がおらず、3 年生までのカリキュラムしか教えられないといった事態 が生じている。こうした場合には、初等教育を継続するには、4 年生以上のカリキュラ ムを教えられる教員のいる近隣の村落にある学校に通うことになる。しかしながら、i) 通学の距離が遠くなり、非常に時間がかかること、ii) 近隣の村落とは民族が異なること が多いため、他言語による学習となり、習熟が遅れがちになること、などから、学習を 継続することが困難になり、退学するケースがほとんどなっている。特に、女子の場合 は学習の継続が難しく、就学率、修了率は低くなっている。

表 2-18 教育における戦略ビジョン2020の概要

主な取組み 5ヵ年計画における主要な目的

・ すべての国民に社会経済開発プログラムに つながる教育を受ける機会を保証するた め、初等教育における義務教育化を行い、

前期中等教育における就学率の向上に引き 続き行う

・ 対象とする国民の非識字率をゼロにするよ うに努める。これにより絶対貧困層により よい生活を得る手段を提供する

・ 新たな労働市場のニーズに適合するため、

また、経済収益率を向上するために、職業 訓練、技術教育、高等教育を拡充する

・ 近代科学および技術に適合した能力を獲得 するため、熟練労働者、技術者、専門家お よび知識層を訓練する

・ 国際標準に徐々に近づけるよう国民教育を 向上させる

・ 人材育成の核として教育への適切な投資を 行い、コミュニティの参加を促す

(公平なアクセス)

・ 学校施設の拡充(特に遠隔地)

・ 既存の学校の修繕・改修

・ 民間セクターの参入

・ 社会的に不利なグループのアクセスを改善 するための特別プログラムの設置

・  Open Learningのためのフィージビリテ ィ・スタディの実施

・ ノン・フォーマル教育へのアクセスの向上

・ 遠隔教育のフィージビリティ・スタディの 実施

(質)

・ 事前研修および教員研修を通じたすべての 教育レベルの教員の質の向上

・ すべての教育レベルのカリキュラムの改善

・ 教授法の教材の提供と低コスト教材の各地 域での作成の促進

(連関)

・ 教育と社会の適合性

・ 変化に対応したカリキュラムの修正および 調整

・ 生徒への支援を行うための指導要領の導入

・ 教育機関と産業および民間セクターとの連 携の強化

(企画およびマネジメント)

・ 実施計画の強化

・ 中央政府、県、地区および学校レベルにお ける既存のEMIS のネットワークの強化

・ 予算および資金調達能力の強化

・ 投資プログラムの管理・モニタリングの設 置および教育省内の援助調整能力の向上

・ 民間参入促進のための支援基金の設立

〔出所〕Ministry of Education , (2000), The Education Strategic Vision Up to the Year 2020より作成

表 2-19  2005年および2020年までの政策目標

2005年目標 2020年目標

・ 就学前教育の就学率を8%(2000年)から 10%に引上げる

・ 義務教育の初等教育の純就学率を77.3%

(2000年)から86%に引上げる

・ 留年率および退学率をそれぞれ年間2%お よび3%引き下げる

・ 前期中等教育の就学率を45.8%(2000年)

から52%に引上げる

・ 後期中等教育の就学率を22.6%(2000年)

