第 3 章 貧困削減へ向けた国際協力
3.1. 援助の概況
3.1.2 ドナー間の協調
でのように単発の会合ではなく、ラオス政府・ドナーの継続的な政策協議プロセスにす ることで合意した。これを受けて、2000 年に開始された第 7 次RT M、およびラウンド テーブル・プロセス(RTP: Round Table Process)は、当初からPRSPや第5 次5 ヵ年計画
(NSEDP (2001-05))を協議する過程として位置づけられ、ラオス政府、国際機関、二国
間ドナー、NGOを含む幅広い協調体制となった。
表 3-5 過去のラウンドテーブル会合と主要テーマの変化
第1次RTM (1983年) ジュネーブ 包括的開発戦略と援助支援への要求 第2次RTM (1986年) ジュネーブ セクター政策と開発プロジェクト 第3次RTM (1989年) ジュネーブ 経済構造改革とインフラストラクチャー 第4次RTM (1992年) ジュネーブ 経済構造改革とインフラストラクチャー 第5次RTM (1994年) ジュネーブ 農村のインフラを重視した農村開発 第6次RTM (1997年) ジュネーブ 社会開発と収入向上を重視した農村開発
RT プロセス 2000‑02 ビエンチャン 第 7 次 RTM に向けて7項目についての事前協議プロセス 第7次RTM (2000年) ビエンチャン 人的資源開発、農村開発、住民参加を通した貧困削減 [出所] RTP 2000-02 Steering Committee, Government of Laos, with support with UNDP , News Letter No.8, Oct.
2000から作成
(1) ラウンドテーブル・プロセス
RTP 2000-02 は「人的資源開発、農村開発、住民参加を通じた貧困への戦い」と題され、
ドナー、NGO が参加してラオス政府主導のもとに国家開発計画を協議するものとされ た。ラオス政府側は首相府と国家計画委員会(SPC: State Planning Committee)が中心と なって、関係省庁のメンバーからなる作業委員会(Steering Committee)を設立し、RTP の全体的なコーディネーションはUNDPに委託された。
RT P では、まず、重要とされた7つのセクターごとに事前に政策協議が開催され、ラオ ス政府が提示するセクター別戦略ビジョンについて協議が行われた。そして事前協議を 終えた2000年11 月に第7次RTMが開催され、ラオス政府は、貧困削減への戦略アプロ ーチ(Government’s Strategic Approach to Poverty Alleviation)をドナー側へ提示して協議 した。これをさらにまとめたものが、IMFとWBに2001年3月に提出されたI-PRSP で ある。各セクターでの協議は、その後も行われており、その内容は NSEDP(2001-05) の完成を待ってから、NPEP(F-PRSP)へと組み込まれる予定である。しかし NPEP の 完成は予定より遅れており、2002年12月現在発表されていない。
貧困削減に向けての協調体制の現状としては、本来期待されたほど十分機能していない と指摘される。これには、政府の政策策定能力の不足や援助窓口と予算管理の協調体制 が整っていないことが要因として挙げられる。また、これに加えて、政府とドナー、お
よびドナー間の貧困削減に対するアプローチの相違が大きいことも要因であると考えら れる79。
表 3-6 ラウンドテーブル・プロセス2000〜02の概要
セクター 担当省 政策協議 時期
農林セクター 農林省
ラオス政府の農業セクターへの戦略ビジョン
農村開発と参加型開発計画(州・市ごとのプロファイル)
ラオス政府の森林資源管理への戦略ビジョン
農業セクター・マスタープラン第一次ワークショップ 森林セクター・アクションプラン協議
農業セクター・第二次ワークショップ
1999年11月 2000年 6月 2000年 9月 2001年 5月 2001年 5月 2001年 8月
医療保健 保健省
ラオス政府の2020年までの医療保険戦略 第一次協調会議
第二次協調会議
医療保健セクター・マスタープラン第一次フォーラム 医療保健セクター・マスタープラン第二次フォーラム
2000年 5月 2000年12月
2001年 2月 2001年 6月 2001年 9月
教育 教育省
ラオス政府の教育セクターへの戦略ビジョン 第一次協調会議(非公式ドナー会議)
第二次協調会議(非公式ドナー会議)
2000年 5月 2000年12月 2001年 4月 道路セクター 通信・運輸
・郵便省
道路管理プロジェクト開始ワークショップ
ラオス・スウェーデン道路プロジェクト(フレーズii)
2001年 6月 2001年 9月 マクロ経済 財務省 マクロ経済政策と構造改革フレームワーク 2000年 8月
その他 外務省
I-P RSPとP RGF(IMF)・IDA(WB)についての協議 第3次最貧困国に関する国連会議への準備
NGOフォーラム
2001年 3月 2001年 3月 2001年 6月 [出所] RTP 2000-02 Steering Committee, Government of Laos, with support with UNDP , News Letter No.14, Dec.
