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電場と電位 52

ドキュメント内 (C) Kazutaka Takahashi 2018 (ページ 60-68)

前章ではGaussの法則について議論した。電気力線が電荷がない点では途切れないことを表現した式

(3.5)(38ページ)、(3.19)(44ページ)は、Coulomb力の性質の一つを示している。本章では静電場のも

つもう一つの法則を考える。それはポテンシャル関数を導入することによって表される。

4.1 仕事と電位

力学においては仕事(work)という概念が重要な役割を果たした。ある物体に対してFの大きさの力を かけて物体をsの長さだけ動かしたとき、W =F sの仕事をしたという。定義により仕事は(力)·(長さ) = (質量)·(長さ)2·(時間)2の次元をもつ。これはエネルギー(energy)の次元と同じである1。エネルギー は物体に仕事をすることのできる能力のことをいう。エネルギーや仕事は負の量にもなる。力の向きと動 かす方向が逆のとき、仕事は負になる2

Coulomb力も起源は何であれ物体に力を及ぼすものであるから仕事を定義することができる。そこで、

ここでは仕事と電場の関係を考えよう。電場E(r)が与えられた系において電荷量qの電荷を動かす。電場 にしたがって動くのではなくて、こちらの思い通りに動かしたい。そのためには電場に逆らって外から力 を与える必要がある。動かす経路をCとしたとき、その力が電荷に対してする仕事は次のように書ける。

W =

C

dr·F(r) =−q

C

dr·E(r) (4.1)

これは電場による力を打ち消すためにF(r) =−qE(r)の外力をかけながら動かすことを意味している3。 ここで表されている積分は、線積分(line integral)とよばれるものである。つまり、経路CN 個に分 割し、各点での接ベクトルと電場の内積の和をとり、N → ∞の極限をとる。

C

dr·E(r) = lim

N→∞

N i=1

∆ri·E(ri) (4.2)

具体的な計算の仕方については以下の囲みで述べる。

このような仕事の定義では、電場は考えている電荷qとは関係なくもともと存在しているものであり、新 たにおかれた電荷qによって電場が乱されないとしている。それには電荷qが十分小さいものと考えれば よい。また、電場は単位電荷に働く力として定義されるから、電荷あたりの仕事という量を導入するのが 自然であろう。そのようにすれば電荷量qは表だって式にあらわれなくなる。つまり、単位電荷あたりの 仕事量は

ϕ=

C

dr·E(r) (4.3)

と書くことができる。

1たとえば、運動エネルギーは質量と速度の2乗をかけたもので表される。

2正確には両者はベクトルなので両者の向きが同じ軸上にあるとは限らない。以下で電場の例を用いて示すように、仕事は内積を 用いて定義される。内積が負のとき仕事は負になる。

3元からある電場と外力によって電荷にかかる力は0となる。実際にはさらにわずかな力をかけて系を乱さないように無限小の速 度で電荷を動かすことを想定している。

問題[4–1]で仕事量を具体的に計算してみよう。それからわかることは、答えが始点と終点の値にのみよ ることである。ここではそのことを一般的に示す。問題[4–1]と同様に原点に点電荷Qをおいた系を考え る。例によって重ねあわせの原理があるので、この場合のみを考えれば十分である。図4.1のような経路 に対して、積分の定義にしたがって経路をN個の微小区間に分割する。経路の各点riでの接線とriのな す角度をθiとする。このとき、riでの微小接線ベクトルの長さを∆liとすると、

ϕ = lim

N→∞

N i=1

∆li

kQ

r2i cosθi (4.4a)

= lim

N→∞

N i=1

∆rikQ

r2i (4.4b)

=

rB rA

drkQ

r2 (4.4c)

= kQ rB −kQ

rA (4.4d)

となる。∆liri方向に射影したベクトルの長さが∆ri= ∆licosθiとなることを用いて変形を行ってい る。また、始点と電荷の距離をrA、終点と電荷の距離をrBとした。このように、答えが始点と終点の値 にのみ依存することが一般的に言える。

この結果は、電場の特徴を捉えたものである。経路をどのようにとって積分を行おうとも費やす仕事量 は変化しない。これは、仕事が局所的な関数で特徴づけられるということを意味している。つまり、各点rϕ(r)というスカラー量が定義されており、点rAからrBへの経路を動かしたときにかかる仕事量はそ の関数を用いて

ϕ=

AB

dr·E(r) =ϕ(rB)−ϕ(rA) (4.5) と書ける。関数ϕ(r)を電位(electric potential)という。静電ポテンシャル(electrostatic potential)ま たは単にポテンシャルとよばれることも多い。

経路によらないことから直ちにわかるが、始点と終点を同一の点にとると仕事量は0である。

I

C

dr·E(r) = 0 (4.6)

Cは任意の閉曲線を表す。左辺の積分記号H

は始点と終点が同じ点である線積分に対して用いられる。ど んな経路をとろうとも同じ点に戻ってくるために必要な仕事量は0となる。途中でどれだけ外力をかけて も、戻ってくる過程で損した分をどこかで得して最終的な差し引きは0になる。

このように、仕事を定量的に表すためにはスカラー量である電位ϕ(r)を用いればよいことがわかる。当 然ながら、このような量は電場自体を特徴づけるものとなる。

図4.1: 固定された電荷Qがつくる電場の下で電荷qを点AからBまで動かす。

線積分・面積分の計算の仕方

一般に、経路Cについての線積分

C

dr·E(r) (4.7)

は次のようにして計算される。経路Cr=r(s)と表す。sは媒介変数であり、たとえば0から1ま で動かすことによって経路に沿ってrが動くとする。つまり、r(0)が始点、r(1)が終点を表している。

