3. スラウェシ島主要地域の天然ガス供給計画の検討
3.2 東インドネシアにおける LNG・ガス利活用の可能性
下記に示す図表は、インドネシア全土における家庭セクターのエネルギー別の需要予測 であるが、そのほとんどはLPG 及び電気で賄われることが想定されている。天然ガスの 需要の予測は、年率1%とされており、2014年の0.12 million BOEの需要が2050年に なっても、0.16 million BOEに留まっている。この背景として、日本では、天然ガスの用 途として、暖房や給湯といった熱源としての利用割合が大きいものの、インドネシアはそ の需要が小さいことが背景にあると想像がつく。
一方で 2016 年に、インドネシアの新聞記事において、家庭用都市ガスインフラの開発 を進めるとの報道があった。将来的に38都市の790万世帯に都市ガスを供給できる潜在 性があり、2019年までに18兆2000億ルピアを投じ130万世帯向けのインフラを整備し、
2025年までに70兆ルピアを投じ500万世帯まで整備するというものである。500万世帯 という規模は、インドネシア全体の世帯数約6500万世帯の7~8%にあたる。ただし、2016 年に開発する対象都市として、南スマトラ州プラブムリ市、北カリマンタン州タラカン市、
東ジャワ州スラバヤ市、リアウ諸島州バタム市、バンテン州チレゴン市、東カリマンタン 州バリクパパン市といった場所が挙げられるなど、パイプラインガスの供給可能な範囲で あり、インフラが未整備であるスラウェシ島やインドネシア東部とは都市ガス化の進捗が 異なる。
35
図表 47 家庭セクターにおけるエネルギー需要予測
出所: BPPT : OUTLOOK ENERGI INDONESIA 2016
3.2.2 発電用、産業用
発電(電化率)に関して、2015年のインドネシアの国全体での電化率は88.3%であり、
政府は 2019年までに 97.35%にまで拡大させる目標を立てている。西部インドネシアの
ジャカルタ、バンテン、アチェなどはそれぞれ99.8%、95.64%、94.77%と既に高い電化 率を達成している。一方、スラウェシ島の電化率は北スラウェシ(89.17%)と南スラウ ェシ(88.3%)が全国平均を上回っているものの、中部スラウェシ(79.56%)、ゴロンタ ロ(79.18%)、西スラウェシ(76.91%)、南東スラウェシ(68.84%)は未だに20%以上 が非電化地域となっている。そのため、同地域における発電所の開発は今後期待がされて おり、実際にガス火力発電所の設置計画も存在する。
また、産業用需要に関しても、今後天然ガスの利用が増加するものとされている。イン ドネシア全土の需要予測であるが、下記の図表では、天然ガスインフラが整備されていれ ば、天然ガスの需要は、年5.2%で増加していくものとされている。
図表 48 産業セクターにおけるエネルギー需要予測
出所: BPPT : OUTLOOK ENERGI INDONESIA 2016
36
更に、近年では、インドネシア政府及び州政府が、第一次産業から第二次産業へのシフ トを推進しており、北スラウェシ、中部スラウェシ、南スラウェシを中心に、経済特区や 工業団地の開発が進められている。中でも、精錬産業への投資増が顕著であり、2016 年 のスラウェシ島全体への外国直接投資額の 58%を占めている。精錬産業は多くの熱を必 要とする産業であり、工業団地や個別の需要家向けのLNG供給の可能性が見込まれる。
図表 49 スラウェシ島への産業別外国直接投資額(ドル)
出所:投資調整庁(BKPM)を基に調査団作成
3.2.3 LNG需要が期待される地域
先に示した通り、スラウェシ島においては、発電需要と産業需要が期待されるが、広大 な面積をもつスラウェシ島において、各ディストリクトに関するGDPやエネルギー消費 量を用いて、LNGの供給可能性の高い地域を絞り込むことが求められる。
人口密度、GDPのディストリクト別分析について
スラウェシ島に関する統計データでは、エネルギー消費関連データ(電力消費等)は、
州別データしか存在しない為、ディストリクト単位の絞込には使用できない状況にある。
なお、GDPは、ディストリクト別で公表されているが、産業別(1次、2次、3次等)の 内訳までは公表されていない。このため、ディストリクト単位の絞込は1次、2次、3次 合計のGDPを活用せざるを得ない。
分析に当たっては、エネルギー消費原単位の大きい2次産業(鉱業を含む)の集積度が 高いディストリクトを抽出する必要があるため、人口が少ないにも関わらずGDPが大き い地域の指標として、GDP per capita (一人当たりGDP)を用いることとした。
