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5. 具体的地域のガス供給インフラ事業の評価

5.3 具体的な事業スキーム及び事業性評価

5.3.1 事業スキーム・ファイナンススキームの具体化

本事業ではLNG受入基地、貯蔵設備の建設やガスパイプラインの敷設を検討しており、

十分な土地の確保が課題となる。また、インフラ整備という公共性の高い事業においては、

政府系機関との密な連携が必要となる。従い、事業スキームの検討にあたっては国営企業 を中心に、現地企業とのSPC設立を念頭に置いた。

資金調達に関しては、下記の通り様々なオプションが検討可能である。検討に際しては ファイナンス条件(金利、償還・据置期間)や本事業の特性等を加味し、各関係機関への ヒアリングを踏まえ、JICA海外投融資やJBIC投資金融の活用を想定した。

特に、日本政府は2015年から5年間で総額約1,100億ドル(13兆円規模)の「質の高 いインフラ投資」をアジア地域に提供することを発表しており、その中で海外投融資の対 象拡大や審査の迅速化が謳われている。また、2017 年の「インフラシステム輸出戦略」

においても、ASEAN諸国にて本邦企業によるLNG受入基地等の天然ガス関連インフラ の導入や、LNG 販売事業への参入に向けた支援を推進すること、中でも資源国であるイ ンドネシアとはエネルギー分野で共同調査や人材育成等を通じた関係強化が重要視され ている。斯様な背景からも、本事業へのJICA海外投融資の適用可能性は高いと考えられ る。

主体 スキーム 内容

JICA 円借款 開発途上国に対して低利で長期の緩やかな条件で開発資金を貸し付けること

により、開発途上国の発展への取組みを支援。

Viability Gap Funding (VGF)

開発途上国政府の実施するPPPインフラ事業に対して、原則として日本企業 が出資する場合において、SPCの収益性確保のために円借款を供与。

Equity Back Finance (EBF)

開発途上国政府・国営企業等が出資するPPPインフラ事業に対し、日本企業 の事業運営主体に参画する場合、SPCに対する相手国側の出資部分に対して 円借款を供与。

海外投融資 民間企業等が行う開発効果の高い事業で、且つ一般の金融機関だけでの対応 が困難な場合に、「出資」と「融資」という2つの資金面から支援。

JBIC 投資金融 日本企業の海外投資事業に対する融資で、日本企業(投資者)に対するもの、

日系現地法人(合弁企業含む)またはこれに貸付・出資を行う外国の銀行・

政府等向けに供与。

輸出金融 日本企業や日系現地法人等の機械・設備や技術等の輸出・販売を対象とした 融資で、外国の輸入者(買主)または外国の金融機関等向けに供与。

NEXI 貿易保険 海外バイヤーとの輸出・投資・融資を行う本邦企業のリスクに備える保険。

出所: 経済産業省ウェブサイト

108

上記を踏まえ、事業スキームは以下の通り整理される。

図表 131 事業スキーム(案)

JICA投融資を活用した場合の資金調達条件は、以下の通りとなる。

融資・出資比率 JICA融資:総事業費の70%

民間投資家からの出資:30%

※案件の特性によっては、80%までの融資が可能

金利 円建て 金利3.0%を想定

期間 融資期間:20年間(最長25年)

据置期間:5年間(最長10年)

尚、円借款の場合、インドネシアは低中所得国(1 人当たり GNI が USD1,026 以上

4,035以下)に分類されており、平成29年10月16日以降に事前通報を行う案件につい

ては、一般条件の場合、金利 1.5%、償還期間 30 年(うち 据置期間 10年)、アンタイ ドが基準条件となる。また、本邦技術活用条件(STEP) の場合、基準で金利 0.1%、償 還期間 40 年(うち据置期間 10 年)、タイドが条件となる。インドネシア側の負担軽減 という観点からは円借款の活用が望ましいが、供与に際してはインドネシア政府の適切な 巻き込み等に時間を要することが想定される。

109 5.3.2 事業性評価

これまで述べてきたような規制やリスク、環境社会影響、ビジネススキーム等の前提は、

実際の事業者には重く圧し掛かる課題であり、個別に対応していかなければならないが、

現時点では事業化が成立する想定で、北スラウェシと南スラウェシのマスタープラン、特 に事業計画として見える範囲とした各地域のPhase2までを想定した事業性評価を行った。

