第 3 章 貧困削減へ向けた国際協力
3.2. 貧困削減に向けた取り組み
3.2.2 二国間援助機関
(1) 国際協力事業団 (JICA)
日本の貧困削減政策は政府開発援助大綱や、1999年8 月に採択された「政府開発援助に 関する中期政策」の中で触れられており、ODAが貧困削減や社会開発に重点を置くこと が述べられている。具体的には、基礎教育、保健医療、ジェンダーなどを「貧困層に直 接的に裨益する協力」として重視している。また、開発途上国政府の貧困緩和のための 政策立案・実施能力の強化を支援していく姿勢を明らかにしている。これを受けてJICA は「人間中心の開発を目指す」とし、すべての JICA 事業に「貧困削減の視点」を組み 込むことを決定し、さらに直接的な貧困削減のための事業を拡大することで、貧困削減 を主要な課題として位置づけてきた。
JICAのラオス援助の重点分野はまずセクターを越えた重点分野として、i) 人材育成、ii) 基礎的人間ニーズの充足を挙げており、セクター別には、i) 農林業の振興、ii) 社会・産 業基盤としてのインフラ・エネルギー、を優先している。 また、ラオスには、現在約 40 名の青年海外協力隊員が草の根レベルで活動しており、その活動が集中している分野 は、多い順に、i) 保健医療、ii) 農林水産分野、iii) 教育文化分野となっている。
援助受入国の政策立案・実施能力を強化するという視点から、JICAのラオス援助では行 政官の人材育成の分野に最も重点が置かれている。対外関係の発展、地方分権化、そし
て地域経済統合を同時に進めているラオスにおいて、「最適な国家経済運営を推進して いくための行政官の能力向上や諸制度の整備に資する協力は最も緊急性が高い」という 認識に基づいており、具体的には行政組織や法制度、金融システム等の分野で行政官人 材育成プログラムを実施している。
F-PRSP作成の経過報告書(Progress Report)によると、JICAの実施した 「総合農業開
発マスタープラン(Integrated Agricultural Development Master Plan)」策定への支援は、
国家貧困削減政策の策定に最も貢献するとして重要な位置づけをされている。また、保 健セクターへの JICA の支援では、UNICEF と協調して作成した「保健マスタープラン
(Master Plan in Health)」策定への協力が評価されている。
このほか、JICAは経済安定化と市場経済化に向けて2000年から実施した「経済政策支 援」の中で、貧困削減政策作成への支援を行った。このプログラムでは、JICAから専門 家が派遣され、ラオス政府の顧問委員会やワーキンググループと共同で調査を実施した ものである。当初は財政、金融、投資、産業、農村開発の5分野が対象だったが、ドナ
ーの間で PRSP の策定に対する関心が高まったことを踏まえ、2001年より貧困削減が独
立した項目として加えられた。同報告書では、ラオスの貧困の多様性と、所得や食料消 費量を基準とした貧困ラインを用いることで生じる問題点が強調されており、代替策と して潜在能力アプローチ(Capability Approach)の適用が提言されている。
表 3-11 日本のセクター別援助配分の推移
(単位:%)
期 間
合 計
USD Mil
社 会 イ ン フ ラ
教 育
保 健
・ 水
そ の 他
経 済 イ ン フ ラ
運 輸
・ 通 信
エ ネ ル ギ
| そ の 他
生 産 セ ク タ
| 農 林 水 産
工
・ 建 設
貿 易
・ 観 光
マ ル チ セ ク タ
| プ ロ グ ラ ム
そ の 他
合 計
19 41 24 2 7 7 100
1991-
1995 202,306
4 15 1 41 0 0 24 0 0
13 50 7 8 17 4 100
1996-
2001 387,582
5 8 0 50 0 0 7 0 0
[出所] OECDのホームページ(URL:http://www.oecd.org)の Creditor Reporting System のOnline Databaseか らCRS/Aid Activities - all details : 1973 - 2002を用いて作成。
(2) スウェーデン国際開発庁 (SIDA: Sw edish International Development Agency)
スウェーデン政府は、従来から貧困削減をすべての国際開発協力の最重要目的であると し、貧困の「多面性」を支援政策のガイドラインとしている。貧困の定義は、i) 社会保 障の欠如、ii) 能力の欠如、iii) 機会の欠如とされている。これを受けて SIDA の援助プ ログラムでは,、経済的貧困や、保健、教育、社会保障へのアクセスの欠如だけでなく、
病気、事故、災害時に直面するする暴力、不正、無力感(powerlessness)、不安(uncertainty) などの側面も重要視している。特に、農村部の貧困層の参加、女性や児童の人権擁護を 重点的に支援する方針である。
SIDAは、ラオスの国別開発協力戦略(CSDC: Country Strategy for Development Cooperation
1999-03)を作成しており、全体的な目標として、i) 貧困削減と格差是正のための持続的
な成長、ii) 民主主義の発展と人権尊重、を掲げている。第一の目標には、主に農村の貧 困削減に重点をおき、道路と天然資源セクターに重点を置くとしている。このうち、道 路セクターでは比較的小さなドナーであることもあって、他の主要ドナーである ADB やWBと協調姿勢を強めており、SIDA は道路関連の組織育成を担当する方針である。
天然資源セクターは、水・衛生セクターへの援助額を減らしながら、森林関連のプログ ラムを最優先している。また、民主化と人権尊重の目標において、UNDP と協調して法 制度整備の支援プログラムを実施しており、また、教育セクターで支援を行う検討をし ている。そのほか、不発弾除去のための支援を実施しており、この分野でドナー協調の 重要性を強調している。