一方で、発電向けの供給効率性については、GDPの視点に加えて、人口密度が重要にな 26%
57% 58%
71%
44% 12%
13% 10%
13%
11%
8% 5%
4%
4% 4%
7%
13%
16%
23%
500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000
2013 2014 2015 2016
精錬産業 化学産業 鉱業 食品産業 その他
37
る。しかしながら、エネルギー消費関連データは州別しかわからない為、ディストリクト 単位のエネルギー消費量は、人口から推計するしかない。人口を想定する場合の課題は、
人口が多いが、面積も同時に広大な場合である。広大な面積のディストリクトに、人口が 多い場合、供給効率性が低く、事業性は低くなる。ガス事業においては、一定程度のエネ ルギーの需要の密度がある地域が望ましい。インドネシアはディストリクトレベルで 10 万人単位の人口集積があることから、単純にディストリクト別の人口密度を発電用の代理 指標と考える。
以上を踏まえて、ディストリクト絞込の考え方は次の通りである。まず、産業用の代理 指標として一人当たりGDPを指標とする。また、発電用の代理指標として人口密度を取 る。これらの二指標によって各ディストリクトをプロットする。
次に、閾値を、GDP per capitaが5千万ルピア/年、人口密度500人/㎢で設定した。産 業集積や人口集積がある地域は、産業用、発電用、両方が有望である地域となる。一方で、
産業集積や人口集積がないディストリクトは、調査しても成果に結びつかない。このため、
第一象限を最優先地域、第四象限を非有力地域と想定した。
結果として、第一象限に該当する地域は南スラウェシ州の2か所(マッカサルとPangkep)
であった。また第二象限に該当する地域は北スラウェシ州のマナドやビトゥン、南スラウ ェシ州のモロワリなどの地域が挙げられ、第三象限には、南スラウェシ州のゴワやルウ、
マロス、そして、ゴロンタロ州のゴロンタロなどが該当した。
図表 50 スラウェシ島の 2015 年時点の
一人当たりGDPと人口密度によるディストリクトの分布
出所)インドネシア統計局資料より調査団作成
第一象限
GDP per capita、人口密度いずれも高く、
産業用・発電用で有望地域 第二象限
GDP per capitaは高いが、
人口密度が低い地域であ り、産業用として有望
第三象限
GDP per capitaは低いが、人口 密度が高い地域であり、発電向け 地域として有望
0.00 50.00 100.00 150.00
0.00 500.00 1,000.00 1,500.00 2,000.00 2,500.00 3,000.00 3,500.00 4,000.00
GDP per capita (million Rupiah) (2015)
Population Density (persons/km2)
GDP per Capita (million Rupiah) (2015)
38
以上のプロットの結果を地図上に、第一象限は赤、第二象限は橙、第三象限は黄で示し たものが以下の図である。優先順位の高い、産業用・発電用双方が期待される第一象限の ディストリクトがあるマッカサル周辺(南スラウェシ)、そして、産業利用が期待される マナド周辺(北スラウェシ)、モロワリ(中央スラウェシ)の三か所について調査を行い エネルギー需要の把握を試みた。
図表 51 スラウェシ島の 2015 年時点の一人当たりGDPと人口密度マップ
出所)インドネシア統計局資料より調査団作成
なお、これら地域は、下記の図にある新たな工業団地の開発地域にもなっている。北ス ラウェシはBitung、中央スラウェシはPaluとMorowali、南スラウェシはBataengが挙 げられる。
図表 52 インドネシアにおける新規工業団地マップ
出所)BKAM「ROGRESS OF INVESTMENT PERFORMANCE AND CLIMAT(2015.11)」
州 産業・発電用有望地域
Sulawesi Selatan Makassar Sulawesi Selatan Pangkep
州 産業用有望地域
Sulawesi Selatan Luwu Timur Sulawesi Tengah Morowali Sulawesi Tenggara Kolaka Sulawesi Utara Bitung Sulawesi Utara Manado
注:Kolaka: ニッケルや鉛の採鉱と精錬工場有
39