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国家開発計画における貧困削減政策の位置付け

ドキュメント内 2003 3 (ページ 60-66)

第 2 章 ラオス政府の取組み

2.2. 貧困問題をめぐる諸政策

2.2.1 国家開発計画における貧困削減政策の位置付け

健全化は達成されず、2001年から財政再建および行政の効率化を目的として再度地方分 権化が進められている。

2001年からの地方分権化政策においては、州を戦略機関、郡を予算策定機関、村落を実 施機関として位置付け、郡の財政的基盤を強化し、予算策定・執行能力を強化し、実質 的な権限拡大を図っている。

現状のラオスの行政組織は以下のとおりである。

表 2-7 行政組織と機能・役割

機能・役割

中央政府(14省および委員会) 各省はセクターごとの開発戦略を策定、監督(ただし、

防衛、外交は除く)

州(18州、ビエンチャン県および特別区 を含む)

戦略・計画の策定および中央政府との予算折衝

郡(141郡) 事業予算の策定

村(11,795村) 事業実施

〔出所〕現地調査による各省からのヒアリングに基づき筆者作成

防衛、外交を除く各分野の事業計画の策定、予算策定、実施は、州以下の地方自治体に 権限委譲が行われている。しかし、前回の地方分権化と同様、制度的に整備されないま まの地方分権化は、中央政府においても、地方政府レベルにおいても、財政赤字や実施 等の問題を引き起こしている。そのため、地方分権化の実効性を高めるために、国連開 発計画(UNDP: United Nation Development Programme)や二国間援助機関により、地方自 治体の組織強化などに対する支援が行われている。

(2) 国家社会経済開発計画(NSEDP: National Socio- Economic Development Plan)

1996年に開催されたラオス人民革命党の第6 回党大会において、ASEAN景気に支えら れた順調な経済成長を背景に、2020年までに「後発開発途上国」(LDC: Least Developed

Countries)59から脱却することが目標として掲げられた。これは、2020年目標と呼ばれ、

目標の達成はすなわち、「公平な経済成長による貧困撲滅」をもたらすものとして位置付 けられている。

59国連開発計画委員会(CDP: United Nations Committee for Development Planning)が認定した基準にもとづき、

国連経済社会理事会(Economic and Social Council)の審議を経て、国連総会の決議により認定される。LDC の基準は随時見直しが行われ、2000年のLDCリストでは、1人当たりGDP900ドル未満、人口7,500 万人未満などの基準が設けられている。現在では、ラオスを含め、49カ国がLDCと認定されている。

2020年目標達成に向けて実施すべき8つの国家優先プログラムが同党大会で決定されて おり、これらの優先プログラムは、マクロ経済政策の優先課題と合わせて、市場経済化 への移行を段階的に進める重要な過程として位置付けられている。

・ 食糧生産(food production)

・ 商品作物生産(commodity production)

・ 焼畑による移動型農業から常畑型農業への移行60(stabilization of shifting cultivation)

・ 農村開発(rural development)

・ インフラ整備 (infrastructure development)

・ 対外経済関係および協力の強化(expansion of external economic relations and cooperation)

・ 人材育成(human resource development)

・ サービス産業の育成(services development)

また、市場経済化の段階として、

i) 1986年から導入されたNEMの実施

ii) 国家経済の構造的転換と対応能力の強化(Capacity Building):国家統合、

持続的な経済基盤強化、運輸・通信セクターをはじめとする基本的な経 済・社会インフラの整備、地域統合への協調など。

iii) 国民中心の参加型開発のための前提条件作り

が上げられている。

2020年目標の達成には、持続的な手段によりラオスの多様な民族全体の生活水準の向上 を図ることが不可欠であるとの方針に基づき、長期(20年)、中期(10 年)の社会経済 開発戦略と 5 ヵ年の「国家社会経済開発 計画」(N SEDP: National Socio-Economic

Development Plan)が策定されている。

2001年から2020年までの長期社会経済開発戦略として、2020年の人口を830万人と仮 定して、年率7%のGDP成長を達成し、1人当たりGDPを1,200〜1,500 ドルに引き上げ ることを目指している。また、社会指標としては、15歳以上の識字率を90%に引き上げ るとともに、平均寿命を70歳に改善することが目標とされている。

60移動式焼畑農業については、1.2.2項の説明を参照のこと。

中期開発戦略としては、2010年をターゲットに7%のGDP成長率を前提として、1 人当 たりGDPを700〜750ドルに向上させ、15歳以上の識字率を84%、平均寿命を67歳に 引き上げることが目標とされている。戦略の具体的な内容は、以下のとおりである。

i) 輸入代替産業の促進による外貨準備高の拡大 ii) 水力発電、高速道路等インフラ整備の拡充

iii) 金融市場の構築に向けたフィージビリティ・スタディの実施

iv) 初等教育および職業訓練システムの普及 v) 法律と規制の整備による行政組織効率の向上

vi) ASEAN 加盟国を中心とした輸出貿易拡大および(輸出向け産業の)外

国直接投資促進

NSEDP(1996-2000)では、以下の3 つの分野の開発を特に開発の目的として定めた。

・ 貧困削減、特に農村および多様な少数民族の居住地域を対象とする貧困削減

・ インフラ整備

・ 人材育成

環境保全とともに、社会経済開発にそって各セクターおよび地域の経済構造を構築して いくことが掲げられている。また、地域的な社会経済開発は、少数民族の多くが生活し ている山岳地帯の開発との連携を促進させ、都市部、農村部および山岳地帯との格差の 是正することが必要であるとしている。