2001年現在、SIDA自身の援助配分統計によれば、インフラ・都市開発セクターが6 割 を占めている。さらに天然資源セクターに16%、主に行政管理と法制度整備を中心とし た人権・民主的ガバナンスの分野に15%配分しており、SIDAの重点分野を示している。
これらに比較すると、教育や保健セクターは合計で9%を占めるに留まっている。
SIDA の代表的な活動として、10年以上支援を続けているラオス-スウェーデン森林プロ
グラム(Lao-Swedish Forestry Program VI)がある。貧困削減政策への貢献として、森林
戦略計画(Forestry Strategy Plan)策定への支援が評価されており、森林セクターでドナ ー協調の中心的な存在となっている。また、ラオスの貧困調査を実施し、ラオスの統計 整備に対する支援も行っている。
表 3-12 スウェーデンのセクター別援助配分の推移
(単位:%)
期 間
合 計
USD Mil
社 会 イ ン フ ラ
教 育
保 健
・ 水
そ の 他
経 済 イ ン フ ラ
運 輸
・ 通 信
エ ネ ル ギ
| そ の 他
生 産 セ ク タ
| 農 林 水 産
工
・ 建 設
貿 易
・ 観 光
マ ル チ セ ク タ
| プ ロ グ ラ ム
そ の 他
合 計
28 55 9 7 0 0 100
1991-
1995 96,822
0 13 15 55 0 0 9 0 0
24 32 34 5 0 4 100
1996-
2001 107,075
3 11 10 32 0 0 34 0 0 [出所] OECDのホームページ(URL:http://www.oecd.org)の Creditor Reporting System のOnline Databaseか
らCRS/Aid Activities - all details : 1973 - 2002を用いて作成。
(3) ドイツ技術協力公社 (GTZ: Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit) 2001 年に GT Z が発表した新たな援助政策は、貧困削減を「持続可能な開発の原則を基 盤とする全体的な政策の中の重要な要素」と位置づけ、経済社会分野のみでなく、民主 主義の発展、法の整備、紛争解決など政治的な側面からも対応されるべき、としている。
また、貧困削減のためのドナー間の協調を重視し、PRSPを積極的に支持してゆく方針を 示している。具体的な優先分野は、i) 経済成長を達成するための経済基盤の整備、ii) 食
糧安全保障、iii) 公正な貿易、iv) 対外債務の削減、v) 基礎的社会サービスの整備、vi) 貧 困層への天然資源保全、vii) 人権と労働権の保障、viii) ジェンダーの平等、ix) 良いガ バナンスと貧困層の参加、となった。
GT Z のラオス開発援助は、i) 農村開発、ii) インフォーマルを含む人材育成に焦点が絞 られている。具体的には、インフォーマルを含む職業訓練、林業に携わるスタッフの訓 練、医療システムの整備と家族保健、経済政策改革の専門家派遣、特定の州における農 村開発と自然資源保全、麻薬取締まりなどである。
現在、GT Zは、ラオスで貧困削減に重点を置いた「Luang Nahmthaの高地における貧困 削減を目的とする農村開発(Poverty Oriented Rural Development in the Uplands of Luang
Nahmtha)」を計画している。そのほか、1990 年代後半から中小企業開発プログラムを実
施しており、他の主要ドナーが金融セクターに集中する中、産業セクターの人材育成を 重視する政策を示している。今後は、ADBなどと農村の教育、保健の分野で共同プロジ ェクトを行っていく予定である。
表 3-13ドイツのセクター別援助配分の推移
(単位:%)
期 間
合 計
USD Mil
社 会 イ ン フ ラ
教 育
保 健
・ 水
そ の 他
経 済 イ ン フ ラ
運 輸
・ 通 信
エ ネ ル ギ
| そ の 他
生 産 セ ク タ
| 農 林 水 産
工
・ 建 設
貿 易
・ 観 光
マ ル チ セ ク タ
| プ ロ グ ラ ム
そ の 他
合 計
8 66 0 2 9 15 100
1991-
1995 27,162
0 8 0 66 0 0 0 0 0
23 21 0 9 7 41 100
1996-
2001 100,827
4 7 12 21 0 0 0 0 0 [出所] OECDのホームページ(URL:http://www.oecd.org)の Creditor Reporting System のOnline Databaseか
らCRS/Aid Activities - all details : 1973 - 2002を用いて作成。
(4) オーストラリア国際開発庁 (AusAID: Australian Agency for International Development)
オーストラリア政府は、貧困削減を援助戦略の最優先目標として掲げ、そのうえで、i) 貧 困層に裨益する持続的な包括的経済成長、ii) 貧困層の生産性を高めるための政策への支
援、iii) 政府やドナーの貧困層に対するアカウンタビリティーの改善、iv) 脆弱性
(Vulnerability)の低減、を具体的目標にしている。
AusAIDが1999年に更新したラオスへの開発協力戦略(Development Co-operation Program
Strategy Paper)では、「ラオス政府とのパートナーシップのもとに貧困削減と持続可能な
開発の支援」が主要目標とされた。この目標の下、セクター横断的な分野ではi) ガバナ ンス、ii) 女性と少数民族への配慮を重視しながら、主に、i) 基礎教育、ii) 保健、iii) 農 村開発のセクターに重点分野を絞っていくとしている。その他、自然災害や不発弾除去 などの緊急援助にも重点を置いているのが特徴である。