第 3 章 Gauss の法則 36
3.3 Gauss の法則の応用
Gaussの法則がわかると何がうれしいのだろうか。前にも述べたように、Coulombの法則と重ねあわせ
の原理があれば全ては事足りる。とりあえずここでは、電荷分布が与えられたときに電場をGaussの法則 を用いて計算する。
例題3–1: 球面上に分布した電荷
例題2–5(26ページ)と同じ例をGaussの法則を用いて考える。半径aの球面に電荷が一様に分布して
いる場合である。全電荷量をQとする。
このとき、例題2–5と同様に考えて電場は原点からの距離rのみに依存して向きは動径方向となる。動 径方向成分の電場をE(r)とする。球面と同じ中心点をもつ半径rの球を考え、その領域に対してGauss
15領域を今考えているようにとったのはこれらの性質があるからである。計算しやすいように領域を分割するのがポイントである。
これはGaussの法則を用いた計算を行うときにたびたび用いるテクニックである。以下の例参照。
図 3.5: dSは半径rの球面上の微小面要素、dS′はr′の球面上の微小面要素をそれぞれ表す。面の大きさ や|r−r′|は十分小さいとする。dSは球面上の面なので曲がった面であるが、小さくとればほぼ平らな面 とみなしても差し支えない。dSとdS′の間の領域を一つのブロックとする。任意の体積領域はこのような ブロックをとったりつけたりすることで得ることができる。
図3.6: 例題3–2の系。平面上に電荷が一様分布している。Gaussの法則に用いる領域として、平面と交わ る円柱(左)と交わらない円柱(右)を考える。両方とも底面が面に平行になるようにとる。
の法則(3.5)式を適用する。左辺の面積分は球面上で電場の大きさは一定であることと面要素と電場の向き
が同じであることを用いて
I
S
dS·E(r) = 4πr2E(r) (3.10) と計算できる。4πr2は球の面積を表す。右辺は、半径rがaより大きければ全電荷Qを含むし、小さけれ ば電荷は0であるので、
4πk
∫
V
dV ρ(r) = {
4πkQ r≥a
0 r < a (3.11)
となることがすぐわかる。両者を等値して E(r) =
{ kQ
r2 r≥a
0 r < a (3.12)
となり、例題2–5の結果と一致する。
例題3–2: 平面上に分布した電荷
無限に広い平面上に電荷が一様に分布した系を考える(例題2–3(24ページ))。この場合の電場の向き を考慮して、考える領域を図3.6のようにとってみよう。平面に平行な円柱である。このように領域をと
ると、底面で電場は面に垂直になり、側面で面に沿った向きとなる。よって流束の寄与は二つの底面から 生じる。円柱が電荷のある平面によって2等分される場合(図左)、円柱の半径をaとすると
πa2E(z)−πa2E(−z) = 4πk·πa2σ (3.13)
となる。zは底面の平面からの距離、E(z)は平面に垂直な方向の電場を表す。E(z)が奇関数であることを 用いると
E(z) = 2πkσ z
|z| (3.14)
が得られる。例題2–3の結果と一致している。
円柱が電荷のある平面を含まない場合(図右)、z±を二つの底面の平面からの距離として
πa2E(z+)−πa2E(z−) = 0 (3.15)
となり、E(z+) =E(z−)を得る。これは電場が平面からの距離によらないことを示している。上で得た結 果と矛盾しない。
以上の例題で考えたような幾何学的に単純な形状の場合、積分を非常に簡単に行えることがGaussの法 則を用いる利点である。これらの例では、面積分の面の向きと電場の向きが一致あるいは直交しているの で、簡単に計算できる。前章でも行った対称性の議論が重要な役割を果たしている。したがって、このよ うな議論ができない複雑な電荷分布の系では積分を行うことは難しい。その場合はCoulombの法則から直 接計算するのが適切な方法となる。
また、この方法は領域の取り方にも強く依存する。原理的にはどんな取り方でもよいが、何も新しい結 果が出ないときもあるし計算ができないときもある。効果的な取り方を見つけることがポイントになる。
Gaussの法則の積分形を用いた計算の仕方
[1] 与えられた電荷分布から、対称性の議論を用いて電場の向きや関数形(何の変数によるか)をで きるだけ詳しく定める。たとえば例題3–1ではE(r) =E(|r|)|rr|、例題3–2では(2.32)式(25 ページ)である。それぞれの未定関数部分を以下で決める。
[2] 前項で得た関数形に応じて領域V、S=∂V を適当に設定する。「適当」とは次項の計算ができ るようなもの。
[3] 定めた領域に対して、Gaussの法則(3.5)式の両辺をそれぞれ計算する。左辺は未定関数を用い て表し、右辺は与えられた電荷分布を用いて計算する。
[4] 両辺を等置し、未定関数を定める。
[5] ひとつのV で答えが完全に定まらない場合は、他の領域をさらに考える。
よくある誤りは、[1]を議論しないで[2]からの計算を行おうすることである。電場の関数形を決めず
にGaussの法則を用いても一意的に答えを得ることはできない。Gaussの法則はどんな場合にでも成
り立つが、具体的な計算ができる例は限られている。答えを得るためには[1]の議論は必須である。自 明だと思って省略してはならない。
図3.7: 原点をr= (x, y, z)とし、dxdydzの体積をもつ直方体を考える。