パラメータを動かすことによって始点から終点まで軌道を描くことができるようなものであればどの ようにとってもよい。そのような媒介変数表示を用いれば線積分はsについての積分として表せる。

C

dr·E(r) =

1 0

dsdr(s)

ds ·E(r(s)) (4.8)

dr(s)

ds は変数変換のヤコビアンを表す。被積分関数はsの関数であるからこれは通常の積分の知識で行 うことができる。同様に考えると(4.7)式で内積の代わりに外積が用いられる場合(後で出てくる)も 容易に行うことができる。

面積分も同様である。面積分の場合には媒介変数は二つ必要となる。面上の点がr=r(s, t)と、二つ の媒介変数を用いて表されるとき、面積分は

S

dS·E(r) =

1 0

ds

1 0

dt∂r(s, t)

∂s ×∂r(s, t)

∂t ·E(r(s, t)) (4.9) と書くことができる。外積を用いると面の向きを表現できることは適当な例で図を描いて理解してほ しい。

4.2 電場と電位

前節では電位を仕事という概念から導入したが、ここでは別の視点から考えてみよう。

原点におかれた電荷qの与える電場E(r)は次のように微分を用いて書かれる。

E=kqr

r3 =−∇kq

r (4.10)

微分について次のような計算を行っていることに注意されたい。

1 r =

∂r 1 r = ∂r

∂r

∂r 1 r = r

r

1 r2 =r

r3 (4.11)

微分の連鎖則を用いてrの各成分についての微分を動径変数r=√

x2+y2+z2についての積分に書き換 えることによって計算される。さて、この式と前節の議論を考慮すると、微分される関数は電位に他なら ない。電場は電位を用いて次のように書ける。

E(r) =−∇ϕ(r) (4.12)

右辺の微分は勾配である4。電位の具体的な関数形は次のようになる。

ϕ(r) =kq

r + const. (4.13)

右辺第2項の定数値は不定である。物理的な結果には寄与しないのでどのようにとってもよい。r→ ∞の とき電位が0となるように設定することが多く5、その場合定数値は0となる。一般化することは容易であ り、任意の電荷分布ρ(r)について

ϕ(r) =k

d3r ρ(r)

|rr|+ const. (4.14)

と書ける。

式(4.12)を用いると、前節のように電位差を電場の線積分で表すことができる。適当な経路で電場を積

分すると

C

dr·E(r) =

C

dr·ϕ(r) (4.15)

であるが、前節の囲みのように経路を0≤s≤1のパラメータsを用いてr(s)と表現すると、

C

dr·E(r) =

1 0

dsdr(s)

ds ·ϕ(r(s)) (4.16a)

=

1 0

ds d

dsϕ(r(s)) (4.16b)

= ϕ(r(1))−ϕ(r(0)) (4.16c)

である。式(4.5)と同じ結果である。始点と終点を同じ点にとればr(0) =r(1)なので(4.6)式も示すこと もできる。

スカラー関数の勾配を用いて表される力は保存力(conservation force)とよばれる。保存力は前節で扱っ た通り仕事が経路によらないという特徴をもつ。

4.3 電位の性質

ここでは具体例を用いて電位を計算することで電位のもつ一般的な性質を考える。

4前章の囲み参照。

5電荷が無い極限q0で電位が0と考えても同じである。

例題4–1: 二つの点電荷

例題2–1(21ページ)で扱ったように、二つの電荷をr+rにおく。二つの電荷が同じ電荷量qであ

るとき、電荷一つのときの電位が(4.14)式のように計算されることを用いて電位は次のように計算される。

ϕ(r) =kq ( 1

|rr+| + 1

|rr| )

(4.17) 無限遠点で0になるように定数値は0とした。

同様にして、r+に電荷q、r−qがあるときは ϕ(r) =kq

( 1

|rr+| 1

|rr| )

(4.18) となる。電位の様子は問題[4–3]で考える。

例題4–2: 球面上に分布した電荷

半径aの球面上に電荷Qが一様分布している系では電場は次のように計算された。

E(r) =

{ kQrr3 r≥a 0 r < a

(4.19) 球対称の系であるから、電位は動径変数r=|r|の関数となるはずである。r≥aのとき、積分を行うと

ϕ(r) = kQ

r +C0 (4.20)

となる。任意定数C0の不定性が生じるが、無限遠点で0になるように電位を決めるとC0 = 0となる。

r < aのとき、電場は0であるから

ϕ(r) =C1 (4.21)

となる。この定数値C1はどのように決定すべきだろうか。電場はr=aで不連続であるが発散はしない ので、δを微小量としてr=a−δからr=a+δまで電荷を運ぶのに仕事が不連続に変化するとは考えに くい。つまり、電位は連続関数でなければならない。よって電位は次のようになる。

ϕ(r) = { kQ

r r≥a

kQ

a r < a (4.22)

例題4–3: 平面上に分布した電荷

電荷がxy平面上に面密度σで分布している系を考える。このときの電場のz成分は次のように計算さ れた。

Ez(z) = 2πkσ z

|z| (4.23)

これより、電位も容易に求められて

ϕ(r) =−2πkσ|z|+ const. (4.24)

を得る。この場合、無限遠点で電位を0にとることができない。電荷分布が無限遠点にまで及んでいるこ とを考えるとおかしな結果ではない。電場はz= 0で不連続に変化するが、電位は連続である。また、等

電位面は|z|= const.で与えられる。これは電場の向きと直交している。

ドキュメント内 (C) Kazutaka Takahashi 2018 (ページ 60-68)