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4. 天然ガス供給インフラマスタープランの策定

4.1 LNG・ガスインフラ整備の考え方

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このうち、①④は、都市部であり、発電所の設置や工業団地の開発計画(既存含む)が 存在する。③は、自動車用鋼板等に使用されるフェロニッケルの精錬所(スメルター)が 集積するエリアであり、国営企業や中国系企業が既に操業し、現時点では電力・熱のエネ ルギー使用量が高い。②は、経済特区として工業団地内の道路の建設が始まっているが、

地熱や水力等の電力が十分にある状況のため、今後、天然ガスで発電インフラが設置され る見込みは低い。このため、今後設置されるであろう工業用の熱需要等にISOコンテナ等 の小型の配送手段を使って、開発速度に応じたLNG導入の機会を探っていくことが望ま しい。

また、スラウェシ島は、広大な面積があり、主要な需要地点間は数百km以上離れてい るため、長距離ガス輸送パイプラインのような広域連携は過剰投資となることは明らかで ある。

これらの需要状況に鑑み、LNGの導入箇所の選定においては、設備投資が回収可能であ ることを前提に、継続的なエネルギー使用が見込めるか等の天然ガスの必要性を分析し、

絞り込んだ。調査団によって地点を更に絞り込んだ結果は、以下の図表のとおりである。

図表 105 スラウェシ島への LNG 導入箇所の絞込み

天然ガスの必要性 LNG 導入箇所の絞込み

マカッサル

マロス地区 高:工業団地、発電計画あり ・スラウェシ島の主要都市であり、工場等が 比較的密集するエリア

・大規模な港湾設備があり、大型の LNG 船が 入港しやすい

パル地区 中:工業団地あり ・工業団地が整備中であるが、ガスの消費量 は小さい見込み。LNG 受入基地設置は困難

モロワリ地区 低:鉱業に限られる ・中国系のスメルター企業が、既に石炭燃料 により操業を開始。燃料転換需要はない

マナド

ビトゥン地区 高:工業団地、発電計画あり ・ビトゥン経済特区では沿岸部の開発

上述のとおり、天然ガスの必要性が高く、LNG基地の設置が見込める以下の2地点を、

天然ガス供給マスタープランの検討対象とした。

① 南スラウェシ州のマカッサル・マロス方面

② 北スラウェシ州のマナド・ビトゥン方面

当該地点において、天然ガス供給基盤に関する検討について、次項以降で記述していく。

4.1.2 LNG調達、貯蔵、再ガス化、陸上輸送を含む天然ガス供給インフラの検討

本調査事業では、LNGの調達、ターミナルでの受入・貯蔵、再ガス化、ガス輸送、LNG ローリー輸送まで、需要地点での消費量等を想定して必要な設備の検討を行っている。調 査団は、日本における首都圏を中心に、天然ガスの供給に関して国内最大のインフラ設備 と運用経験、技術、ノウハウ等を有しており、これらの知見を活用しながら、スラウェシ 島でのインフラ設置計画を検討した。インフラの検討にあたっては、核となるガス需要を 特定し、それに合わせた設備や能力の算定を行うこととなるが、発電所や工業団地の計画

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に応じ、段階的な設備の拡張も含め、事業性を検討することがポイントとなる。

島内の天然ガス供給システムの策定にあたり、想定されるガス需要のケース分け、およ び設備検討の視点を以下の図表に整理した。先の章から述べているとおり、島内の需要量 想定は、発電用、あるいは工業団地等の燃料転換が支配的であり、家庭向けのガス使用は 対象としていない。本来であれば、家庭用や商業用での用途を見込むことも必要になるが、

日本と同様の熱需要は見込めないことから、今回の調査地域では各種の設備の算定条件か ら除外している。

図表 106 島内の潜在需要に対するガス供給システムの検討の視点

国営電力企業 PLN の策定するスラウェシ島の電源計画の年度展開については、現地に 赴き、聞き取り調査を行うことで、その実現性の確認を試みたが、明確な運転開始の見通 しや、必要となるガス消費量について、正確な情報は得られなかった。現在確認できてい る電力計画(RUPTL2017)に記載してある COD の年度については、その実現性が疑わ れる状況にあるため、実施時期は不明という前提で、「Ⅰ.マカッサル・マロス地区(南 スラウェシ州)」、「Ⅱ.マナド・ビトゥン地区(北スラウェシ州)」について、将来必要で あろうLNG受入設備の具備する能力を算定した。

