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4. 天然ガス供給インフラマスタープランの策定

4.3 天然ガス供給インフラマスタープラン案

本項では、現地調査の結果を踏まえ、スラウェシ島への LNG 導入イメージとして青写 真を示している。第二章でも述べているが、インドネシア政府(MIGAS)が提唱するVPCC において、スラウェシ島の北および南は、島しょ部向けのLNG配給のハブ拠点として示 されており、地政学的に複数の液化基地に挟まれている点では二次輸送拠点として優位で あると認められ、当調査団の結論においても、マカッサル、ビトゥンを、LNG 導入のハ ブ拠点として提案する。LNG 受入基地については、ハブ拠点という位置づけで、貯蔵タ ンク等の設備の拡張性をある程度持たせておく方が望ましく、陸上基地方式が有効である。

図表 117 スラウェシ島への LNG 導入イメージ

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【マカッサル】

マカッサルは、スラウェシ島で最も大都市であり、KIMA工業団地や大型の天然ガス発 電所の建設計画もある。これら潜在ガス需要への天然ガス導入を目指していくとともに、

東インドネシアの東南方面へスモールスケールLNG輸送のハブ基地として、LNG貯蔵、

および再出荷基地を設置することが期待できる。

【ビトゥン・リクパン】

マカッサルと同様に、東インドネシアのマルク方面へのLNG配給ハブとして、LNG貯 蔵、および再出荷基地を設置することが期待できる。また、島内ではBitung経済特区の 計画も浮上しており、当該エリアの経済発展に資するクリーンなエネルギーとして、天然 ガスの導入を推奨する。

【パル】

中央スラウェシの西側に位置するパルは、地熱や水力発電により電力が比較的十分であ り、新たな発電設備の建設等は必要ない。パル工業団地の建設は既に始まっており、誘致 される工場の一部では、小さいながら熱加工等でエネルギーを使う可能性が潜在している。

ただし、大規模なLNG受入設備を設置しても投資回収できるほどのデマンドが見込めな いことから、Bontang液化基地に最も近い利点を活かし、小型LNG配送(ISOタンクや 小型LNG船)により、大型の設備投資なしでのLNG利活用が求められる。

【モロワリ、東南スラウェシ州】

このエリアは、ニッケル等の精錬所が点在する。精錬所では大規模なエネルギー消費が 行われるため、環境性能の高い天然ガスを推し進めていくべきであるが、既に石炭発電所 等が中国系の外資により参入済みであり、燃料転換の余地はない。また、精錬所は、原材 料の市況に合わせて工場の稼働率を変動させるため、状況によっては当面操業しないとい う可能性も残る産業である。

従って、今後、精錬所の誘致が進み、電力・ガス等のエネルギーデマンドの増加が期待 される場合においても、陸上式のLNGターミナルは設置せず、操業停止等の不測事態を ある程度回避できるFSRUで天然ガスエネルギーを導入していくことが望ましい。

4.3.2 北スラウェシ州(リクパン・ビトゥン地区)

北スラウェシ州には、ビトゥン経済特区の構想があり、工業団地や鉄道、エネルギー等 のインフラ建設が見込まれる。また、PLN が運用するDiesel焚き発電所(57MW)の稼 動によって、この地区の電力を賄っており、本格的なLNGの導入によって、国内産の然 ガスへの切替も期待できる。最初のフェーズでは、経済特区の開発動向に合わせ、LNG を活用できる供給基盤の整備を計画することになりそうであるが、周辺の中規模工場等へ のエネルギー供給や発電所の燃料転換も合せて実施することが望ましい。

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将来的には、リクパン地区の天然ガス発電所(計 300MW)の建設予定があり、これら を対象に、ビトゥンLNG基地から幹線パイプラインを延伸することを提案する。

また、ビトゥンLNG基地は、島しょ部へLNGを再出荷するハブ基地としても機能する が、そのフェーズでは、需要想定に合わせ、貯蔵タンクを1基増設する必要がある。

図表 118 北スラウェシ州 ガス供給基盤整備の計画案

実施時期 想定される主なガス需要 LNG ガス供給インフラ設備

Phase1

(3~10yr)

・Diesel発電所 燃料転換

・Bitung経済特区 ガス供給

0.2 MTPA

・LNG受入ターミナル 10kℓ×1

・LNGトラック輸送(再ガス装置)

Phase2

(5~10yr)

・Minahasa天然ガス発電所

・Salbagut天然ガス発電所

0.4-0.5 MTPA

・ガスパイプライン 30km

Phase3

(時期未定)

・島しょ部へのLNG再出荷 0.6-0.7 MTPA

(要調査)

・貯蔵タンク 5kℓ×1

図表 119 北スラウェシ州のガス供給基盤整備計画案のイメージ

出所)OpenStreetMap

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4.3.3 南スラウェシ州(マカッサル・マロス地区)

南スラウェシ州は、工業団地(KIMA)や、将来、建設が予定されている天然ガス発電 所へのガス供給がインフラ形成の核となる需要である。港湾地区にLNG受入基地を建設 し、発電所向けにガスパイプラインを敷設して燃料ガスを輸送するとともに、工業団地に は、LNGローリーによって、パイプラインよりもコストを抑えた供給基盤が求められる。

当該エリアは、島しょ部へのLNG再出荷のハブ機能としても期待でき、さらなるLNG 基地の整備拡張計画を織り込んでおく必要がある。

また、Bantaeng 工業団地へのスメルター工場誘致のプロジェクトが進められており、

当該地区へFSRUでガス供給する計画も確認しているが、マカッサルのLNG基地からガ スパイプラインで延伸可能な範囲であり、陸上からのインフラ拡張も選択可能と考えられ る。

図表 120 南スラウェシ州 ガス供給基盤整備の計画案

実施時期 想定される主なガス需要 LNG ガス供給インフラ設備

Phase1

(3~10yr)

・Makassar天然ガス発電所

・工業団地(KIMA)燃料転換

・Maros大規模工場 燃料転換

0.3-0.4 MTPA

・LNG受入ターミナル 16kℓ×1

・ガスパイプライン 50km

・LNGトラック輸送(再ガス装置)

Phase2

(5~10yr)

・Sulsel天然ガス発電所 0.6-0.7 MTPA Phase3

(時期未定)

・島しょ部へのLNG再出荷

・Bantaeng工業団地 ガス供給

1.3-1.4 MTPA

(要調査)

・貯蔵タンク 8kℓ×1

・ガスパイプラン 130km

図表 121 南スラウェシ州のガス供給基盤整備計画案のイメージ

出所)OpenStreetMap

86 4.3.4 中央スラウェシ州(パル地区)

パル工業団地への天然ガス供給インフラとしては、大規模な LNG 受入ターミナルを必 要としないISOコンテナ等による小型輸送方式が考えられる。既存のコンテナ港を活用し、

Bontang液化基地から必要な消費量分だけ配送することで、工業団地の開発に合せたイン

フラ形成が可能となる。

図表 122 中央スラウェシ州(パル)の ISO コンテナ LNG 輸送のイメージ