から26%に引上げる

・ 15〜40歳の識字率を83%(2000年)から 87%、15歳以上の識字率を74%から78%

に引上げる

・ 現状のニーズや条件に応じて、識字レベル の新卒者の30%の学力水準の向上を図る。

また、前期・後期中央教育のレベル向上を 図る

・ 女子および少数民族の高等教育の就学率を 向上させる。人口に占める生徒数の比率を 10万人当たり350人(2000年)から450人 に増加させる。

・ 政府の教育予算を12%(2000年)から15% に拡大する

・ 幼稚園の就学率を、2010年16%、2015年 22%、2020年30%に引上げる

・ 義務教育の初等教育の純就学率を2010年 90%、2015年95%、2020年98%に引上げ る

・ 前期中等教育の就学率を、2010年63%、

2015年74%、2020年85%に引上げる

・ 後期中等教育の就学率を2010年28%、2015 年31%、2020年34%に引上げる

・ 非識字をなくす

・ 15〜40歳の識字率を2010年90%、2015年 93%、2020年95%に引上げる

・ 15歳以上の識字率を2010年83%、2015年 87%%、2020年90%に引上げる

〔出所〕 Ministry of Education, (2001), Educational Strategic Planning 20Years ( 2001-2020), 10Years ( 2001-2010) and 5Years Development Plan for Education at the Fifth Plenary Session ( 2001-2005) より作成

政策目標を達成するには、各村落レベルの現状を的確に把握した上で、限られた予算の 中で、財政的にも、社会的にも効率を高められる教育プロジェクトの実施が必要である。

また、こうしたプロジェクトの実施にあたっては、教育省および州レベル、郡レベルの 教育行政機関の計画策定能力、実施能力の向上が不可欠である。

(2) 保健戦略2020年(Health Strategy up to the Year 2020)

第6 回党大会においてラオスの保健政策の主要目標として、2020 年までにラオス国民す べてに保健サービスを提供することを掲げた。これに従って、「保健戦略2020年」(Health

Strategy up to the Year 2020)において、保健開発戦略の基本概念、開発政策および保健省

による優先プログラムが策定された。また、2005 年および 2020 年をそれぞれ目処とす る中長期の保健目標が設定された。保健戦略 2020 年の概要および保健目標は、表 2-20

および表 2-21 のとおりである。

表 2-20 保健戦略2020年の概要

政策レベル 具体的項目

保健開発戦略4つの基本概念 ・ 保健サービスの完全普及および公平な保健サ ービスの提供

・ 早期の保健サービスの統合

・ 需要に基づいた保健サービス

・ 独立採算の保健サービス

6つの保健開発政策 ・ 保健サービスプロバイダーの能力向上

・ コミュニティベースの保健の促進および病気 予防の向上

・ すべてのレベルの病院の改善・拡充、特に遠隔 地における施設の改善・拡充

・ 近代的治療法および伝統的治療法の統合によ る伝統的治療薬の使用の促進・強化、安全で質 の高い、正しい食事療法および薬の確保、国内 医薬品の促進

・ 保健分野の多角的研究の促進

・ 効果的な保健行政・管理および自立的財務体制 の確保、健康保険基金の設立

保健省による6つの保健プログラム ・ 保健予防促進戦略

・ 治療・リハビリ戦略

・ 消費者保護戦略

・ 保健戦略のための人材育成

・ 保健分野の多角的研究および保健関連法制

・ 保健行政戦略

〔出所〕Ministry of Health, (2000), Health Strategy up to the Year 2020 より作成

表 2-21  2005年および2020年の保健目標

項目 2005年目標 2020年目標

出生率(千人当たり) 36.5 31

死亡率(千人当たり) 13.5 11

乳児死亡率(千人当たり) 75 20*

5歳未満幼児死亡率(千人当たり) 100 30*

妊産婦死亡率(10万人当たり) 355 130*

平均寿命(歳) 55 63

人口成長率(%) 2.3 2

平均病院・ベッド数(1万人当たり) 16 18

平均ベッド利用率(%)

中央・州

64 40

80 60

避妊法普及率(%) 35 60-65

予防接種普及率(%) 80 90

衛生的な水利用率(%) 55 60-75

トイレ(汲取り式)利用率(%) 46 70

プライマリー・ヘルス・ケアへのアクセス率(%) 75 90

保健分野への投資額(1人当たりドル) 20-50 30-50

〔出所〕Ministry of Health, (2000), Health Strategy up to the Year 2020 より作成

ドキュメント内 2003 3 (ページ 78-83)