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Lorentz 力

ドキュメント内 (C) Kazutaka Takahashi 2018 (ページ 107-110)

第 8 章 磁場 95

8.5 Lorentz 力

8.5.1 Lorentz

前節では電流同士に働くAmp`ere力について議論し、そこから磁場を定義した。磁場は電流素片にかか る力を与えるものである。電流素片とは電流を仮想的に切り取ったものとしているが、荷電粒子そのもの と見ることもできる。つまり、電場と同様に、運動する荷電粒子は磁場をつくるとともに磁場によって力 を受ける。

電場の法則は荷電粒子の運動法則から引き出されていた。本節では静電磁場中での荷電粒子の運動につ いて調べよう。静電磁場があるときに荷電粒子が受ける力についてはこれまでの議論からわかる。電場の

場合は(2.19)式(21ページ)、磁場の場合は(8.7)式である。電流は電流密度Jを用いて表すことができ

て電流密度は(7.23)式(91ページ)のように書けるから、これらを用いると単位電荷あたりに働く力を得 ることができる。電流素片Idrに磁場が及ぼす力はIdr×Bであるが、これはρvdV ×B=ρdVv×B と書ける12。ρdV が微小領域内の電荷を表すことを考えると、電荷qに働く力はqv×Bである。よって 荷電粒子の運動方程式は

12(7.23)(91ページ)を参照

md2r(t)

dt2 =qE(r(t)) +qdr(t)

dt ×B(r(t)) (8.14)

と書ける。この右辺はLorentz力(Lorentz force)とよばれる13

磁場が荷電粒子に及ぼす力は非常に奇妙である。速度によってかかる力が変わる。そしてその力の方向 は速度と直交する向きにかかるから粒子はまっすぐ進むことができず軌道は複雑なものとなる。ポテンシャ ルを用いて書くこともできないので保存力でもない14

8.5.2 電荷の運動

電磁場が与えられたときの荷電粒子の運動を詳しく調べてみよう。

例題8–3: 定電場中の運動

定電場中における質量m、電荷qの荷電粒子の運動は次の方程式を解くことで求められる。

md2r(t)

dt2 =qE (8.15)

電場Eは一定の値をもつ。場所によらない電場であるから、たとえば平面に電荷が一様分布したもの(例

題2–4(25ページ))を用意すれば実現することができる。

この場合の運動方程式を解くのはとても簡単である。一定の力がかかった系であるから荷電粒子は等加 速度運動を行う。

r(t) = qE

2mt2+v0t+r0 (8.16)

r0t= 0での座標、v0t= 0での速度を表している。

例題8–4: 定磁場中の運動

今度は定磁場中の運動である。

md2r(t)

dt2 =qdr(t)

dt ×B (8.17)

両辺は時間微分で表されているので積分することができる15。 dr(t)

dt = q

m(r(t)r0)×B+v0 (8.18)

r0、vはそれぞれ定ベクトルを表す。磁場の方向は任意であるが、z方向であるとする。このようにしても あとで回転するか座標系をとり直して考えればよいので一般性を失うことはない。外積の定義に注意して 各成分を書き下すと

dx(t) dt = q

m(y(t)−y0)B+v0x (8.19)

dy(t) dt =−q

m(x(t)−x0)B+v0y (8.20)

dz(t)

dt =v0z (8.21)

13H. Lorentzの名前が冠されているが、Lorentz以前にもいろいろな形で議論されている。

14ベクトルポテンシャルというものを用いて表すことはできる。次章で扱う。

15ベクトル表記で複雑に見えるかもしれないが、成分に分けて考えればよい。

を得る。

三つの式を見てまずわかることは、磁場の方向の運動が単純であることである。変数zは三つめの式に しか現れず、しかもその式は等速直線運動を示している。したがって

z(t) =v0zt+z0 (8.22)

を得る。これは磁場方向に力が働かないことを意味している。元の式に戻って考えてみるとこれはもっと もなことで、磁場と速度ベクトルがなす平面に直交する方向に力がかかっている。速度ベクトルは時間に よって変化しうるが、磁場は今の場合一定値をとる。よって磁場方向には常に力が働かないことが言える。

次に、残りの方向の運動を調べよう。xとyについては二つの式が混ざったものとなっているため、別々 に解くことができない。二つの式を用いて変数yを消去することを考える。一つめの式を時間微分して二 つめの式を用いる。そうするとxのみで書かれた微分方程式を得る。

d2x(t) dt2 =qB

m [−q

m(x(t)−x0)B+v0y

]

=−q2B2 m2

(

x(t)−x0 m qBv0y

)

(8.23) 積分定数があるため複雑に見えるが、この方程式は振動を表す方程式の標準形をもっている。つまり、解 は三角関数を用いて表される。

x(t)−x0 m

qBv0y=C1sin (qB

mt )

+C2cos (qB

mt )

(8.24) 積分定数C1、C2を決定するために、初期条件r(t) =r0dr(t)dt

t=0=v0を用いる。上式でそのままt= 0 とおいたものと1回微分してからt= 0とおいたものを考えると

−m

qBv0y =C2 (8.25)

v0x= qB

mC1 (8.26)

となる。よって積分定数は次のように表される。

C1=v0x

ω (8.27)

C2=−v0y

ω (8.28)

ここで次のような記号を導入した。

ω= qB

m (8.29)

得られた積分定数を代入すると

x(t) =v0x

ω sinωt+v0y

ω (1cosωt) +x0 (8.30)

を得る。さらに、(8.19)式からy(t)を得ることができる。

y(t) =v0y

ω sinωt−v0x

ω (1cosωt) +y0 (8.31)

荷電粒子の運動をxy平面に射影してみると、周期的に回転運動する様子が見られる。これは元の式から 理解できる。常に速度に直交する方向に力が働くから軌道は曲げられる。角速度は式のωで与えられる。

これはLarmor周波数(Larmor frequency)とよばれている。z軸方向は等速直線運動をするから、あわ せると電荷はらせん運動を行うという結論になる。

磁場中の運動の特徴として、荷電粒子の速度の大きさは不変となる。

(dr(t) dt

)2

=v02 (8.32)

つまり、磁場は仕事をしない。

ドキュメント内 (C) Kazutaka Takahashi 2018 (ページ 107-110)