第 9 章 静磁場の法則 106
10.5 問題
[10–1] 磁気双極子モーメント
磁気双極子モーメント(10.9)式が一般に次のように書けることを示せ。
m= I 2
I
C
r×dr (10–1.1)
Cは面Sの境界の閉曲線を表す。円とは限らないことに注意。
[10–2] 正方形電流
円電流を正方形電流にかえたとき、(10.8)式などがどのように変更されるか調べよ。
7他に磁荷を用いるべき理由があればはなしは別である。
8そのような粒子がもつ磁気モーメントはスピン(spin)とよばれる。
[10–3] ソレノイド
単位長さあたりの巻き数nのソレノイドを考える。ソレノイドの長さが十分大きいとしたとき、内側と 外側の磁場を求めよ。
第 III 部
電磁場
第 11 章 電磁誘導
これまでに扱ってきたのは時間依存性のない系である。そのような系では電荷が静電場、定常電流が静 磁場をつくりだす。定常電流系は動的であるとはいえ動的効果の取り扱いは限定的なものであった。第III 部では電磁場や電荷密度、電流密度の全てが時間依存性をもつ一般的な場合を扱う。
まず、電磁誘導の問題から考える。電磁誘導は時間に依存する磁場が起電力をもたらすというものであ る。この法則は、発電機の原理になるので応用上重要であるが、同時に物理学の基礎理論に関わる原理に 注目するきっかけともなる。
11.1 磁場と起電力
第II部で導入した磁場は奇妙な力を電荷に及ぼす。止まっている電荷に磁場をかけても変化しないが、
動いている電荷に磁場をかけると進行方向と直交する方向に力(Lorentz力)がかかる。ここでは、導体を 静磁場中にて動かす問題を考えてみよう。導体中の電荷が力を受け電流が生じるはずである。扱っている のは静磁場であるから、これまで考えてきた範囲の理論を用いて記述できる。それでも、Lorentz力の法則 と組み合わせることである種の動的効果を扱うことができる。
11.1.1 動く導線に生じる起電力
図11.1のように一様な静磁場B中に導体棒を置き、一定の速度vで動かす。このとき、導体中に電荷 qがあってBの向きとvの向きが異なればqv×Bの力が働き、電荷は導体の中を移動する。十分時間が たって定常状態に達したとすれば、導体の中の電荷に力は働いていないはずである。電荷がかたよること により電場が生じ、それによる力が元の磁場によってつくられる力とつりあっている1。つまり、
0=qE+qv×B (11.1)
より、定常状態において生じている電場は
E=−v×B (11.2)
である。電場があるということは導体棒内に電位差が生じていることを意味する。
抵抗のない理想的な導体の棒に、電気伝導率σの導線、つまりOhmの法則が成り立つ導線、をつない で閉回路をつくると電流が流れる(図11.2)。動き続けて定常電流Jができるとすると
E+v×B= 1
σJ (11.3)
である。左辺第1項の電場は保存力であり、電位の勾配を用いて表される。したがって、閉回路について 線積分を行うと0になる。一方、第2項は0にならない。これが起電力を与える2。
Vemf = I
C
dr·v×B (11.4)
1両端の電荷が速度vで動くことによってつくられる磁場は無視する。両端が十分離れていれば互いの電荷がつくる磁場の影響は 無視できる。
2式(11.3)や起電力については第7章を参照。
図 11.1: 一様磁場中で導体棒を動かす。磁場の 向きと棒の向きと速度の向きは互いに異なると する。
図11.2: abの導体棒を一様磁場中で動かすこと
によって起電力が生じ、回路abcdに電流が流れ る。abの導体棒以外は静止していることに注意。
図11.3: 線要素drは速度vで動かされることによって単位時間あたりv×drの面積を掃く。v×drの向 きは紙面上向きである。
11.1.2 磁束と起電力
式(11.4)はもう少し一般的な表現にすることができる。まず、(3.43)式(47ページ)のベクトルの三重
積についての公式を用いると
Vemf=
∫
C
dr×v·B (11.5)
である。図11.3を見るとわかるように、v×drは導体棒が単位時間に空間を掃く面積に等しい。面の向き を考慮すると、起電力は
Vemf(t) =−d dt
∫
S(t)
dS·B (11.6)
と書ける。S(t)は図11.2の回路abcdがつくる面を表している。右辺の積分は面S(t)を貫く磁束(9.2)式
(106ページ)に等しい。
この公式は、これまでに議論してきた静電磁場の法則とLorentz力に基づくものであり本質的に新しい ものではない。それでも時間微分が表式に現れたことは興味深い。これはLorentz力に速度があらわれる ことに起因する。