また、事業性評価のにあたり、LNGの調達コストと海上輸送費をそれぞれ6ドル/MMBTU、

0.7USDMMBTUと想定し、販売価格としては、10~12USD/MMBTU と想定した。つま

り、受入基地・リガス・島内輸送を3.3~5.3USD/MMBTUの範囲で実行し、収益も確保 可能であるかどうかを表の基準とした。

以下の図表は、南スラウェシにおける先の想定の下で、更に投資額を500MilUSD とし た場合の天然ガスの提供価格とプロジェクト IRR の関係を図示したものである。エネ鉱 省令 No.58/2017 の規制(インフラ管理コスト IRR11%、新規エリア 12%が上限)を踏ま え、スラウェシ島におけるインフラ管理コストについて、IRRを12%とした際に想定され る 天 然 ガ ス の 提 供 価 格 は 、Phase1 で 12.2USD/MMBTU、Phase2 に お い て は 、

10.22USD/MMBTU と試算された。つまり、投資額が 500MilUSD である場合、Phase

1程度の需要量と仮定すると、12USD/MMBTU を超えており、市場の受入は難しいと考えら れる。発電計画 900MW を供給先として取り込んだ Phase2 では、10USD/MMBTU 超となり、市 場で受入られる可能性も高まる。

図表 132 南スラウェシにおいて投資額 500MilUSD とした際の 天然ガス提供価格とプロジェクトIRRの関係

一方で同様に投資額を 400MilUSD とした北スラウェシの場合が以下である。IRR を

12%とした際に想定される天然ガスの提供価格は、Phase1 では、12USD/MMBTU を大

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

18.0%

20.0%

9 9.5 10 10.5 11 11.5 12

USD10.22/MMBTU

USD12.2/MMBTU プロジェクト

IRR

IRR12%

Cap (new area)

ガス販売価格(USD/MMBTU)

Phase2 0.72MTPA

Phase1 0.4MTPA

110

きく上回り、Phase2 においても、13.1USD/MMBTU と市場で受け入れられるであろう 10~12USD/MMBTU を上回る結果となった。

図表 133 北スラウェシにおいて投資額 400MilUSD とした際の 天然ガス販売価格とプロジェクトIRRの関係

つまり、南スラウェシにおいては、条件が整えば、事業性が期待されるものの、北スラ ウェシにおける事業性は、まだまだ低い状況にあるといえる。

スラウェシ島としての LNG 普及をすすめるに当たっては、政府による財政面での支援 や政府主導でのプロジェクト推進(規制緩和、国営企業巻き込みなど)が必要であると想 定される。一方で、スラウェシ島への LNG 導入は以下のような効果が期待でき、それら波 及効果も加味して、政府として事業を推進することが重要であると考えられる。

図表 134 スラウェシ島における LNG 導入の波及効果

項目 内容

地理的な優位性 スラウェシ島は、インドネシアの中央に位置し、インドネシアのLNG生産 拠点であるボンタン、タングーに挟まれ、さらにスラウェシ島にもLNG生 産拠点(ドンギスノロ)を有し、LNGへのアクセスにおいて優位性のある 島である。さらに、LNGのハブ拠点として、東部島しょ部へのLNG配給 の中心的役割を担う可能性がある。

環境特性 石炭や石油に比べ燃焼時に二酸化炭素発生量が少なく、さらに、窒素酸化 物の発生量が少なく、また硫黄酸化物やばいじんが発生しない、そのため、

地域環境保護や地球温暖化抑制に寄与する。

北スラウェシ州は観光・環境としての成長戦略をかげており、LNG推進を 0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

11 11.5 12 12.5 13 13.5 14

プロジェクト IRR

USD13.1/MMBTU

IRR12%

Cap

(new area)

Phase1 0.2MTPA

Phase2 0.42MPTA

ガス販売価格(USD/MMBTU)

111

行うことがその実現の1歩になり得る。

LNG バンカリン グ

国営フェリー会社のPT Pelniの現在の主なバンカリングポイントとして、

スラウェシ島の Makassar、Bitung、BauBau があり、今後、普及を目指 すLNGバンカリングの拠点としての可能性を秘めている。また、バーチャ ルパイプライン構想に基づくと、KupangやAmbonにおけるバンカリング 用LNGをスラウェシから供給することも考えられる。

5.4 我が国経済への波及効果、等