続くNSEDP(2001-2005)は、2020年目標を達成するまでの20年間の最初の5 ヵ年計画

として位置付けられており、2001年からの5年間で達成すべき具体的な目標を掲げてい る。2005年までに、GDP 成長率を7.0〜7.5%とし、人口を590万人とし、1人当たりGDP を500〜550ドルに引き上げることを目指している。

部門別の主な開発戦略は、以下のとおりである。

表 2-8 部門別開発戦略

セクター 戦略 目標

農林業 ・ 食糧増産

・ 農林畜産物の商品化

・ 植林・木材

・ 焼畑

・ 米生産拡大270万トン(2005年)

・ 水稲作付面積拡大77万ha(雨期作水稲 面積62万haおよび乾期作水稲面積15 万ha)

・ 主要7平野における灌漑整備の導入

・  42地域における高収量品種の導入

・ 畜産の成長率4〜5%

・ 畜肉、魚肉、卵、牛乳の生産総計20万 トン(2005年)

・ 黄牛6144,000頭、水牛45,000頭、天然淡 水魚5,000トン、角・皮革等3,000トン の輸出(2005年)

・  5年間で7つの戦略地域において、13.4 万haの植林(2001〜2005年)

・ 貧困削減 プロジ ェクト と並行 して焼畑 農業、ケシ栽培の全廃(2005年まで)

・ 土地利用、生産高に関する研究、植林の 継続

・ 焼畑面積 の多い 地域に おける 焼畑農民 の雇用対策の検討

鉱工業・手工業 ・ 電力、農産物加工、商品 生産、鉱業といった潜在 能力の高い産業部門の 開発

・ 手工業における生産手 段の近代化

・ 鉱業の年平均目 標成長率 14.7%(石炭 75万トン、鉛850トン、石膏50万トン

・  加 工 産 業 の 年 平 均 目 標 成 長 率 11〜

12%。(動物性食料 3.5万トン、ビール 80 万ヘクトリットル、ソフトドリンク 171ヘクトリットル、鉄鋼15万トン)

・ 水力発電の年平均成長率3.7%(国内す べての地 域への 電力供 給、ナ ムトゥン II、ナムグム II、ナムグム IIIの建設・

輸出)

農村開発と貧困削 減

・ ・政治的安定性の増大

(各郡、村落における特 別班の設置)

・ 貧困の定義の明確化

・ 国、県、郡、村落レベルの貧困世帯数の 把握

・ 貧困削減計画の策定

(次頁へ続く)

61家畜牛の一品種。東南アジアにおいて多く、役用。

地域開発 ・ 貧困層の多い地域を中 心とする地域ごとの貧 困削減プログラムの策 定

・ (貧困削減プログラム策定のための)専 門家の訓練(統計・財政等基礎知識)

・  (北部地域)ケシ栽培・焼畑からの作物転 換(畜産、茶、大豆、砂糖、メイズ、綿 等)。「特別経済地域」(ウドムサイ)、「自 由貿易地域」(ルアンナムター)として 開発するための調査の実施

・ (中部)他地域への供給を行える水準へ の農業生産の拡大。商品生産、工業、運 輸中継基地としての役割の維持。サバナ ケットにおける「経済特区」の開発

・ (南部)食糧安全保障に焦点を当てた開 発の実施。コーヒー、米、大豆、ピーナ ッツ、黄牛等、農産物加工の開発。チャ ンパーサックにおける「経済特区」開発 教育 ・ 遠隔地、少数民族地域、

低開発地域を重点とす る義務教育の普及およ び職業訓練の増設校

・ 初等教育就学率および 識字率の向上

・ (2005年までの目標)

・ 初等教育就学率86%

・ 中等教育就学率52%

・ 高等教育就学率24%

・ 政府歳出の12%を教育支出に向ける 保健 ・ 家族計画(性感染症およ

びHIV/AIDSの予防)の 推進

・ プライマリー・ヘルス・

ケアの充実

・ (2005年までの目標)

・ 平均寿命63歳

・ 妊産婦死亡率10万人当たり350人

・  5歳未満乳児死亡率1000人当たり70人

・ ワクチン接種率80%以上 労働・社会福祉 ・ 労働力の質の向上

・ 外国人労働者数の削減

・ 短期職業訓練センターの拡充(2005年 まで)

・ 職業訓練による30万人の労働者育成

(2005年まで)

〔出所〕鈴木基義「移行経済国ラオスの現状と課題」pp.165-166(石田暁恵「2001年党大会後のヴ ェトナム・ラオス‐新たな課題への挑戦‐」アジア経済研究所、2002年3月)

こうした開発計画の実行可能性については、多くのドナーは「目標は示されても、それ を達成するための具体的な実施計画がない。」として懐疑的に見ている。ラオス政府の問 題点として、

i) 中央政府における具体的な政策・戦略を策定する能力および人材が不足 している

ii) 地方政府において予算策定を含めた政策実施能力および人材が不足し ている

iii) 予算策定が適正に行われず、かつ政府歳出管理がずさんである

が挙げられる。

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