2001から作成
79 P RSP は幅広い参加型協調過程を通して策定されることが一つの条件となっているが、P RSP を策定した 多くの国々でこの過程が「非現実的であり事務的な負担が大きすぎる」ことを訴えるドナーが多い。した がって協調過程が混乱する傾向はラオスに限ったものではなく、政府の能力不足だけが原因と考えるべき ではない。
表 3-7 FY2000-2001の各ドナーの援助コミットメント (合計393.6百万ドル) (単位百万ドル)
国際機関 拠出額(100万ドル) 二国間ドナー 拠出額(100ドル)
無償援助 ローン 無償 ローン
ADB 7.5 85.5 日本 69.6
IMF 40.0 ドイツ 23.4
WB 41.7 フランス 22.7
EC 10.5 スウェーデン 22.4 10.0
UNDP 9.9 ルクセンバーグ 7.6
FAO 3.7 ノルウェー 5.0
IRRI 2.8 オーストラリア 4.9
UNDCP 2.0 その他 14.8 10.0
WIPO 0.03
小計 36.0 167.2 小計 170.4 20.0
[出所] RTP 2000-02 Steering Committee, Government of Laos, with support with UNDP , News Letter No.15, Dec.
2001から作成
(2) ラオス政府の政策策定能力と援助受け入れ体制
貧困削減へ向けた国際協調が十分機能しない要因として、国際機関が中心に指摘してい るのが、ラオス政府の政策策定能力の不足である。これにはラオス政府の援助受け入れ 体制が原因の一つにあったと考えられる。ラオスの国家開発計画は、SPCが各省庁と協 議しながら作成した草案が、首相府を通じて最終的に国民会議の承認によって決定され る。この過程でラオス政府とドナーの接点となっていたのは、首相府の下に置かれてい た投資・国際協力委員会(CIC: Committee for Investment and International Co-operation)で あった。この体制の問題点は、CICとSPCの間で援助資金の受け入れに関する役割分担 が明確でなく、調整が行われていないことにあった。このため、第7次RTMでADBや WBが指摘し、ラオス政府は改善案をドナーに提示した(図3-1)。
これを受けて2001年7 月にはCICとSPCが統合され、首相府の下に、投資、国際協力、
開 発 計 画 を す べ て 管 轄 す る 計 画 協 力 委 員 会 (CPC: Committee for Planning and
Co-operation)が設立された。CPCは地方レベル(州・郡・市)まで分権化され、より参
加型の開発計画を行い、これに対するドナーからの支援の窓口となる方針である。CPC には、モニタリング評価部が設置されて、今後の開発計画の執行や修正を行っていくこ とになっている。
CPCは2001 年8月に第一次会合を開き、過去の開発計画の見直しと、今後の5 ヵ年計 画や中期投資計画の優先分野などを話し合った。現時点では州や各省庁から提出された 開発投資計画が予算をはるかに上回るという問題を抱えている。マクロ経済の安定化や 貧困削減など、複数の目標が混在する中、CPCの人材や組織能力が不足していることも 重なって、国家開発目標の優先順位が明確になっていない。限られた資源の配分を、円 滑に、かつ合意に基づいて計画できる能力が必要とされており、RT M/RTP の大きな課題 となっている。
ドナー
関係省庁
President Vice-President
事務室 国立経済研究所
National Economic Research Institute
人事部 国家統計センター
National Statistics Center
総合計画 部 GDP
公共投資 プログラム
部 DPIP
国際協力 部 DIC
内外投資 管理・促進部
DDFI
モニタリング 評価部
各県CPC 各市CPC
Co-ordination Line of Ministry
CPC組織図
国民会議
ラウンドテーブル・プロセス UNDP
NGO
[出所] RTP 2000-02 Steering Committee, Government of Laos, with support with UNDP , News Letter No.11, Aug.