Ⅰ.マカッサル・マロス地区

このエリアに必要なLNG量は、約0.8MTPAである。さらに、インドネシア政府(MIGAS)

が公表するVPCCにおける周辺の島しょ部向けのLNG必要量約0.6MTPAを考慮すると、

LNG受入ハブ基地(ClasterⅡ)としては、最大1.4MTPAを取り扱う貯蔵タンク、再出 荷設備が必要となるため、設備拡張が必要となることも見据えておかなければならない。

用途 ガス需要量 年間LNG受入量 送ガス量 LNGタンク容量・基数 マカッサル・マロス地区 発電用 約9.0億m3

工業用 約0.7億m3 約0.8MTPA 70~140t/h 10万~16万kl 1基

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Ⅱ.マナド・ビトゥン地区

当エリアの海底水深は浅く、約2万m3級の小型LNG船の着桟しかできない場所も多く ある。今回は、可能な限り LNG のアンローティング回数を低く抑えることとし、約 12 万m3級の船が着桟できる場所を探索し、5万~10万klのタンクを1基設置することで 検討している。また、インドネシア政府(MIGAS)の公表しているコンセプトによれば、

周辺島しょ部向けの LNG ハブ基地(VPCC ClasterⅢ)を設置する構想となっており、

0.2MTPA程度の追加のLNGを取り扱うタンクの拡張計画を想定しておく必要がある。

4.1.3 LNG受入基地の方式の選定

LNG受入基地は、発電用燃料ガス供給や、工業用の用途に供する重要な社会的インフラ 設備である。そのため、天候・海象条件等に左右されずガスを送出し、長期間に渡って高 い信頼性を持って安定稼動しなければならない。また、インドネシアは対象となる海域に 多くの島を有し、それらの需要に合わせ、内航船やローリー輸送といった輸送手段を用い てLNGを配給するハブ基地としての期待もされる。

従来、エネルギーの基幹インフラとして、その機能の安定性、拡張性、保全の簡便性等 の利点から陸上式が多く採用されてきた。一方で、土地収用に時間を要す、あるいは適切 な面積を確保できない等の課題もある。昨今のLNG受入プロジェクトを見ると、短納期 かつ安価に傭船契約できるFSRU= Floating Storage & Regasification Unit (浮体式LNG 貯蔵再ガス化設備)が陸上受入基地の機能の一部として代替できるケースが増えており、

その優位性はインドネシア政府や国営電力企業PLNにも認知されている。

一般的には、陸上式と浮体式には下図のような違いがあり、需要形態とインフラ設備の 位置づけに応じ選択されて、設備計画に織り込まれる。

当調査団は、スラウェシ島への LNG 導入の受入設備として、陸上式、浮体式どちらに ついても、設置の可能性について現地調査を行っている。

図表 107 FSRU の代替できる機能

用途 ガス需要量 年間LNG受入量 送ガス量 LNGタンク容量・基数 マナド・ビトゥン地区 発電用 約4億m3

工業用 約0.3億m3 約0.4MTPA 40~80t/h 5万~10万kl 1基

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図表 108 FSRU の特徴

Pros Cons

●陸上式と比べ、地盤造りが不要、シップ ヤードでの建設ができる等で、納期が短い

●既存LNG船と同型サイズの仕様であれば、

同能力の陸上式に比べコストを抑えられる

●船自体は撤去及び移設が可能であり、イン フラとしての柔軟性が高い

●陸上式に比べ、必要な許認可類が少ない

●船とタンク・再ガス化設備が1パッケージで あり、増強や機能拡張はできない

●船員代や船員教育が必要で、運転費を押し 上げる。場合によっては陸上式より高費用

●ドライドックのメンテナンス対応。安定操業 のため代替船のチャーターが必要