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3. スラウェシ島主要地域の天然ガス供給計画の検討

3.4 LNG 需要予測

3.4.5 LNG バンカリングの可能性について

世界でLNG燃料船化とLNGバンカリングに向けた取り組みが始められている。下図は、

世界の船種別のLNG燃料船の導入状況である。現時点でもっともLNG燃料化が進めら れている船種はフェリーであり、次いで、タンカー、港湾サービス船(PSV)やタグボー トとなっている。

図表 100 世界の船種別の LNG 燃料船の導入状況

出所)DNV-GL資料

また、インドネシアの船舶燃料の使用状況は以下の図の通りである。特に、Fuel Oilと 呼ばれる、日本のC重油に相当する船舶燃料が2007年以降激減している。なお、船舶燃 料としてHSDを使用している場合、インドネシアの統計区分上、自動車と船舶に区分で きないため、下記のグラフには含まれていない。

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図表 101 インドネシアの船舶燃料消費量の推移(kl/年)と LNG 換算値(t/年)

出所)Ministry Of Energy and Mineral Resources, Republic of Indonesia (2017) HANDBOOK OF ENERGY & ECONOMIC STATISTICS OF INDONESIA, p.52,53より作成

さらに、インドネシアのLNGバンカリングに関する検討もされている。2015、2016年 にLNG バンカリングに関してESDMなど複数ステークホルダーと協議し、ロードマッ プを作成した。交通省は、既存船の改造がコスト高のため実現はしていないが、新造船向 けには可能性があると考えている。このため、2025年にはLNG燃料化を始めたいとの目 標があり、PelniとPGNで既にMoU締結済みである。

インドネシア交通省は、 Kualatanjung (Medan) 、Jakarta 、Surabaya、Makassar、

Bitung、Sorongでの LNG バンカリング拠点整備を期待している。一方で、インドネシ

ア船主協会(INSA)は、ジャカルタとスラバヤが貨物輸送の主要港であり、両港へのLNG バンカリング拠点整備を希望していた。

潜在的に LNG 燃料化の可能性がある船種はコンテナ船化かドライバルク船だと考えら れるが、コンテナ船の場合は、ISOコンテナを活用したカートリッジ式の可能性が指摘さ れていた。ただし、現在、海運業界は極めて厳しい状況にあり、コンテナ船、リグの支援 船等稼働率が低くなっている。このため、船社にLNG燃料化のための投資余力はない状 況である。インドネシアの独自の事情として、HSDやIFOは、船員や関係者による盗難 の対象となっていることが挙げられる。LNG は簡単に盗むことができないので、燃料費 の削減(盗難分の買い直しを防ぐ)観点から、船社や船主にとってはLNG燃料化を行う 意義がある。

国営フェリー会社のPT Pelniは、IMO規制のため、低硫黄燃料油の導入の必要性は認 識しているが、インドネシア政府から燃料補助金が40%提供されているため、LNG燃料 化してもコストメリットが出ないと認識している。PT Pelniは、国営企業であり、政府の 規制に従う必要があるが、LNG船の導入に関して規制が整備されていないのもLNG燃料 化が進まない理由である。

インドネシアでは、MIGASのDecree No.45でmmbtu当たりのLNG価格が規定され ており、ヒアリングによると、現在はFOB価格で7.6ドル/MMBTUとのことであった。

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

LNG換算t/年 IDO, Fuel Oilkl/

年)

MDO/IDO(kl/年) Fuel Oil(kl/年) IDO+Fuel OilのLNG換算(t/年)

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交通省やPT Pelniで試算している限り、この金額では、船舶のLNG燃料化の資本費用を

回収することは難しいと判断している。

前述のように、現在のLNGのFOB価格だと、LNG燃料船の導入は厳しい状況である が、参考までに、PT Pelniより提供してもらったフェリーの燃料消費量から、仮にPT Pelni のフェリーをすべてLNGに燃料転換した場合の必要 LNG量を試算した。試算の結果、

インドネシア全体で16万5200トンのLNGの新規需要があることが分かった。

PT Pelniの現在の主なバンカリングポイントは、ジャカルタ、スラバヤ、マッカサルで

あるが、スラウェシ島では他にも Bitung、BauBau でも補給している。また、バーチャ ルパイプライン構想に基づくと、クパン(Kupang)やアンボン(Ambon)におけるバン カリング用LNGをスラウェシから供給することも考えられる。

図表 102 PT Pelni がフェリー向けに供給しているバンカリング用 HSD の LNG 換算 t/年

出所)Pelni提供資料より作成

そのうち、スラウェシ島に限ってみたPelni運行フェリーの燃料補給状況が以下である。

各フェリーの補給回数は月1回以上のペースであり、毎回の補給量も100トン/LNGを超 える。これらのフェリーは建造から20年程度たっており、更新時期に差し掛かっている。

事業採算性を慎重に検討する必要があるが、次回のフェリーの更新のタイミングで、LNG 燃料化を共同して推進することが考えられる。

図表 103 スラウェシ島における Pelni 運行フェリーの補給燃料の LNG 換算 t/年

バンカリング 拠点

船番号 船名 形式 DWT

(MT) GRT (GT)

建造年 バンカリ ングに かかる 時間

(時間)

年間燃 料消費

(kl/年)

HSD タンクサイズ

(㎥)

補給回数/年 一回LNG 補給量

(t/回)

LNG換算消費量

(t/年)

Makassar 106 KM Tidar Pax2000 3.200,0 14.501,0 1988 6 11.590 941 13 625 8,124 29,172

Makassar 113 KM Binaiya Pax1000 1.400,0 6.022,0 1994 4 4.100 328 13 221 2,874

Makassar 116 KM Bukit Siguntang

Pax2000 3.375,0 14.649,0 1996 6 12.590 1089 12

735 8,825

Makassar 117 KM Lambelu Pax2000 3.375,0 14.649,0 1996 8 13.340 1089 13 719 9,350

Bitung 107 KM Tatamailau Pax1000 1.400,0 6.022,0 1990 4 4.350 328 14 218 3,049 8,656

Bitung 115 KM Tilong Kabila Pax1000 1.400,0 6.022,0 1994 4 4.050 328 13 218 2,839

Bitung 122 KM Sanglang Pax500 400,0 2.650,0 1998 5 3.950 134 30 92 2,769

Bau Bau 132 KFC Jet Liner HSC 600,0 4.500,0 1979 3 12.850 162 80 113 9,007 9,007

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