2000から作成
図 3-1 改革後のラオス政府とドナーの協調体制
(3) 貧困削減に向けたアプローチの相違
ドナー協調がうまくいかない原因の一つに、政府とドナーの貧困削減に対するアプロー チが必ずしも一致していないことが挙げられる。
政府・ドナー間の協調が開始された 1997 年には、ラオス政府はすでに国家政策である
NSEDP(1996-00)を作成ずみであった。しかし、同政策が貧困削減を目標に含みながらも
それを唯一の目的とはしていないことから、NPEP(F-PRSP)とNSEDP(2001-05)を並 行して策定する際に、その整合性を図ることが困難となっている可能性がある。本来
NPEP(F-PRSP)はNSEDP(2001-05)の貧困削減目標を具体化する政策であるべきとこ
ろ、現実にはIMFやWBからの融資のコンディショナリティーという面が強いことに起 因していると思われる。これまでにラオス政府が目指す2 つの政策の整合性と、IMFや WB のグローバルなアプローチが相反した例は、PRSP 作成過程におけるラオス政府と
IMF/WBの協議にも伺える。例えば、I-PRSP でラオス政府は農村開発を中核とした貧困
削減を掲げたが、これに対してIMF/WBは強く見直しを要求している。これを受けてラ
オス政府は、F-PRSPの優先分野には農村開発ではなく民間セクターの育成を盛り込むこ とを明らかにしている80。
一方で、主要ドナーの間でも貧困削減へのアプローチに相違が見られ、これも協調体制 の混乱傾向を助長していると思われる。ドナーのアプローチは、大きく3つのグループ に分類することができる。第一が、上記の国際金融機関が主導する PRSP を基盤とした 協調体制であり、第二が、UNDP を中心とした国連グループ会合と北欧諸国ドナーの間 にある人権アプローチを中核とした協調体制である。どちらもラオス政府の主導の下に ドナーが協調することを原則にしているが、基本となるべき国家計画が完成していない 現在、現実にはそれぞれのアプローチによる協調が並行して進行している。また二国間 ドナーの中には、ラオス政府との合意を最優先して支援を行っているところもある。以 下、各アプローチにみられる特徴とその関係を簡潔にまとめる。
PRSPを中核としているのはWBとIMFで、これにADBが密接な協調姿勢を示している。
これらのドナーは、ラオス政府に対して資源配分の優先分野の明確化を求めており、
RT M/RTP をそのための重要な過程と認識している。これまでにポートフォリオ見直し
(Portfolio Review)、金融セクター調査(Financial Sector Note)を共同で実施してきた。そ して2002年6 月には、WB、IMF、ADBが共同で、公共支出評価(PER: Public Expenditure
Review)を行っている。後者は従来WBが中心に行ってきたものだが、これまでラオス
政府と密接な関係を築き上げてきたADBが協調することで、PRSP を通じてラオス政府 のガバナンス強化を目指し、公共支出制度、人材および組織育成などの支援を積極的に 行っていくものと思われる。
第二のグループは近年、ミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)を 採択した国連機関や、これを支援する北欧諸国ドナーなどである。これらのドナーは、
ラオス政府のオーナーシップを重視しながら、権利に基づいたアプローチ (Rights-Based
Approach)を支持し、多角的な視点から貧困削減を掲げている。これまでにUNDP が中心
となってガバナンスの分野で法制度整備などに力を入れてきた。また、1997年の国連改 革によってラオスに設立されたUNCT は、このアプローチを基盤に置いている。本来、
UNCT は、国連グループが国家5ヵ年計画、MDGs、PRSP の調整を行い、整合性および 一貫性のある政策を策定するための協調プロセスとされている。しかし、5 カ年計画と PRSPの策定が遅れる中で、UNCT がラオス政府に代わってドナー協調を主導しようとす る面が目立ってきている。したがって、UNCT 会合は、RT M/RTP と並行して行われてい るが、国際機関の間で貧困削減に対する支援をどのように行うのか、協調体制に関する 議論は進んでおらず、これがラオス政府への負担となっている可能性がある81。
一方、これらの国際機関主導のアプローチに対して、日本、ドイツ、フランスなどの二 国間ドナーは、ラオス政府との直接合意を最優先する傾向がうかがえる。日本は JICA を通して、農業・農村開発や医療保健セクターでラオス政府のマスタープラン作成を支
80他の主な例としては、IMFとWBが電力セクターをNP EPに含めること、またマクロ経済安定やガバナン スの分野ではIMF、WB、ADBが共同で実施したPERを基準にすること、そしてADBが実施したPP A の結果を更に考慮することなどの要求がある。ラオス政府はNPEPの完成が2002年の12月に遅れるとし ながらも、これらの要求を反映する方針を示している。
81両者のアプローチの違いは、RTM/RTP で中核的な ADB のセクター分類(農業、社会インフラ、金融な ど)と、UNCT会合で中核的なUNDPの分野別分類(ガバナンス、環境と生計向上、ドナー協調など)を 比較するとより明確になる。両者ともそれぞれのアプローチで(ADB の CP S(2003-2005)と国連グループ のUNDAF(2002-2006)を参照)ドナー協調を促進していることが分かる。